兎川の業界による接点
問い詰められそうな眼差しが俺に何かを訴えかけているのか、彼女の視線には逆らえられないというよく分からない本能が頭の中に擦り付き俺は彼女の質問に意図に答えるほかなくなってしまい、そのまま彼女がいう質問に答えていく。
「まぁまぁそう固くならないでください。萌はね、うさちゃんの事ずっと前から仲良しなの、それが急に彼氏ができたって言われてちょっと心の病気にかかりそうなんだ。」
いやしらねぇよ。単なるショックで立ち直れないみたいな言い方をするな。俺に何かしらの非があるならまだしもいきなり初対面相手に兎川をどうにかしてほしいなんて頼み事普通しないだろうが…
「だから、君にはうさちゃんと別れてもらってほしいというのが私の頼み事になるんだ。」
「色々とはしょっての説明してなんだが、俺に兎川をどうするなんて事はできないぞ。なにせ、彼氏だからな…」
ダン!
ざわざわざわざわ
彼女が机を思いっきり叩いたのと同時に待合室に残っていた人達は何事かとざわつきながらこちらへと様子を伺い巻き込まれない様にし距離をとっていく。
そして彼女が映し出す目つきはやはりあの圧がかかった違和感みたいなのが勘違いではなく、その本性が現れたかの様にしこちらへと脅す様に顔を近づけ耳元へとこう囁く。
「君が彼氏だろうがなんだろうが、関係ないんだよ。君がいるから私達のユニットとしての欠落が生じて危ないって言ってるんだよ。この言ってる意味がわかるよね?」
ああ物凄くな…言ってる事に関しては謎だがそのこもった圧の言葉で俺は邪魔な存在だから今すぐ兎川から離れろとそういいたいんだろ。
「…………」
「へぇ〜君変わってるねこんな風に脅しにかかる接近でまるでビクともしないなんて…怖くないの?」
普通だったら怖いんだろうな。けど残念だが、その程度ではビビらんさ、既にこの体には恐怖なんて物は存在しない、恐れるのは人の皮を被った化け物だ。恐れ多くも人は脅されたら精神的にコイツはやばいと思い込んでしまう。ならその発想を逆に持ち込めばいい、コイツの脅す事に耳を傾けなければそれほど怖いという感情は抱かない…こんなのただの精神論と言えば聞こえはいいが、実際に人の考えてる事は思い込みによって恐怖が生まれ恐怖を堪えきるというのが主な施実だ。だから彼女の言う事はただの戯言に反する言い方ではあるが、俺にはそれが聞かないだけ…何故かと言えば…
「よくある脅し文句だな。けど、その程度でビクつくなら俺は兎川の彼氏候補に立候補する気はない。生半可な気持ちでやっているなら即座に断っているぞ。」
「………ふ〜ん、意外とタフネスなんだね。そうかそうか成る程ね……」
何だ?何か勝手に納得されたが、意味がわからん。
「ぐらぁ!」
バゴン!
「ふぇ!!」
「え?」
何故か萌という女の子はマネージャーから思いっきり丸めた雑誌で頭を叩かれ物凄く痛そうにしながらマネージャーの方へ睨みつける。
「乙女の大事な頭になにするの!?」
「またお前は勝手な事を…こっちの話が終わるまでは待ってろと言っていたのに聞いてなかったのか?」
「だって暇だったんだもん!」
「暇だからと言ってやっていいことと悪い事があるだろうが!」
何だか勝手に喧嘩をしはじめたぞどう言う事だ?
「ああ〜神楽坂君ごめんね。萌ちゃんの勝手な遊びに付き合わされてびっくりしたでしょう。」
「え?あれ遊びだったのか?」
分からなかった。目がガチすぎるのと、あまりにも場の空気を乱すからてっきり素なんだと自覚してしまった。
「うん。あの子物凄い演劇派だから、役に溶け込むとやり終えるまでそれを貫き通しちゃうからね。周りに妙な雰囲気で掻き乱すのがあの子の悪い所でもあり良いところでもあるんだけど……まぁ性格上その演技がガチすぎて、友人思いの人達は萌ちゃんの重みに耐えられずその場を去ったって話はチラホラ聞いたり聞かなかったり…」
友達思いか……それは多分間違ってはいないんだろうな。重いと言えば重いかもしれないが、彼女の重みはきっともう2度起こさない為の重みいや凄みなんだと俺は思う。内心もしかしたら兎川のストーカーかもしれないとそう思っていたが、ただの杞憂かもしれなかったって事かもしれないなあの子に関しては…
そんな風に思っていると彼女はこちらへテクテクと歩きだし、まだ説教が終わっていないのか、ぐちぐちと目を瞑りながら話しているマネージャーを無視して俺の両手を握ってくる。
ガシ!
