5人の幼馴染の捜索
…………校舎(ランニング場)
カキン!
おーい!もう一本!
走れ走れ走れ!
うわもう部活の声が盛大に広まってるな。やっぱり難関校っていうだけで相当厳しく見えるな。
「アイツらがこの辺にいるなら探しやすいと思ったけど、やっぱりそう簡単に見つかるわけないよな。」
何処かの部活にいるなら名前を聞いてそのまま呼んでもらって話ができればとか思ったりしたんだが、こんなに大量の部活やってるんじゃ最早苦行にしか思えんな。
よーい!
パン!
タタタタタタタタ!
陸上部か……陸上部。そうだ!美森姉だけは陸上部に入ってる可能性が高い。何しろ今でも陸上県大会に出てる程の強者だし、部活に入ってなかったらそれはそれでおかしな話だ。でも……
タタタタタタタタタタタタ!
一星は陸上部で走っている女子生徒を見ながら少しばかり億劫になる。
女子の部活に男子生徒が介入してもいいのだろうか?寧ろ変態扱いにされないか不安だ。
「誰か知ってそうな。クラスに知ってそうな女子とかいてくれればな。」
「あら?あなた確か。」
「え?」
背後から声をかけられ一瞬何処かで聞いた事のある声だなと思い振り返ると片手にスポーツドリンクを持ちながら物凄い汗の量をしてる蕾琵心先輩がいた。
「あ、お久しぶりです蕾先輩。蕾先輩陸上部だったんですね。てっきり空手部か何かと思ってました。」
「にゃはは。まぁこの前の出来事であんなのを見てしまったらそれはそう思うわよね。仕方ない仕方ない。」
というのはただの話す口実であって本当は陸上関係の事をこの間知ったというのは敢えて伏せておいた。何故ならこの人もまたこの学園で超有名な女子陸上部の選手の為あまり外から来た田舎臭い印象を持たれるのは少しばかり気が引けたからなのだ。でも何でそう思ってしまったのだろう。
「それであなたはどうしてここにいるのかしら?何か陸上部に様でもあるの?」
「あ、そうそう!実は1つ聞きたい事がありまして。」
「あ、もしかして私のスリーサイズやっぱり聞きたくなったのかしら?」
「違います。というか超有名人がそんな会ったばかりの男にセクハラ地味た発言はやめてください。このやりとり2度目ですよ。」
それに女子の陸上服姿ってやたらと際どいから見るこっちからしても目に当てられないんだよな。
「あらでも目はいやらしい目をしているわよ。そんなにジロジロと見られちゃ恥ずかしいわね。これでもスポーツ選手の勝負服みたいな物だからあまりそう言ったエロい目で見られると…」
「見てません。」
「本当に?」
「くどいです見てませんったら見てません。」
「本当は?」
「ちょっと思ってしまったって何言わせんですかあなたは!」
「あはははは君面白いね。素直なのはいい事だよ。うんうん男らしくて私は好きだな。」
からかわれてる男心を弄んでる女にそれを言っても全然ドキドキ感がない。この女は完全に俺の事を玩具としてみなして遊んでいる。
「えーと、本題に入ってもいいですか?」
「ああそうだったわね。それで何を聞きたいのかしら?」
「女子陸上部に四月一日美森という人いませんか?多分先輩と同じ学年なんですけど。知りませんかね?一応女子陸上でもTVに出た事ある人なんですけど。」
「四月一日美森………いいえ知らないわね。」
蕾は少し考えた後いたかどうか頭の中で試行錯誤したのだが一星が期待するような返事は返ってこなかった。
「そうですか…てっきり同じ部活に入っているものとばかり思っていたんですけど。」
でもまいったな。こうなってしまうと完全に万策尽きたぞ。唯一の頼みである美森姉の存在が女子陸上部にいないとなるといったい何処にいるっていうんだ?
「まさか!自慢の足の速さを持ちながら他の部活に入ってるんじゃ……いやあり得そうな気がするあの美森姉だからな。」
「あら?それはどういう意味かしら?」
「え?お!?」
な、なんだ。何故か蕾先輩に圧があるオーラを感じるぞ。俺何か変なこと言ったか?
