迷惑な看病娘の2人
「う、う〜〜ん。……あ、あれ?俺どれぐらい寝てたんだっけ?」
やば寒気がする。コレ完全にヤバイやつだ。
「……ゲッもう夕方じゃないか。……てか喉乾いたな。」
あれ?何か忘れてるような。
コンコン!
グツグツグツ…
何だ?何かキッチンから音がするような。
………そうだ確か山茶花に買い出しに行ってもらったのを思いだした。
でもお昼に何か買ってくると言っていたんだが……
「さてそれじゃあ今から料理を教えるわよ。」
ん?今の声何処かで聞いたような。
「はい!宜しくお願いします。」
「はい!宜しくお願いします。」
コッソリとロフトの上からキッチンに顔を覗き込ませる一星は何事かと様子を伺う。
あれ?何で美森姉と香澄ちゃんがここに?
山茶花が何か買ってきてくれるんじゃなかったのか?
何か料理教室みたいなのが始まってるし…どうなってんだ。
「まず一星の為にあなた達はコレからどの様に料理をするのかしら?」
「えーと…愛情かな!」
「私は映えが大事だと思います。」
「あなた達は病人に対してそんなポリシーみたいなのが必要だと思っていたの…」
???
何故そこで首を傾げるのかしら。
「分かった。今の質問は流石に私の方も不備があったわね。……質問を変えます。料理に必要な基礎的な知識…あなた達はそれが何か分かっているかしら?」
流石にコレは答えられるでしょう。料理的な基本はあのもっとうとなる5つの合言葉…それを1つでも分かっててくれれば…
「はい!やっぱり愛情ですか?」
「いえ!違いますよ。やっぱり華ですよね。」
「華でも愛情でもないわよ!それとやっぱりという反応の仕方をそのあたかも私は間違えてませんみたいな言い方よしなさい。あなた達の料理に対する思想理念なんてどうでもいいのよ。ちゃんとリアル的な話しであって知識の部分を質問しているの!後料理の基本はさしすせそ。それぐらいは聞いた事あるでしょう。」
「………ああ〜」
「………ああ〜」
「ああ〜はコチラのセリフよ。てか絶対に素で忘れていたわね。」
「………」
うんコレはなんというか前途多難というか…いやいやまだ希望はある。美森姉がいるんだ。きっと何とかしてくれる。
それに香澄ちゃんが料理下手なんて話しをまず聞かないからそもそも何となる可能性だってある。
あの海未の妹だし…
「ひとまず…さしすせそに関して一旦話はおいておきましょう。きっとさしすせそのさも分からなさそうだし…このまま私がリードしていって料理を教えるわ。」
「し、失礼な!私は分かりますよちゃんと!」
「へ〜じゃあ聞かせてもらおうかしら。さは何なのかしら?」
「さ…さ…さ…さ…」
…………5分経過
「あ!サカナだね!」
「はいじゃあまずはエプロンをつけて手を洗うわよ。」
「ちょっと美森ちゃん無視しないでよ!あってる?ねぇあってるよね?」
「そんな真顔でどうどう?って聞いてくるあなたの神経に呆れて物も言えないわよ。」
「え?間違えちゃった?」
「当たり前でしょう!何で正解だって思ったのよ!」
「えへへ絶対当たってるという確信を得たからですよ。」
「堂々と胸をはらないの。因みにさは砂糖よ。料理の基本だからしっかりと覚えておきなさい。」
「は〜い。」
「………」
知らなかった。さは砂糖だったんだ。後でお姉ちゃんにも聞いてみよ。きっとお姉ちゃん料理のさしすせそも分からないんだろうな。
※海未は勉強はからっきし駄目だが料理の知識は人一倍に得意為…料理の基本的な事はちゃんとしっかり学んでいる。
この事を後に恥をかく香澄はこの時の香澄は知る由もなかった。
「それじゃあまずはお米を炊く所から始めるんだけど……その前に香澄ちゃんあなた何をしているのかしら?」
「え?お米を洗うんですよね?」
「そうお米を洗うのよ。それで今あなたがしようとしているのはいったい何をしようとしているの?」
香澄がお米を洗おうとしている。その行動に美森は腕を組みながら見たくもないその光景に目も当てられずにいた。
「勿論洗剤を入れようとしているんですよ!」
ガタン!
「ん?今何か物音がしたような。」
サ!
