危機迫る中での走馬灯・心の中に弾ける闘志の火花
わざと負ける?いったい何を言ってるのこの人は…
「わざと負けるって、今回私は負けられない立ち位置にいるんだよ。それをどうしてわざと負けなければいかないわけ。」
「まぁそう反感になるのは無理もない、けどこれにはわけがある。と言ってもこの一周間まだ残っている以上それを実践するかどうかはコレからの判断にはなるけどな。」
「よく分からないんだけど、神楽坂君は何がしたいわけなの?」
「そうだな…恐らく2日前辺りになったらお知らせがくると思うから事前にお前に話しても問題はないだろう。
…実は予め小萌志先生に模擬試合の内容を聞かせてもらったんだ。まだ極秘事項だから全員には知らせてはいないとは思うけど…
ひとまずあまりルールに囚われない名のある世界選手達にはどうでもいい内容なのは確かであって、これに関してはお前にとっては成さなければならない事でもある。」
「???ごめんなさいやっぱりよく分からないんだけど、ちゃんと説明してくれないかな?」
「まぁ待て待てその前にだ…野谷山お前、初手でクロールとバタフライをやったら体力は残れる自信あるか?」
「?それもよく分からないけれど、使い分けられるなら問題ないかな。その二つはやっぱりより体力を消耗させる泳法だから、その2つを使用したら確実にタイムは伸びなくなっちゃうかな。」
「そうかそれを聞けてこっちも決心した。野谷山今回やる模擬試合は3試合行われる。所謂前座、中座、後座という振り分け方でやる形だ。まぁ100メートルリレーを3回行うという形の認識だと思ってくれればそれでいい。」
え?何がそれでいいのかさっぱり分からないんだけど、つまり私連続で300メートルリレーをするって話しなわけ?しかも1人でって話だよね?……いや普通に無理だからね!
「まぁそこは天才であるお前に関しては何も問題ないから体力面では問題なく行けそうな気はするな。」
勝手に私の体力面を把握した言い方で勝手に納得された!
「いやでもね神楽坂君。私もその一応女の子だから、そこはかとなく何とかならないかなって思ってたりなかったり?」
「甘えた事を抜かすな。少なくともお前の天才は他の強者達と比べたら天と地の差だ。そこでいきなり楽観視されても俺は赦さんぞ。」
辛辣!何故か急な鬼モード、学園でのめんどくささな神楽坂君は何処へ行ったの!
「とは言っても完全に300メートルきっかり泳ぐわけじゃない。前半で1位から3位以内を取れればそれで問題はないが、初手からいきなり取れるなんて事はまず不可能だ。他の奴等は俺を中心として記録を伸ばしていっている一部の強者がいる。少なくともそいつらを入れての初手での算段は間違いなくその枠に入れない入れるとしても4位もしくは5位辺りが相場だな。」
「それでも中々の順位だとは思うんだけどな。」
「馬鹿をいえ、集められる競合選手達は10人いるんだぞ。そこで4位5位で満足していられたら舐めくせられるだけで終わってしまう。」
「え〜〜それじゃあワタシはどうすればいいわけなの?」
「だから言ってるだろ。最初と2回目はわざと負けろって、このわざと負けろという意味には理由がある。まず最初に…初手だが…」
…………
「最初の方でまるっきり力を抑えた状態でゴールする。そうする事で、体力の温存ができつつ、順位はやっぱり神楽坂君の言われた通り4位に入ってしまった。でもそれが最初の狙いなわけ。」
「4位になる事が狙いだと?力をあれで抑えていたとは到底思えないんだがな。」
「うん。だから私最初はクロールしなかったでしょ?」
「!?いや待て…確かにそうかもしれないが、クロールしなかっただけで、体力の温存が可能だなんて、そんなミラクルあるわけが…」
「いいえ、それがあるんですよサマギ。」
「カンベル……」
「ワタシからもスコシいいですか?」
「どうぞ。」
「たしかに、あなたとカグラザカのミゴトなコンビネーションオミゴトでした。そして、ショテでのアナタのパワーがイチジルシクツヨクナカッタというのはイチモクリョウゼンでしたよ。」
「へ〜見抜かれていたんですね。なのに、それでも2試合目では全力を抜かなかったんですね。」
「ヌクヒツヨウセイはナニヒトツないのです。なぜならワタシノイマノジツリョクにカテルヒトなんてまずいないのですから。しかし…ツギノシアイデハモノスゴクたのしみにしていますよ。ヒバナ…」
カンベルは察した様な言い方で休憩をとるために壁側の方へ背もたれながら、ドリンクを飲む。
