脱テスト対策 その五
幼馴染達との話で海未を見張ってのテスト対策が始まった今日この頃…東小橋さんが決めた対策で乗り気になってしまい放課後みんなでお泊まり会兼ねての勉強会が始まる事となったのだが…
「いやでーす!」
「こらまちなさい!」
「待てと言っていったい誰が待つと言うのですか!」
「漫画の言葉を使ってんじゃないわよ!あなた今の状況がどういう事なのか分かってるの!」
「分かっています!でも美森様から教われる勉強は嫌です!死んでも嫌です!」
「何ですって!!」
そんな駄々をこねる海未に美森姉は…あの皆んなの憧れる美森姉の姿がこんなおてんばな姿を曝け出しながら海未を追いかけまわる。
「あの蕾様がまさかあんな破天荒な姿をお見せになられるなんて…まさに神!」
アホな事を抜かしてる奴がいる時点でこの学園はなんか終わった感がある。という周りの男子が今の美森姉に対してやたらと不穏な感情を抱いてるような。
「……あれ?今思えば美森様という名前を言われてるのって海未だけじゃないか?周りからは確か蕾琵心という名前で定着されてるのにどういう事なんだ。」
「ああ〜それはほんの一区切りの人達が言ってるのよね。海未ちゃんが偽名した名前を言わず、そのまま本名で様付けをして周りからはその様付けが定着してしまったのよ。」
「ああ〜そういう事……しかしそれはそれで傍迷惑だな。せっかく企てた計画が全部海未のせいでおじゃんになってしまったわけだから…結局俺に対する復讐というのはあまり意味がなかったんじゃ…」
「それがそうでもないのよね。話が長くなるから敢えて話さないけれど、あの子ああ見えて約束した事はちゃんと守ってくれるから周りに美森さんの名前を言っても何それ?みたいに惚けてくれるから何とかまかりとおりして上手くいっけてたのよね。」
……だから美森姉という名前を学園で聞いた時。誰それ?とかそんな名前うちにいないよという反応されたのか……それって海未の人望というかいい加減なやつだから敢えてスルーされてる感あったからじゃないのか?
「それでも尚女子による人気度が高いのはやっぱりあのルックス的なのが問題なのか…なら女子側では美森姉の名前が美森と認識されてもおかしくなさそうなんだが…」
「そんなのを覚えるよりかは海未ちゃんに対する女子側での比率する人気と知名度の方が高くなってしまったのよね。まぁ彼女の個人差でのアレだとは思うけど…」
何だろう自分も1番知名度の高い人間なはずなのにそんなこと言われても全然説得力がない。……アイドルだからなのか…
「はぁはぁ……なんてすばしっこい子なの、はぁ、はぁ…ど、どこかの、猿じゃないのに、はぁはぁ…」
陸上部の部活の人が空を飛ぶ部活の奴に負けてる。何か物珍しい光景だ。
「どうしたんですか美森様!まだ私は動けますよ!」
「くっ!憎たらしいと思えない純情な目。あの子はどんだけ心が澄み渡ってるのよ。」
「それは単に美森姉が海未に甘いだけだと思うぞ。」
「あなたね〜側から見てるんならとっとと手伝いなさいよ!」
「俺が手伝った所で陸上部の人間が無理なのに追いかけても無理なのは分かるだろう。第1あの体力スペック……本当に昔の海未なのかよ。ちょっと走っただけでもばててたのに…本当世の中わかんねぇもんだな。」
「そうね〜」
……………
「あの2人ともそんなに懐かしんでいいの?海未ちゃん普通に逃げていったわよ。」
「あらら…」
「あららじゃないわよ!よしこうなったら!」
「こうなったら?」
ジャジャン!
「って…一年の教室にしかも海未の席にお菓子を仕掛けるって…そんな子ども地味た罠に引っ掛かるのかよ。まだ残ってる一年達は普通に何あれ?みたいな反応して困ってるし…後ここからじゃ俺達丸見えじゃね?」
普通に廊下の角側からしかくでみえる範囲で海未の教師を見れる形で隠れる俺達。しかしそれでもコレはさすがに…
「わあ!!私の好きなのばかりです!誰ですか!私にこんな差し入れしてくれたの!あなたですか!それともあなたですか!」
グッ!