「ん?気のせいかな?」
「あのね香澄ちゃん。そんな当たり前みたいにお米に洗剤を入れて洗うという行動は基本許されないのよ。この意味わかるわね?」
「え?洗うんですから…お米を洗わないとご飯炊けませんよね?」
「そうその通り…でもね洗うにしても普通の人達はお米を洗剤で洗わないのよ。」
「え!」
「え!」
いやあなたもその中の1人だったの山茶花。もう頭が痛くなってきたわ。
「コホン!お米を洗うのは基本的に水洗いで大丈夫です。ほら余計な事をしないで、そのまま水を入れてよくかき回して3、4回繰り返して洗うように…」
「………分かりました。」
「何で不本意そうな顔をしているのよ。寧ろ私はあなたのする危険な行動に対して注意したのに意味が分からないわよ。」
「美森ちゃん!じゃあお米って石鹸で洗ったりしても駄目なんですか!」
「洗剤も駄目ならば石鹸も駄目に決まってるでしょう。どこまで不器用なのあなた!というか少し黙っていなさい。次の料理の指示がおかしくなるからもうお米の話しは終わりにしなさい。」
えーと更に山茶花も不本意に声を漏らす。
その漏らした声に先程物音がした方向にいた人物…一星が額に手を当てながらううんううんと唸る。
「………ああ〜コレは死ぬかもしれん。ひとまず安寧となる夢へと向かおう。いやもう熱が酷すぎて頭が痛すぎるから安寧もクソもないが……美森姉マジでたのんだぞ。俺の命に関わるかもしれんからな。」
そう言いながら再び夢の中へと誘い一星は現実逃避をする。
調理し始めてから45分が経ち何とかまともにできる所まででき…美森はコレまでに料理に対して悪戦苦闘になるとは思いもしなかった。
「やれやれ、何とか雑炊ができる段取りが進める事ができたわね。てかここに来るまでご飯が炊き上がるまでの時間が経つってどれだけの修羅場を潜らないといけなかったのよ。」
ネギや根菜等を包丁で切るのにやたらと危ない手つきで切ろうとする香澄ちゃん。
それを猫の手で切るように指示を出したのにも関わらず、まさかの包丁を2つあれば早く切れるのではと意味の分からない問答を10分
山茶花に関しては基本的な事はちゃんとできているのに、何故か要らない事をして妙な物を混ぜようとする。
「はぁ〜…一から何まで私が見ないといけないって…ここは幼稚園か何かなの…」
「失敬な!私達は高校生だよ!」
「は見た目はね…」
「むむ!中身は子どもだっていいたいの!」
「………」
「え!ここちょっとした冗談だったんだけど…美森ちゃん?」
「……さてご飯もできたしそろそろ雑炊作るわよ。」
「美森ちゃん!!」
自分は子どもじゃないと否定しようとする山茶花を無視してそのまま雑炊を作りにかかる美森。しかしその傍らで何やらハッと思い浮かび要らない事を考える人物が1人がいるというのを美森はこの後の惨劇に対して思いもしなかった。
…………
「う、う〜ん。………腹減った。」
「あ、起きた一星君。」
「………山茶花か。」
時刻を見るともう18時になってるのに気付きやたらと寝てしまったのと山茶花がここにまだいたという申し訳なさが心の中にあらわれ謝る。
「すまん。わざわざ起きるの待っててくれたのか。」
「ううん大丈夫その間に色々とお掃除させてもらったから問題ないよ。」
「そっそっか。」
勝手に人に家で掃除って随分と図太い性格してたんだな山茶花。
「あその前にお腹空いてるよね。ささ下に降りて食べよう食べよう。」
「ああ。」
やたらとハイテンションだな。でもそれだけ喜んでるみたいなのを見るときっといい物が出来上がったんだろう。確か雑炊だったかな。少しは食べれるとは思うが…できるだけ残さずには食べてやりたいな。
ドドン!
カレーうどん
煮込みうどん
2つ登場…
「………なんだと?」
う、うどん?うどんだと?あ、あれ?何か雑炊がどうとかの話しをしていなかったか?
「………何で2つも?」
「え、え〜とコレには訳があるというか…」
何か訳がありそうな顔をしていい淀む美森姉。
何で美森姉がそんな申し訳無さそうな顔をしているんだ。
「美森姉と香澄ちゃんもまだいてくれてたんだな。わざわざ見舞いに来てくれただけじゃなく料理や掃除までしてくれてありがとう。」
「いいのよそれは別に…ただあなたに申し訳ないというか謝罪しなければならないというか…」
「もしかして作る料理が違った料理が出てきた事か?」
「え?き、気付いてたの?」
「いや何か昼間声が聞こえて…雑炊がなんちゃらどうとか言ってたから…」
それを言った途端何故か視線をコチラから逸らす山茶花と香澄ちゃん。
ああ何かもう分かった様な分かりたくないような。
「……まぁでも病人にうどんというのもありっちゃありだよな。雑炊じゃなくても全然問題はない。なのに何でそんな後ろめたさがあるような顔をしているんだ。夕方だしお昼を食べ損なったからこそのうどん候補にしたんじゃないのか?」
「え〜とそれはそのなんといいますか…」
「ち、違うよ!何も私達雑炊を駄目にしたとかそんなんじゃないからね!単に誤って火加減が間違って焦げた訳じゃないんだから。」
「………そ、そうか焦げてしまったのか。」
「は!?私とした事が!」
「あなたは何がしたいのよ。わざわざバラす様な発言をして……ただの身から出た錆よ。もう……」
「けれどこんな完璧なうどん2つを作れてるんだから結果オーライなんじゃ…」
「その既に雑炊で食料が底を尽きてしまったんです。だから買い出しに分にはちゃっと手間がかかってしまって、それで…」
「それで?」
ガチャ!
「あ!イックン目が覚めましたか?良かったまだ食べてなかったんですね。」
「海未?」
何で海未がここへ?




