コレからの四月一日美森の生活
お茶菓子を用意されて待ってる間。
謎の機械音みたいな音がし何処から音が鳴っているのか辺りを見渡す。
するとその音が発生している場所が…先程気にしていた美森姉の首元に装着されているチョーカーだった。
ピピピピ。
「え?な、何?何?」
「ふむ…タイムリミットだな。神楽坂君。彼女の体を支えたまえ。」
「え?何で?」
「いいから早く時間はもうないぞ。」
そう言われて、俺は美森姉の体を支える為に近くによりかかる。
するとその瞬間…
ガク!
「へ?」
「うわっと!」
美森姉が急に足元を崩したかのようにして俺に項垂れる様にもたれかかってくる。
「……か、体が…というよりも足に力が入らない。さっきまでは全体力を入れなくても立てたのに…どうして…」
「美森姉。それはおかしくないか?立つのには足の筋力が必要だ。それで力を入れずに立つというのは違う意味で筋肉のバランスがおかしくなる。……別の生き物になってしまってるみたいな発言だぞ。」
「で、でも本当にそうなのよ。足に何も力を入れずに立つ事ができたのよ。まるで誰かにヒョイっと立たせてくれるみたいに。」
「………」
俺は再び美森姉の首元につけている機械型のチョーカーを気にし…再確認する。
「……もしかして、コレが原因なんじゃないか?」
「え?こ、コレ?」
「この機械で美森姉を立たせてくれている事に関係しているとかじゃないのか?じゃないとさっきみたいな電池切れみたいな音をして美森姉が、ガックリと倒れ込むみたいな事になるのって、どう考えても関係性があるとしかいいようがないはずだ。」
「……そう言えば。私今まで何かしらのタグか番号が分かるみたいな形での印だって思ってたわ。でもまさか本当に…」
「どうなんですか?さっき言っていた5分…アレは決まってる時間で立つ事ができる品物なんじゃないんですか?」
「………ああその通りだよ。さすがは察し能力ではやはり超人人間になら理解できて当然というべきかな。……コレは密かに開発を進ませている品物だ。今はまだ開発途中でしかないが…それでもちゃんと5分程度なら脳に送るシンパシーによって足の筋力を活性化させる事ができる。……試作段階だが、いずれは長時間使える形で足の不自由な人達の為に作れればという医者と研究員のたわものでの成果を今必死になってやっけになっている。……」
「いやそんなまだ試作段階なものを渡されても。万が一何か起こったら責任が問われるんじゃないんですか?」
「ああ君の言い分も確かに一理ある。正直な所完璧になって渡したいというのが本音だ。しかしある子に渡しても問題がないと言われてね。それで今回特別に私達研究員と医者からのプレゼントだと思ってほしい。たった5分でしか立つ事ができないと言うのもあるかと思うが…その5分がどうか貴重な意味での5分という事を何卒理解してほしい。」
医者が頭を下げてお願いされるなんて事今まであるだろうか?
いや元研究員だからと言う意味も含めての謝罪というのもあるかもしれない。
けれどこの人の含みのある言葉はなにかこう重みみたいなのを感じとれた。
「………バッテリー的にはどれぐらい持つんですか?さっき5分までがタイムリミットと言ってはいましたが、最高どれぐらいまでなら稼働できるんでしょうか?」
「基本的には5分が1番安定性として限る。しかしどうしてもと言う場合は15分までにとどめてほしい。それ以上での時間での酷使は体の神経に関わる事となる。……言ってしまえば障害を持つ事となってしまうから。最大でも15分までと記憶に留めておいてほしい。」
「障害になるって…なら尚更そんな装置つけない方がいいんじゃないんですか?」
「あくまでもコレは補填措置にすぎない。完璧とは言わなかったが…それでも日常生活に支障がない様にしてあげられる事はできる。色々と注意はしていたがそれでも出場してしまったという事での意味でそれを使ってくれればという些細な気持ちだ。」
「つまり試験仕様って事ですか?」
「援助をしてあげる分には色々とお互いメリットあり気の方がいいだろう。コチラでは散々注意したんだ。にもかかわらず競技にでた。コレは私の責任というだけでもあるまい。」
「……そうですね。ごもっともな話しです。何も言い返せないのが現状ではあります。…先程の試験仕様って言う言葉はコチラの落ち度でした。どうもすみません。」
正直な所謝るぎりなんてないんだけどな。
医者の…それも元研究員からの言葉なんて俺に関してはどうでもいい。
コレからどうなるかの形を俺がちゃんと見極めて美森姉達を守るんだ。
今はその力がないというだけで…致し方なく従ってるだけにすぎない。
コレを他の奴等が聞いたらどう思うんだろうな。
傲慢とでも言われるんだろうか。
