不器用な看病候補が更に増えた。
何でこうもこの子は……
額に手をあてながらやたらと頭を悩ませる美森。あまりにも無頓着な山茶花の料理行動に手も当てられないと余計にどうすればいいか試行錯誤する。
こうなったら私が一星の家に行って一星の看病食を作った方がいいのでは?でもこの子はこの子なりに一星の事を看病したいという気持ちもあるわけだし…私が出しゃばるというわけには…
「私の頭が可哀想……は!?まさか美森ちゃん!」
「うん…何?」
「美森ちゃんは嫉妬でそう言う事を言ってるんだね。もう!だからそんな意地悪な事を言うんだ。まだ私をからかうつもりならその手には食わないよ。」
どうしよう…どうしてこの子はこうも自覚がないのかしら。自分が作る料理がからっきし駄目だと言う事に…
ともかく色々と言いたい事はあるけれど…この子にある程度の食材だけは買わしておきましょう。
でないと一星の風邪が悪化してまう恐れがあるかもしれないしね。
「嫉妬であなたに悪戯なんてしないわよ。ほら一緒に一星が食べられる物選んであげるからひとまずその大量に買い込んだ食材を直しにいきましょう。」
「美森ちゃん……」
「ん?」
「美森ちゃんってやっぱり私達のお姉ちゃんって感じだね。何だか頼もしい。」
「あら〜それはいつも私は頼り甲斐がないっていいたいのかしら?」
「ううん!そんな事ないよ。私はいつだって美森ちゃんは頼もしいお姉ちゃんだなってそう思ってるもん。」
「そこまで憤慨にして言わなくていいわよ。逆に反応に困るから…」
「お〜い姉ちゃん。食材なんだけどコレであってる?」
「ああ勇。ちゃんとメモ通り持ってきてくれたのね。」
「ああ。ちゃんと持ってきておいたぞ。単にお菓子コーナーに行ってたわけじゃないからな。」
「な〜にが単にお菓子コーナーに行ってたじゃないわよ。真っ先にお菓子コーナーで自分のを優先してたくせに…まぁいいわ。ひとまずその食材と残りの食材…お金を渡すからついでにまだ残ってる食材も買ってきておいてくれるかしら。」
「えーー!何で俺が〜てか姉ちゃんは何でまだ頼まれたメモのやつ揃えてないんだよ。ここで何して…」
「あ。勇君こんにちは元気してた?」
ダシャン!
ゴロゴロ…
「ちょ!勇アンタ何頼んでた食材落としてんのよ!」
「あ、ああ、ああ…」
「だ、大丈夫?何処か悪い所でもあった?」
山茶花は何やら驚いている勇に転がった食材を手に持ちながら心配そうにして顔を覗き込む。すると…
カーーーーーー!!
「な、なな、何でもないです!」
「………ああ〜そう言う事。すっかり忘れてたわ。」
そういえば勇のやつ山茶花の事をずっと前から好きだったわね。家に遊びに来た時あの綺麗なお姉ちゃん誰?とか言ってたし……私だってアンタにとっては綺麗な姉に該当とするって答えたら私なんかどうでもいいとか言って思いっきり頭をはったたいた記憶があるわ。
「本当に大丈夫?何なら私がジュースでも奢ろうか?」
「い、いいです!大丈夫です!ね、姉ちゃん!」
「うん?何?」
勇は美森の側にまで近づいて小声でそっと言う。
(山茶花さんがいるなら何でチャットしないんだよ!おかげでビックリして恥ずかしい所見られたじゃんか。)
(いや勝手にビックリして勝手に恥ずかしい所見られただけでしょう。自業自得よ。)
(はぁ〜山茶花さんが俺の姉ちゃんだったら良かったのにな〜)
ピシ!
「あだだだだだ!!姉ちゃん!ギブ!ギブ!」
あまりにもムカついた私は勇の腕を後ろへ回し決め技を決めさせさっきの言葉を訂正させるまでひたすら関節技を決めていた。
「ちょ、美森ちゃん勇君が可哀想だよ。その辺にしてあげて…何で勇君にそんな事をしているかよく分からないけど…あまりにも酷いと思うよ。」
「はぁ〜天使だ〜」
「アンタ本当にチョロいわね。」
そう言って美森は関節技を解き昼ご飯のメモリストを勇に渡す。
「私コレから山茶花と用事ができたからアンタそのままメモに書いてる事ちゃんと買って持って帰りなさいよ。後でお母さんに叱られたって言われても私知らないから。」
「ええ!俺も山茶花さんと一緒にいたい!」
「少しは姉の頼みぐらい聞けないわけアンタは!」
あまりにも言う事を聞かない弟の勇に美森と勇は歪みあいながら視線と視線の火花を散らしながら喧嘩をする。
「もう美森ちゃんったら勇君が可愛くないの?」
「いや山茶花可愛いとか可愛くないとかそう言う問題じゃなくて…」
「勇君コレからお姉ちゃんと大事な用があるから勇君とはまた別の日にお姉ちゃんと一緒に遊ぼうね。」
「は、はい!謹んで喜んでお願いききまする!」
「さすがは勇君。良い子ね。ほら美森ちゃんこうやって素直にいえば勇君だって分かってくれるんだよ。」
そんなドヤ顔でやってやったみたいなガッツポーズを決める山茶花。
うん私も同じことをして同じことを言ったんですけどね。
というか勇アンタはそれでいいわけ?しれっとお姉ちゃんと一緒にという山茶花からの申し付けがあったけど、それに気付いてるのかしらあの子…
「じゃじゃあ俺買い出しの続きしてくるね。約束だよ山茶花さん!」
ピューン!
