ワンセットゲーム1年生対鹿島英吉
3年が鹿島英吉と試合をして、程よくいいところまではいったのだが、やはり相手との差があった為負けてしまい向こうが1勝となる。
美森姉は何処か心が晴れたような顔をしており何だか吹っ切れたようにも俺はそのようにも見えた気がした。
「………」
「あらどうかしたの一星?」
少しの休憩という事で俺は美森姉と2人で自販機前に立ち俺は美森姉にスポーツドリンクを奢って投げ渡す。
「おっと!もう投げないでちょうだいよ。女の子にはもっと優しくしないとだめよ。」
「そんな事よりもどうだったんだ。天才との試合は…」
カシュ!
美森はスポーツドリンクの蓋を開け
そのまま一気に飲み干す。
「プハ!生き返るわね。そうねまぁまぁの強さだったかしら。あれだとあの子が勝つんじゃないかしらね。テニスの天才海道朝陽ちゃんが。」
「……負けたのにやたらと悔しくないんだな。その辺驚かされた。」
「まぁね。別に私がやっていたスポーツでもいし天才という地位でもなかったからね。悔しがる理性すらないわよ。」
「多分だが、あんな形でやれる試合は今回で最後じゃないのか?」
「あら気付いてたのね。」
美森姉が最後の試合だというのには理由がある。
本当の天才同士でのやり合いコレが美森姉の最後の3年での競技試合でもあるのだ。
「美森姉。何で体育祭での出る種目を全部破棄したんだ。学年側ではあまり喜ばれないんじゃないのか?」
「全くいったい誰かから聞いたのやら……そうね。本当なら私も体育祭に出てそれなりスポーツをしたかったわ。でも残念ながら私はその競技には参加できないのよ。まぁ私に限らず天才の人間にはね。」
「……それはつまり山茶花達もという事か?」
「まぁスポーツ関係での人達はそうよね。川兎ちゃんや林音ちゃんはスポーツ関係の天才じゃないから競技に出るのは必須だけれども…私達は違うのよ。毎年…秋のこの時期は安静するように言われてるのよ。」
言われてる?
いったい誰に?
「言われてるって……もしかして何か身体への影響があるのか?」
「う〜ん…今のところそういったのはないわね。単に健康診断みたいなものよ。そこまで気にする必要はないわよ。」
いいや関連性としてなしという仮定はありえない。
もしかするとそれを黙って秘密にしている可能性もあり得る。
もう少し話を詳しく聞くか…
「因みにだが、検査はどこでやるんだ?」
「うん?普通に学校で行うわよ。途中で退席という形で教室から出ていくと思うから、詳しくは山茶花達にでも聞くといいわよ。」
「分かったまた聞くとするよ。」
とりあえずは今懸念している部分は取り除けたわけだが…その問題点はまた改めてという事になりそうだな。
「それにしても次の試合はどうなるのかしらね。」
「さぁな。でもアイツなら難なくとやりこせるだろうきっと…」
「あら転入してきた子をやたらと気にかけているのね。まさか訳ありとかじゃないでしょうね?」
そうだ。まだ美森姉には千奈美達の事については何も言ってなかった。
また後で話せばいいと思うしとりあえず誤魔化すか…
「仲はいいかもしれんな。けどただそれだけだ。……あったそろそろ休憩が終わるな。」
時間がきた為そのままテニスコートの方へと向かって歩き先の話はひとまず保留という形でなかった事にする。
しかし体育祭で参加しない理由がまさかそういった経緯があるとは…後で山茶花達に話を聞くか…
「……ふぅ〜全くバレバレな嘘なんかついちゃって…あの海道朝陽って言う子…どうせあなたの幼馴染なんでしょう。さていつになったら告発してくれるのかしらね。」
美森は一星から奢ってもらったスポーツドリンク飲み干しゴミ箱に捨て彼女もまたテニスコートの方へと歩いていく。
………テニスコート 待機席
「あれ何かやってるなアイツら。」
テニスコートへと戻ってきた俺たちは何やら千奈美達が話し合ってる姿をみかけその側でみていた田中に話を聞く。
「何やってんだアイツら。」
「ああなんか復習みたいな事をしているらしいぞ。鹿島英吉のテニスでの技術ぶりを目の当たりにしてどうやってそれをカバーできるかという作戦会議みたいだな。」
「………作戦会議ねぇ。」
千奈美と香澄ちゃんとのダブルスか…何か不安要素しか思い浮かばないな。
「何か不安要素しか思い浮かばないのよねあの子達。」
俺の心を意図して汲んだのか、栗原先輩が俺の代わりに声を出して言う。
「あなたもそう思うんでしょう?女の子を侍らしている神楽坂一星君。」
「な、何をそんな根拠に…」
「根拠も何もあんなぐだぐだな作戦会議まともにいくわけないでしょう。」
まぁまさにその通りだ。
