許してもらう為の条件…それは彼氏彼女対決?
ち、近くねぇか。
てか何で急に手なんか握って…それに何かいい匂いがするし……ん?いい匂い?
まさか…
「ねぇ一星。昔と比べて私ってどうかしら?大人っぽく見えるかしら?あなたの為に色々と努力して頑張ってきたのよ。もしあなたさえよければ…私は…」
「ふん!」
スパン!
俺は片方の手で美森姉の頭にチョップをする。
「いったあああい!!!な、何するのよ!」
「やってくれたな美森姉。こっちから切り出そうとする話しをわざわざそうやって遮る。相変わらず昔の手口は変わらんな。」
「んんん?何の事かしら?」
「惚けても無駄だ。いったい何年幼馴染やってると思ってんだって……コレ毎回何かやってくる幼馴染に言うのも嫌だな。」
「なら言わなきゃいいじゃない。そもそもそれを言われたからって、私が動揺するとは思えないけどね。」
「おいもうあからさまに俺に揶揄っていたという態度すぎて、さっきのすっとぼけた態度の意味がなくなってるぞ。」
「………しまったわね。咄嗟に一星の言葉で鋭いツッコミをしてしまいたい気持ちが強くなってしまって演技がとけちゃったわ。」
「どう言う意味だよそれ……後その意地悪なやり方俺忘れてないからな。」
「あはは。ちゃんと覚えていたんだ。寧ろ忘れていたんじゃないかとばかり思っていたんだけど…そうか、覚えてくれていたんだったならよかった上手くいって…」
「上手くいってって…美森姉まさか昔の仕返しか何かのつもりか?というよりもそんな手口には引っ掛かけようとするほど俺の事甘くみていたのか?」
「う〜ん。一星鈍感な所が多いからね。もしかしたら騙されてくれるんじゃないかなって思ったけど……そもそも昔の手口じゃやっぱり無理があったわね。」
そう言って手足をぐーんと伸ばす美森姉。
妙な演技をしたせいなのか肩が凝ったみたいらしくあちこち体を動かしながら柔軟する。
「さてさて下手な誤魔化しはここら辺にしてそろそろ本題といきましょうか。」
「無理矢理そうさせていたのはそっちなんだけどな。」
「うん私のせいなのは間違いないわね。……ねぇ今からやっぱりあの話は無しって言ったら一星はそれを何も聞かずに納得してくれるかしら。」
「あの話?……ちゃんと主語を言ってくれないわからないな。後内容にもよる。」
「そりゃあそうか。そうだよね。……ちゃんと話さないといけないのはやっぱり幼馴染でもあっても同じなんだね。……一星私の陸上のサポーターでの件…アレはやっぱり無しにしてもらっていいかしら。」
「は?何で急に?……もしかしてあの時喧嘩した事でそう思ったのか?」
「ええ。まぁそれもあるわね。」
「それもある?まだ他に何かあるのか?」
「………一星。あなたにコレ以上の負担を抱えてもらうというのはやっぱり私個人的に看過できないわ。私の今の状況は一星にとっても色々と抱えてもらう事になる。でもそんな事をしてもただ迷惑をかけるだけにすぎない。だから私は…」
は?何を今更そんな事言ってんだよ。
お前達は俺にそんなの関係なしで接してきただろう。
それをなんだ今更…迷惑をかけるからやっぱりやめる?
……自惚れるなよ。
「それではいそうですかと納得するとでも思ってるのかよ。」
「え?何?」
「何でそう美森姉は勝手な事ばかり言って、勝手に決めつけてんだ。正直仲を戻す為にきたつもりだったが…今の美森姉を見て確信した。俺よりもよっぽどタチの悪い面倒くさい奴だって事がな。」
「はあああ!?意味わかないんですけど!私の何処が面倒くさいですって!それに仲を戻す為と考えてるなら今の発言で余計に悪くなったって言う自覚あるわけ!」
「自覚あるからこうやって物言いやってんだよ!歳上だから私が我慢すればいいだけと思ってるなら大間違いだっての!それに1つしか違わないのに何を偉そうにしてんだか……」
「な、なんですって!!!」
あからさまな一星の対応にとうとうキレ出す美森。
お互いだんだんとエスカレートしていきそれぞれ言いたい事を言い合いながら勃発し感情が露になる。
「第一今更そんな事で悩んでどうするんだよ。それで他の誰かが何とかしてくれるとでも思ってるのか。」
「他の誰かに頼らなくたって私1人でどうにかできるわよ。そもそも一星の頼んだのもただの消去法で頼んだわけで別にあなたが必要だったわけじゃないわ。」
「全く本当に……なんでそう素直にならないのか…その辺宇佐木田さんより達の悪い素直差じゃないな。」
「なんでそこで川兎ちゃんが出てくるわけ!今私と話してるのに他の女の子の名前を出すなんて本当最低ね。」
「最低で結構…自分の事で素直になれない美森姉なんかよりかは宇佐木田さんのまだわかりやすい素直じゃない方がよっぽど楽だね。」
