まさかのもう1人の告白…その応えに神楽坂一星の答えは…
可愛い面をした幼馴染の顔は周りの人だったら看過できない程惹かれてしまうのは間違いないが…コイツらの中身を知っている俺からしたらそういった感情は1ミリたりとも感じない。
「鶴海どうしてお前が俺の腹の上に乗ってるかはわからないがいい加減退いてほしい。」
「その前に一つ答えてほしい事があります。」
「な、なんだ?」
急に改まってどうしたんだ?
まるで何か危機迫るような感じなのは俺の気のせいだと思いたいが、そんな風に見られる為少し真面目に聞く事にした。
「先輩は誰か他の子と付き合ってたりしますか?」
「は?なんだ急に…」
「答えてください!」
唐突な他の子の好きないるかどうかの質問。
その答えに俺はこう答える。
「いや特にいやしないが…」
姫乃からの告白は俺がお前の事を好きという意味合いではない為一応ノーカンとして外す。
かといって他の幼馴染が俺の事を好きかどうかというのも正直怪しい。
何せ妙なゲームをさせられたり復讐させられたりして最早アイツらの気持ちがてんでんわかりやしないんだ。
その中で唯一分かったというか、気付いたとでもいうべきなのか…俺の事を好きだと思ってくれている人物が2人いた事に驚かされた。
……ん?じゃあ俺はあの2人の事を今どう思っているんだ。
「……どうかしましたか?何やら浮かない顔をしていますが…」
「いやすまん。ちょっと考え事をしててな。」
「もしかしてやっぱり好きな子が…」
「ああいやそういうわけじゃなくてだな。もしかしたらという仮定をちょっと頭の中でよぎってしまっただけだ。だから何でもない。」
「そうですよね〜先輩に好かれる女のこ何て自分しかいませんもんね。」
「おい今のはさすがに俺でも怒……え?なんだって?」
今コイツ俺に好きだと言ったのか?
いやでも単にそれは幼馴染としての好きという意味合いであってコイツに限ってそういった事は…
「今俺にはそんな告白はあり得ないと思いましたね。残念ですがコレはツルミの本心です。幼馴染だからとか先輩後輩とかそう言った意味合いでの好きじゃありません。1人の男として好きなんです。」
「おまっ…そんな臆面もなく堂々とか…神経ないんじゃないのか。」
ギューーー!!
そんな恥ずかしい言葉を言う鶴海に突っ込んだ挙句鶴海は怒りながら俺の両頬を引っ張る。
「いひゃい何するんだ?」
「コレが乙女心を嘲笑った罰です。」
「べ、別に嘲笑ったわけでは…単に何でそんな小っ恥ずかしい事を言えるんだと俺はそう思っただけだ。」
「な!?だったら、姫乃ちゃんはどうなんですか!姫乃ちゃんは先輩に何も感情も無しに告白したというのですか!」
「な、何故アイツの名前が出てくる。てか何でそれをお前が…」
「ふふん!幼馴染情報を甘く見ない方がいいですよ。」
そんなのを平気で威張られても困るんだけどな。
というかそれで威張られても幼馴染以外なんとも思わないんじゃないのか。
「そ、そうか。分かったぞお前単に焦ってるだけなんじゃないのか?お前の周りにはそういった恋人みたいなやつがいるから自分も恋人を作れば見栄を張れるとかそう思って藪から棒に告白してきたんだろう。」
「そんなわけないじゃないですか!」
「……」
突然の大きな声。
鶴海から今までにない大きな声をあげられビックリし俺は彼女が伝う涙をただ凝視する他なかった。
「………」
「ツルミはツルミの今の気持ちは誰かが恋人となったとかそんな事で恋人を作ったりとかしません。そりゃあ姫乃ちゃんに先に越されて焦りはしましたけれど……それでもこの気持ちはいずれ伝えなきゃいけないって思ってたんです。そして今がそのチャンスだと思ってツルミは今先輩に……神楽坂一星さんに告白してるんです。」
「いやそんな……」
紛れもなく彼女の口から本心の言葉で告白をしてくる。どんだけその秘めた思いを曝け出そうと言うぐらいに彼女は心の奥底で我慢していたのか…今の思いっきりの告白の言葉で想いが伝わる。
あ〜そうか…そう言う気持ちだったのか。
俺はコイツらにこんな思いを背負わせてあそこから逃げてしまったのか。
「………」
「へ、返事を聞かせてもらってもいいですか。聞かせてもらうまでツルミはここから抱きません。」
ま、まいったな。
よもや答えを先延ばしにしてもらえるわけじゃなく直ぐ様に返事をくれときたか……となれば俺の返答は…
「なぁ鶴海。俺の答えはってぐえええ!!」
返事を言おうとした瞬間思いっきり体を締め付けられ返事を言おうにも言えない圧力がかかり答えられずにいる。
「や、やっぱり言わないで!ツルミの予想だとこのまま断れてしまうのが分かってしまう!だから言っちゃ駄目!」
言って欲しいのか欲しくないのかどっちなんだ。
その我儘に俺はどう反応すればいいと言うんだ。
ひとまずコレ以上締め付けられれば命が危ういと感じで鶴海の腕にギブのタップをする。