「な!?」
「さっきはどうもごめんね。あんな風に迫っちゃって、でもどうしても確かめたかったって言うのは本当なの、うさちゃんがもしかして逆に騙されていないかどうか心配になっちゃって…だからあんな事を……本当は8割信じていたんだよ。」
嘘をつけ、8割程度の信じ差であんな圧のある質問があるか、お前の8割ってどれぐらいの比率で8割なんだよ。
「……いやまぁもういいんだけど、お前は対象としては外してもいいと今し方思ったから別に何も問題は無かったんだが…」
まぁ、ユニットに話すという事はほとんど無害だと言う事で、兎川は話したというのが見解ではあるんだが…兎川自身どう言うメリットでストーカーを暴露させるのかそれが気になる。
「あ、今更ですけど、自己紹介遅れましたね。萌の名前は月見坂萌っていいます。一応売れっ子アイドル声優で〜す。」
「アイドル声優……そう言えばさっきマネージャーさんからアイドル声優担当マネージャーってきいたんだが、兎川もアイドル声優なのか?」
「ふふ、うさちゃんはね〜ああみえて声優の素質も持ってるんだよ。歌や声に関してはそんじょそこらの声優と比べ物にならないくらいの品があるの!私からしたら他の声優なんて下の下……うう言ってて萌が虚しくなってくる。」
なんて感情表現が激しい子なんだ。自分で言って自分を苦しめている。何て残念な子…
「うん?でも兎川ってアイドルとしての才能があるんだよな?周りと比べてしまうのは些か違うんじゃないのか?」
「違う違うんだよほしっち。」
「ほ、ほしっち……まぁいいが、それで何が違うんだ?」
「確かにうさちゃんは生まれ持った才能でアイドル声優になったかもしれない、でも、うさちゃんはプロデュースをされてから人気上昇にまで上がってのランクにまで達したんだよ。だからうさちゃんが生まれもった才能が発揮したのはその時からだから、前までは普通の可愛い人気者の女の子だったんだよ。」
おいそれは別に才能云々じゃなくて最早見た目だけでのポテンシャルでここまで上がってきたって事じゃないのか?何か比喩するものがあるかもしれないが、兎川の場合ただの見た目だけでスカウトされただけにしか聞こえないな。
「まぁ生まれ持った才能はともかく、兎川に関しては確かに最初は見た目だけでアプローチしたからな。」
「ちょっと!それってどう言ういみですか!初耳なんですけど、あまりにも酷くないですか!」
「ブフ!」
本人を目の前にしてど直球すぎるマネージャーの発言に月見坂は思いっきり吹き出し、目にも当てられない顔をしながら兎川は顔を真っ赤にして頬を膨らませる。
「見た目だけのアプローチにそこから秀でた才能を開花させた歌と声か……」
生まれ持った才能とは言うが兎川は努力なしでここまで来たとは一度も言ってはいなかった。単に聞いていないというものあるが……実際の所兎川はどう言う立場でその地位にまで上り詰めたのか若干ながら気になったりそうでなかったりする。
「あ、神楽坂君後もう1人の子なんだが、あの子に関しては人見知りが激しい子なんだ。君と兎川との関係を話した途端不純極まりないと豪語されてね。それで君には申し訳ないんだが…」
「雫ちゃんとお話しをして納得させてほしいのよ!」
「まぁ諸悪の根源が頼める立場ではないんだがな。」
「マネージャー余計な事言わないでもらえますか!」
「けど、俺その子に嫌われてるなら寧ろ接触しないのが賢明なんじゃ…」
「理屈は確かにそうね…でも神楽坂君私達の目的はあくまでもストーカーの存在を暴く事なの、雫ちゃんが神楽坂君の事を避けている理由は私のせいだってちゃんと分かってはいるけど、それでもあの子にもちゃんと神楽坂君と話して結果を出してほしいのよ。」
「自覚はあったんだな。なら寧ろお前が弁明するべきだと僕は思うんだがな。」
「マネージャーさっきからうさちゃんに対して辛辣〜」
「2人は黙っててもらえるかしら〜今物凄く大事な話しをしているんですけどね〜」
僅かに気に障ったのか少し苛つき始めた兎川は2人の事を睨みつけ口出しするなと訴える。
「けどいきなり1人というのも難儀だぞ。会って何を話せて言うんだ?」
「そうね……人見知りな私でもいきなり知らない男の人から声をかけられてくるのは少しばかり抵抗があるわ。」
あれ?うさちゃんってマネージャーに声かけられてこの業界に入ったんじゃなかったんだっけ?何か矛盾してないかな?
「じゃあ2人で早瀬川に話せばいいじゃないか。少なくとも、早瀬川は兎川に対して不純めいた目でみているわけではないはずだろ。ならアイツとまず話すのはお前から話した方が事が進むんじゃないのか?レコーディングまではまだ時間はあるし少しなら話せる時間もあるしな。」
「そうですね。この後の仕事に支障が出たら私だって雫ちゃんだって困るものね。」
「あれれ〜うさちゃん萌は?萌の事は?」
「よし行こう神楽坂君!ちゃんと私が側で神楽坂君の事応援してるから!」
「いや応援じゃなくて協力してくれよ。」
「ねぇ!萌は!」




