夏休みの予定
「え……島津河さんって、美咲さんに好意を抱いてるのか。」
「そう。だからホールでやたらと人手不足なのはあの2人をできるだけ一緒にさせたいという意味の分からないこの職場での決定が決まってしまってるのよ。あなたにやたらと手荒い扱いをされたのもできるだけ、かまわせないようにするためでもあるのよね。」
「………」
ほんとうにそれだけか?
それだけにしては何か別の熱意というか妙な邪険をしていた様にも見られたんだが…
もしかして一部あの人での勘違いがあったりしてるんじゃ…
「けど恋愛沙汰でそんな風にホールを回せって言われても困るんだが……後変な職場だよなここ。」
「そこは否定できないわね。私も割と時給高めという意味でここのファミレスのバイトに決めたのだけれど、まさかの変わりものというか癖のある人ばかりいるから、とてもじゃないけど骨が折れるわね。」
まぁ俺と美森姉がキッチンで話しているだけでも睨まれたからな。
やっぱりここでも美森姉は人気のある対象人物だって事だったんだな。
「てか美森姉いいのか?」
「ん?何が?」
お互い賄いを食べつつ気にしている事を美森姉へ話しをふっかける。
「いや俺が言うのもあれだが、ここを紹介した日暮先輩の選考で上手く採用されて事に至るわけであってお互いこう言った仲良しこよしでの名前呼びは流石にやばいんじゃないのか?」
「寧ろそれがいいのよ一星。前にも言ったけど学園での私は自慢じゃないけれど1日に3、4回告られている身なの。ここでも同じ待遇だとより仕事にメリハリつかなくなってやめる人も増えるでしょう?だから予防線としてあなたがいた方が楽というものなのよ。」
うん確かに自慢話にはならないな。
単にはたからきけば悪意のある言い方にしか聞こえない。
てかそれが原因で人手不足という関係せいもあったんじゃないのか…
「てか美森姉いいのか?幼馴染の名前を出して働いても。偽名を使って働いてないんだなって入ったとき疑問に思ったんだが…」
「ああそう言えば言ってなかったわね。まぁ外での私の名前は今は偽名で有名になっている。というのは本名だと何かしらトラブルが起こるから敢えて伏せているのよ。まぁ芸能人みたいな感じと思ってくれればいいわ。」
「けど選手って偽名使って出場してもいいのか?」
「駄目ってわけじゃないのよ。お互いの了承を得て出場でOKかそうじゃないかが決まるのも…だから私は日常では自分の名前で通すことに決めている。まぁ学園ではちゃんと許可を得て偽名で通っているけどね。そのおかげであなたを上手く復讐できたってわけだし。」
「うわ〜いい性格してるわ。」
なるほどね。だからここの人達は美森姉が全国陸上選手並みの凄い人物だって気付かなかったのか…
まぁ伊達メガネで誤魔化してるからそのせいだとも言えるけど…
「さてと、この休憩時間中にあなたに聞きたい事があるのよ。」
「聞きたい事?」
美森姉が俺に何か聞きたい事があるという話を耳を傾けながら、美森姉が作ってくれた賄いを口にする。
「そう!あなた夏休みに何か用事とかあったりするのかしら?」
「いや特にはないな。暫くはバイトとかまぁ山茶花に連れられて水泳の克服をしたりとかかな。」
蒼脊からの話は省いた方がいいか。
なんか夏休み幼馴染とどうたらこうたらと言っていた気がするが、あれは単なるたわいごとだと思うし気にする必要はないか。
「そ、そう。じゃあ暇と言えば暇なのね。」
よし!コレで夏休み幼馴染計画をたてられるわよ。
あの子達と話し合って、バイト中にコッソリと聞き出すという話になっていたから少しプレッシャーを感じていたけれど、それはそれコレはこれよね。
でもその前に私はこの子と2人でのデートを誘う必要がある。
同じファミレスで働くことになったのも京子ちゃんのツテのおかげでもあるし…
この好機流すわけにはいかないわ?
