長年かけた信頼関係
鈍感主人公かよ…全く何でこう神楽坂君はもう〜
「ふぅ〜もういいや。」
「もういいって…ちゃんとした話ならちゃんと聞くぞ。やっぱり理解しないとお互い困る。」
「あ〜いいですいいです。どんなに何を言っても神楽坂君には何も通じないと思うんで〜」
何か物凄い投げやりにされた感じがする。しかも何処かしら不機嫌?
「何故か嫌々な感じで否定されたが…才の薬関係ならちゃんと知るよしがあると思う。」
「言い分はもっともかもしれないけど、君がもう少し幼馴染達の心を理解していれば問題はないんだけどね。だからいくら考えてもわからないからひとまずここでの話は終わりにしない?明日から夏休みだし楽しい事を考えようよ。」
「楽しい事……」
「そう!神楽坂君は別にそんな苦難の為にこの町に戻ってきたわけじゃないでしょう?」
「え…いやまぁそれはそうだが…」
「でしょう!でしょう!それに僕達ようやく幼馴染としてよりを戻したわけなんだしコレを機に数年分合わなかった埋め合わせをしようよ。」
俺にも話せない隠し事はあるがな。
「そうだな。ひとまずその辺の事は後回しにするか…」
「よかった〜それじゃあまた後で連絡するね。お互い夏休みの予定を立てながら色々と決めていこう。」
「おっとその前にいいか。」
「???何かまだあるの?」
「この事は俺とお前だけが知ってる形でいいんだよな?」
「うんそうだと思うよ。あああとお父さん?」
「そこは疑問系じゃなくてもいい俺でもちゃんと分かっている。蒼脊はこの事を知っているとかはないのか?」
「さぁ〜彼の場合興味がある事とない事があるから分からないんだよね。それに僕と蒼脊君との協力関係はあくまでもあの復讐期間だけだったしコレ以上おお互いが干渉する事はないはずだよ。」
だといいがな。恐らくアイツは何かしら知っている。この事をアイツに話して聞くのもありかもしれん。
「何だか吹っきれなさそうな顔だね。いいよそんな君に特別報酬をあげる。蒼脊君はまだ学園に残っている。屋上に行けば会えると思うよ。」
そんな風にビシッと指をさされながら真顔で格好つける東小橋川さん。
「あ、それと多分コレからは僕と君お互い対等な協力関係という立場になると思うから何事も遠慮なく尋ねてきていいからね。因みにさっきの事での才の覚醒の件については勿論言えないけどね。」
「何処が対等だよ。でもそうだな了解。ひとまず幼馴染の誰かが味方にいてくれるというだけでも心強いのはたしかだ。何かあったらはなすよ。」
「えへへ〜それはそれで嬉しいかも。」
「何が嬉しいんだ。頼られるのが嬉しいというなら他の件に関しても色々と頼られてるじゃないか。」
「そうじゃなくて!いやそうじゃなくてではあるんだけど……はぁ〜君には本当色々と何というか……わかった!もうこの際僕は遠慮なくいかせてもらうよ。」
「いつも遠慮なく掻き回している気がするんだが…」
「そこ!五月蝿いよ。………いい神楽坂君。」
東小橋川さんは深く息を吸い込みゆっくりと吐き捨てながら俺に向かって何か真剣な事を伝えようとしているかの様に心構えをしてコチラへと目を向ける。
「コレからは僕にさん付けで苗字を呼ばない事。対等なんだから名前で呼んでくれなきゃ。」
「…………へ?」
「へ?じゃないよ。な・ま・え!もうそろそろ名前で呼んでくれてもいいと思うんだよね。コレまで色々と関係を築いていた仲なんだからさそれぐらいの我儘はいいかなって…」
「いや別にいいんだが…」
「本当!?」
そんな驚く事か?てか今更な気がするのは俺だけかと思ったが…あまり名前に関して気にしてはいなかったし特に指摘する必要もなかったな。それが向こうから指摘し出してきたからまぁ別にいいかってそう返事してしまった。
「じゃあじゃあ試しに僕の事を名前で呼んでみて!」
「林音。」
「いやそんなぶっきらぼうで名前呼びじゃなくてこうもっとあるじゃない初めて名前を呼んだ時の恥ずかしさというか!」
「俺たち幼馴染に今更そんな羞恥心なんかあってどうすんだ。てか俺山茶花の事普通に名前呼びしているし美森姉も普通に美森姉で呼んでるわけで…後海未もそうだし…」
「そうかもしんないけど!そうかもしんないけど!そうかもしんなくないじゃん!」
「意味が分からん。てか何を言ってるんだいったい…」
「だから!こう改めてというか、もっと情が湧く様な…相手の心を掌握したみたいなとか…色々あるじゃん!」
最早彼女の言ってる事と思ってる事に関して俺は何をどう捉えればいいか分からずにおり…棒立ちになりながら何故か苛立つ林音を眺める。
「う〜ん……難しいな。じゃあその時が来るまでは苗字呼びのさん付けでいいか?今の感じだと俺にはそう言ったシチュエーションでの名前呼びは難しそうだ。」
「あきれた〜本当にコレまで言ってムードもへったくりもなくぶち壊しにくるなんて…神楽坂君って本当に女心に対して無頓着だね。」
「俺貶されてる?」
「うんコレばっかりは貶しているかな。でももういいや僕も人のことが言えないかもしれないし普通に一星君って呼ぶようにするよ。お互い変な気を張らずに自然体で話すのが寧ろ周りからは怪しまれずに接して1番いいかもしれないしね。」
「恋愛マスターさんがそう言うなら最初からそれで良かったんじゃないか?」
「…………」
バシャン!
