長﨑美々は天邪鬼?
100メートルリレーが始まる少し前
「いたっ!」
俺は美森姉に自分の血と美森姉の血の入った血清を打ち次の大会に向けての抑制する為の…所謂痛み止めみたいなのを打った。
「よし。コレでどんどんと体に馴染んでいって、次もちゃんと走れるようになるはずだ。」
「……ふふ。」
「どうした?」
「いや何でも…ただこの前まで話していたのがなんだったのかなって思ってね。あれだけあなたにムカついて、尚且つ誰かに頼る気なんてなかったのに…結局こうなっちゃったものね。我ながら情け無いったらありゃあしないわ。」
「何を今更…大体美森姉が弱い心を持ってる事ぐらいお見通しだっての…その為に俺がいるんだろう。」
「いやだ。まるで私の従者みたいな言い方ね。」
もしくは彼氏面とでも言えばいいかもしれないけれど…さすがにそれを言ったら今の関係性がまたおかしくなりそうになるから敢えて言わない方がいいわね。
「そうか?寧ろ彼氏彼女みたいな感じじゃないか?」
「な!?」
そう言われて美森は赤面しながら一星が血清を打った場所の足元の部分にガーゼを推し当てる姿を見て自分が思っていた事をさらっと言ってしまう一星の顔を見続ける事ができずにいた。
「お、おい。あまり動くなって…今血を止めてるんだから…我慢してくれって…」
「あ、あなたね。いくらなんでもそんな冗談なんて言うのはよくないわよ。」
「は?いつも言っている張本人が何を言ってるんだか…それで悪戯されているコッチの方が1番良くないって前から散々言ってただろう。おかげで風紀委員には目をつけられるし…おかげで俺の学園生活は踏んだり蹴ったりだよ。っていた!足!足!」
一星が不満をもたらす言い方をして、それが気に食わなかったのか美森が片方の足で一星の顔をズカズカと軽く蹴る。
「ちょ!何してんだよ。」
「それはコッチの台詞よ。いつまでも乙女の足を触ってるつもり!もういいでしょう。いい加減粘着テープか何か貼って固定しなさいよ。」
「……ああ確かに。」
「確かにって!……あなたもしかして、私の足を触る理由としてそんな姑息な手段を…」
「そんなわけあるかよ。誰が走った後の足なんて触りたい…った!」
「臭くないわよ!乙女の足に向かって何言ってるのよ!」
誰も言ってないのに普通に蹴ってくるのはマジで勘弁してほしい。
というか蹴る度にうっすらとパンツが見えるからあんまし動かないでほしいんだよな。
「あ!ちょっと避けないでよ!」
「無茶言うな。無断で喰らい続ける理由が俺にはないんだよ。そういうのはそういった性癖のある奴の前にだけやってくれ。」
「じゃあ蒼脊にしろとでも言うわけ!私嫌よアイツにこんな事するなんて…」
「……いや別に蒼脊にしろとか言ってないんだが…」
てかアイツそう言った性癖があるのか……数年会わない内にそういった個性がついてしまったのには驚き隠せないな。
てか本当にそうなのかも怪しい所ではある。
「ふん。どうだか…」
「ま、まぁひとまず機嫌を直してくれって……あ、そう言えば聞きたかった事があるんだが…さっきの800メートルリレー…何か普通の800メートルリレーと違って、パフォーマンスか何かによって得点がつくらしいって聞いたんだが…見ていた限りほとんどそういったのをしてないんだけど…あれってどう言う事なんだ?」
「は?パフォーマンス?何の話をしているの?」
「え?いやだから走る時に何かしらアクションを起こして相手にバトンを渡す競技なんだろ?」
「え?そんなのあるわけ無いじゃない。何よそんなデタラメをほざいた奴。そんなのがあったなら始まる前に色々と説明が出されているはずよ。」
「……た、確かに。」
え?じゃあ何か?あのパフォーマンスというのは単なる嘘だと言う事か?
でも何でそんな嘘を?
あの3人がそんなことで俺を騙すとでも思えないし何かしらの別の競技と間違えて言っていたとかそう言う事なのか?