「まぁそうですねよ。気付かれているんだったら、こっちにとってはもう関係なくなるかな。いや事は成せているんだからこのままやれば何もかもがうまくいく。」
「上手くだと?おいおい、どう考えたってこの状況どうやっても翻る事はないと思うぞ。何せお前を抜きにしたとしても残りの面子がお前より上じゃ話にならんからな。」
「え?そんなの分かった上ですよ。だから皆さん特に2位から4位以内に入った人達以外は私のペースで泳いでいたでしょ?その人達は既にペース配分というのを分かっておらずついて来ていたはずです。そもそも私が最初遅かった理由もそれが狙いなんですけどね。後そんな風に気にしてる余裕は無いと思いますよ。普通ではあり得ない事がここでは必ずおきます。気を引き締めていかないと沼に溺れるのはあなたになってしまいますよ。」
「はぁ〜お前いったい何を……」
いや待てよそもそもよくよく考えたらこの3試合なんてルール私達に意味なんてあるのか?単に記録云々に関してなら既に予めリストにあがられていたはず…しかしここではそんなの関係なく1位〜3位に入るだけでいいと言われている。その中でもまだ入ってないやつはたくさんいるが、そんなのもここでは意味をなさない…何故ならここでの運営側の目的は…
「さて、次の試合が始まる前に私も少しばかり休憩しようかな。」
コイツなのか…それに普通ではあり得ない事が起こるか…いやそんな事を気にしても仕方がないまずは目の前のコイツを倒す事だけに集中しろ。
………
「運営側は明らかにお前を主目的な意味で模擬試合というのを開催するという事らしい、本格的な目的までは分からないが、何かしらの意図があるんだろう。でもひとまずそこに関しては考えなくていい、お前はお前のやり方で水泳をやればいいだけの話しなんだからな。」
「いやいや、さっきの条件で好きな様に泳げって言われても説得力皆無なんだけど、目論見が分からないんじゃやっぱり神楽坂君のいった通り最初は得意な泳法で後は僅かに可能性のある泳法で泳いだ方がいいんじゃ?」
「いいやそれをすれば確実に負けるというのはもう伝えたはずだ。この模擬試合に関してはあくまでも、1位〜3位以内に入る事が条件なんだ。つまり3試合の内どれか1試合でもお前がその枠に入れば問題はない。けど、それは他の競合選手だって同様、何かしら集められる要因は何処かしら意図があって運営側は集め出してるんだからただ単に軽い泳ぎだけですまさせる様な場所じゃない。」
「だとするなら、神楽坂が言う通り決めては…」
「ああ本番はラストの3試合目だ。」
…………
「すぅ〜はぁ〜〜」
よし良好良好身体への不調は今の所問題はない。このラストの3試合目でケリをつける。
「………」
「神楽坂今回での作戦は予想通りなのか?」
「はい。休憩が10分入ったとしても周りの選手はもう野谷山のペースに狂わされない様元のペースで泳ぐ事になるでしょう。まぁ正直な所初手の試合で2位と3位も引っかかってくれれば尚よかったんですけどね。」
「しかしお前の言う通り目論見としては上手くいったんだろ?」
「結果としてはね。狂わされない様に自分のペース通りに泳ぐといってもそのペースが彼等にとってどう言ったペースなのか体の感覚では恐らく」
「分からなくなっているって事か?……水泳を辞めたにしては中々の打開策を考えるじゃないか。やはり野谷山が狙いなのか?」
「何ですかその理由は…俺はそんな事一言も言ってないでしょう。後そのニヤケ顔はムカつきます。」
まぁ正直な所あの露光さんが、皆んなの注目する的になってくれたのはなによりも幸いだったな。次は恐らく露光さんを狙いつつ泳ぐだろうけど…
「そう簡単にいけるかどうかだよな。」
位置について!よーい!
………
ピー!!!
ザバァン!
ザバァン!
ザバァン!
全員勢いよく水の中へ飛び込み、そのまま全速前進で得意の泳法で泳ぎ出していく。そして案の定狙いが定まれたのは…
バシャン!バシャン!バシャン!
クソ!マジで私と一緒に泳いでいやがる。水面の感覚でわかるが、確実につかず離れずといった行為でついてくるなんて……普通ありえないだろそんな事。……ありえない……
露光は普通ではありえないという言葉を脳裏に浮かびあがらせながら、何かを思い出す様にして必死に前へと腕を動かしながら掻き分けていく。
[普通ではありえない事がここでは起こります。気を引き締めていかないと沼に溺れるのはあなたになりますよ。]
バシャンバシャンバシャン!
