今の山茶花と前の山茶花
俺が鶴海に勝ったら皆んなの居場所を教えるだと?
なら何かしらのゲームか何かをするって事なのか…ここの所そういった形式での催しが多いな。
「なぁ鶴海。お前まで何でそう言ったゲーム形式みたいな形で勝負をしてくるんだ。話し合いでも解決とかできないのか。」
「それを先輩が言いますか?今までたくさんの修羅場を乗り越えた先輩がそんな情けないことを言うとは思いませんでした。」
「挑発しているつもりかそれ…」
「さてさてどうですかね。でもツルミのこの挑戦を受けてくれるなら皆んなの居場所だけじゃなくて、もう一つ知りたい事を教えてあげますよ。あの時あのプールでの先輩の再試験…アレには実は裏があったと言う事を…」
裏だと?
鶴海にそんな隠し事みたいなとか裏で何かをする様な奴には見えないんだが…いやコイツに限って何をやらかすかは不明なんだ。
いきなりの結論に至るのはよくないな。
「そうかまぁ何がどうあれお前が言う何かのコラボというのが始まるまでは待機しておくよ。」
「うんうん。それでお願いしますね先輩。あ、勿論この事はツルミと先輩だけの秘密ですから誰にも言っちゃ駄目ですよ。」
そう言って脱兎の如く素早くこの場から退場する鶴海。
「………疑念点は未だにあるが、アイツの中に何かがあるというのは分かった。いや誰かに利用されている可能性だってある。ひとまずアイツのチャンネルを登録しているから時間がくるまでは待機だな。」
「おやおや〜またまた面白い話になってるじゃないの〜宝探しの次は動画視聴なのかな〜」
「林音か…悪いがコレから約束があってな。お前と今話してる暇がないんだ。後にしてくれるか。」
「むふふ、もしかして美森さんの所へ行くつもり?山茶花ちゃんの事で聞きたい事があるという訳ありみたいな話にでもいくのかな。」
コイツ分かっててニヤけながら笑ってやがる。
まぁ多分面白がってるだけだと思うが…
「そうだとしたら?」
「ふふん……あまり深入りした話はしないのを僕はオススメするよ。何せ山茶花ちゃんは私達の中では美森さんが1番大切にされている子だから変な事を言って激怒させないようにしてね。」
「美森姉に関してはいつも怖いイメージしかないけどな。」
「うわ〜それは大変だね〜殺されないように気をつけてね。」
「は?何言ってんだよ。本人がいないんだから聞かれない限り大丈…」
「大丈夫?なら本気で殺されても文句はないってわけよね?」
背筋が凍るような冷たいささやきボイス。
俺はその言葉にビクッと反応して後ろを振り返るのだが…何で振り返ってしまったのか後悔してしまう。
「えっとだな。その美森姉…コレには言葉の綾というか…」
「問答無用そこで正座しなさい!」
俺はそのまま美森姉に言われて正座をせざるを得ないという形で座らされ説教を受けながら自分のした失言に反省をする。
いつこまにかこの場にいた林音はいなくなっておりアイツのとんずらぶりには驚かざるえなかった。
「全く油断も隙もあったものじゃないわね。何の為に部活を早く切り上げてきたのか分かんなくなっちゃうわ。」
「早くきりあげてくるなら連絡してくれればよかったのに…」
「それもそのつもりだったのだけれどね。スマホをイジってたら部活の子達が彼氏?彼氏に連絡しているのってちゃかされちゃってまいったわよ。別にあなたの事を露見するわけじゃないけれど、これ以上余計な火種を増やしたくはないでしょう。」
「そう言ってくれるとありがたいな。でもそれは既に遅いんじゃないのか?もう周りに俺たちの関係の一部始終怪しんでる奴多い気がするんだが…」
「それもそうね。あ、でも女性陣の中ではそうは思わないのもいたりするからその辺に関しては安心しても良さそうよ。」
いったい何の安心なんだとはコチラ側から聞いてもいいのかはたまたそれは聞かなくても良い事なのかもうこの辺に関して突っ込んで聞くのをやめにした。
「そうかなら別にいいんだが……じゃあコッチの話しをしてもいいか?」
「ああそういえばそうだったわね。私に何か話があるからメッセージを送ってきたのよね。な〜についに私の魅力を感じて告白でもしようとしてたのかしら。」
「ある意味告白っちゃあ告白かもしれんな。」
「え…嘘…本当に告白する気なの。」
少し顔を赤らめながらもじもじとしだす美森。
しかし本人はコレが勘違いだと言う事をまだ知らない。
「ああ山茶花の事でちょっと聞きたい事があってな。」
「………ああ〜そういう告白なのね。」
何故かガッカリした顔をしながら何故かコチラを蔑ろする目で見てくる美森姉。
何をそんな期待感を出していたのか訳がわからん。
そして若干呆れてでの溜息…それもやめてほしい。
「で、山茶花の事で何が聞きたいのかしら。」
「主に3つ聞きたいんだ。」
「え〜3つもあるの…分かる範囲でなら答えられるわよ。」
