ファミレスでの大修羅場
付き合ってる!!!?
ええええ!!?
目の前にいる幼馴染だけじゃなく、一星達の方を見ていた美咲と島津川も一緒になって驚きながら運んでいた食器類を落としてしまう。
ガシャン!
バリン!
「だ、大丈夫?あなた達。今ものすごい音の皿が割れた音が聞こえたのだけれど…」
「あ、ああ大丈夫大丈夫よ。ほら島津川君さっさっと片付けて片付けて…」
「は、はい。」
2人はそそくさと急いで割れた皿を回収しながら仕事へ戻るフリをしてまたもや聞き耳を立てていた。
「どういう事ですか!美森さん!それってやっぱり抜け駆けですよね。いえそもそもそんなの嘘でしかありません。」
「あら〜どうして嘘なのかしら?」
「だ、だってだって…ふ、2人はまだその…」
「その?」
「は、初体験終わってないんですよね!なら恋人関係ではありません。」
「おいおいおいおい!宇佐木田さん。何も初体験がすまわされてないからって恋人関係が成立するとかそんな話はないからな。」
「いいえ。神楽坂君はまだ分かってないのよ。既成事実を作ることでお互い責任を受け持つ事になるのよ。それはつまり大正としてちゃんと将来の事を考えてから恋人同士になるものなのよ。」
「い、言ってることが色々とすっ飛ばしてる言い方にしか聞こえないんだけど……ねぇ山茶花ちゃん。川兎ちゃんが妙な感じで変な知識が身についてないかな?僕色々と心配してきちゃうよ。」
「はは、ははは…そ、そうかもしれないね。」
本人からの否定の言葉はなく何となくという苦笑いをされつつも肯定してしまう山茶花。
しかし山茶花は既にこの展開が分かっており色々と驚かされてはいるが明らかに穴がある事を理解していた。
「はいはい!それなら私もイックンとお付き合いしたいです!いいですよね!ね!」
「ダメよ海未。今回は私が一星を独占してるんだから。あなた達にその様な権利はないわ。」
「ええ!美森様のケチケチ!むーー!!」
「そんな膨れた顔をしないの。ほら好きな物頼んでいいから。」
「本当ですか!わーい!」
最早子どもをあやす母親だな。
海未完全に美森姉に弄ばれてるぞ。
「……けどおかしな話しですよね。美森さんと一星君って、この間までものすごい嫌悪感のある空気があったと聞かされましたよ。それで仲直りしたからといって、ここまでの発展になるのかな?」
「そうですよ!第1本人の口からお付き合いしているって話は聞いてませんし…美森さん自身の口からしか言わされていません。」
「ふ〜ん。じゃあ一星の口からあなた達に伝わればいいのよね。」
「え?まぁはいそうですけど…」
本人からの口に言わせる為に美森姉は俺の腕を更に込めた力で絡ませる。
その込めた強さには言わないとどうなるか分かってるわよね?と言わんばかりの圧を感じた。
「そ、そうだな。い、一応はそんな形になる。」
「……一応?」
ぎゅーー!
「いやちゃんとした彼氏彼女だぞ。お、お前ら何をそんな疑いのある目でみてんだ。俺と美森姉はちゃんとした付き合いをしているんだ。そんな風に疑われる理由はない。」
美森姉〜後でちゃんと弁解してくれよな。
「………ふーん。そう。」
林音の反応が何か薄い。
もしかして何か勘付かれたか…
「そ、そんな〜〜美森さんと神楽坂君が付き合ってるなんて…」
こっちはこっちで思いっきり信じちゃってるし…宇佐木田さんって物凄い疑り深くない性格してるかとっつきにくいんだよな。
「はぁ〜」
そして、山茶花は大きな溜息をつく。
いや要らないお節介をかけたのはお前なんだけどな。
それでこんな形になったというのを何故溜息を漏らしたのかさっぱり分からないぞ。
「はいはい!私からも1つ聞いていいですか?」
「ええもちろんよ。」
ここで1番元気の良い質問をしてくる海未に美森姉は肯定する。
「2人は勿論キスはしたんですよね?」
海未のその言葉の質問に目が冴えきったのと話し方若干ドライなのを感じた俺は海未が怒ってるのを感じとる。
しかしその事も重要だが、とんでもない質問に俺達はどう答えるべきなのかと俺自身の答えの選択を考えていると…
「えー勿論。き、キスぐらい、してるわよ。」
思いっきり嘘をついた!
しかも動揺している時点でモロバレじゃねぇか。
変に見栄を張るなよ。
「み、美森姉。俺達キスなんてした事ないだろう。何勝手に答えてんだ。」
コッソリと耳打ちをして今話した事についてどう説明するんだよと俺は美森姉に聞くのだが…
「そ、そんなの…い、いつも通りにすれば問題ないわよ。」
「なんだよいつも通りって…大体なんでもかんでも決めてしまうその脳みそどうにかしたらどうなんだ。」
「ちょっとここでいきなり私の事でディスらなくてもいいじゃないのよ。女の子は見栄を張るものなのよ。キスなんて私なら当然しているものなのよ。」
平然と嘘をついて堂々と見栄を張るというのは違くないか?