「え〜とね。一星実は私明日と明後日、部活とバイトが休みでね。たまたま日にちが空いてるんだけど…良かったらその一緒に何処かお出掛けに…」
「ああ〜美森姉俺明日と明後日バイト入ってるんだ。人が足りないからどうしても入ってくれて言われてて…特にキッチンがやばいという話になってるのをたまたま事務所で横耳にしててな、それでどうしてもとお願いされたんだよ。なんか店長さんが泣き崩れながら喜んでたから、相当人手が足りないんだなって思ったよその時…」
「そ、そう、なら仕方がないわね。」
クソ店長が。それぐらい臨機応変に対応しなさいよ。
私がいない時それぐらいできているでしょうが…
「ど、どうしたんだ美森姉。なんかやたらと苛立っているように見えるが…何かおかしな事でも言ったか?」
「い、いえ単に自分の計画性の無さに腹が立っただけよ。」
「???あ、それよかさ美森姉。この賄い美味しいな。なんか普段作っている人からの温もりというか暖かさなみたいなものを感じるというかなんか達人といっても過言じゃない上手さだな。」
「……そ、そう。それなら良かったわ。作った甲斐があったというものね。」
「前に作ったあのうどんよりかは全然ましだなってあたたた!」
「そりゃあどうもすみませんね。」
何故かちゃんと褒めたのに両頬を無理矢理引っ張られる。
私が作った料理じゃないのは分かっていても、あの子達と比べられるのはなんだが癪にさわるわね。
そして普通に腹も立つ……
いや庇いたった私が怒ると言うのも筋違いなのだけれど…
なんか納得がいかないわよ。
「全く褒めてくれたと思ったらすぐコレよ。まぁ悪気はないのかもしれないけれど…」
「だったら何故頬を引っ張るんだ。」
「なんとなく?」
「疑問系かよ。はぁ〜てか美森姉俺を連れて何処か行こうとしてたのか?因みに荷物持ちはごめんだからな。」
「はなっから別に頼もうとしてた解答をしないでくれるかしら。あなたとは普通にお出掛けがしたいだけよ。それも2人だけのね。」
そういって俺の鼻へ向かって指をちょんっと突きまるでおちょくるかのようにして朗らかに微笑む。
なんか昔の美森姉の事を思いだしたな。
昔は美森姉がやっぱり大将というイメージがあったからこんな風にドキッとさせられる何て事は絶対なかった。
それがこんな風にあざとくなってしまって…
はぁ〜時代の流れは残酷だ。
「さてともう少しで休憩も終わるし詳しい日程はまたトリームで伝えるわね。あ、後ホールに中々出れなくてごめんね。本当は私があなたの指導係だったはずだったのに、あんな奴にあなたの指導係として任命されちゃうなんて…」
「いや別にいいよ。美森姉はキッチンのエースみたいなもんだしそっちはそっちで上手いこと回さないといけないだろう。こっちはこっちで上手くやるから心配しなくていいよ。それに優しい女子大生の先輩もいるしな。」
それが一番の痛手なのよね。
そこに関してコチラの気持ちの意図を察してくれない幼馴染。
はぁ〜本当にどうしてこうも鈍感なのか…
休憩時間が終わりお互いそれぞれの持ち場に戻りラストの時間まで一緒という事にはならず、女性と男性で時間的に決められた時間帯で退勤していく。
なので、美森姉は一足先に帰っていきまたトリームを送ると言い残して帰っていった。
「って俺も高校生なのに普通にラストまでいせられんのかよ。」
まぁ23時ラストの前の22時半までというなんともまぁ高校生ギリギリの時間帯までいることに関してコチラはとやかく言うつもりはないが…それでも人手不足すぎる。
それで残業させられる身にとってはあまり芳しくはないな。
「でも残業代は多めにもらえるって話だし割と特にはなるかな。」
そう呟きながら大量のゴミ袋を集めゴミ収集車が拾うゴミを放り込むダストいれの場所までゴミを持っていく。
しかしそこで目にしたくないものを俺はみてしまった。
ドン!
「美咲さんこの前言った食事の話しいい加減付き合ってくれてもいいじゃないすか。」
「う〜んでも私色々と多忙な身だから。あまり時間が空いてないというか。」
え〜まじかよ。
まさかの壁ドン口説きを目撃してしまった。
てか壁ドンやってるやつまだいたんだ。
いやそれよか最悪な現場を目にしてしまったな。
不可抗力だがこんないたこざのところ目にしたくなかったぞ。
「そういっていっつも俺から避けようとすんじゃん。いつも俺に脈アリな言い方をしてくるくせにそう言うときだけ気を引くのはあよくないと思いますよ。」
「はぁ〜?君何言ってるの?私そんな言い方してないんだけど、勘違いじゃないのかな。」
「またそうやって気持ちを隠し通す。……悪い癖だと思いますよ。」
うわ〜何かあの人相当なキザだったんだな。
こういう直接的なアプローチはそう言う雰囲気を出すやつなんだ。
人によって効果はありかもしれんが、あからさまに何か引いてるみたいな………ん?あれ。
「美森姉から聞かされた事と何か違う気が……」
……いや違うというもしかして島津河さんの一方的な片想いで周りは単なるそれを応援していただけなのでは?
じゃないと美咲さんがあんなに嫌そうに拒む理由が見つからない…
かと言って俺がここで出しゃばっていいものだろうか…
……もう暫く見守ってみるか…何かしら島津河さんのアプローチが変わるかもしれないし。
「もう!君も強情だな。私は君に思わせぶりな言い方はしていない。それを君が勝手に勘違いしただけだろう。被害妄想も大概にしてくれないか。」
「な!?アンタそれはあまりにも酷いだろ!」
なんだろう。
どっちもどっちなのではみたいな会話が聞こえてくるが…
コレは第三者が間に入らないとやばいかんじがする。
ガタン!
「しまっ!」
「誰だ!」
やべ!つい関わりたくないから一歩下がって空き缶を蹴ってしまった。
こうなったら潔く出て謝る他ないか…