「は!?だ、大丈夫ですか先輩!」
今まさにお前の両手でのロックで死にかけになってるよ。
「と、とにかく放せ〜」
何とか絞り出した声で鶴海に開放しろという言葉で言いどうにかして開放してくれる。
「はぁはぁ……ど、どうしろってんだ。言ってほしいのか欲しくないなのか…てかどっちの選択しても意味なくないか?」
「そ、そうですね。やはり今のツルミには度胸がありませんでした。なので保留にします!いいですか!保留にしてる間にツルミの事をもっと好きになってくださいよ。」
最早コイツの言ってる事がわけがわからない。
告白したやつから何故か保留扱いされ挙げ句の果てに保留にしてやる自分の事をすきになってくれだって?……コイツ何がしたいんだ。
「いや保留にしてお前を好きになる隙なんてそもそもあるのか?さっきのだってお前の事を嫌ってしまってもおかしくない行為…」
「うっ…うう…」
「え〜」
何故か泣き出しそうになる鶴海。
今の嫌ってしまうという言葉に反応してしまったのだろうかやたらと涙目になって何やらこちらを訴えかけてくる。
「いや今のはあくまでも例えであって、実際に嫌ったわけではないから。だからそんな顔をするなって…」
「ふ、ふん!勿論そうですよね!先輩がツルミの事を嫌う要素なんて何処にもありませんでしたからね。」
な、何と言う図々しさというか…腹たって1発頭を叩いてやろうかと思ったが……さすがにそれはよくないと思い手を出すのはやめにした。
「まぁコレからは先輩にはチャンスがあるという事なのでもっとツルミにアピールをしてくださいね。」
ボカン!
しゅ〜〜
「あ、あ、ああ…」
思わず俺は鶴海の頭に拳を突き入れそのままグリグリとしながらダメージを負わす。
「にゃ、にゃにをするんですか!頭が禿げ落ちたらどうするんですか!ツルミは女の子なんですよ!」
「あ、すまん。ついムカッとなってしまってな。」
「それだけで!ツルミの頭をグリグリとしたんですか!女の子をなんだと思ってるんですか。」
それを言ったらお前ら幼馴染にとって俺はなんなんだって言いたくなるのを敢えてつぐむ。
「はぁ〜じゃあこの件に関しては保留って事でいいんだな。」
「え〜と…その…やっぱり……うーーん!どうすればいいんでしょうか!」
「俺が知るかよ。少なくとも俺はどっちでもいいっね思ってる。」
「そんな他人行儀な!先輩は当事者なんですよ!」
「当然の様に言わないでくれる!当事者にされたのは誰のせいなんですかねいったい!」
だ、駄目だこの話をすると永遠と堂々巡りになりそうで話が進まない気がする。
とりあえずこの話はこのまま置いておいてあの事を鶴海に話すとするか…
「なぁ鶴海あのゲームの世界でお前色々と仕組んで俺達を巻き込んでいただろう。その中でお前は唯一叶いたかった事があったんじゃないのか?」
「へへ〜もう願いは叶ったので問題ありませんよ。」
「は?いつ願いが叶ったんだ?特にこれといってお前に何か有益な事はなかった気がするんだが…」
「もう〜先輩は本当に乙女心が分かってないな〜ツルミは1秒でも長く先輩達と一緒にいたかっただけなんです。それ以上でもそれ以外でもないんです。先輩はもう少し女心を勉強してほしいですね。」
「厨二病のお前に言われてもな。」
「こら!そこは関係ないでしょう!単なる悪口ですよそれ!」
「悪口なのだろうか……いやお前にとっては悪口として捉えてしまうんだよな。すまん。」
しかしイマイチわからん。
本当に鶴海のお眼鏡に叶う何かは叶ったのだろうか?明らかにそういったシチュエーションはなかったはずなのに…こうも良い意味での笑顔で返されたらな……
ああ〜先輩にはもしかしたら勘付かれてしまってるかもしれないな。
確かにツルミは根本的な解決には至ってないし先輩の事を好きという気持ちを伝えただけで何かが変わったわでもない。
でもこの気持ちを伝えるという事だけは何も間違ってはいない。
それに……先輩のおかげでツルミはちゃんと自分の目標を達成できたんだ。
コレで何もかもがツルミの思惑通りにいく。
うん……何も間違ってはいないんだもん。
パッ!
鶴海は俺からパッと離れようやく身が軽くなり立てる様になる。
しかし今のある意味衝撃的ではあった。
あの鶴海が俺の事を好きか……そんな要素は微塵もないと思っていたんだけどな。
「それじゃあツルミは帰りますね。」
「え?いやこの機械の片付けとかどうするんだ?」
「後に業者の方が来られますので、その間我慢していただいてくれますか?ちゃんと撤去はしますので不良品として…」
不良品扱いかよ。
まだ発売すらもどうかわからないこの優れた機械を?
「ではまた月曜日学校で会いましょう。今日は楽しかったですよ先輩。」
そういって慌ただしい天真爛漫な奴が帰っていき俺は寝起きといっても過言じゃないほど気疲れが溜まりぼぅ〜とする。
「……ひとまず飯を食べるか。」