クソ!予測通りかよ。いやでも、まだアイツは俺達を抜いてはいない、3試合目だから全力で出す自体そもそも皆んな変わらないんだ。例え平行線になったとしても、こっちがラストスパートをかければ何も問題は…
バシャバシャバシャバシャバシャ!
しかしそんな望みを期待していた矢先真横から一気に突っ走る1人の暴走並に速い速度で泳ぐ女性が抜群に突破する。
ば、馬鹿な!?同じクロールで何でそこまでのスピードを出せる。まさか力を抑えていたというのか!今までは本気じゃなかったというのか!
案の定ほとんどの人達は左馬儀さんについてるって感じかな。横を軽く見る限りそんな感じっぽい…となればやっぱり…
グィーン
グィーン
タン!
タン!
ヒュ〜〜
っ!
同じタイミングでのターン、やっぱり天敵はこの人と他の2人の競合相手…残りの四分の一の確率で勝敗が決する。
ザバン!
ザバン!
ザバン!
ザバン!
ざわざわざわざわ
「こりゃあ凄い試合だな。こうも1試合目と2試合目で差が開いちまうなんて、予想外すぎるにも程があるだろう。神楽坂の言う通り、3試合目の為に体力を温存しといて良かったな。」
「体力温存での差なんて、関係ありませんよ。一気に勝負に出る為の前座が大事だったんです。2試合目での結果が他の人達が3試合目にどう左右されるかが要だった。でも案の定やっぱりカンベルさん曰くまだついていけてる2人は2試合目の露光さんの事なんて最早無視して、全力で掻き泳いで行っています。そうなれば野谷山がやっていた1試合目と2試合目は無駄になるわけですが…」
まぁ残るはアイツの結果次第、四分の一で上手く3位にまで入ればそれでいい、そしてアイツ自信恐らく自分の中にある何かが発揮するはずだ。あと少しあと少しで終盤に入る。その時アイツはきっと…
ザバァン!ザバァン!ザバァ!
駄目やっぱり残りの3人に追いつけられない。このままじゃ、1試合目と2試合目が無駄に……でも待って何か妙な感覚が湧き上がっていく、これって…
泳いでいく内に自身の中にある何かに気付きだす火花。しかしそれが、何かは自分にも分からずにいた。けどコレが何かは分からなくても本能のままそれを使わざるおえないと思い、自分自身には気付かないタガをはずす。
ギュィーーーン!
ザバァン!ザバァン!ザバァ!
早い!何なんだアイツは!急にピッキングをあげてきやがった。まずいぞこのままだと抜かれてしまう。
………!!嘘!抜かれる!
ザバァン!ザバァン!
うおおおおお!!!
観客席で騒ぎ出す人達の記者や関係者は、まさに起こり得ない事に対して驚き、声を張り上げながら目の前に起こっている状況を把握できず、信じ難い事件が起こっているのをただ単に黙ってはいられずに立ち上がりながら盛り上がらせていた。
クソ!いやまだいける。ここからまだ一気に俺は…
ザバァン!ザバァン!
な、なに!!!
うおおおおお!!
うおおおおお!!
こんな事いったい誰が予想していただろうか、あれだけ切り離されていたはずの野谷山火花が一気に追い上げをし折り返しの地点では3人の選手と同様の地位にまでいたのにも関わらず、彼女は断トツに2位までたてなおしてしまったのだ。そして今彼女にある思いといえば…
何だろう、身体が軽い…普段なら全力で泳いでいたら身体の部分の一部が重くなる所があったりしたのに今はそれを感じ得ない。私どうかしたのかな?
ザバァン!ザバァン!
ザバァン!ザバァン!
自分自身にある何かの変化それは、あり得ない実態感という様な何かなのか、それすらも分からない野谷山火花はそれでもひたすらと前へ前へ水を掻き分けながら進み今まさにデッドヒート寸前にまで押し寄せられ彼女の目つきが一気に切り替わる。
そうです!それでいいのですよ!あなたのパワーようやくマチノゾンデいました。ココロオキナク、カラダとカラダでのショウブ…ワタシはこのトキをどれだけマッテいたことか!…あのトキあなたが、カグラザカとのカンケイシャ、いやシドウガカリニなったときかされたトキ、ナカバビミョウなキモチにはなりましたが…それでもワタシタチのアコガレデあるあのカレとオナジてんさいにメグマレタサイジョ!こんなのウレシフルエルにキマッテルじゃないですか!
