美森の体はとある血清で予防できる。
この子はいったい何を言ってるのかな?
自分の血を使って血清を作ってほしいだって?
それはつまり自分に侵される考えをリスペクトしようと思っての考えだとは思うけれど…正直言ってそんな事でどうなるかなんて言うのは理解ができない。
……とりあえず話だけは聞いてやるとしよう。
「君の血で血清をかい?……因みにどうしてそんな判断をしたのか聞いてもいいかい?」
「……正直な所自分の事で…相手にそういった効用が効くかどうかは分かりません。でも1つだけ確信めいた事があります。自分の細胞が劣化しなかった。……と言う事だけは言えます。」
「細胞が劣化しなかったのは君の体があの頃からそれ以上酷使していなかったからだと研究証明はされている。……色々と君の事もちゃんと調べてはいるからね。その辺に関してはちゃんと…」
「なら自分と同じ境遇者で俺の血を誰かに使った事はありますか?」
「………」
「ないですよね?となればコチラ側の提案がその通りになる可能性だって…」
「待て待て…あまりにも君の言ってる事に関してはただの憶測でしかない。……言ってる事にも確かに信憑性はある。でもねただの高校生の分際でそんな成り上がった発言はよくないぞ。いくら君の細胞が劣化されていなかったとしてもそれが四月一日ちゃんの足とどう関係するのかが何も分からない。」
「一時的な細胞劣化を抑えられるんじゃないんですかね?試しに今度美森姉を連れて一緒に検査してみてはどうですか?それで俺の言ってる事がただの戯言であればそれまでという話です。」
「……ふふ、面白い。あまりにも戯言にすぎないけれど…君のその可能性という一般高校生の戯言は私自身好きではあるかな。」
「じゃあ。」
「うん。明日四月一日ちゃんを連れてもう一度病院に来てくれるかな?それで一度検査してみよう。まぁ今の私の現在の立場で知られてしまうのは致し方ない事にはなってしまうけれどね。」
そうか…平川先生の事に関して学生側は突然の行方不明で説明されている。
まぁそんなの一部の学生側は信じはしないんだけれどな。
「平川先生はこの病院にずっとおられるんですか?」
「え?う〜ん…そうね。研究が進み次第ではであるけれど…一応暫くはいるわね。」
「そうですか。なら色々とお話しができそうで何よりです。」
「何かに期待している所悪いけど…コチラ側のアドバイスはあまり気にしない方がいいわよ。あなたの幼馴染ちゃん達には今の所治せるという打開策はないんだから…」
「大丈夫です。その辺に関しては任せるつもりなんて毛頭ありません。ただ今回美森姉の事に関してはこの施設の関係者の協力が必要不可欠であったので…不幸中の幸いといいますか…まぁ運が良かったって事になりますね。」
「はぁ〜色々とポジティブな考えで羨ましいわね。」
そう言って平川先生は飲み切ったコーラの空き缶をゴミ箱に投げ捨てる。
「さてと私もそろそろ仕事に戻らなきゃね。自分が呼び止めておいてあれだけど…何かまだ聞きたい事はあるかしら?」
「あ、なら明日の何時頃にここへ来たらいいですか?いきなり訪問したら怪しまれたりするんじゃ…」
「まぁそれもそうね。コッチは死守義務で業務を行っているわけだし……あの場所のベンチで待ち合わせなんてどうかしら?大体17時ぐらいにはあの場所にいると思うし…あなた達が先に来たとしても声をかけられるでしょ?」
「確かにその方が良さそうですね。ならその形にしましょう。」
「他には何もない?大丈夫?」
「うう…そんな風に心配事されると何だか背中が痒くなってきますね。最初の頃やたらと俺達の事に関してどうでもいいというか傍観者みたいな形だったから…」
「私の私情に関してはもう終わったのだからもう大丈夫よ。……まぁとんでもないお土産もできたわけだし…私的にはラッキーだったわね。」
「ラッキー?」
「何でもない何でもない。コッチの話だから気にしないで…」
そう言ってお互い別れの挨拶をして平川先生は病院へ俺は帰宅をする。
「………色々と問題はありけりだけど、ひとまず明日だな。」
そして、今日色々と起こった出来事を頭の中で整理しながら翌日俺は美森姉にあの病院で起こった話しをする。
……学園・昼休学食
「はぁーー!!あの病室に平川先生がいたですって!」
「声が大きいって美森姉。」
美森姉は口を抑えながらやってしまったというような顔をして右左へと交互に警戒しながら確認をする。
「ちょっとどう言う事なの…何であの場所にあの人が…」
そして今度は声を潜めるようにして小さくしながら話しをする。
「色々と分け合って、あの人あそこの研究者でもあるみたいなんだ。だから今回協力をしてもらう形で頼んだんだよ。」
「コッチとしてはだいぶいけすかないんだけれど……何者かは分からないけど、何やら胡散臭匂いがするのよね。しかも研究者だって話しでしょう?尚更協力なんてするとは到底思えないのだけれども…」
