兎川菟の狙い
子どもの頃の約束…俺達幼馴染にとってそれは絶対に忘れてはいけない約束もあったりした。なのに俺は宇佐木田さんが1番大事にしていた約束を無碍にしてしまった。彼女にとっては1番それを叶えたかったのに俺はこの街に戻る事なんてそもそも思っていなかったから今の今まで忘れていた。
「すまない…俺は完全に宇佐木田さんの約束を蔑ろにしてしまった。だから怒るのも当然だし復讐されても仕方がない。でもこうやってまた会えたことで俺はまた友達になれると思っているんだ。いやもう友達だって思っている。あつかましいかもしれんが、俺ができる範囲でコレからも宇佐木田さんの隣にいたいと思う。」
「そんな簡単に…」
「え?」
「そんな簡単に済ませると思わないで!私言ったよね。これは復讐だって、だから神楽坂君の事まだ許してなんてあげない。私は美森さんとは違って優しくないんだもん。」
「優しくないって……美森姉も十分優しくなかったんだがな…」
あれはあれでかなり鬼畜な復讐だったし、周りを上手く巻き込んでの俺への復讐は正直おみそれする所があったな。いや褒めてはいないんだが…
「てか宇佐木田さんは俺にコレからどういう復讐をするつもりなんだ。これといって復讐という対象されるのは何も思いつかないしどうやったら許してくれるのかも分からない。」
「うーん………は!そうだ私いい復讐を思い出しちゃった。」
何でそんないい笑顔で笑えるんだ。てか普通本人を目の前にしていい復讐を思い出したって最早その思考サディストに近い思考回路だぞ。
「神楽坂君って美森さんとはまだ付き合ってる疑惑が続いてるんだよね?」
「え?ああ〜そういえばそうかな?」
「何で疑問系?」
いやだって一応は別れた程になってはいるが、まだ学校とかで俺と美森姉との関係云々に関してはそのままなんだよな。まぁ本人曰くどちらでも構わないとは言っていたけれど、これ以上嘘をついても仕方がないと言う話しだし、それに美森姉本人もあまり乗り気ではないだろうからな。
↑こう思ってるのは本人だけであり実際の彼女の気持ちに一切理解しようとしていないのが現状である。
「いやそれは別にいいとして、何でそんな事を?」
「ふふ、それは明日のお楽しみ。う〜ん明日の復讐が楽しみだな〜」
「お前本当は内心もう昔の約束なんて根に持ってないんじゃないのか?これまでのボディガードだって単にお前の事を思い出してもらうための口実であっただけだし、正直復讐云々かんぬんに関しては最早過去の事で流しているんだろ?」
「………本当にそう思ってるの?」
「!?」
何だ?一瞬宇佐木田さんの仕草や目がどことなく何か遠い様な地雷を踏んでしまったかの様な感じがした。それも何か闇を抱えてるそんな風にも思えてしまう。
「いやそうだなそんな事ないよな。てか話は変わるがお前最初マネージャーみたいな事言っていたのに、途中からボディガードに変わってるというのを自分自信気付いているか?もしかしてそれもわざとだったり…」
「あ、それは素に完全に忘れていたわ。マネージャーなんて最初からいたのに神楽坂君にマネージャーを任しても意味ないなって思ってボディガードのラインに変えたんだけど…その説明もまだだったわね。」
「何てやつだ。あれこれ復讐観念に集中していた奴の言い草じゃないな全く。」
「一応言っとくけど、私が神楽坂君に約束を忘れられたショックでの優劣関係があるって事ちゃんと理解して言ってるんだよねそれ。じゃないと私が今考えている復讐何かよりもっとやばい復讐にするわよ。」
「…………とりあえずそのやばく無さそうな復讐でお願いします。」
「よろしい!それじゃあこのまま私の家まで送ってねボディガードさん。」
「あ、それはできない約束だから俺はこのまま帰るよ。」
「え、な、なんで?今の流れで、どうしてそうなるの!」
「いやだってさっきもいったけど、ボディガードは今日までなんだろ?なら見てみろよ。」