「何故黙ったまま帰っていく。そんなに変な事言ったか俺?」
訳もわからず目が死んだかのようにして教室の扉を勢いよく閉めて帰っていく林音。何やら妙な展開が起こって新たな夏休みが幕を開けるんだと俺は錯覚した。
「さて最後にもう1人片付けて夏本番を迎えますか。」
俺は林音に言われた通り屋上に向かって本当に蒼脊がいるのかどうか確認する。すると…
「マジでいたのかよ。こんなクソ熱いのに…」
「こんなクソ熱いからこそ意味があんだよ。」
「自由すぎだろうお前…」
何処からか持ってきたのかハンモックで日光浴をしている姿でもう夏の満喫感を味わってるのを見ているといつかとバッチリを受けて叱られればいいのにと心の中でつい思いもしない出来心が出てしまう。
「お前も日光浴するか?」
「お前みたいに自由奔放な人間じゃないんでな。それよか何でここで日光浴なんだ。海にでも行けばいいだろう。」
「今日だけがここで唯一自由になれる時間帯なんだよ。わざわざ終業式の屋上でたむろうやつなんていないだろう。だから俺がわざわざそのいない間の自由時間帯を使ってやろうという戦法なのさ。」
「何頭いいアピールなんかしてんだよ。あコレもらうぞ。」
「あ!それ冷やしていた俺のスポドリ!お前勝手に…」
「うんよく冷えてんじゃん。こんなもんまで持ち出して…俺が来るの予想していたんじゃないか?」
「さ〜な〜俺がわざわざそんな事するわけがないし仮にした所で東小橋川にお前をここに来るかもしれないと言うような情報なんて流してないしな。」
ああ〜林音に会えてそっと伝えて尚且つ俺をここに呼び出すように背けたわけか…
「別にそれをしなくてもどっか喫茶店でも寄って話をすればいいだけの事なんだがな。まぁお前がここでいいならそれに越した事はないが……単刀直入に言うぞ。お前俺の事をどこまで知ってる?」
「うん?どこまで?そりゃあお前幼馴染だから昔からの関係で知ってるとこは知ってるさ。向こうへ転校するまではな。」
「そうか…じゃあ言い方を変える。アイツらの事どの範囲まで知ってるんだ。」
「急に話筋を変えたな。お前の事について話をしていたんじゃないのか?」
「どうせお前はぐらかして何も答える気なんてないんだろう。ならアイツらの事でなら何か話せるんじゃないかと思って山茶花達の事について路線を変えてみた。……蒼脊お前既にアイツらがどう言う形で超天才にまで至ったのか知ってるんじゃないのか?そしてその顛末までの未来ももう予測しているんだろう。」
「校長から粗方話を聞いたというわけではないみたいだな。ふぅ〜まだヒフティヒフティーというわけではなさそうだな。となれば先にあっち側の問題が先か…」
「何の話しをしているんだ。まさかまた妙な事を言ってはぐらかす気じゃないだろうな。」
「いいや寧ろお前はまだ泳がされてるというのが分かってしまった。だからはぐらかすも何もそれがちゃんと分かるまではまだ俺も本当の真髄を話す事はできない。だが校長と話した部分があるはずだそれを聞いてからでも遅くはないな。」
そんな回りくどい言い方をしながら俺は校長と話した出来事をそのまま包み隠さず蒼脊に話す。
「………はぁ〜まぁそうかそうだな。アイツら自身がちゃんとそれをお前にどう伝えるかが問題だな。俺もその事に関してとやかく言えたぎりじゃないが…」
「蒼脊お前は今の天才としての力が身についたのは自分自身で了承した上でその薬を投与したのか?それとも向こうが無理矢理…」
「ああ別に俺に関して隠す必要はないから敢えて言うが、俺自身が望んで才の力を覚醒してもらった。」
「そうかお前自身がそう決めてそうしたのなら特に言う事はない。じゃあもう一つ聞かせてほしい事がある。体に何か異変みたいなのは感じなかったか?」
「………特にこれといってはないが。何かあるのか?」
「…………いやないのなら別にいい。」
蒼脊が仮に薬の影響がないと言う嘘をついてる可能性があるかもしれない。本人が本当に隠す必要性がないから話している。それは本当にそうなんだろう。でも……俺はまだ蒼脊の本音の言葉を聞いちゃいない。だから敢えてこっち側もまだ話す事がない事を伏せた。
「そうか。じゃあもう1つ面白い話しを聞かせてやろう。」
「面白い話し?」
「ああ俺はお前の味方だ。」




