脱テスト対策 その三
2日が経ち結局そこまで海未に勉強を教える事ができずにいた俺はどうしたものかと頭の片隅で考え咄嗟に思いつく事ができそれを実行した。
「それで何でマッキンにきて勉強をするのですか…」
「放課後他の所で勉強するよりかはまだここの方が捗るだろう。」
「い〜や〜です。勉強嫌いです。頭使いたくありません!」
「お前な〜自分の進級の問題もあるのにそれでそのやる気じゃどうやっても打開できないぞ。」
「だって!だって!」
「だっても…」
「だってもへったくれもありません!いい加減にちゃんと勉強に集中したらどうなんですか蒼さん。」
「ひっ!」
「そうだよ蒼さん。勉強なんて直ぐできるんですから頑張りましょうよ。私達も力を貸します。」
「うう〜」
「はぁ〜我ながら妹として情けありませんね。」
「………」
俺と海未の他にも3人がここにいると言う事に驚いた俺は海未の勉強を教えてるのを見られてしまい何をしているの?と聞かれそのまま応えると…それでしたら私達が手伝いますよとそう言われ今こうして3人を含めての5人による勉強会が始まった。……正直同じ一年の3人がいるなら俺別にいらなくならないかと思ってしまうんだが…
「あ、先輩ここの問題なんですけど…」
「え?ああ…」
何故か生徒会の子の鳴神木葉が2年の勉強を知りたがって色々と質問する。しかし普通に答えたら分からないはずなのにこの子は物覚えがいいのかそれを簡単に理解して問題を解く。
「ムム!イックン今は私に勉強を教えるはずなのに何で木葉ちゃんに勉強を教えてるんですか。」
「やる気のないお前にあれこれ言って全然手がつかないから俺は彼女が聞きたがってる問題を教えてるだけだ。俺に関しては特に何もわるいことはしてないと思うぞ。」
「そうですけど!そうですけど!でも!でも!そうじゃないじゃないですか!」
「あ〜〜???」
何が言いたいんだいったい…あってるのに違うって言いたいんだとは思うが…何が違うのかがサッパリわからん。後自分自身もそれが分からない顔をしてるから余計に困る。
「ほらお姉ちゃん私がちゃんと教えてあげますから。家でやったのと同じ感じで解いてください。」
「ふぇ〜〜〜」
またもや負い目にあう海未。どんだけ勉強したくないんだコイツは…
「でも意外だな。まさか茉莉奈が普通に勉強できるなんて…ギャルだから普通に無理だと思っていたんだが…」
後珍しい組み合わせでの3人がここにいると言うのも言わんがたしだし…
「見た目で判断してはいけないというのがよくわかっていただけたと思います。」
「本当に見た目だけじゃないんだな。」
俺は彼女の小テストの点数を見せてもらいほとんどが高得点をとっている事に驚く…ギャルお嬢様は伊達じゃないんだな。
「しかし驚きでした。まさか蒼さんが勉強苦ってだったなんて…」
「お恥ずかしながら私の姉は常にparadise Skyの事しか考えておらず…優先度を全てそっちに向けているんです。そのせいで昨日も勝手にシューズをはいて飛ぼうとしていましたし…」
「またか…」
昨日は確か気分転換に空を飛んでくるとかいいだして夕方の5時ぐらいから3時間ぐらい戻ってこずに何処まで飛んでいったんだと心配するぐらいになって様子を見に行こうとしたら…本人は荒い息遣いをして完全に勉強の事を忘れていたとほざいた事を言って…時間が時間だった為その場ではお開きにした。しかし…
「夜中に空を飛ぶのは確かダメでした筈ですよ。蒼さん。」
「大丈夫ですよ!皆んなに迷惑がかからない場所で練習をしていましたから」
ぐぃ〜ん!
「普通に練習とか言ってどうする。お前反省する気全くないだろう。」
悪びれもしない顔をする本人の頬を引っ張りごめんなさいごめんなさいと連呼しながら謝るが…ちゃんと帰って勉強しなかった分も含めそのまま引っ張り続ける。
「で、でも!ずっと勉強するというのはやっぱりよくありませんよ。気分転換という意味ではいい意味でいいんじゃないですか。」
「茉莉奈ちゃん〜〜」
「あ、そういうのいいですよ茉莉奈ちゃん。気を遣っているのならそんな気遣いは不要です。寧ろお姉ちゃんの為にもなりません。」
「そ、そんなんじゃ!」
「そういう顔をしていましたよ。もう終わった事なんです。いつまでも引き攣って遠慮な接し方をすればそれこそ友達に対して無礼というものです。」
「うっ……」
「気持ちは確かに分かりますが今は考えなくてもいいんじゃないんですか?2人に関しては大人達がちゃんとしてくれるという話しになってますしあなたに責任はないはずですよ。」
「そ、それは……けれど少しでも罪滅ぼし的なものをしないといけないなと思ってるし…私は本当にしでかしていけない事をした。あるまじき事をしたんだ。飛鳥や杏奈だって特に悪意があってしたわけじゃない…お金で物を言わせた感はあったかもしれないけど…私はあの2人に関しては…」
「茉莉奈ちゃん。」
罪悪感か…まぁそうだろうな。そんな風に割り切れるなら寧ろ香澄ちゃんを虐めての海未の気をひかせるなんて野暮なマネはしないだろう。色々とその辺を含めて覚悟をしていたはずだ。恐らくそれでうまく事がいったら自分から姿を消そうと思っていたか……いやそうはならなかったというのが1番の明白だろうな。キッカケがあまりにも大きすぎたんだ。自分により寄せる負荷が…彼女の方へと蓄積されてしまうのが実感してもう今している事はやめようと決心した。罪滅ぼしというならいつかやるかもしれない自害の可能性だってなくはない…例え自転車での事故だったしても一歩間違えれば死に至る可能性だってある。だから彼女は今生きているという証を証明を…少なくとも身近にいるものから何とかしようと頑張ろうとそう決めたんだろうな。
「あ〜はいはい。妙な不穏な空気を作っておいてあれだけど…そんなどんより考えている余裕はありませんよ。」
「え?」
「あ!」
鳴神は俺の隣にいる海未の方へ視線を移しいつのまにか隣に座っていた海未が消えていた。
「アイツどこに!」
ピコン!