「分かった。ならまず1つ目だが……皆んな山茶花の事をどう思って話しているんだ。」
「どう思ってって…そりゃあ昔の幼馴染という形で接しているわよ。あの子に関して特にこれと言っての形で気を遣ってるというのはないわよ。そりゃあ最初は戸惑いもしたけれど、でもやっぱり山茶花は山茶花なんだって分かっちゃったから。」
「つまり今の山茶花は昔の山茶花そのもので間違いないんだな。」
「どう言う意味?今の山茶花じゃない山茶花って…それじゃああの子はいったい何者だっていいたいの?」
「全く別人の山茶花。生まれ変わった山茶花とでも言うべきかこの場合…何処かしらの記憶でも持ち帰ってきてでの山茶花なら転生のなんたらかんたらって名前をつけたいというのがやまなんだが…残念ながら完全なる新生だ。あれはもう昔の俺達の知ってる山茶花じゃない。」
「ならあなたはあの子が記憶喪失だったからコレからあの子と一緒に対話できないとそう言いたいって事かしら?だとしたら最低な答えね。」
「ああそうだな。そう言う答えをだしてしまえば最低な人間なのは間違いない。でも俺はそんな事一言も言っていない。別人だからこそ今後の関わりに関して話しておかなければならいとそう思ってまずは美森姉に相談したかったんだ。」
「……まずは私にというのが引っかかりはするんだけど…ひとまずそこに関しては置いておきましょうか。」
やべ俺余計な事を言っちまったかな。
まぁ変に深掘りされなかったという意味で勘繰りされなかっただけでもよしとしよう。
「一星。コレは忠告として聞きなさい。もしあなたが今の山茶花に対して今まだ通り臆することがあるのならもう山茶花に関わるのはやめておきなさい。」
「何故だ?」
「はぁ〜言ってる意味が分からないのなら今すぐ山茶花との縁を切りなさい。少なくとも山茶花はコレまで通りあなたとの接点をなくさないつもりでいるけれど…それはただの我慢でしかないのよ。」
「……これまでの関係も嘘だったと美森姉はそう言うのか?」
「あなたが言い出した事でしょう。今の山茶花は山茶花じゃない。もうコレだけでも十分に違和感を感じてしまってるじゃないの。昔の山茶花の思いれがあるのなら今の段階での山茶花とはもう関わる事をやめなさい。」
「………悪いがそれは…」
「できない。そう言いたいのよね。ならば今すべき事をちゃんとやり遂げなさい。少なくとも私達はコレまでずっとそうやってきたんだから。」
ああその通りだ。
単に俺の都合だけで山茶花を助けたいというのはただの傲慢だ。
アイツはアイツなりこれまで自分でやり遂げてここまで過ごしてきたんだ。
なのに俺はそんな山茶花を別人だの違う山茶花だのとまるで蔑ろにするみたいで否定を並べていた。
そしてあわよくば昔の山茶花に元に戻ったらともそう考えもした。
しかしそれをすれば今の山茶花はどうなる?
俺はそれをちゃんと考慮して考えたのかよ。
「………そうだな。美森姉の言う通り環境が慣れなくてその場所が嫌だというのと同じ事を俺は言っていたな。ああー!クソッタレ!あまりにも自由奔放すぎた。身勝手な行為で危うく山茶花との溝が生まれてしまう所だった。サンキューな美森姉。」
「ふふ、そういう自己完結する所嫌いじゃないわ。でももう少し乙女心を理解してあげるのも1番のポイントよ。じゃないとコレから先女の子との付き合い方に苦労するわよ。」
今でも十分苦労してんだけどな。
現在進行形で…しかも違った意味で。
「今現に私達で苦労しているって顔をしているわね。言っておくけれどこんなのただの序盤にすぎないわよ。もっと女の子の深いところをみたいのだったらそれ相応の覚悟が必要になるわよ。」
「え〜〜〜だったら別に美森姉達でいいや。他の女子達とそう言った関係になるのなら最早それはただの地獄だよ。」
「嬉しい事を言ってくれるのはありがたいのだけれど…それ絶対に他の子の前で言っちゃだめよ。理由は聞かなくても分かるわよね?」
「いや全然。」
「………」
「何故そこで呆れた顔を向けてくる。」
「いいえ別に……何でこんな男の事を私含めて皆んな好きになっていくのかしら。やっぱり何かの催眠にかかっていたりでもしているのかしらね。」
「え?途中から聞こえないんだが、何か言ったか?」
「何でもないわよ。それよりもさっきの続きなんだけど、一応心構えみたいなのはしておきなさいよ。明日突然顔を合わせただけで辛気臭い顔をされたら1番凹むのは山茶花なんだから。その辺ちゃんと理解する事いい!」
「あ、ああわかった。」
何で俺こんなに熱弁させられて叱られてんだ。
山茶花の事だけでこうも熱くなれるって、美森姉って他の幼馴染たちよりも相当な幼馴染想いだよな。
ああもう!私何やってんだか!敵に塩を送るマネをしちゃって何やってんのよ!このままじゃ私の立場が危うくなるじゃないの。
もう絶対にこんな事しないんだから!




