鶴海の本気
何で俺達に林音の声が届いてるんだ?
アイツもこのゲームに参加していたのか?
「林音なんだよな?声はするけど、姿が見えないんだが…」
「ああ〜今は離れて話しているからね。それよりも君達が今いる場所は狂人な奴が向かってるから早いとこそこから離れた方がいい…」
「狂人?……え?誰が?」
「鶴海ちゃんだよ。鶴海ちゃん。」
「あはは、もう何言ってるんですか。鶴海ちゃんがそんなバーサーカーみたいな感じになるわけないじゃないですか。」
「それがなってるから言ってるんだよ。僕の話し聞いてるよね?聞かないと取り返しのつかない事になっても仕方がないんだからね。」
「……具体的にはどんな風になってるんだ?」
「まるで二重人格と言わんばかりの苛立ちになってる。多分君達が思ってる鶴海ちゃんじゃない鶴海ちゃんになってるかな。」
「へ〜それはちょっと見てみたいかも…」
「駄目です。林音さんが言うとおりここから早いとこ離れましょう。鶴海ちゃんが変な気を起こして何をしでかすかわかりませんし…」
「でも鶴海ちゃんがいなければ私達はここから動けないんだよ。どうしようもなくない?」
「……そ、それは…そうでしたね。」
確かにその通り。
風香、雪羅それに千奈美は鶴海が主導権を握ってしまってる以上ここをどうにかして出られる事はできないしログアウトもできやしない。
となれば鶴海自体をどうにかする他ないんじゃ……
「いや待てよそもそも条件では俺の勝ちなんじゃないのか?どっちが先に3人を見つけるかという勝負をしていたんだ。この場合コッチの勝ちだから、それを鶴海に話せば…」
「そ、そうだよ!そうだよ!あの鶴海ちゃんなら分かってくれるよ!というかそんな話をしていたなら尚更鶴海ちゃんはコッチの言う事を聞かないと駄目だもんね!」
「しかしそれを鶴海ちゃんが易々と受け入れるとは到底…」
「正解。あまりにも一星君達の行動がチート過ぎた為許すまじって形で条件はのんでくれなかった。後コレは個人的な問題にはなるんだけど、コッチでサポートしていたというのも気に食わなっかたらしくそれでそうとう切れちゃったみたい。」
「な、何をしたんだいったい。」
「陰ながらスナイパーやライフルで即死ばっかりかましていたぐらい…かな?」
そりゃあ怒るだろうし切れるだろう。
俺でもそんな集中狙いされたら切れるわ。
「てか何のサポートなんだよ。この話お前にはしてなかったよな?」
「うん。でも勿論知っていたよ。鶴海ちゃんが、ホシノ ナナホシっていうのはもう予め知っていた事だし…もしかしたらそうかもなって思ったりしたから。」
「いやだからって、何で俺達がこのゲームに参加するって分かるんだ?あまりにも的中おかしすぎやしないか?」
「え〜と、ゲーマーの勘ってやつかな?」
嘘つけ。今声が若干濁ったみたいな話し方になってたぞ。後姫乃が若干視線を逸らしていた。
2人でいつの間にか話しあっていたのか…それで保険をかけていたんだろう。
俺達に何かあった時林音にカバーしてもらうようとか何とかそう言ってそうに違いない。
「はぁ〜まぁゲーマー勘がどうかはとりあえずは置いて置いて…」
「ああ!信じてないな!僕の話し信じてないだろう!そんな事を言うならもう情報提供しないんだから!」
「まぁまぁそこはほらお兄ちゃんの照れ隠しなんですから、お兄ちゃんってたま〜に思った事の反対を言っちゃうから、それで林音先輩は誤解を生んでしまってるだけなんすから、あまり気にしなくても大丈夫すよ。」
どう言った解釈で俺が照れ隠しをしている判断となったんだ。てか千奈美にそう思われてしまってるのが何だか解せない。
ちゃんと昔のより?みたいなのを戻せたというのに妙な違和感が突き刺さるからやっぱり納得はできずにいる自分がいる。
「こほん!変に話を拗らせないでくれ、林音お前がそんな風に情報を譲歩してくれないやつなのは知っている。そうやって遠回しにして弄んでるだけだろう。いいから知ってる事をさっさっと吐け。」
「ううっそんな暴言みたいなセリフ……まぁ別にいいんだけどね。……正直な話鶴海ちゃんはそこにいる3人を切り離す為のアカウントのパスワードを忘れてしまったらしいね。」
「は?パスワードって…もしかして、このゲームで介入した時にちょっこっと真下に出てきたあれか?」
あんなの小さくて分かりにくいから普通に無視していたんだけど、俺達にそれが必要なのか?