俺は自分に付けている時計を刺しながら宇佐木田さんに何を示すのかを指摘する。すると彼女は急いでスマホの画面を開くと…
「………夜中の12時……え!もうそんな時間!」
「職質されない内に早く帰れよ。いくら高校生だからといってこんな時間に外で駅前にいるのは何かしら怪しまれるかもしれんからな。特に俺は…」
「ちょっとちょっと!それなら私だって同じ…」
「いやお前の場合まだ仕事で遅くなって誤魔化せるだろ。アイドルにはアイドルの示す証明書をマネージャーさんから貰ってるって話しは聞いたぞ。その上ただの見学者が何も証拠を持たないままお前を送ったらそれこそ怪しまれる。スキャンダル云々になりたくなかったらそこは自分の身を守ってそのまま帰れよ。」
「ええええ!!!そんな薄情な!」
「薄情もクソもあるかよ。それじゃあまた明日な。後復讐に関してはお手柔らかに頼むぞ。それと明日じっくりと聞かせてもらうからな残りの幼馴染の事について!違う意味で明日は覚悟してろよ!」
そう言って神楽坂は一足先に、川兎をその場に残し帰っていく。
「あ、ありえない…普通そこは女の子1人を残しちゃ駄目なのに…何でそれが分からないの…というかそんなのありなの!時間で日付が変わってボディガードが終わるなんて話し私そんな事いってないよ!」
相変わらず昔からそういう意地悪なとこ変わってない。お友達になってくださいといって振った本人は本当に何も悪びれもないんだから。逆にそれが腹正しくもあるから尚達が悪い…
「でも…神楽坂君に私の事を幼馴染だっていうのを明かしたバックがいた…コレは紛れもなく私の知ってる誰かだとは思うけど…」
考える候補は主に3人1人はあのチャランポランになった蒼脊君…そして残る2人はおおよその検討はついてはいるけの確証がない候補だからまだ何も言えない…でももし私の考えている事が確かなら…
「まさか小寧々ちゃん…」
…………次の日
「………」
いつもの朝の登校。てっきりこの朝の登校に何かしてくるのだとばかり思っていたんだが杞憂だったか?
………下駄箱前
「もう学園に入ってしまったが、これといって何か起こるわけがない。やっぱり俺の考えすぎか…」
俺は靴を履き替えそのまま教室の方へと向かいながら、昨日の宇佐木田との出来事を思いだす。
今日復讐というのを口で言ったけれど、明確な復讐方法が分からない以上、どうこうできるわけがないのは確かだ。でもどうにも腑に落ちないんだよな。アイツが俺に対して復讐をするというのなら直ぐさまに仕掛けてくるとそう思っていたんだが…もしかするとアレはただの一時の脅しみたいなものだったのかもしれん。
そつ思い一星はゆっくりと教室の扉を開けると。
ガラガラ…
「あ!もう遅いよ一星君私君が来るのを待っていたんだからね。」
「え?」
え?
突如名前呼びで声をかけてくる通称宇佐木田。単なる聞き間違いかと思いきやそうでなかったのが周りの反応を様子見するとどうやらそうではなく、本当に名前呼びされたらしい。
「遅いって、まだホームルーム始まる10分前だって!?」
フニュン!
「な!?」
「え?」
何!!!!!!!!
急に片腕を抱きながらまるで恋人同士かのようにして抱きついてくる宇佐木田さんは俺だけじゃなく一部の奴らはどういう事?という反応や驚愕の悲鳴をあげるものもおり最早普通の朝を迎えて安心していた自分が馬鹿に思えてしまった。
「え、えーと宇佐…コホン!兎川お前いったい何しているんだ?」
「もうつれないな〜昨日あなたから告白してくれたのに学園でもちゃんとした恋人関係になろうって言ってくれたのあなただったでしょ?だから私はこうやって遠慮なくあなたに抱きついてるの。」
なんだと!!!!!
やばい周りの視線が物凄い圧で俺の事を殺そうとしてくるのがひしひしと伝わる。……え?ちょっと待てまさか!