「因みにそれ言ったのって誰なの?」
「え?それは…」
「ああ〜いたいた神楽坂君ここにいたんだ。」
そんな話をしてる最中。東郷が俺を探していたのか声をかけてくる。
「東郷。」
「神楽坂君ここで何してるの?」
「いや蕾先輩の足の管理を…」
「ふーん。あれだけ走れたのに結局はケアしてもらうんですね。なんだがズルな気もするって感じがするな。」
いや何のズルなんだよ。
と言うよりもここへ何しにきたんだ。
「東郷何か俺にようがあったのか?」
「あ、そうそう。さっき美々ちゃんが神楽坂君を探していたみたいだから呼びにきたんだ。……もしかしてお邪魔でしたか?」
「お邪魔じゃないわよ。色々と彼に至れり尽くせりしてもらったからコレ以上のないケアをしてもらったわ連れて行ってもいいわよ。」
「そうですか。」
「……蕾先輩。後でちゃんと戻ってくるんで試合が始まるまでじっとしておいてくださいよ。」
「私は子どもじゃないわよいいからいったいった。」
少し心配はありつつも時間が来るまで待ってもらうようにいいつける一星。
そしてその場を後にして東郷について行って長﨑のところへと向かう。
「……確かにこのままだとまだ走れはしないわね。はあ~やれやれというかなんというか…まあこういった形も悪くないわね。」
三森はニヤニヤとしながら今の関係性も悪くないなと思いつつちょっとした先の未来を浮かぶのだった。
……美々がいる待合室
「悪い待たせたな。俺に何かようか?」
「……あなたに聞きたい事があります。先程の800メートルリレーで蕾先輩の足は大丈夫なのですか?」
「???ああ。今のとこは問題はない。でも何でそんなことを俺に聞いてくるんだ?」
「あなたが蕾先輩の事で詳しいからですよ。悔しいですが、今の私では蕾先輩のアドレナリン養分が足りないみたいなので蕾先輩の情報が著しく低下しています。」
いやそんな常識範疇みたいなことを言われてもな。
お前にしか分からないのをあたかもしってるみたいに話されても困るやつだな。
「そ、そうか。そっちの問題に関してはひとまずどうしようもない部分があるから俺からとやかく言える立場ではないな。」
「はい?別に理解してほしいと思っていませんよ。図に乗るのも大概にしてください。」
コイツ…人がせっかく下手に出てやってるというのに何でこうも露骨に目障り極まりない話になってるんだ。
訳が分からない。
「それはすまなかったな。ただの言葉のあやだきにしないでくれ。」
「別に気にはしていませんがね。それよりもあなたは私の味方ですか?それとも蕾先輩の味方ですか?」
「……どういうことだ?」
「今回の大会で蕾先輩が最後というのは百も承知。ですがそれとは違って、個人で競技の場合は話が別です。私はそもそも蕾先輩を超えるためにここまで頑張ってきました。しかし蕾先輩は自分がでられないから代わりに出てくれ…そしてそれがあなたという管理者が現れた。正直解せませんでした。」
まあ分かってはいたことではあるがここまで直球に言われるとさすがに来るものがあるな。
「しかし少しずつではありますが、あなたの見解が変わりました。これまで不快感しかなかったはずの気持ちが徐々に薄れてきているんです。」
「ん?待て待て、さっきまで俺に理解されたくないってそう言ってなかったか?」
「はいそうですよ。別にあなたにどう理解されようが別にどうとも思ってはいません。」
「じゃあ今の会話はいったいなんなんだ。」
「いいから黙って聞いてください。まだ話は途中なんです。」
「わ、悪い。」
「こほん!つまり私はあなたに少しばかり好意をもってしまったという話をしているんです。」
いや今の会話に流れでそうはならんだろう。
どうやったら俺に関して好意を持つんだ。
「ん?それはあれか、ちょっとは人間らしい形で俺を見てくれたという認識でいいのか?」
「いやそこまで鬼畜な言い方はしませんが…少なくとも今まで風紀委員としてあなたを見ていたという認識を改めて見直しただけです。それ以上でも以下でもありませんので勘違いだけはしていただかないようお願いいたします。」
「あ、ああ。わ、わかった?」
「何故疑問文なんですか。ちゃんとハッキリわかってくれなければ困ります。」
「と言われてな。要するに山崎は俺の事を普通の人間扱いでみてくれているという感じで言ってるんだろ?だから何をそんなにどもった言い方をしているんだろうなと思って……」
「ど、どもってなんかいませんよ!あなたの勘違いじゃないんですか。」
まあ俺の主観だからなんとも言えないしな。
勝手なきめ付けはよくないか。
「……ところで長﨑。結局なんの話がしたいんだ?なんかいろいろと話がごった返してるきがするんだが…」
「いえだから。あなたはどっちの味方なのかと聞いてるんですよ。」
「いや俺は別にどっちの味方でもないんだが…まあ強いて言うならどっちつかずでの許容範囲でやってる形とかかな。」
「ああもう!どうしてそうまどろっこしいんですか。もっとはっきりと言えばいいじゃないですか!俺は蕾先輩の味方だって…じゃなきゃこの前みたいは即決判断なんかできやしないじゃないですか。」
「……」
あれ?なんだ。
この状況どこかで見た事ある気がするぞ。
なんというか、わざわざ自分の言葉で相手に伝えるのが苦手でなおかつ自分に素直にならない定義…そう敢えて言うならば
「な、なんですか。そんなにジロジロと見て…言いたい事があるならば言えばいいじゃないですか!」
「いやなんというか長﨑って…」
「全く素直じゃないわよね。天邪鬼なのかしらね美々ちゃんって。」