ザバァン!ザバァン!ザバァン!
スピードが増した!嘘でしょう。もうコレ以上は…
更にスピードを増したカンベル。そのカンベルのあまりの速さにもうこれ以上は無理だと諦めかけたその時彼女の中に1つの走馬灯が垣間見る。
[ねぇ?もし私以上に速い選手がいたらその時はどうすればいいの?]
[いやそれ俺に聞くか?]
[だって神楽坂君が1番過去で唯一結果を残してるんでしょう?ならその参考までに聞くのが筋じゃないかなって思って。]
[あ〜まぁ確かに一理はあるが……あんまし参考にはならんと思うぞ。]
[それでも聞きたい!何かしらの私の中での枷が外れるかもしれないしね。]
[お前の身体いったいどういう原理なんだよ。……そうだな強いていうなら……]
[強いて言うなら?]
[………ある人物を思い浮かべる事かな。]
[………ある人物?」
[ああ、俺は昔挫折した系はあるけれど、それでも挫折する前はまだ頑張れるという息巻いだけはあった。でもそれでも、やっぱりへし折れる所もあったりもして有耶無耶な感じで試合に出向いた事があったけれど…それでも誰かと一緒にやり遂げたい…そう言う気持ちがあったからあの頃はそうやって一直線まで行けていたんだと思う。じゃなきゃいくら昔水泳が達者だって言われても上まで行くことは無理だったと思う。]
[………でも私にはそういう心意気というか、息巻いみたいなのがなくて、何をどう一直線に行けば分からないな。」
[…………じゃあさ野谷山試しにだけど俺と競って泳いでみないか?]
[え?何で?神楽坂君はトラウマで泳ぐのも億劫なはずじゃないの?]
[確かに億劫だが…それでも俺はお前に勝てる自身はあるぞ。まぁお前がここでサレンダーするなら話は別だけどな。]
[ムカ!何かその言い方気に触るんだけど…いいよ。ならやってあげる。後で謝って許してほしいっていっても許してあげないからね。]
[ああ勿論だ。そして恐らくお前はこの事で、速やつに対してきっと思うはずだ。]
[?いったい何を?]
[それは試してから実感をわかせるのが先だな。]
[……別にそれでいいんだけど、自分が何気に速いアピールだけは腹がたった。]
[ふっ…まぁそれもこの競い合う中での1つの内に入ってる枠で俺はわざと言ったんだけどな。]
[???意味分かんない。]
[とりあえずやるぞ。やって確かめて、把握しろ。それがお前にとって1番速い奴を抜ける打開策だ。]
バシャンバシャンバシャン!
グィーーーーン!!
なんと!!ここでまだアガるというのですか!
いいですよ!もっとワタシをタカメさせてください!
「いやまじかよ!アイツいったいどこまで伸びていくんだ!練習した時よりも見た事のないハイスペックだぞ!」
うおおおお!!
うおおおお!!
うおおおお!!
更に賑わいたつ周りの響く声。僅かな差で開いていたはずの一位は確実にカンベルに間違いないという差を目の当たりにしたのにもかかわらず、火花はどこからなのか分からない水泳としての力を一気に振り絞りながらどんどんと間合いを埋め出していきだす。
そして並びだした2人は一気にゴールするという部分の場所に2人の手がタッチする瀬戸際まで近付いていた。
神楽坂君が私にくれたキッカケ、そのおかけでここまできた。正直胡散草はあったけれど、その話をこんな土壇場で思いだしてしまうなんて…うんでもその通りだった。その通りで私の中にある闘志の何かが弾けだした気がする…ほんの小さな火花かもしれないけど…そのおかげで私の身体は私の意思に応えてくれたんだと思う。……だから負けられない絶対に負けない。勝って私が勝って水泳としての私を神楽坂君に認めてもらうんだ!
ワタシはこのショウブまけるわけにはいきません!かならずカッテワタシはミトメラレなければいけないのです!だからあなたとのショウブでワタシはカッテ、カグラザカにカッテみせます!
うおおおおおおお!!
うおおおおおおお!!
2人は心の中で叫び声をあげながら僅かなリーチの差まで追い上げ泳いでいくカンベルと火花。そして2人は同時にゴールへとタッチを果たす。はたして結果は…