「あ?」
何やらメッセージみたいなのが届きその中身を開いてみると…
[すみませんこのままだとまた気を落ちてしまいそうなので、自分の根性を叩き直す為に飛んできます!……追伸:帰ったらちゃんと続きやります。……多分。]
「あの野郎とんずらしやがった。てか普通荷物を置いてここから出ていくか?」
「あはは、何ともまぁ蒼さんらしいですね。」
「らしいというより…最早野生児ですよあれは…」
「蒼さんのイメージってわりかし女性には人気なんですけど、こういった面を知る私達はやはり他の方に言っても信用してもらえないんでしょうかね。」
「……まぁあの容姿で周りに定着されてるんじゃ無理があるな。というか本当に何であんなんになってしまったのやら…」
王子様に憧れているわけではなく、お姫様に憧れるニュアンス。それを誰しもが見てくれてなかったおかげなのか…はたまた自分のポテンシャルを活かしてでのあの気品の差なのか…まぁ勝手にやってくれとは思うが俺に対しては違う態度なんだよな。……本当になんなんだよ…俺に綺麗って言わせたいだけの為にあんないつもとは違う仕草って…反則なのにも無理がある。
「まぁ姉の不始末はまた帰ってからするとしまして…どうしましょうか…このままお開きにします?」
「そうだな。」
実際問題。海未の勉強を見るという目的でここに来たわけだし別にここで長居する必要はないしな。
「あの〜それでしたら、私事その先輩にお願いしたい事がありまして…」
「お願い事?」
「はい。蒼さんの代わりと言っては失礼かもしれませんが私にもその勉強を教えてもらってもいいでしょうか。」
「???ああ別に構わないが…」
「本当ですか!やった!」
やった?何で教えてもらうのにそんな喜ぶんだ。後そんなモジモジとしながら聞くような事か?
「あれ?でもお前成績は別に…」
「え〜とですねここの問いなんですけど…」
問答無用でこっちの方へ回ってきやがった。
「……いやお前ここ普通に解けてるぞ。」
「ええ!本当ですか!私あれからちょっとあまり勉強していなかったんで、もしかしたら何処か間違ってるのかなって思ったんですけど…よかった〜やっぱり先輩に聞いてよかったです。」
白白しい…
白々しい…
あの子完全に変態先輩の事を取り繕うとしていますね。
油断も隙もありやしません。
もしかして君津家さん彼の事が…いやいやそんなまさか単に分からない所を聞きたがってただけですよねコレは……やっぱりそうじゃないのかも。
「おい…何故そんな風にくっついてくる。コレじゃ見えにくいんだが…」
「ええ〜そんな事ありませんよ。ほら私がこうやってちゃんと見せればなんも問題ありませんよね。」
あざとい!
あざとい…
え!え!茉莉奈ちゃん絶対に変態先輩の事をモノにしようとしているじゃないですか!何なんですか!何なんですか!いったいいつのまに彼の事を好きになったのですか…
本当にこの人のどの部分を好きになったのか全く分かりませんね。皆さん頭どうかしているんじゃないですか……
「!?」
「!?」
2人がそんな事を思いながら心中吐露していると窓際に密かに映り出す影を確認して体をビクッとさせる。
「いやここも普通にあってるし…何処をどういう風に教えてほしいんだよ。」
「ですから〜私はこのの問いがちょっと難しくて〜」
「とてもそうは見えないが…」
ちゃんと理解できているであろう部分にマーカーつけてるし、それに何か猫ちゃんみたいな顔でポイントみたいなのが書かれてる。分からない人間がこんな事を書いてわざわざ俺に質問するって普通におかしすぎんだよ。
「ね、ねぇ茉莉奈ちゃんそろそろ私達も帰りませんか?」
「え?でも私まだ分からない事が…」
「いえ!その辺に関しては私達がきちっと教えますので問題ありませんよ。」
「でもでもこの分野って2人とも苦手だよね?なら先輩に教えてもらった方が1番よくない?」
本人が1番理解しているのにわざわざ聞く必要あるか?
「てか2人ともどうしたんだ。さっきと違って言ってる事が何か違うぞ。というより何にそんな怯え…」
「そうよね〜何に怯えてるのかしらね〜」
!?