「………」
「えへへ、そうだよコレが私の考えた復讐。どうそうとうくるでしょう?今まで告白してきた彼等の中から唯一あなただけを選んでこうやって恋人関係になっているのはあなたにとってそれなりの背徳感を感じているんじゃないかしら?」
当たり前だろうが!そもそもお前との繋がりせいがないのが1番のメリットだったはずが、無理矢理美森姉と同じ様な手口で恋人疑惑を学園で仕向けるなんて…
「お前相当性格が歪んでるな。」
ぎゅ〜〜
「!?」
背中につねられる痛みが発生した一星は川兎の笑った笑顔の裏腹の笑顔で何か言った?という訴えを感知しそれ以上何も言わずにいた。
「……ああ〜コレは神楽坂君とんでもない展開を起こしちゃったね。この後色々と大変だと思うな…?」
一星を抱き止めていた川兎の視線が火花の方に向けられているのに気付いた川兎は何で睨まられているのだろうと首を傾げながら川兎に視線で応対しようとしたのだが即座に晒されてしまいいったいなんなんだろう疑問に浮かべ火花は特に気にせずそのままスルーした。
「おいおいやってくれたな一星のやつ、まさかアイツとそういう関係になっていたとは…他の奴等を差し置いて兎川を選ぶとはお前相当な命知らずだな。」
「お前内心憐れみのある言い方をしながらナレーションみたいに言うのやめてくれるか!と言うよりもそんなわけないのによく言えたな今の!」
蒼脊はそのまま両手を上にあげながらやれやれというように自分の席へと座っていく。
「くっ!」
だがやはり周りからの嫉妬という厄介な視線が一星へ向けられ一星自信覚悟をした顔である事を皆んなに話す。
「皆んなコレは嘘だ騙されないでくれ!俺と兎川はそう言った関係じゃない。何故なら俺には3年生の蕾先輩とまだ付き合っているからなんだ!」
「そういえばそうだったな。」
「確かにそれはおかしな話しだよな。」
よしちょっと違う展開というか変な方向性にいったが、後で美森姉には何か奢るとしてひとまずここは、疑惑の疑惑を晴らす為に一芝居うつしかない。ここでの宇佐木田の信用生はほとんど告白してきた奴等を振ったという明確な証拠が現れてるから信用してされるのは寧ろこっち…
「え?それってどういう事なの一星君。」
「あ…」
突如何故か俺の教室に入ってくる美森姉。
「な、何で美森…蕾先輩がここに?」
「ええ、ちょっと一星君に話が合ってきたのだけれど…後火花ちゃんにも…」
俺と野谷山に話し?……あ、まさか例の件についてか…そう言えば美森姉と野谷山って小橋が抱えていた案件がどうなったのかまだ聞いていなかったな。でもわざわざこの教室に来なくても…いやでも寧ろ好都合だ。美森姉とはまだ恋人疑惑を結託している中だ。確かにもうこの関係はこれまでという話もあったが、この空気を読み取って上手く話しをこちらに流せばもう一度続行できるはず…
「そ、そうですか。実は俺も蕾先輩に話があって…」
俺は上手くこの空気の流れを読んでくれと合図みたいなのを美森姉に送る。しかし何故か美森姉は俺の合図に気付いてはくれているみたいだが何処か歯に着せぬといった表情を浮かべ視線をずらし後ろのもう1人が代わりに思わぬ言い返しが返ってくる。
「あれ?琵心ってもう神楽坂君と別れたんじゃなかったんだっけ?何か年下の彼氏とはやっぱり馬が合わないとか何とか言って…」
そんな事をいっていたのか美森姉…もう少し違った言い方をしての別れた理由を言ってほしかった。
「何かこの感じだと彼まだあなたに未練があるみたいな言い方をしていたけど、やっぱりまだ付き合ってるんじゃないの琵心。」
「えーと、それはその…」
まずいな…ここでの回答は確かに俺が美森姉に未練がましく付き纏う人間という解釈にもなり得たりするが、美森姉自信…自分が俺の事を年下で上手くいかないから別れたというていでどうやら上学年である部活友達の京子先輩には話しているらしい…てか何で京子先輩までこのクラスに来たのかそれも謎だ。
「おい神楽坂まさかお前二股とかしてないよな?学園唯一の5人の中の内琵心先輩からの告白で付き合っているならまだしも、それを学園アイドルの菟ちゃんとも付き合ってるって…お前本当に調子のりすぎだぞ。今ここではっきりしなかったら地獄を見る事は確定だな。」
なんだそのあからさまな死の宣告は!この2人に対してどこまでの価値があるというんだ!いや見た目は可愛い可愛いし彼女にするなら確かに候補をあげてもいいぐらいだ。だがな…
「うん?どうかしたの神楽坂君?」
「………はぁ〜」
2人の顔を交互に見た俺はどう考えても中身がな〜と思ってしまい、やはり俺の事を妬むコイツらは中身じゃなく見た目だけで物事の判断をしてしまっているとしか言いようがない。既にこの2人からは嫌がらせと言うほどの復讐を受けているから見た目はよくても中身のせいで女性に対する意識がないと言うわけではないが半分阻害され恋愛に関しては恐らく程遠く感じてしまっているのだろう。
「分かった。ならここでハッキリさせよう。」
「お?一星のやつまさかどちらかを決めるのか?それともやっぱり二股に…」
「蒼脊〜お前は色んなチャチャを入れすぎてるから後で奢り確定な。」
「え!何でだよ!寧ろお前にとっていい言葉だと思うぞ!」
どこがだよ!自分の発言にもっと自覚持てよ。煽ってんのが何で分からないんだ。
「神楽坂君。」
「野谷山…」
もしかして野谷山心配して声をかけてくれたのか?そういえば前の喫茶店で余計な事を言ってからまだあまり話せてなかったけど、もう許してくれてるのか?
