脱テスト対策 その十
いやマジでいったい何が始まろうとしてんだ。
ドドン!
ドドン!
ドドン!
ドドン!
「ふむ!」
「せ〜ん〜ぱ〜い!」
「………」
「…え?何コレどう言う事だし?」
うんまさにそれは本当にどう言うこと?
まるで面接するみたいな形で椅子が一つあってそこに座らせられる俺。そして目の前には並べられた机に右端から香澄ちゃん。茉莉奈。鳴神。そして春野原と横並びになって座っている。
「後何か分からんが外野連中は何の為にいるんだ。」
「………キラン!もちろんお前が女の子に対してどのようにアピールするかの採点だ。」
「お前……絶対に俺に対してのアドバイスする気全くないだろう。」
「さて!始まりました!神楽坂一星。ある子に執着したが為に自らの意思でどう彼女に自分の想いを告げられるかどうか今まさに彼の手腕にかかっています。」
「はぐらかしやがった。言ってる分では俺が最初に相談した内容と相変わらないが……絶対に何かがおかしい。俺じゃなくても目の前の4人だって同じように…」
「ワクワク…」
「ドキドキ…」
「しら〜」
「……な、何が始まんのいったい…」
変な期待を胸に膨らます4人。いや2人?なのか…やたらとコチラの方へチラチラと様子を伺う様がみえる。
「さてまず1人目葉月香澄さんです!それでは自己紹介をどうぞ!」
自己紹介?
一星は訝しみながら蒼脊の方へ首を傾げながら睨む。
「エントリーNo.1番葉月香澄です。好きな事は服の彩飾やデザインまたはファッション系諸々です。因みに好きな食べ物は好きな人から作ってもらう愛情たっぷりのオムライスです。」
わぁぁぁ!!
ヒューヒュー!!
ああ?何が始まったんだいったい…
何が始まってんのコレは…
「それでは彼に向けてアピールタイムをお願い致します。」
「はい!」
そういいながら香澄は席から立ち上がりゆっくりと俺の方へ向かって歩き出しそのまま両手で俺の両手を握る。
「先輩!コレから私の為に愛情たっぷりのオムライスを作ってくれませんか?」
「おおっと!まさかの結婚アプローチだ!コレは神楽坂一星心を奪われたのではないか!」
何がだよ。単にお願いしただけだろうが…てか漫画のシチュエーションでもこんなトキメキかない演出は他にないぞ。
「ええとだな香澄ちゃん。俺は…」
パシ!
は?
突然両手を握っていた香澄ちゃんの手がコチラの両手を振り解き背中を見せて席へと戻っていく。
…………
ど、どうすればいいんだコレ?
意味の分からない事が起こりどう言う事かサッパリ分からずにいた俺はゆっくりと視線を蒼脊の方へと向く。
「………」
いやお前が1番困惑してんのかよ。台本通りとかじゃないのかよ。
「は!?えー!以上葉月香澄さんのアプローチでした。」
「テレテレ」
何をそんなにモジモジしながらテレだしてんだアイツ。ああ〜今の状況でいったい何にトキメキを感じたんだ。というかこの茶番はいったいなんなんだ!
茉莉奈は頭を抱えながら悶えつつこの状況に関して全く理解できずにおり何が何だか分からずにいた。
「それでは次エントリーNo.2春野原夢葉さん!」
いや何かさっきからミスコン選手権みたいなノリで紹介されていってるが…マジでどうなってんだいったい。
「はい皆さんお待たせしました!みんなのアイドル〜〜!夢葉ちゃんです!キャピン!」
うおおお!
夢葉!!
「………」
「………」
まさかの自称アイドル呼ばわりする夢葉に一星と茉莉奈は唖然としながら開いた口が閉じずにいた。
「でもでも私は一筋なアイドルなので、もう心に決めた男の人でしか愛せないんです。」
ぶ〜〜〜〜!!
ふざけるなそんな男死んでしまえ!
いや寧ろ血祭りにあげてやる!
………いや何かもう予知できるというか…コレ俺の事言われてね?自意識過剰と言えばそれでいいんだが…明らかに春野原のやつ俺へ向けての視線をしてるぞコレは…それに伴って周りの反響が恐ろしくも怨念を感じる。
「………」
私はコレに参加してどうしろと言うんだ?え?まさか神楽坂先輩に私が惚れてるアピールをすればいいのか?こう言う催しなのかコレは!
「それではせ〜んぱい!私に何かいうことはありますか?」
「何もないし特にコレと言って何があるわけがない。と言う事で何かこの意味の分からないアピール?みたいなのは終了してくれて構わない。」
「ひ、酷!」
ぶ〜〜〜!!
