涼風蒼脊との再会
「えっと、いやその何だ。お前もしかして……いやそうだよな。そうだそうだ。コレばっかりは仕方がないかもしれんな。」
「???」
何だ?自分で自問自答して何を納得してるんだ。
「所で一星お前がここに編入してきたって事は、やっぱり水泳部に入るのか?」
!?
たまたま聞いていた野谷山火花は水泳という言葉を耳に入り帰り支度を途中で止め横耳をしながら話しをコッソリ盗み聞きする。
「いや水泳部には入らないよ。もう俺にそんな体力やスピードは残っていない。リハビリで完治はしたけど、まだトラウマがな。」
「でもここに入ったって事は実績があって入ってきたんだろ?なら何かしら評価がないと。」
「ああだから水泳での前科があってここへ入らせてもらったけど、それに関係なしで出来るだけ勉強まぁ試験で良い成績を収められたなら水泳に関しては無しにしてちゃんとした成績評価でこの学園でのランク付けをしてくれるらしい。まぁ俺が頑張っていけばの話だけどな。」
「それで勉学の自信はあるのか?」
「まぁやる事もなかったしそれなり前の学校では試験全クラスの内15以内には入ってる。ここでも50位以内に入ればベストだって話しだから何とかなるんじゃないかと思う。」
「そうか。ここも勉学に関してはそれなりに難しいからな。何かあれば相談にのるぜ。」
「という事は蒼脊って頭が…」
「いや悪いけど。」
「じゃあ何故堂々と相談に乗るとか言ったんだ。」
「そりゃあお前同じクラスだし幼馴染だからだろ?」
ああそう言えばそうだったこの涼風 蒼脊は何でもかんでも突き当たりするタイプのやつだった。それでよく色々と付き合わされて怪我をした事もあったけど、でも嫌な感じはしなかった。寧ろ楽しかったこともあったぐらいだ。
「けどお前が引っ越す時挨拶に行けなくてすまなかったな。本当は俺も行きたかったんだが。」
「仕方ないよ。その日お前んとこおばあちゃんとこに行く日だったんだろ?それは親御さんの都合だからどうしようもないって。」
「ああそうだけど。そうだ!お前まだ幼馴染のアイツらに会ったりしたのか?」
!?
蒼脊の幼馴染というワードに野谷山火花と兎川菟は何やら興味を抱くようにしながら更に横耳を立て話しを再び盗み聞く。
「ああいやまだだけど、てかそれをお前に聞きたかったんだよ。てか誰にも聞いても分からないと思ったしちょうどお前が現れて助かったよ。」
「俺は便利屋か何かか。」
「でも実際助かってるわけだし。アイツらがこの学園にいるっていう事だけは知ってるんだ。因みにどのクラスにいるか知ってるんだよな?」
「ああ知ってるとも。それは勿論だ。だってお前が引っ越してからアイツらの有名ぶりになったのはお前も百の承知なんだろ?」
「ああなんか相当上の存在だなって思っていたよ。でも俺が知ってるのって美森姉が短距離走で有名になったって話を母さんから聞いてたぐらいだから他のみんながどうなったかまでは知らないんだよな。」
「おいまじかよ。じゃあもう美森姉とは会ってたりするのか?」
「いいや寧ろ引っ越しの手伝いをしに来てくれるという母さんからの情報を受け取ったにも関わらず自分達の私情があって来られないというのを後からまた母さんに聞いて結局その日は誰にも会わず仕舞いだったよ。」
「………因みになんだがお前幼馴染5人の顔って今でも覚えているか?」
「当たり前だろ。昔の顔を覚えていない幼馴染なんてそんなの幼馴染としてハジじゃないか。」
「あ〜〜そうだな〜〜」
一星お前その答えは破滅フラグだぞ。お前以外の幼馴染はまるっきり顔やスタイルも変わっている。それにお前の事を1番よく信頼している幼馴染は既にお前の事を気付いてるんだ。それをお前がここでそれを言ってしまったら……
「はぁ〜」
「何だよ急な溜息なんかついて。」
「いや何でもアイツらが不憫だなって思ってな。」
「はぁ?何も言ってんだ。てかもうそろそろ会わせてくれてもいいんじゃないのか?俺久しぶりに皆んなに会いたいし、どうせならオールとかもしてもいいんじゃないのか。」
「お前そんな性格だったか?向こうで何か変わったか?」
「いや単に皆んながどんな風に変わってるのか楽しみなだけでテンション高いだけだ。普段ならこんな事言わないねあんなリア充みたいな言い方なんて。」
「世の中のリア充に謝れ。少なくともオールしてるのがリア充って言う認識は間違っているぞ。馬鹿な俺でも分かる。」
それはどう言えばいいんだ幼馴染として。
「………そうだな。本当なら会わせたいというのが本音なんだが。今はまだ無理だ。」
「無理?何で。」
「簡単に言えばお前が昔にした約束=それをちゃんと覚えて守っていたかによって会うか会わないかの選択肢が生まれてしまったんだ。つまりアイツらにとってお前と会うのはかなりの決心が必要だって事だ。」
「どういう事?え、てか久々に会うだけの話しなのに何か重い話しになってない。」
「お前が変な約束をしたからだろうが、いやそれも子どもの頃の約束なのにそれをいつまでも根に持ってるアイツらが面倒なだけなんだとは思うんだが。まぁとにかくアイツらが何で会ってくれないのかその理由を考えて1人で探してくれ。今日は俺は用事があるから帰るが明日もし何かあったら相談にのるし改めて校舎案内するよ。」