普通にログアウトできるんだが…でも本人が忘れてしまったって事は…
「主導権である鶴海がこの3人のパスワードを固定させてしまっているからそのままログアウトができないって事なのか?」
「そうなるね。でも3人をログアウトさせるやり方に関しては至って簡単かな。」
「簡単って……はぁ〜お前もしかして、このくだらない鶴海のゲームを楽しんで参加していたな。」
「ご明察〜僕はこのくだらないゲームに介入させていただきました。まぁ一星君達のサポートしてたのはどれだけのバグ要素が汎用されているのかを確かめたかったからかな。じゃないとゲーマーの僕からしたらこのゲームただのクソゲーでしかないからね。」
最早罵詈雑言だ。
ここにいる姫乃ちゃんが1番傷ついて泣いちゃってるよ。
「そうか、そうか…サポートしつつ尚且つこのバグだらけのゲームを楽しんでいたと……戻ったら覚えておけよ林音。」
「ひっ!」
マジ切れしかける一星に林音は少しビビりつつ怖気ついてしまう。
「そ、そうだね!やっぱり興味本位でもやっていいこととやってはいけない事があるもんね。それで何だけど……鶴海ちゃんを倒してほしいんだよね?」
「鶴海を倒す?何故?」
「あの子を倒すのが一星君の主な目的だよね?」
「いいや鶴海を倒すのが目的じゃなくこの3人を見つけ出すのが目的だが…」
「似たような者だよ?」
何処が?
「鶴海ちゃんが3人のパスワードを思い出させる方法というよりかは…鶴海ちゃんを倒させるのが1番なんだよ。その理由がって言ってる間に来ちゃったか…」
「何?」
ズンズンズンズン!
やたらと威圧するオーラを放ちながらコチラへと近づいてくる見知った人影…さっきまでのアバターとはうって変わってやたらとビジュアルが変化されておりランクでも上げてきたのだろうかと言わんばかりの凄腕の強者が誕生したかのように俺達は足がすくむ。
「え、ええ…あ、あれが鶴海ちゃんなの?」
「物凄く怒ってない?ねぇなんか物凄く怒ってるよねあれ…」
「単純に怒ってるだけならいいんだけどな。」
怒らした諜報人はもう何処かへ消えちゃってるし大したアドバイスなんて大して聞くことすらなかった。でも鶴海を倒すという言い残しをしてくれたというだけでひとまずのみこむとする。
そしてやっぱり現実に帰ったらアイツは仕置きをしないといけないな。
「鶴海ちゃんの凄みがやばいのですけど、どうしますか神楽坂君?」
「とりあえずは話しあいだな。それで鶴海と上手く話が通じればいいんだが……」
「お兄ちゃん…」
「なんだ?」
「多分無理じゃないかな?」
そう言って千奈美は鶴海のいる方へ指を刺す。
そう言われてああなるほどと認知し俺は姫乃の腕をとってここから離れる。
「ふふ、まさかとは思いましたけれど、先輩〜さすがにそれはチート過ぎやしませんか?」
言わんしてる事は分かる。
ちゃんとルールは守れよこの野郎って言いたいのかもしれんが…そもそもそれを守る義理なんてさらさらない。ちょっとしたバグを利用して片づけられればそれでいいと思っていたんだが…こんなバグでまさかの攻略を突破してしまうんだもんな。
……でもここからは俺と鶴海が話し合えばなんとか…
「お、落ち着け鶴海。確かにやってる事はチートそのものかもしれないが、ここはバグだらけの多いゲームの世界なんだ。チートも何もおかしい世界だ。そもそもお前の定義通りに事が上手く行く可能性なんてできなかったのがあったはずだ。」
「そうだね〜そうかもしれない。でもそれでどうして、林音先輩とか姫乃ちゃんがいるのかな?明らかに先輩とツルミの邪魔をしにきてるとしかいいようがないよね?」
「そ、それはそうかもだけど、でもね鶴海ちゃん。いくら何でも幼馴染を縛り付けて復讐というのは間違ってるよ。私もそれをして後悔したんだから…」
「姫乃ちゃんってさ、自分のしでかした事を後になって後悔するタイプだよね?」
「え?何が言いたいの?」
「後のリスクを考えてやってるってツルミは言いたいの…」
「そ、それは…でもそれを言うなら鶴海ちゃんだって同じじゃないの?」
「え?ツルミが何も考えなしにこの展開になってるとでもいいたいの?だったらそれは大きな間違いだよ。……確かにツルミは余計なイレギュラーが入って思っていた事とは裏腹に条件を出してしまって失敗した。でも千奈美ちゃん達を助けて終わりだなんて発言はしていないしそれで勝ちとしてのクリア条件にはなっていない…数多の人達を潜り抜けてこそのゲームなのに……本当に嫌なゲームを作ってくれたよね姫乃ちゃんは…」
やたらと怪訝そうな顔をしながら姫乃の方へ睨む鶴海。
「うっ…まぁその否定はしませんが…というよりも私が作ったのではなくて、財閥関係の方々が作ったんですけどね。それを私に言われてもどうしようもないと言う事です!はい!」
うわ〜自分はあたかも関係ないアピールをしやがった。
みんなもそう思ってるのか、少し引き気味をしているのが側からみて分かってしまう。
とはいうものの姫乃ばかりを責めてしまっても仕方がないし…本当にどうにかしないといけない。
鶴海を倒す手段…林音が倒す事を教えてはくれなかったけれど、大体予想がつくんだよな…全く。




