幼馴染に次々と褒めちぎりながら好感度をあげさせるゲームが始まった。
美森姉に酷い仕打ちで頬を無理矢理つねられながら女の子へのアピールの仕方を教わり俺は次の目標とする人物の所へ移動するのだが…残念ながらそう簡単に遭遇するなんてまずないと思い安心しきっていた矢先…
「おお〜一星君。どう山茶花ちゃんは見つかった?」
まさかの林音かよ。
強敵じゃねぇか。
まぁ正直この意味の分からない口説き周る周回みたいなのってわけが分からないんだけどな。
「おやおや〜そんなに真剣な目で見てきてもしかして僕に告白でもするつもりなのかな〜」
「………コイツまさか。」
ニヤニヤとしながら俺の後ろの方へ視線を向ける林音。
「どうしたのかな?もしかして僕に何か口説こうとでもしてるのかな〜」
「知ってての口調だな。というか今の状況も逐一分かってんだなお前。」
「なーんのことだか〜わかんないな〜そうだ僕に何か口説き文句みたいなのをしてくれたら分かるかもしれないね。」
のやろ〜完全に俺の事を小馬鹿にしてやがる。
ならこっちも上等だ。
あまり気乗りなどしなかったが…
全然助けてくれ無いやつにはこっちから仕向けるしかない。
ドン!
古く際かもしれないが女子にはコレが1番効果的だと美森姉は言っていた。
それならば林音にだって有効なはず…
「な、なになに〜女の子に向かって押し寄せて壁ドン?ふふ、あまりにも古くさくないかな〜」
「そういう割には震えてる様にも見えるんだがな。そもそもお前男性恐怖症だったよな。なら怖いんじゃないのか俺の事。」
「そ、そんなわけないし!単なる武者震いだもん!」
もんって言っちゃってるよ。
普通に苦手なら苦手で言えばいいのに露骨に頑固な所をみせてくるんだよな。
どうしよう〜僕完全に一星君の虜になっちゃってるよ。分かっていた事ではあったけれど、こう真正面に向かって来られるとドキドキが止まらない。
男性恐怖症ならではの恐怖かとも思ったけれど……やっぱり違う〜普通に好き!大好き!だいちゅきすぎゅるよ!
ああもう完全に絆されてるのは僕じゃないか。
でもダメダメまだ自分の素を見せるわけにはいかない。何せ僕は恋愛ハンターなんだ。幼馴染だろうと何だろうと絶対に素の僕は見せちゃならない!
「おい林音。おい大丈夫か?」
「へなへな〜」
「おーい!どうした急にへなるな!俺の声が聞こえているか!おーい林音!」
「やったあ!やったよ!林音ちゃんをちゃんと褒めちぎって惚れさせたよ!さすがは星君!」
うんちょっと黙っててほしいかな。
その言い方をこの時間帯で言ってしまうと周りに俺がヤバイ奴だと認定される。
ざわざわざわざわ
何事なのかと廊下で響きわたっていた声に先生や生徒が教室から出ていくのを見てヤバいと思い俺は近くにいた山茶花の手を引っ張ってここを離れる。
廊下でぶっ倒れていた林音の事はそのままにしてしまったのは申し訳ないが緊急時だった為コチラを優先した。
「はぁはぁはぁ、さ、山茶花今はまだ授業中なんだ。あまり大きな声で叫ばないでほしい。」
「あ、そうだったんだ。ごめんなさい。この学校の事よくしらなくて…」
「いやまぁそうだよな。うんそうだな。」
いくら学園の事を知らないと言っても小学校でも同じニュアンスで分かるんじゃないのか。
「それよりもやったね!星君はやっぱりみんなに好かれてるんだよ!コレなら安心して私も元の世界に帰れるというもんだね。」
「元の世界?……いや待てお前は6歳の頃の山茶花なんだよな?なのに元の世界ってどういうことだ?」
「え?だってここ私が夢を見ている世界なんだよね?つまり私は一時的にこの世界にいて体験をしている形って事だって思ってるんだけど…」
「………」
俺はマズイと思ってしまった。
何がマズイだと?
そんなの分かりきってる事だろう。
山茶花は今の自分を別次元の自分だと思いこんでいる。
本当は今の自分が正しくあるポインターだというのにそれをまるで夢や別世界だと思いこんでしまっている。
それを認識してしまったら今の山茶花はどうなっていく?