今言ってる話になんの突拍子もない根も葉もない事だというのを絶対わかっちゃいない。
「お二人とももしかして、喧嘩別れですか?」
「え!それなら早く別れてください。今度は私が神楽坂君と……いえやっぱり何でもありません。」
「じゃあじゃあ私がイックンと付き合っちゃう!」
「ガーン!そ、そんな〜」
そんなほいほいと彼女になります宣言とかしないでくれるかな。
俺はお前達のおもちゃじゃないんだよ。
「別れるわけないでしょう。というより何の為に私がこうやってあなた達を呼んだと思ってるのかしら。」
「……美森ちゃん。悪戯なのも大概にしないとダメだよ。美森ちゃんがそうやって周りを振り回すのは昔からもう慣れっこだけど…あまり要領を超えた場合話がべつになるからね。」
「あら…山茶花にしては珍しく嫉妬深いのね。でも残念だけれど、今回は悪戯じゃなくて、ガチのやつだから。」
「……だとしたら尚更だよ美森ちゃん。私達の気持ちを知っててそんな勝手な事をするなら正直言って幼馴染として度が過ぎてる事だと思うよ。」
「好き嫌いの話にわざわざ幼馴染のあなた達に許可が必要なわけ?恋愛に遅い早いとか関係あるのかしら?」
「………そう。そういう事を言うんだね。この中で絶対に結ばれられない子がいる前でそれを言うんだ。」
「言わなきゃ分からない事だってあるのよ。私達には共通点がある。それを我慢してまで遠慮をする必要があるのかしら?今ある情けを無駄になんて私なら絶対にできないわ。」
「私はわざわざそれをここで自慢すると言う事自体……うんうん…仮にそれはOKだったしてもやり過ぎは駄目な話だと思う。」
「そんなの具体的に何処からどこまでなんて話しはなかったはずよ。それが何?今ここで決めるとでも言うのかしら?」
「あ、あの〜ふ、2人とも少しは落ち着いて…ほら美森さんは単に僕達に見せつける為のただの悪い冗談で集めさせられだけなんだから…」
「え?じゃあ美森さんと神楽坂君は付き合ってないって事なの?」
「……川兎ちゃん。空気読んで空気…」
「そ、そうだったんだ。よかった〜付き合ってなくて…」
ほのぼのしてジュースを飲んでる場合じゃないよ。
今一触即発な感じなんだよ。
あの山茶花ちゃんと美森さんが喧嘩してる姿を目の当たりにしてるんだよ。
何でそう呑気でいられるかな。
「美森様!山茶花ちゃん!喧嘩駄目です!イックンは皆んなの物なんですから。ちゃんと公平にしなきゃ駄目なんです。」
「いや俺は皆んなの物ではなく・」
「星君は黙ってて!」
「一星は黙ってなさい。」
「……は、はい。」
………コッソリ見ていた店員側
「えーーー!何よ何よ何なのよ。もしかしてコレが青春という名の大波乱という修羅場なのかしら。」
「いやあれ止めた方がいいんじゃ…」
「あ〜無理無理。ああなった修羅場は私達第三者にはどうあっても無理だから…とりあえず様子を見てみましょう。」
「……といわれても」
島津川は周りをよく見渡す。
店内にはあの6人以外誰もおらず閑古鳥状態となってた。
「はぁ〜コレだから先に越されたヒロインは…まだ私達4人もいるのよ。もしかして、このまま私の攻略されるのを恐れてそんな事を言ってるんじゃないかしら?」
「攻略とかそんなの関係ないよ。私はもう星君に自分の気持ちを伝えたんだ。それをどう捉えるかどうかは彼次第…私がとやかく言う資格はないよ。」
「そう。ならあの要らないお節介は尚更余計だったわね。そうする事でこっちのタガか外れてしまう事を考えなかったのかしら?」
「おあいにく様だね。私は2人を仲直りするきっかけを作っただけにすぎないよ。それを今やってるゴッコ遊びにも我慢して付き合ってあげてる。…それが何で美森ちゃんは分からないかな〜」
だ、駄目だ。
コレ以上辛気臭い空気になるのはごめんだ。
美森姉は単にコイツらに自慢したいが為に昼ご飯を誘ったのか?
だとしたらただ単に達が悪い事だぞ。
そもそも嘘だって事がバレてるのに…何でこうも一触即発してんだ。
「……いい加減に」
パンパン!
「はいはい。お二人さんそこまでそこまで…勝手に置いてけぼりしてでの喧嘩はやめもらえませんかね。正直言ってせっかくのお昼ご飯が台無しだよもう…」
そう言って店員側から持ってくる昼飯のセットが持って来られる。
「あ、あの〜すみません。他のお客様の迷惑にもなりますので、もう少しお静かにお願い致します。」
若干店員さんの顔に怒りみたいな顔をされ、ガチで俺達はやらかしたんだなと改めて認識しながら静かにするのだが……というか周り人全然いなくないか?
マジでやらかした。