「……いや私も大人気がなかった。学生は学生の内にやりたい事をやる。それが普通なんだ。君達は何も間違っちゃいない。……それと親御さんに連絡はしたんだが連絡がつかなかったんだが…」
「ああ、大丈夫です。私の親共働きしてるんでその辺に関しては問題ありません。弟にもそのままいつも通りにやってくれたらいいよって言ってます。」
「そうかい。それならば仕方がないが……なるべく早く親御さんにもコチラへ来てくれるように言ってくれるかな。色々と詰め込んだ話もあるからね。」
「はい。分かりました。」
「さてと…本来ならば色々と聞きたい事は山積みなんなだが……時間が押してきてね。次の患者さんが待ってるんだ。また次回の時に話をしよう。」
「分かりました。」
「はい。」
俺たちはそのまま診察室から出ていき色々と詰め込んだ話しはあるはずだったんだが…ひとまずという事で今日の話は終わりとなる。
ガラガラ…
「美森姉。何で今まで黙っていたんだ。辛かったならあの時言ってくれれば良かったのに…なんで病院を脱走なんかしたんだ。」
俺は美森姉の車椅子を押しながら先程話していた続きを話す。
「う〜ん。まぁそうね。正直な所不安にさせたくはなかったかな。だって、私が辛い姿を見たら一星私からずっと目を離さないでしょう。」
「当たり前だろ。そうしたのには俺の責任だってあるんだ。先生にはまだ聞かないといけない事がありはしたけれど…正直あれ以上の追求ができたかどうか…」
「ふふ。でもこうやって一星に車椅子を押してもらうのもなんだか悪くないわね。」
「言ってる場合かよ。コレからの日常生活が困難になるんだぞ。そもそも推薦をもらったからって、そのまま学校を休められるわけじゃないだろう。」
「……そうよね〜まだ文化祭だって残ってるものね。色々とまだ学園にいかないといけない理由が沢山あるわ。」
「………なぁ俺が言うのもあれなんだが、山茶花達に言って美森姉の事を…っ!」
その続きを言わせまいとするのか…美森姉はわざわざ俺の口元に指を当てて黙らせる。
「気持ちはありがたいんだけどけね。あなた達にはあなた達の時間があるはずよ。私のために使ってほしくはないわ。……それにまだあなたには3人の幼馴染の病についてまだ知らないはずよ。それが終わってからでも遅くはないわ。」
「………美森姉。」
本当自分の事は後回しにして他人を気に掛けるなんて…とてもじゃないが他の奴等にはできない事だろうな。
「……じゃあ美森姉コレだけは約束してほしい。」
「え?何かしら?」
「昼休み…昼飯の時は絶対に俺達と飯を食べる。それぐらいの我儘はいいだろう。」
「………ぷふ。あははは。本当あなたときたら笑わせてくれるわね。でもそれぐらいなら別に構わないわよ。どうしてもと言うのなら一緒に食べてあげるわ。」
「上から目線かよ。俺はそこまで懇願してまで一緒に食べたいとは言ってないけどな。」
「ああ〜そう言う事言っちゃうのかしら。コレでも数多の男の子との食事を断ってきた女なのよ。あなたはもっと誇らしげにした方がいいと思うわよ。」
「それはどう言う意味での誇らしげなんだよ。」
「勿論私が1番美人だって言う事よ。」
堂々と言っちゃったよ。
まぁでも確かに美人というのは否定できないよな。
「美森姉。前から思っていたんだが、あまりそう言った自信ありげな発言は控えた方がいいぞ。後でとばっちりがきても仕方がないんだからな。」
「ふふ、それって認めちゃったという事でいいのかしらね。やっぱりモテる才能は辛いわね。」
「へいへいそうですね。俺と違って美森姉はモテモテですよ。」
(あなただって、モテてるじゃないのよ。何でこんな見窄らしい奴なのに色んな子から人気が出てるのか訳がわからないわ。幼馴染にあしからずだけども…)
「はぁ〜世の中って、ある意味じゃ不公平よね。」
「うん?何か言ったか?」
「何でもないわよ。……あ!コレだけはハッキリと言わなきゃならなかったわ。」
そう言って後ろ向きになって俺の方へ指をビシっとさしてくる。
「学園で私が車椅子姿になって、周りの人の視線が変な形で見られてても絶対に気遣いなんかしないでよね。寧ろそんな事されたら幼馴染の縁切ってやるんだから。」
「……しないよ。寧ろ俺にそんな気なんて使えないって……てか俺じゃなくても山茶花達は絶対気にしないだろう。」
「あはは、それはそうかもしれないわね。……はぁ〜後少しで卒業か…なんだか早い気がするわね。」
そう言いながら青く広がる空を見上げて何処か寂し気な顔をする美森。
それを一星は心の中でこう思った。
美森姉にコレ以上寂しい思いはさせたくない。
絶対いい思い出を残して卒業してもらうんだ。
……それには早いとこ残りの3人の復讐が終わらせられるように努力しなきゃだが……まだ後2人別で残っている。
それにどう対応できるかだな。