「え!今まさに相談に乗って欲しいし校舎案内してほしいんだが!全然どういう事なのかさっぱりわからん!」
「いいからお前はこのまま校内見学してこい!めんどくさかったらそのまま帰ってしまえばいいんだし気にするな。」
「いや雑じゃね!明らかにめんどくさがってるよな蒼脊。」
そのまま無理矢理教室から追い出そうとする一星に蒼脊は今思い出したかの様に一星に追加の言葉をかける。
「あ!もう一つお前にヒントをやるよ。さすがにこのままだとお前にとってフェアじゃないからな。」
「何のフェアなの?え、俺何かと勝負してる感じ?」
「この学園では色んな競技や活動となる範囲構造が多くある。その中で何かしら有名とされてる物に幼馴染5人組みは関与しているぞ。」
「それってヒントなのか?そんなのいっぱいあるんじゃ…」
「いいからもう行けこれ以上の助言は俺には無理だ。何かあったら連絡してくれ。」
一星は明らかに不服そうにしながら教室を出て1人で校内見学をする事となった。
「たく…やれやれ、こうやって誤魔化すのも手間がかかるな。なぁそこで聞き耳を立ててるお2人さん。」
「………何の事?私には何の関係もないんだけど…」
「同じく私も自ら関与してるわけじゃないんで勝手な事を言わないでほしい。」
盗み見聞きをあからさまにしていませんと堂々と名乗り出る2人に蒼脊は中々にふてぶてしい奴らだと改めて思う。
「まぁ別にそれはそれで構わないがいいのか?話は大方あまり聞いてはいないが変な条約でアイツを困らせていこうとしているんだろ?いったい何が原因でアイツを困らせさせようとしているんだ。」
「蒼脊君が言ってる事私達にはさっぱり分からないわね。それに何の条約かは分からないけれど、それがあって、どうして私達が困らせなきゃならないのかしら?」
「………まぁそうくるわな。」
当然と言えば当然の答えが帰ってきたが、最早完全に俺の言う事は全て覆されてしまうな。と言っても本人事態がそれを望んでいるんだ。そうしたがざる終えないのもあるが……コイツらは本当にアイツとは無関係でありたいんだな。
「分かっていて勝手に変な想像はやめてちょうだい蒼脊君。私達はたしかに蒼脊君達の事を勝手に盗み聞きはしたけれど、でも結局それだけにすぎない。それを聞いて特に何も感じなかったよ。」
何も感じていないのもさすがにそれはそれで人としてどうかと思うが、興味がなかったと言えばいいんだが…あからさまに全て聞いてやがるからなコイツらは…
「………いやまぁいいわ別に、俺が協力しているのはあくまでも別の幼馴染だしな。今のお前らには全く関係なかったな。」
「その言い方ムカつくかも。蒼脊君は後で死の恐怖を味わう程の呪いにかかってしまえばいいのに。」
「何て事をいいだすんだ。兎川お前だからあまり周りに対して別のベクトルで絡まれてるんじゃないのか?何かとは言わんが…」
「それ言ってるようなものだと思うわ。」
「………蒼脊君からの話はコレでお終いなのかな?それじゃあ私から一言だけ言わせてもらうね。あまり余計なお節介はかけない方がいいと思う。コレは私からの助言…水泳選手である野谷山火花からの忠告だよ。」
「いやいったいどう言う意味での忠告だ。でもまぁ肝に銘じておくよ。それで後ろから刺されちゃいやだしな。それじゃあお2人さんまたな。」
パタン!
蒼脊はそのまま教室を出て2人は未だに疑いのある視線を蒼脊に送りつけたまま無言のままその場で見送る。
ざわざわざわざわ
「な、なんだったんだ。あの妙な雰囲気は?」
「わ、分からないけど私達が関わらなさそうが良さそうね。」
教室にまだ残っていた生徒達は3人の雰囲気に怯えつつ触れてはならない場面だと思いそのまま何も触れずに後から自分達も教室を出ていく。
「さてと…何だか変な雰囲気になっちゃたわね。どうしようか火花ちゃん?」
「どうするも何も私達は特に何も関係ないし蒼脊君が勝手に変なことを言っただけでしょ?」
「それもそうね。私達がとやかく言った所で解決するわけじゃないもんね。」
「でも幼馴染か……実際の所彼がここに来た理由ってやっぱり会いに来たって事になるのかな?」
「そうでしょう?じゃないとさっき盗み見聞きした内容が私達の頭の中で勝手に切り替えられて勝手な思い込みをした事になるけれど?」
「いやそんな化学的な話しじゃなくてね言葉の綾…つまり単純に会いにきただけで捉えていいのかなってそう思ったの。」
「どう言う事?」
「………ごめんなさい。私にもよくは分からないの、でも神楽坂君からしたら何かしら他の理由もあってここへ編入しにきたんじゃないかってそう思ったの。ただの考えすぎかもだとは思うけど…」
「成る程……でも火花ちゃんそれって私達に直接関係のない話なんじゃないかな?特に他の用件があったとしてもそれは神楽坂君の問題。私達トップが考える事じゃないと思うわ。」
「………そうだよね。変な盗み見聞きをして変に思い込みをしたせいだからやっぱり変なことを考えちゃった。」
でもやっぱり気になるし期待しちゃう彼がここへ来た本当の別目的、本当はそれが知りたいだけであんな事を考えてしまった。私はまだ期待してもいいのかな彼に…