「骨は拾ってあげるから。大人しく死んだ方がいいと思うよ。神楽坂君にとってやっぱり私達女の子からしたら敵だと思うから。」
「………え?」
何それ!どういう事!励ましの言葉なのかそれは…寧ろ断定された万死に値する発言じゃないかそれ…
「くそ…ならもう言わせてもらうが俺が付き合ってるのは蕾…」
「うんちゃんと付き合ったままよ。私達そもそも別れてないから皆んなもし私に期待を持ってるというなら諦めて頂戴ね。因みに二股でもいいからという条件で私は彼と付き合うのを認めているから、これからどう彼の気持ちが動くは一星君にかかっているの。だから彼は何も悪くないから皆んなは何も気にする事はないわよ。」
ギロ!
ギロ!
ギロ!
あ……これ死んじゃうやつだ。
ダ!
「おい逃げたぞ!ホームルームが始まる前に捕まえろ!」
おおおお!
ふ、ふざけるなよ!後で覚えてろよ美森姉!
「ああ〜なんともまぁ朝からバタつきようがあって大変だなアイツも……」
てかさっきも思ったがあの2人どういった進展であんな関係になったんだ?まぁ見た限り一星は兎川が宇佐木田だって事に気付いたとは思うが、何でまたタチの悪いやり方で一星を困らしてるのかわけが分からん。しかし…こんなに早く2人も正体が見破られたって事は残りの3人も追々分かってようやく5人の幼馴染の集結が本当のアイツらと会う事になるのも時間の問題って事か…まぁ多分何も問題は無いとは思うが、それでアイツがどんな選択に持っていくのか色々と楽しみではあるな。いや楽しみというよりかは恐らくどう言った気持ちでアイツらと対面するのか分からなくなるって言った方が正しいかもしれんな。
「あちゃ〜もしかして私別の空気差で一星君の事困らしちゃったかしら。」
「琵心あなた今の言い方本当にそうなの?二股を許可したって、別にあの子に執着する必要はあったの?」
うーんまぁ正直な所もう疑惑の彼氏彼女は終わってた話しだったのだけれど、何故かこのクラスに入った途端空気を読んだ筈が的を外してしまったのよね。京子ちゃんがそう言う風に疑問に思うのも無理ないわ。
「えーと、まぁ一応ね。でも私は彼の気持ちに尊重したいから一星君がもし別れたいって言ってきたらそうするわ。」
「それなんだか都合の良い女みたいで私はすきじゃないな。琵心はもっと自分を大切にするべきだと思う。いくら彼に恩があるからといって本当の付き合う付き合わないは別問題だと私は思うの。だから友人として忠告してあげる。早い内に神楽坂君との関係を正した方がいい。」
「うんありがとう。」
ああ私なんてしょうもない事を友人に心配させているのかしら。これじゃあ色々と中途半端すぎて失格よね。でもまだもう少しだけ京子ちゃんには我慢してほしい。私がちゃんと打ち明けられるその日までは…
「琵心さんこのクラスに結局何の様だったんですか?あんな大言壮語を言いに来ただけじゃないんですよね?」
そんな先の事を考えている最中まさかの菟ちゃんに声をかけられる。
「ええ、まぁ用があったのよ。でもまた今度にするわ今はそういう状況でもないみたいだし、寧ろここに来た事で余計な混乱を招いてしまったらしいからね。」
「そうですね。でもこれだけはハッキリ言っておきますね。例え二股を許可したとしても彼の1番は私ですから嘘つきな蕾先輩。」
「!?あなたもしかして…」