………口には出せないが多分一生放心状態になって前へ進めない可能性がある。
それもなんで今になって記憶が?と思う場合だってありないこともない。
「………」
「どうかしたの?星君?」
「山茶花。もしかして今お前がしている行動って俺のこの今ある時代の事で心配してこういった行動をしているのか?」
「うっ…なんでわかったの?私色々と周りを気にしてやっていたと思ったのに…」
「その考えは誰の入れ知恵なんだ?年齢的に考えて今の山茶花ができる考えや行動とはおもえない。それにそんな知的好奇心というのも山茶花にはなかったはずだ。」
「……そんな事ないもん!星君がいなくなってから私色んなアニメや漫画や本を読んでたんだよ。賢くなる為や知識だって色々と頭に入れた!もっと賢くなって星君に近づこうとした!でも星君は帰って来なかった!この学園に入ってくるまでは!」
「………ちょっと待て何で今の山茶花がそれを知っている。俺がこの学園に入ってくるまでの話しを何故知っているんだ。」
「え?そ、それは…」
口をモゴモゴとさせながら言ってはならないことを言ってしまったと両手で口を抑える山茶花。
俺はなるほどなと頭の中で理解しつつ山茶花に尋問をする。
「………山茶花今ある記憶と前の山茶花の記憶コレを一緒にしているという言葉の意味は分かるか?」
「ううんわかんない。」
「分かるんだな。」
限りなく返事に対してあまりにも即答だった。
コレは黒という可能性もあるが、まだコレだけじゃ分からない。
「そうか…じゃあ質問を更に加えるぞ。俺がここへきたという話誰から聞いた?」
「美森ちゃん!」
「ちょっと!そこははぐらかしなはさいよ!」
「なるほどな山茶花の記憶喪失を上手く利用して俺の事をはめたつもりだったがどうやら事が上手くいかなくて途中で焦ったって事か美森姉。」
はなっから隠れる気がなかった事に気付いていた俺はやっぱり何か怪しいと思いつつもしかしたらと思い子どもの頃の記憶がある山茶花にカマをかけた。
そして案の定素直に答えてくれたわけなのだが…
「おおかた面白半分で山茶花を利用してこういうことをさせたかもしれないが…それで山茶花は元の山茶花に戻るとでも思っているのか?それで今の山茶花は満足に後の山茶花に任せられるとも思っていたのか?」
「くっ私の思惑に上手くズカズカと入っていくわね。でもまぁ否定もできずにというのが今の決定打になるわけだけど……謎が謎で謎を生むみたいな形で面白かったでしょう?」
「面白いかどうかは別として山茶花の記憶喪失なのは間違いはないと確信はした。そして俺の知らない間の山茶花として記憶…コレに関しても嘘偽りはないんだろう。今の山茶花がしてる行動に関してそれを美森姉が上手く混乱させない様に何かしらの言葉で導いた。そうだろう?でないとここまで俺の事をコントロールする理由が見つからない。」
「でもそれはあくまでも推測なのよね?決定的なところが欠けていると思うわよ。主に怪しい部分はあったはず…あなたはそれを…」
「見つけているに決まっているだろう。美森姉が校門前に待ち伏せていた時…あの時から既に美森姉の思惑が始まった。」
「ううん…まぁギリギリ及第点って所かしらね。それならば別に私じゃなくてもいいんじゃないのかしら他の子に任せても同じ事が言えると思うわよ?」
「どうだろうな?だとしたらもう俺は完全に答えを得ていると思うぞ。証拠にこの場に3人の姿はない。その理由も言った方がいいか?」
「………ええ聞かせてほしいわね。」
俺が何故その3人が明確的に美森姉とグルじゃないと言った理由…大まかな点をあげる。
「あの後迷子になった山茶花を探して俺達は分かれた。そしてそれぞれ別のクラスの皆でもしくは廊下にいるかもしれない山茶花を見つける為に皆違うクラスへコッソリと聞き込みをした。でもここで1つ1人脱落した奴がいる。まさかの馬鹿正直に真正面の扉を開いて知ってる奴に情報を聞こうとしていた事だ。当然バレて怒られての強制授業参加にはなっんだがな。」
「あらら…海未ったら駄目ね。そんな素っ頓狂なことをしても意味がないのに全く。」
「いややらかしたのは宇佐木田さんの方だけどな。」
「あ、あらそう。まさかの思っていた人物と違ったわね。」
「そして今の発言で完全に美森姉は告発した。海未自身も今回の件に関与はしていない。それに元々そういうキャラじゃないしな。」
「同感ね。何を言われても海未についての釈明余地はなかったわ。」
「いやそこは何か否定の言葉みたいなのをかけてやれよ。多分本人が1番傷つくぞ。」
「海未がそんなたまにみえる?」
「見えないな。」
……その頃の海未
「へっくしゅ!今絶対誰か私の噂をしていた。ふふ、やっぱり私の人気は高いって事ですよね。……それにしても……いったい何処にいるんですか山茶花ちゃん!」
「おいお前今授業中だという事を忘れてないだろうな?」
「あ…コレはまずい奴かもですね。」
そう言って急いで逃げ出す海未。
それを大きな声を出して逃げていく海未を複数の教師が追いかける。
「さてじゃあ残り1人の林音ちゃんはどう説明してくれるのかしら?」
「……単純な答えだ。あの場で気絶してしまっているというのが答えだ。あんなんで林音は気絶したりなんかしない。それに美森姉の悪知恵を使ってやったんだぞ。もうその時点で分かるだろう?」
「そりゃあそうよね。まぁ確かに簡単な予想すぎて寧ろハズレ枠がなくてビックリだわ。じゃあ妥協点として私が全ての元凶でOKって事でいいのかしら?」
「そうだな。本当ならその通りだと肯定したいが……まださっきの話の続きで山茶花から答えてもらってない事がある。」
「ふえ?私?」
「ああ恐らく小さかった頃の記憶が戻ったという事については間違いない。でも懸念点が1つある。山茶花お前ちゃんと記憶に関しては連動しているんじゃないのか?」