いやそんな真顔で親指立てられても…
珍しく美森姉のドヤ顔親指グットサイン。何か海未に対してしてやったりみたいな顔をしているけど……海未お前おやつに釣られる程脳みそがそこまでやばかったのか…それは補修にもなるな。
「は!?誰も私に差し入れをしていたわけではなく置いてあった。つまりコレは罠という事ですか!いったいだれがこんな事を…」
「それは私よ海未。ようやくシッポを掴んだわよ。」
「ひ、卑怯ですよ!物で釣るなんて年上としてどうなんですか!」
「んなもん知ったこちゃないわよ。ふふ、あなたにはさんざん手を焼かされたからね。コレぐらいは当然至極よ!」
駄目だ2人ともさっきから何かアホの会話にしか聞こえなくて…途中から笑いが吹きこぼれそうになる。いやダメだダメだ本人達はちゃんと真面目にやってるんだ。最後まで見届けなければ…
「くっ!ならばここから颯爽と逃げなければ……しまった!」
「その通りあなたはもう八方塞がりなのよ。」
「な、なんですって!」
「あのさ〜そんな一々馬鹿げた話し合いしなくてよくないか?もうさっさと連れていこうぜ。山茶花と東小橋川さん家で待ちぼうけになってるってさ。」
「あの2人全然姿が見えないと思ったらもう先に行ってたのね。……逃げたわね。」
私も逃げたかったんですけど…生徒会の会議があって、海未ちゃんを探すのを手伝わされてしまって逃げれませんでした。くっ……なんて不覚。
「それは美森姉の圧が原因が分かって帰ったんじゃないのか?」
「だとしても普通は手伝わないかしら。海未の為とか思うでしょうそこは!」
「う〜ん……だって言ってるけど本人はどう思ってるんだ。」
「正直な感想美森様よりイックンに教えてもらいたいです!美森様よりかはイックンの方が優しいですし覚えやすかったです。」
「ふ〜ん。つまり、あなたは私を拒みたくてあんな挑発的なトリームを送ってきたのかしら?」
「へ?」
「いやそれはさすがに把握しすぎじゃないか。いくらなんでも美森姉が邪魔だからってそんな回りくどい事を海未が……」
キョロ…
アイツ視線晒しやがった。マジなのか…自分の成績が危うのにそんな変な事を考える余裕があったのか…てかそこまでしてトリームでそんな挑発をしたのか……ちょっと気になるじゃないか。
「まぁまぁ今回は私達もいるんだから、そんな厳しい教え方はしないはずだよ。基本的に美森さんは優しい人だから。海未ちゃんだってよく知ってるじゃないの…」
「基本的に優しいって…つまり川兎ちゃんは私の事は普段おっかない性格だと思っているのね。」
「そ、そんな事は…ありま、せんよ〜」
目が泳いでる泳いでる。せっかく説得してくれた事がなくなるからちゃんと美森姉の目を見ていってくれ。
「そう〜なら私の普段優しい所の例を5つ答えてくれるかしら?それぐらいはないとさっきの言ってる事がただの戯言だって言うのが一目瞭然になってしまうからね。」
「ひっ!」
ああ〜完全に根にもってるな。本当気になる部分を解消しないといけないのは昔ながらのサガなのだろうか……美森姉は外見は変わっても中身は変わらないんだな。
「は〜いそこ、今絶対私の内面的な事を思い浮かべたわよね。あなたにもキッチリと話を伺うわよ。」
怖…エスパーかよ。ただ顔を合わせないようにしただけなのに…何でそこまで察しがいいんだ。
「くっ!ここで捕まるわけにはいきません!そう私はただ単に勉強したくないんです!」
「あなたね〜〜」
「とうとうぶっちゃけちゃいましたね。海未ちゃんらしいと言えばらしいんですけど…」
海未のおかげで美森姉のいい所を言う話を上手く遮断させ内心ホッとしながら海未の事を呆れつつ安堵した話かたをしてツッコミをいれる。
「けどね海未。もうあなたここから出られないと言う状況は既に理解しているわよね?」
「はい!」
「なら大人しくこのまま私達に連行されるというのもちゃんと分かってはいるのよね?」
「いいえ!」
「そこははいと言いなさいよ!」
「美森姉落ち着けって、それだと海未のペースに狂わされて話もまとまるもんもまとまらないぞ。」
「この状況でどう話がまとまると言うのよ!」
確かにその通り。もう何だかしっちゃかめっちゃかでどうしようもできないみたいになってて、話のつけどころが分からなくなっている。もういっそこのまま海未を連れていった方がやはり早いんだろうなきっと…
「ふぅ〜もう埒が明かないわ。一星!川兎ちゃん!」
ビシ!
ビシ!
俺と宇佐木田さんは美森姉に指された場所に移動し海未を逃げさせないように扉の前へ佇みその場を死守する。
「さ〜てこれでもう逃げられないわよ。周りの子達に迷惑がかかってしまうけれど、あなたさえ捕まえてしまえばもうこっちのもんだものね。さぁ観念して捕まりなさい。」
「ひ、卑怯ですよ!そんな小細工を使って美森様は良心というものがないのですか!」
「良心があるからあなたの赤点回避を避けようとしてんじゃないのよ!いい加減私の意図を伝わりなさいよ!このおバカが!」
「ふぇ!罵倒されました!美森様やっぱりドSだったんですね!」
え?今更そんな部分を突っ込むのか?もう誰もが知ってる事だろうに…
「ちょ!周りに誤解される言い方はよしなさいよ。私はいつだって温厚のある人間で、それに私はドMの素質が…」
「ニヤ!それ!」
ビューーン!
「あ。」
「あじゃないよ!何1人で妙なカミングアウトしちゃって逃してんのさ!てかどこにリフレクションシューズ何か隠し持って……」
周りの生徒達が注目する場所に目をやるとどうやら机近くにある巾着袋の中に入れていたと思われるリフレクションシューズと普通の靴を取り替える痕跡が残っていたのが窺える。
「くっ!上手く周りの注目を淫乱かもしれない美森姉の所へ集中させたのか…やるな海未ってあた!」
パコン!
美森姉に思いっきり恥ずかし目を受けた腹いせなのか俺の頭をバコンと殴りながら恥ずかしいのを我慢する。そしてまた一から海未を追いかける羽目になってしまった。