何でお前ら一年共にブーイングされなきゃいけないんだ。本当に何なんだコレは…
「全く彼はどうやらこのゲームに関してよく理解していないみたいだ。と言っても勝手に脱落しちゃせわないんだけどね。」
お前よくもまぁ虎視眈々と…てかコレ何のゲームなんだよ。勝手に2人が自滅して何のアピールタイムで俺が海未へやる気を出させる形になるんだ。もっと具体的な説明を寄越せよ。
「ではでは気を取り直しまして…我が生徒会での書記係鳴神木葉さんに彼へのアピールをしましょう!」
「お前さっきから何をやらせてんだ彼女達に…というかコレにいったい何の意味が…」
「意味があるかは私が判断させてあげる。さっきから聞いてれば文句ばかり…あなたにはまず女性は対する品が足りないのよ!」
「いや俺は何も聞かされずにここへ連れて来られて…それで何故か違う学年へと周っては尋ねての質問でこの意味の分からない事をやらされている立場なんだが…鳴神はその辺どう思って俺に何のアピールをするんだ?」
「ふっみなまで言わせないでくださいよ。他の2人は何もあなたにアピールせずにただただ何も考えずにやられて無惨に散ってしまっただけ…でも私は違います!私は既にあなたへ対してのアピールをしているんですから。この私という美しさのアピールという意味でね!」
「………」
いやいや!何言ってんの木葉ちゃん!アンタのどの部分に美貌が!寧ろ可愛さでの意味ならそのチンチクリン差が映えるというのがあるかもしれないけど……いや…え…いや……な、なんなんだいったいコレは…
ど、どうしよう。う、美しさ?え?美し……いやいやコレはきっと何か試されてるんだ。海未の時もそうだった。自分の美しさをアピールしたいが為に俺に色々なアプローチをしてきたじゃないか…それと比べたら今回のなんて……
一星はそう思いながら以前のしつこいぐらいの自分綺麗になったね?というアピールをしてくる海未の事を思い出し色々と重ねがける。
「うん。まだアイツの方がわかりやすかったな。」
「どう!私のこの可憐な姿……こんなコンテンストなんかにわざわざ出てあげたんだから、素直に私の事を好きだって…」
「言うわけないだろう。大体それでいったい何がどう判断してくれというんだ。まるっきり話にならないんだが…」
「…………」
顔を思いっきり膨らませながら、周りに冷ややかな目をされこの状況に居た堪れなくなってしまったのか彼女はそのまま泣き崩しながら教室を出ていく。
「………ええ〜何がしたかったの木葉ちゃん。私このカオスな状況でどうすればいいんだし…」
何故か妙な空気となってしまった一年の教室。そしてラストである茉莉奈がトリとしてどんな事で俺に何を分からせてくれるのか?少し残念な気持ちもありつつ期待をするが…問題点が一つある。
「え〜では次君津家茉莉奈さん。どうぞ〜」
…………
まぁそうなるわな。今1番噂とされている君津家茉莉奈。その子をこの土台にあげる理由が分からない。彼女の弁明が時間によって和らげるのなら今はまだその時じゃないと思うんだが…
「………じゃ、じゃあ私が、い、いかせてもらうからね。」
まるで周りの事等気にせずコチラへと近付いてくる茉莉奈。いや多少は気にしているんだろうか…チラッと外野の方へ視線をむける様がみえる。
ふぅ〜ちょっと無理矢理かもしれないがやってみるか…
「茉莉奈お前がこのゲームに参加していると言う事に少しばかり驚いている。でも半ば強制的じゃないんだろう?」
「え?いやその…」
「え?もしかして強制的だったのか?」
「3人に無理矢理押されてそれで…やむをなしに参加させられた言うか…」
ああ〜なんかやたらと茉莉奈だけあたふたとしていたが…あれはそう言う事だったのか…
「じゃあ無理矢理ひっぺがえしてでも断れば良かったのに…」
「したかった。したかったけど…私にそんな権利ないというか…寧ろ晒し者的な立場と言えば聞こえはいいかもしれないけど香澄ちゃんがそれで私に復讐するならそれでもいいかなって…」
「え!そんな事思ってないよ!私普通に先輩の為に協力してあげようとしてただけだし、何よりも茉莉奈ちゃんとの一緒の初イベントなんですから。ここで断ったりされたら凹んでいましたよ。」
「何でアンタが凹んだりするのよ。特にコレといった支障なんて…」
「友達の名誉挽回の為なんですよ。いつまでも茉莉奈ちゃんの変な噂を広まれたりするのはあまり私はとしては嬉しくありません。」
「あ、アンタ…」
………もしかしてコレって…
俺は端っこ側で香澄ちゃん達の事を見ていた蒼脊と君津家先輩の顔を見て蒼脊はふぅという溜息を漏らしつつ、君津家先輩はただ首を頷きながら何やら肯定している。
アイツらまさか俺を利用してコレを狙っていたのか……
もうそれだと趣旨が変わってくるんじゃないか?アイツらの事で俺を利用して一年生達による噂を緩和させる仕組み…まぁ君津家先輩が蒼脊に頼んだという線はあるが…でも何で蒼脊にそんな事を?いやアイツならこの場での利点をどうにかしてくれるとは思うが……
「おおっと?コレは何やら予想外な展開だ。さて神楽坂一星君はこの展開をどう切り分ける?」
実況者で側から関係ないですみたいな反応は腹正しいが……どちらにせよこの場で俺が関わらないという選択肢はない。さっきの思った事を悔やんだりする必要はない。そのまま言うがままに事を納めろ俺。