「いやまぁ気持ちはわからなくもないが…あの人がいなかったら色々とやばかったというのは間違いないんだ。」
「ふーーーん。」
「な、なんだよ。」
「やけにその先生の肩を持つのね。前話していた時はそんな事微塵もなかったのに…」
美森は口を窄めながら変な疑いのある目で一星をみるが…それは乙女の感情による反応であり、一星はそれに何かを疑われるという形で美森の事を軽視していた。
「まぁな…今回ばかりは仕方がなかったんだよ。正直…気乗りはしないけどな。」
そう言って一星はメロンパンの包袋を開けながら渋々と答える。
「はぁ〜でもあなたの言う通り仮にも平川先生が私の事を助けられるからと言ってそれが事実になるとと限らないのでしょう?」
「でも可能性はある。少なくとも美森姉が秋の大会で全力で走る為の足の問題による形は上手く遮る事はできる。」
「……あのね一星。私は何もあなたに何かをしてほしくてあの話をしたわけじゃないのよ。」
「分かってるよ。美森姉の単なる独り言みたいな話だろう。大抵の言い逃れする流れならそれが1番しっくりくるからな。でも俺はそれを聞き逃さないし見捨てたりもしない。美森姉は俺にとって大切な幼馴染なんだからな。」
「………」
「どうした?何か俺変な事言ったか?」
「べ、べべべ、べ、別に何でもないわ。」
「いやでも箸で掴んでいたおかずを落としてあんぐりになっていたぞ。何かおかしな事を言ったんじゃ…」
「だ、だから何でもないって言ってるでしょう!」
ど、どうしよう。
一瞬ドキッとしてしまった自分が恥ずかしくなってしまうわ。
そりゃあ一星の事は男子としても幼馴染としても好きだけど…こうも真っ直ぐ面と向かって、告白みたいな事をいうんだもの…そんなの驚くに決まってるわ。
「はぁ〜他の男子ならそんな言葉を言われてドキッとなんてしないのにね。どうしてあなただとこうも気持ちがざわつくのかしら?」
「あ?それってもしかして心の病気なんじゃ?…は!もしかしてもう一つ病があるんじゃないのか?」
「ああ〜もう〜ここまで言って、そこまで鈍感だと心底ため息しか出ないわね。」
山茶花の時はちゃんと気持ちに気付いてあげれてたのにどうして私には素っ気ないのかしら。
コレも昔のブランクなのかしらね。
「あ!いましたいました!またこんな所で私を巻いたつもりでいるんですか!」
「あ、出たわよ〜アンタのお墨付きのお客様。」
そう言って足を組みながら片手にオレンジジュースを飲みながらチラ見をして横を見る美森姉。
いったい誰のお墨付きが来たって?……ああ。
気付きたくもなかったな。
「な、長崎か…何でここにって……ああもしかして恒例のあれか?」
「そうです!私の目から逃れるなんて不届き三番ですよ!」
「それを言うなら不届千万じゃないかしら。」
「わあははは!そうともいいます!さすがは蕾先輩ですね。」
「それはどうも…」
あまり褒められてもしない気がしたのか美森姉は素っ気ない態度でこたえる。
「それで今日も俺の監視か?風紀委員さん。」
「はい!それはもう絶賛監視中であります。」
「は、はは、そ、そうか。」
絶賛監視中って最早それストーカーと変わらない部類じゃないか。
男が女になら分かるが、女が男にされるって…何か変な感じだな。
「それよりも今日はどう言った監視で一星を見張ってるのかしら?」
「???特にこれといった理由はありませんよ。」
「え?ないの?」
「はい!ただの日課でやってる事なので…」
「ないのにただの日課扱いって……それってつまりただのストーカー扱いじゃないのか?」
「ストーカーではありません。監視です!監視!ですよね木葉ちゃん。」
「ぜぇぜぇ、はぁはぁ……だ、だから、か、勝手に走らないでと…何回も言ってるのに…」
「側から見たらあの子がその子の監視みたいな感じがするわね。」
「な、鳴神。だ、大丈夫か?」
「ぜぇぜぇぜぇ…こ、この状況を見て言ってますか?はぁはぁ、しょ、正気で言ってるのでしたら、はぁはぁ…」
「……とりあえずコレ飲むかしら?」
そう言って、美森姉は俺の側に置いてあった飲みかけのミルクティーのパックを取って渡す。
「あ、おい!」
「い、いただきます。」
ごくごくごくごくごくごく…
す、凄い勢いで飲んでいく鳴神。
それを見ながら美森姉はニヤニヤと笑いながらこう答える。
「あ、それ一星の飲みかけの飲み物だから。良かったわねまだ残っていて。」
「ぶーーーー!!!」
それを聞いて思いっきり吐き出す鳴神。
まぁそれはそうなるわな。
「それであなた達はここに一星を見張る為だけに来たのかしら?」
「いいえ!ここには神楽坂先輩だけじゃなくあなたに用があってきたのです蕾先輩。」
「え?私に?」
「はい!先輩私と一度勝負していただけないでしょうか。」