「まだ言うのかしら!素直素直って……だったらどうしたら…いいっていうのよ。」
自分が言いたい事をただ曝け出すようにして話していた美森姉はだんだんと口調が和らげ胸に手を当てて服をぎゅっと握りしめながら何かを堪えるかのようにして我慢する。
「私はコレ以上長くは走れない。」
「ああ知っている。」
「そしてそれをあなたどうにかして私を走らせてくれようとしてくれる。その形での感謝はするわ。でもそれはただの自己満足でしかないんじゃないのかしら?」
「自己満足だって?おかしな事言うな。頼んできたのはそっちだろう。なのにそれを自己満足だって?笑わせるのもいい加減にしてほしいね。助けてと言われたら助ける。それが幼馴染であって、俺と美森姉が決めた昔の決意だったじゃないか。ストレンジバスターズ…俺はあの頃のメンバーが大好きだったよ。」
「!?まだ覚えてていたのね。」
「当たり前だろう。当時その頃のお前はガキ大将だって話もしただろう。みんなお前について行くのに必死だったんだからな。」
「あはは、そうだったわね。その中であなたは私の事を絶対に手放さなかったわね。よくよく考えてみればアレも情けだったって事だったのかしら。」
「いい加減にしろよ。…俺は昔も今も情けとか同情とかで幼馴染や美森姉を助けたりしない!ましてや自己満足だからって感覚でもやったりしない…コレは俺のただのケジメなんだ!誰が何と言おうが俺が決める。そして実行する。」
「で、でもあなた最初は嫌な顔をして拒否ろうとしていたじゃないのよ。」
「理由を聞かされれば話は別だ。美森姉達はその辺すっ飛ばしてアレやコレやと無理難題を押し付けてくるから困ったんだ。…それに変なサプライズとかもあったりして…驚かされてばかりだったしな。」
「……そう、そうなのね。確かにそれに関しては謝るわ。寧ろ私達…いいえ私の所為でもあるわけだしね。」
「……たく。」
ペシン!
「あう!」
完全に気を落としていた美森姉に俺はデコに思いっきりデコペンをかます。
当然ながら本人はオデコを抑えながら痛そうにコチラを涙目で睨みつけてくる。
「いったいじゃないのよ!何するわけ!」
「美森姉らしくないからだ。」
「へ?私らしくない?」
「ああ。ああやこうやは言ってはみたものの…やっぱり昔の美森姉の貫禄が無くなってしまったらコッチとしても落ち着かないんだよ。外では猫を被っていて女王様みたいな感じで男子からこべりつくように人気者……そんなの俺の知ってる美森姉じゃないね。」
「………」
若干頬を膨らませつつ顔を赤らめながら一星を睨む。
しかし何処となく心が落ち着く彼女は一星の言葉に信憑性を感じていた。
「……それが何が悪いって言うのかしらね。外では猫を被ってる私が好きなら別にそれでいいと思うのだけれど…」
「本当にそうか?それで周りからは本当の自分を見てもらえなくて美森姉はそれで本当にいいのか?だから俺に頼ってきたんじゃないのか?」
「そ、それは……」
あながち間違ってはいなかったらしく。
美森姉らしらかぬ反応を見せる。
俺は本人の気持ちを知りたかった為そう言った事を言ったわけなのだが…
「……あなたにとってはいつもの私がいいってそう言いたいのよね。」
「……そうだな。」
「はぁ〜色々とああやこうやと言われたけど、本当にムカつくわね。蒼脊の方が1番ムカつくけれどね。」
蒼脊と比較されてもな。
てか何でここで蒼脊の名前が?
「でも私はやっぱり曲げないわよ。自分の女磨きの為にここまで頑張ってきたんだもの…それをいきなりあなたに否定されたからと言ってすぐさまに元の私になるわけじゃないわ。」
「………」
「ふふ、でもあなたが普段の私でいいって言うなら今日はとことん私に付き合ってもらうわよ。それで私があなたの事を許してあげる。」
「……それで美森姉が納得してくれるなら。で?俺は何をすればいいんだ?」
「うーん。正直ここに来ていたと言う事が驚きだったからアレだけど……ふふ、ねぇ?一星。あなたに我慢できるかしら?」
「我慢?大抵の事なら我慢はできるつもりでいるが…内容次第では無理かもな。」
「なら今日一日は私の彼氏になってもらうわ。」
「…………あ?なんだって?」
「だから、私の彼氏になってもらうのよ。それで今日一日私が何をしても我慢したら許してあげる。」
「……いや彼氏つったって…」
「え〜〜できないの〜一星ってこう言った勝負には弱いのよね。ああ〜せっかくのチャンスなのにな〜」
「………」
あからさまに俺の事をディスってでの挑発というのは一目瞭然。
ここで変に腹が立って美森姉の事をいいのけるというのはあまりにも愚策だ。
となれば…
「いいだろう。その挑発乗ってやるよ。俺が美森姉の事を他の男子の奴等よりもドギマギさせてやるから覚悟しておけよ。」