香澄ちゃんと千奈美とでの意見があまりにも食い違っておりどこをどうカバーして球を返すのかという話をしているのだが……どうやら千奈美が全部1人でやるという強引な言い方をして押し通そうしているのだ。
「だから私が1人でやるからあなたはそのまま後ろでカバーしてくれればいいんすよ。」
「それだとダブルスの意味がなくなるじゃないですか。ダブルスって知ってますか。ダブルスを!」
「知っていますが、単に役不足なあなたに何もしなくていいと言ってるんすよ。寧ろ惨めな自分を守るという私の大義名分にありがたいと思ってほしいくらいです。」
「な!?なんて勝手な人なんですか!誰が惨めなんですか誰が!」
ああ〜何だかそれぞれ言いたい事を言い合ってるな。まぁチームを組む上でよくある事だが……どうにもな。
「……千奈美のやつもしかして。」
「だぁ!!もういいっす!勝手にすればいいじゃないですか。ウチはウチでやるだけなんで、勝手にしててください。」
「あっ!ちょっとまだ話が!」
「そんな時間もうないっすよ!ほらいきますよ!」
「もう!まるでお姉ちゃんみたい!」
「………ああ〜確かに。」
「いやあなたそこは否定してあげなさいよ。」
美森姉に突っ込まれながら流石にその部分では千奈美が可哀想だとも思い、海未と比較するのは駄目だとそう思った。
可哀想なのは海未なんだよなこの場合…
「へっくち!」
「あれ?風邪でも引いた蒼ちゃん?」
「う〜んなんだろう誰かに噂されてるような……気のせいかな。」
…………休憩が終わり第2ゲーム
「う〜ん!!!さて準備運動もしたわけだし…そろそろ本気でいかせてもらおうかな。」
相手はあの海道朝陽だ。
女だからといって手加減できる相手じゃない。
僕の力量がどこまで通じるか……積み重ねてきた努力…さてさて天才にはどう通じるかな。
「よーし!いくっすよ!ウチの力とーんとみせてやるっす!」
「………はぁ結局話が纏まる事ができなかったな。この試合かてるのかな…」
………ベンチ側
「あなたからして今回どんな試合結果になると思う?」
「素人の俺に聞くかそれ?」
「天才といえば天才同士の話し合いなんだからそこは普通に聞いて答えられる範囲でしょう。」
美森姉の無茶振りな言い方に俺は嘆息つきながらその質問に答える。
「………分からないな。」
「は?分からないですって?」
「ああ実際にどう転ぶかなんて想像できない。何故ならダブルスでどういった方向に試合形式が流れるかなんて誰も想像なんてできないだろう。だからじ正直ワンセットゲームでノーアドバンテージまで持っていけるまでは答えにくい事にはなるな。」
「ふ〜ん。まぁ確かにこのワンセットゲームで分からない部分なのは仕方がないわよね。まぁ2セットマッチまでいく可能性があるとすれば……」
「可能性があるとすれば?」
「いえやめておきましょう。さすがに推測だけで物事の判断はよくないわね。ひとまずワンセットゲームでだけでこの試合を見届けましょう。そしてノーアドバンテージにならない事にもね。」
「一年海道朝陽そして葉月香澄準備をしろ。」
「はい。」
「ウィッス!」
2人はテニスラケットを持ちテニスコートへと足を運ぶお互いの連携が気にはかかるが…ひとまず千奈美実力がどのようなものなのかちゃんと確認しないといけない。
「さてさて休憩挟んでの連戦になるわけだが……君達に人の心はあるのかな?」
「もしかして手加減しろといいたいのですか?そんなの…」
「そんなのするわけないじゃないですか。ウチの活躍を見てほしい人がいるんす。だから全力でやらせてもらいますよ。」
香澄がそういいかけたのを千奈美が割って入り香澄は少しむっとした顔で千奈美の事を睨む。
「ふふふ、そりゃあそうだな。何せテニスの天才がこんなお遊びのゲームで手を抜くわけがないしな。」
「ん〜〜〜じゃあちょっとだけ手を抜こうかな。」
「は?今何ていったんだ?」
「だから手を抜こうかっていったんですよ。ウチはあなたと試合すると言うことに対して勿論ワクワクが止まりません。けれどウチが全力を出してしまえば鹿島さんは直ぐに負けてしまいますよ。」
「ちょっ!何言ってるんですか!全力でやってくださいよ!」
「大丈夫大丈夫!ウチ強いから。」
「天才だからじゃなくて強いからって…自分の口で言う人は初めて聞きましたよ。」
「言ってくれるじゃないか…なら先行は僕からでもいいのかな?」
「勿論ですよ。いや〜手を抜いて完膚なきまでにコテンパンにできると思ったら余計にワクワクが止まりませんね。」
こ、この子相当なクレイジーだわ。
そんなハッタリをして大丈夫なの。
「それじゃあウチは相手のサーブを打ち返すから君は前をお願いしてもいいかな?」
「え?あ、はい。」
「あ!因みにウチがずっと相手のサーブを打ち返すから君は何もしなくていいからね。」
「ぐっ!」




