久々の幼馴染の喧嘩
この子今とんでもない発言をしたぞ。
今の美森姉に自分には勝てない…そう言ったのか…でも何となくだけど信憑性がある言い方だな。
確かに美森姉には秋の大会が来る前に足の故障が起きる場合がある。
しかしそれでもまだ今の段階じゃないはずだ。
となると伸びゆき云々の問題なのか……いや違う…彼女が言ってるのはそう言う事じゃない。
彼女が言ってるのは…
「それは私に対しての当てつけなのかしら?それとも単なる強がりなの?」
「いいえ。私は確信を持ったことしか言ってません。陸上の世界にはいろいろな強者がいます。その中でも蕾先輩は他の競合相手に劣らない人物だと言うことも確信を得ていました。しかし蕾先輩は何かを恐れているようにも見えます。自己不安或いは既に何かを悟っている。とてもじゃないですがその形でのメンタルで試合に出られては困りますね。」
「……何が言いたいのかしら?」
「あはは、こんな事も分からないんですか?やっぱり凄いなは単なる名前だけに過ぎなかったんですね。超天才という人は…」
ガシ!
「ちょ!」
美森姉が後半の胸ぐらを鷲掴みにして強い目で何かを訴えながら話しをする。
「あなたに私の何が分かるというのよ。」
「いいえわかりませんよ。私は蕾先輩じゃないんですから。」
「誰が理屈での話をしろっていったのよ。何でそんな挑発した言い方なのかを聞いてるのよ。私に大会に出るなっていいたいの?」
「そう聞こえているのでしたらそう捉えていただいて問題ありませんよ。……しかしですね。蕾先輩。私はこう思うのですよ。後の事は出来のいい後輩に任せて託せと私はそう思うのです。」
「いつもは馬鹿な真似をしていて私達をコケにしていたっていうのかしら?そんな分かりきった態度ではいそうですかとあなたに託すとでも?」
「いやだな〜そんな事は言ってませんよ。単に今の蕾先輩じゃ今のチームは成り立たないとそう言ってるんですよ。」
そう言って美々はそこからまるで別人格のようにして顔つきが変わり美森姉にこう言う。
「今のあなたではチームのお荷物でしかありません。その腐り切った想いはチーム全員の指揮に下がります。あなたをリーダーにするぐらいなら私が代わりになってあげようといってるんですよ。」
「!?」
そんな冷たい言い方の視線を向けられ美森姉はビクつきながらも美々の視線を外さず真っ直ぐ見る。
「馬鹿にするのもいい加減にしなさいよ。負けた分際で私に意見しないでちょうだい。」
「私が負け惜しみで言ってると思っているのですか?蕾先輩に助言をしてあげてるんですよ。このままじゃ私達陸上部が危ういという事が…それに私は蕾先輩と真っ当な勝負がしたいんです。変に気負っていて勝負しても何も面白くもありません。」
勝負の駆け引きで面白いという観念はどうなんだ。
でもその事に関して人の事言えないんだよな。
「チッああもういいわ。あなたとは話にならない。ひとまず保留よ保留。」
「いいですよ。試合当日までに返事を聞かせてくれれば問題ありません。……ですが、試合する前に私がちゃんとテストをしてあげますからその辺覚悟しておいてくださいね。」
そう言って長崎はそのまま荷物を纏めて帰っていく。……しかしアイツの言ってる事に関しては確かに一理ある。
というよりも今の美森姉はらしくなかった。
あんな挑発美森姉なら軽く流していたはずだ。
よっぽど追い込まれていたという事かもしれないな。
「はぁ〜ムカつくわね。何なのよあの子…ただの馬鹿な子じゃなかったの。」
「そう言う美森姉もわざわざ相手の挑発に乗る必要なかったんじゃないのか?」
一星はそう言いながら他の部活の人達の邪魔にならないようにしながら片付けをしていき美森姉の帰る準備をする。
「どう言う意味?」
「昔の美森姉だったら相手のしてきた挑発に乗るんじゃなくて、何で挑発されたのかを考えて発言をしていた。まぁ昔はかなりボーイッシュでガキ大将な所もあったけれど…相手の挑発には絶対に乗らなかった。つまり今の美森姉の心には穴があるんだよ。」
「何よそれ…昔昔って…結局あなたは昔の私でしか物事で話していないのよ。そして今の私達の事なんて見向きもしない…そりゃあ逃げたくもなるわよね。自分のトラウマである水泳を……あ。」
美森姉は今自分が何を言ったのかを気付きだし…口元に手をあてながらやってしまったと後悔するような顔をする。
「ご、ごめんなさい。私別にそういったつもりで言ったわけじゃ…」
「別にいいよ。逃げたって言うのも間違っちゃいないんだ。自分の得意とした分野のスポーツを放り投げたんだ。そして美森姉達との約束も破った。何を言われても俺はそれを甘んじて受け止めるよ。」
「……何よそれ…そんなのずるいわよ。」
「え?」