「そ、その別に女子陸上部に変な事を言ったわけでは無くてですね。うちの知ってる昔からの幼馴染なら何か別の事をしているという昔からの曲がった癖みたいなのが頭の中ですみついちゃってそれでもしかしたら別の所にいるかもなって思って。」
「はぁ〜〜別にそう言った事で機嫌を悪くしたわけじゃないわ。単に私の勝手な自己嫌悪。そういう言い方個人的にはあまり好きじゃないのよ。昔と違って今はこうだとか今はこうだから昔はああだとかそういう勝手な被害妄想って単に個人がそうだったら良いなっていうただの自己満足じゃない?そういう認識の仕方で言い訳をする人がもし久しぶりに会った人物が前にいたらどういう気持ちになるかしら?」
「あ…」
なんとなくだけど言いたい事はわかる。こっちの都合でもし久しぶりにあった幼馴染達が昔と違って性格も人柄も変わったね?って言われたらそりゃあ戸惑う可能性もあるよな。仮に向こうの返答で昔の方が良かったかなって?尋ねてしまったらそれは相手が必死に何かに変わろうとした事を否定してしまう可能性にもなる。それを蕾先輩は俺に忠告をしてくれたんだ。
「ありがとうございます蕾先輩。俺久しぶりに会う幼馴染達に会うのが楽しみすぎるのと少しばかり不安になった気持ちも合ったんです。久々に帰ってきたのに全然会いに来てもくれない薄情な奴らなんだなって思ったりもしたけれど…そうですよね。勝手な自分の思う押し付けなんてそれこそ俺が悪いに決まってますよ。」
「そう?別にそう言った事での悪い意味で言ったわけじゃないわよ。見解を改めて見直し自分が知っている別の何かに変わってる場合もあるわよって話し。その話でどういう風に変わっているのかは自分の目で確認してもしかしたらその子かもしれないというただのお節介の言葉よ。」
「そのお節介の言葉が俺にとってはありがたいんです。でも気持ちでの踏ん切りがつけれたぶんもう少しだけ頑張ってみようと思います。それじゃあ俺はここで部活頑張って下さい!またここに来るかもしれませんがその時は宜しくお願いします。」
そう言いながら一星は蕾に別れの挨拶をし再び幼馴染がどこにいるのかを探す。
…………下校時刻・夕方
「いやマジかよそんな事ってあり得るのか。」
夕方になってまでここにいる幼馴染達5人の情報をようやく手に入れた俺はいや手に入れたというべきなのか?まさかの衝撃的な事に頭を掻きながら部活で片付けをしている人達を遠目でみながら呟いてしまう。
「この学校にその様な名前の生徒はいないだと?ふざけるなよな馬鹿野郎!!」
俺は心の中で閉まっていたヘイトを思いっきり叫びながらランニング場で片付けをしている生徒達がなんだなんだと言わんばかりの顔をこちらに向けてくるが、俺はそんな事を気にしている余裕はなくただ単にむしゃくしゃしていた。
「てか蒼脊のやつここにいるって言ってたのにその様な名前の生徒はいないってもう矛盾してんじゃんか。どういう事はだよいったい…」
もしかして幼馴染の名前を俺が間違って聞いてしまってそれでその様な生徒の名前がいないって事なのか?いやいや馬鹿か俺はついこの間まで母さんと幼馴染の5人の名前を言った記憶があるじゃないか。それに幼馴染5人の名前を間違えてしまうなんて事事態まずあり得ないどうかしてる。
「となればもしかして俺が引っ越した後性が変わって別の苗字になっているとかだったりするのか?うーん。正直ここでそういう風になってしまうと最早開幕検討がつかん。とりあえず今日はこのまま帰るとするか。アイツらの事はまた蒼脊に聞くとしよう。変に悩みすぎたな。」
ドン!
「うお!」
「キャ!」
最早疲れ果ててしまって帰ろとう通路側の扉のノブに手をかけ回そうとした途端向こう側にいた女子と鉢合わせしお互い顔を覗き込ませてしまい驚く。
「ご、ごめん大丈夫ってあれ?君って横断歩道で見かけた…」
「ゲ!」
「げ?」
いきなりな発言に首を傾げてしまう俺は何かこの子に嫌な思いをさせてしまったのかと思い内心焦る。
「ど、どうして君がここにいるのかな?」
何故急にどもりだす。
「いやちょっと人探しをしていて、結局見つからず仕舞いでちょっと落ち込んでてここで黄昏ていたなんてあはははは。」
「うわ寒。自分で言って恥ずかしくないの?」
「いや〜そうだよな。あははは。」
なんだろうこの子やけにムカつくな。顔は美人な癖にこの妙な素っ気ない態度なんか癪にくる。
「まぁいいや私も君に用があったし。」
「用?俺に。」
「うん。あの横断歩道の時にあの子が君にキツイ言い方をしてたでしょう?それでもしかして気に病んでるんじゃないかなと思って励ましに来たんだ。」
「…………え?もう夕方だぞ。もしかしてホームルームが終わってからずっと探してくれていたのか?」
「まぁ、私こういう性格だけど根は真面目だからあの子に関してあまり悪い印象持ってもらうのも何か味気ないなって思っていたしね。それで私なりの判断で動いただけっていうかんじかな。」
いやそれ凄い律儀というか何というか、つうかまず会ったばかりの人にこういう性格とか言われても全然ピンと来ないからな。なのにそれを言っちゃう辺りこの子は素がまともなのか?
「まぁそれで言いたい事は言ったしコレでようやく帰れるかな。あ、ちなみに自己紹介まだだったね。私、小橋川林音宜しくね。」
そう言いながら彼女は颯爽と姿を消し俺はただ茫然と立ちすくんでいた。
「な、何なんだ彼女嵐の様な子だった。突然現れて突然去るとか。本当に………うん?今名前何て」
俺はもう一度彼女の言った名前をゆっくりと思いだす。
私、小橋川林音宜しくね。
「小橋川林音だって!!!」