そう言ってスーパーの中を走り抜く勇。
何ともまぁ浅はかな弟だなと姉である美森は内心コレでいいのだろうかと勇の将来の事が心配する美森であった。
「やれやれアレぐらい素直に言う事を聞いてくれれば何も問題はないのにね。」
「勇君はいい子だよ。だから美森ちゃん大丈夫だよ。」
何が大丈夫なのかはさておきそろそろこっちの問題も片付けないといけないわね。
下手に買い込んだ食材をなおしにいき私達は一星の為の食材を選び直す事になった。
「……あのね山茶花。」
「う〜ん…ねぇ美森ちゃんコレとかどうかな?私やっぱり一星君には元気づけてほしいからこっちの方も捨てがたいんだけど…」
ああもう〜この子本当に料理に関しては素人丸出しね。何でこうも性欲のある食べ物ばっかり選ぶのか意味不明だわ。
「やっぱり体が弱った時と言えば精力をつけなければいけないもんね。」
「あなたワザとやってる?」
「え?何がワザとなの?」
「天然って怖いわね。」
「む〜それ私がバカって言いたいの!」
「バカではないわ。単にアホなだけよ。」
「それどっちも一緒だよ!」
ああ言えばこう言うという様なスタンスなポジションでいる私はひとまず山茶花が買う精力がつく食材を省いていく。
「あなたのその無駄にある食べ物の知識…少しは改善した方がいいわよ。でないと後々自己嫌悪を起こす事になるから…」
「どう言う事?」
「……もういいわ。私が選ぶからそれをあなたは一星に食べさせてあげなさい。」
「うん分かったよ。でも手抜きっぽいのは嫌だからね。」
「それはちゃんと料理ができる様になってからいいなさい。」
美森は食材の品を選別しながら交互に確認して買い物籠へといれる。そしてようやく選んだ食材が整い会計を済まして外へ出る。
「さてコレで一応何とか簡単に作れる食材は揃えられたかしらね。」
「う〜お粥ではなくて雑炊ですか。」
「それが1番ベストよ。てかお粥路線から精のつく物を作る気でいたのはどこの誰よ。その方が1番心配しすぎて内心焦ったりもしたんだから…」
「でもでも!一星君に元気になってもらうためだと思って!」
「はいはい分かった分かったから。」
まぁこの子にとっては悪気がないわけだしとやかく言うのは野暮ってものよね。
「それじゃあ送った調理メモリストで美味しく作るようにしなさいよ。私はこのまま家に帰るから。」
「えーー!美森ちゃんも一緒に行こうよ。どうせなら私達2人で看病した方が一星君も喜ぶよ。」
「体が弱ってる人間に厚かましくお邪魔する気なんておきないわよ。寧ろあなた1人の方がきっと安心して……安心して…」
「どうかした?」
どうしようかしら。やっぱり私も一緒に行った方が…
「あれ?先輩方どうかしたのですかこんな所で。」
「ああ香澄ちゃん。元気してた?」
「はい!もう元気バリバリですよ。寧ろ今ある目標が決まって奮起してるぐらいですからね。」
誰も聞いてないのに何で自ら自己報告を?
「所で御二方は買い出しか何かですか?やたらと買い込んでいるみたいですけど。」
「うんそうなの。今から一星君の家に帰って看病しなくちゃならないんだ。だからとても緊急事態なの!」
「???どう言う事ですか?神楽坂先輩に何かあったのですか?」
「実は……」
美森は先程山茶花が言っていた事を香澄に話す。
「え!?変態!……コホン!神楽坂先輩が風邪を引いたのですか!?」
「そう!一星君風邪を引いてしまって今大変な状況なの。だから今から急いで帰って看病をしに行かなきゃなんだよ。」
しれっと変態という単語が聞こえたんだけどその辺に触れていいのかしら?てか何で山茶花は聞こえないフリをしているの?いや寧ろ関心がない…とか?
「分かりました。私はも家が近いのでこのままお邪魔させていただきます。いいですよね。」
え?あなたまで一星の家へ行く気なの?今の流れは山茶花に遠慮する所じゃないの?
「本当!ありがとう助かるよ。私1人だと不安だったから助っ人がいてくれると助かるな。」
一星母の代理は何処へいったの。あなたは一星の世話がしたくて1人で看病するんじゃなかったの…
「ま、まぁあまり迷惑にならないようにね。」
ひとまず気をつけるべき事は伝えたし、2人いれば問題はないでしょう。今回は山茶花の肩を持たせて私は大人しく帰…
「へぇ〜雑炊を作るんですか。」
「そう!でも私は精のつく料理の方がいいっていったんだけど…軽いものがいいという話になって雑炊になったんだ。まぁ私も最初はお粥がいいって話はしてたんだけどね。」
「!そうだ山茶花先輩私に妙案があります。」
「???妙案?」
「はい!どうせなら激辛雑炊とかどうですか?」
は?何言ってんのあの子…
「激辛雑炊……は!成る程辛さで汗をかかせる作戦だね。うんそれいいよ。」
あなたも何言ってんのよ。
「しかも家には特製スパイスがあるんです。その粉末をいれさえすれば…」
…………2人の妄想
「あ〜む。……辛っ!!!でもコレで風邪が早く治るよ。ありがとう2人とも…」
…………
「………ふふ」
「………へへ」
2人は妄想の中で一星に褒められ頭を撫でられる想像を思い浮かべる。
「よし!じゃあ善はいそげだね!」
「はい!」
…………嫌な予感がしないわ。コレはもうこうなったら!