「そうやって、自分は被害者ぶってるみたいだけれど…それで自分を自己解決すればいいってわけなの?私達の事何にも考えてくれていないじゃない。」
「そ、そんな事は…だから俺はこうやってお前達に償いを…」
「同情なんてやめてもらえるかしら。いい迷惑よ。」
美森姉はそのまま俺が纏めだした荷物をもちながら苛立ちだって帰る準備をする。
「……悪いんだけど今日やっぱり行けないわ。気分が優れないから…」
「いやおい!さすがにそれはないだろう。美森姉が今後も走れる未来ができるんだぞ。こんなチャンス二度とな…」
「うるさい!」
その発生した声に陸上の部員達は何事かと思いながらほとんどの人達は俺達の方へ振り返る。
「え?何で神楽坂君がここに?」
「本当ね。でも彼がここにいるって話は聞かないわ。どうしてなのかしら。」
「姫羅伎は前科があるからもしかするとその調査で来たのかもね。」
「うわ今更それ言うかな。前の事は反省しているつもりよ。てか振り返らないでもらえるかな。」
合河姫羅伎はあの後蕾先輩に深く謝り自分がしでかした事をお詫びにというわけではないのだが、一生懸命ちゃんとこの部活をやるという事を蕾先輩に告げ…彼女はその反省としてまた一緒に陸上を始める事となった。
「本当だ!先輩がいます!」
「うわ!夢葉ちゃん。何で隣に現れるのよ。」
「たまたまじゃないですか?それよりもは久々に先輩に会えてラッキーですね。」
「いや私はたま〜にみるけれどね。でも違うクラスだから確かに久々に見た気がするかな。」
「じゃあどっちが先に声をかけるか勝負しましょう。」
「何でそうなる。……というよりも何だか空気が重くない?」
「え?そうですか?」
「………コレはもしかして修羅場かしら。」
………三年側
「あの2人何をしているんだ。と言うよりも珍しいな喧嘩か?」
「喧嘩でしょうね。全くあの子は…自分の唯一の理解者をまたしょうもない事で揉めだしたのかしらね。」
「何の事だ?」
「君津家君には関係ない事よ。あの2人の問題だもの…私達が口を出してはいけない…今はね。」
「ああ〜所謂姉弟喧嘩みたいな奴か……ああ?あの2人ってそう言う関係だったけか?」
「ごっこよ。ごっこ遊びみたいなもの…それよりも周りが集中できていないみたいだから君津家君纏めてくれるかしら?」
「男子の方はいいが…女子は無理だぞ。」
「そんなの当たり前でしょう。女子は私の方でやるから問題ないわ。」
「そうかなら言ってくる。」
………全く秋の大会が近いからそれでピリピリしちゃってるのかしらね。
「……なんだよそれ…そんなの美森姉達だって一緒だろうが…俺が偽善者だって?ふざけるなよ。そんなの思った事もねぇよ。」
そんな淡いみたいな気持ちを抱きながら一星はその場を後にし約束した平川先生の所へと向かう。
「……おお遅かったじゃないのって何かあったわけ?四月一日さんはどうしたの?」
「………すみませんちょっと喧嘩してしまいまして…」
「はい?どう言うわけなのよ。何があったの?」
「実は…」
俺は平川先生にことの顛末を伝えなにがあったのかを話す。
「やれやれね〜まさかの吹いた火種がそのままあなたのせいで彼女に飛び火してしまったわけなのね。」
「俺のせいですか?」
「話を聞くとそう捉えても仕方がないと思うんだけど?」
「いやだって!」
「ええ、言ってる事は分かるわよ。でもね彼女は君のそう言った態度が気に食わなかったのよきっと…何が何でも自分に対する卑下する態度が……私から言ってしまえば君は自己犠牲野郎としか思わないけどね。」
電子タバコを吸い込みながら一気に吐き出す平川先生。
そんな興味もないみたいな態度を取られて答えてくれても正直納得はしない。
寧ろ俺のやり方が間違っているとも思えない。
だってコレまでも何も失わずにやってこれたんだ。それを否定されてしまったら俺の今まではなんだったんだって話しになる。
「思い詰めてる所悪いんだけど…そんなどうでもいい話は後にしてさっさと仲直りしてきてちょうだい。今君の血を抜き取ったとしても四月一日さんの血も採取しなければ意味がない。2人の作った血清がないと試すにも試せないんだから…」
「それはわかってはいますけど……正直久々に頭にきたといいますか…1番アイツらの為にやっていた事を…それも自分の事を棚上げにして否定された事が腹立つといいますか…あまり美森姉とは話したくないんです。」
「ああ〜もう。コレだからガキは……おっと素が出そうになったわ。危ない危ない。」
いやモロガキとか言ってたぞ。
それはもうアウトなのでは?
「明日もう一度話し合ってコッチにきなさい。仲直りしようがしまいが関係なくね。」
「いやそんなの…」
「いい!絶対だからね。」
「………俺にどうしろと言うんだ。」




