夢から覚めた後の心配させてしまう姉の思いやり
ここは何処だ?見た事のない場所だ。というより俺何でこんな所で寝てんだ。
謎の機械音と共に目覚めた俺は周りをぐるりと首を動かしながら観察する。だけど…
「うっ!」
身体が動かないというより何だこの激痛は!
「あ…でも言葉は話せる。本当に何がどうなってんだ。」
パリン!
ビチャン!
「一星あなた…」
何か瓶が割れた音と水の音が聞こえたのだが、その方向へ視線は向けられても何がどうなってるのか身体が動かせない為誰かが驚いてるという事しか分からずにいた。
「どうしたのですか!今物凄い音が聞こえましたが!」
「あ、すみません。今面会で神楽坂君が目を覚ましたみたいなんです。先生を呼んでもらえますか。」
「分かりました。今すぐ先生を呼んできますので、絶対に神楽坂さんを起こさないようにお願いしますね。」
「はい!」
ダダダダダダ!
先生?つまりここは病院か?でも何で俺が病院に……
一星は今の状況を何とかして身体が怠い状態で頭を整理して思いだす。
「ああ〜そうか、俺あの時2人を助けようとして……壁に突っ込んだのか…」
頭が朦朧しつつ無理矢理思い出そうと何とかよぎりながら捻ろうとするが…
「いっつ…頭が…」
「一星今は無理に何も思いださなくていいから大人しくしていなさい。今先生呼んでるからもうちょっとだけ辛抱して頂戴。」
「………美森姉。美森姉がどうしてここに…」
「その事も含めて後で話すわ。あなたはそのままもう暫く寝てなさい。」
「……ああ。」
今は何も考えたくない。そう思ってしまうほど俺の身体は項垂れ頭がぼうっとしていた。コレはかなり重症だなと思いつつそのまま先生が来るまで大人しく待っていた。
「……ふむ。見た所症状は良いとみてよさそうだね。コレならば残り2週間で身体が元通りといくだろう。後はこの子のリハビリ次第だがね。」
「本当ですか…本当に良かった。」
「……まぁ本当はもう1ヶ月は入院をしても良さそうではあるが、だんだんと意識もハッキリしていって良好へ向かってるのは確かだ。」
まさにその通りだった。起きた瞬間の気だるさはなんだったのか…それが一気に身体から放出されたかの様に気楽になって、嘘だろうと思いつつ自分の身体を疑ってしまうほど驚く。
「……先生ここにあの2人はいるんですか?」
「あの2人?」
「はい。八月一日いや葉月姉妹は…」
「あ〜一星その事は私が後で話すから…ひとまずも少し横になった方がいいんじゃない?」
「え?」
何ではぐらかしたんだ?2人の安否を聞くだけなのに何でそんな避ける様な言い方を…
「???何かお友達に関係する事だったりするのかな?まぁもし気になって思い出せそうなら私に尋ねてくるといい許容範囲内であればある程度は答えられるからね。」
そう言って先生と看護婦さんはこの場から去って、俺と美森姉ふたりだけが病室に残る。
「美森姉…海未と香澄ちゃんはどうなったんだ。助かったんだよな。」
「一星。残念だけど2人は…」
「嘘だろう。」
あんな必死になって助けたのにまさか2人は俺よりも大きな怪我をいやもしかして死んでしまった可能性も…
ガチャン!
ガチャン!
「イックン!」
「先輩!」
バタバタバタバタ!
「うわ!」
扉が勢いよく開けられ誰かが中に入ってきてダイブするかの様にコチラへ布団の方へ突撃をしてくる。
「あなた達もう少し大人しく入ってきなさい。ここは病室よ。」
「ふぇ〜〜ん!だってだってイックンがようやくようやく〜」
「はい!目を覚ましてくれたんですよ!私どれほどこの時を待ち侘びたか!」
もう何がなんだか…激しい泣きっぷりをしてくる2人に困惑する俺はどうすればいいのかと美森姉の方へ視線を向けると…
「ぷす!くくくく…」
奇妙な笑みを浮かべ半笑いしていた。
うん…どうやら俺は美森姉に弄ばれてしまったようだ。さっきの深刻に考えていた俺が馬鹿だったよ本当に…今度絶対に美森姉の何か嫌いな物を押し付けて嫌がらせしてやる。
「え〜とお前らは無事だったんだな。と言うかあの場から俺はどうなったんだ。壁にぶつかったという思い出しそうで思い出せないでいるんだが…
「あぼねあほほほでね。ほれへね。」
「いや何言ってるか全くわかんねぇよ。香澄ちゃん説明を…」
「うえええん!うえええん!うえええん!」
「………」
よわった…誰1人俺の問いに全然答えてくれやしない…というか会話にすらならないとは…
「はぁ〜あんまし聞きたくないやつに聞くことになってしまうが……美森姉どう言う事か説明してくれないか。」
「まぁそう言う反応になってしまうわよね。この2人ずっと気に病んでいてようやく肩の緊張が取れて言葉も上手く出せないんでしょう。というか一星いくら病人だからってそんなあからさまに嫌そうに尋ねてくる言い方あるかしら?治ったら覚えておきなさいよ。」
……聞く人選を間違えたか…俺退院したくなくなったかも…
「まぁこんな事で釘を刺しても後味悪いでしょうし順を追って話すわね。まずあなたがその2人を助けた事で助かったのは間違いないわ。」
「そうか…」
内心ほっとしつつ安堵の溜息を漏らす。だけど言い方から察するに間違いはないと言う後の単語が多分あるんだと俺は実感し続きを聞く。
「でも僅かな軽傷を負ってしまった。因みにあなたが背負い込む様な怪我ではないと言う事も伝えておくわね。コレは紛れもなく事故…あなたが2人を助けた事で軽い軽傷で済んだのは間違いないわ。」
「そうかあの時の判断は間違いじゃなかったんだな。」
「………2人とも悪いんだけど一星のお目覚めお祝いにジュースでも買ってきてくれるかしら。」
「え?でもまだ話しが…」
「ゆっくりとジュースを飲みながら話してもいいんじゃないかしら?ほらつまる話もあるでしょう。」
「はい!分かりました!ほら行こう香澄!」
「え!でも私まだ変態先輩にお話しが…」
ピューン!
しかしそんな有無を言わさず香澄を連れて自販機の所までもうダッシュ!していく2人…その2人は看護婦さんに廊下は走るなと大きな声がコチラまで響くのを耳にする。
「慌しいやつだな本当に……で?あの2人に聞かせてたくない内容なんだろう?やっぱり俺の選択は間違いだったのか?」
「ええ、あなたの選択肢は大きなミスをしでかしたわ。自分の身体に支障がなく、尚且つあの子達を助けれる事ができた。でもねアレは単なる奇跡にすぎなかったのよ。本来あんな奇跡は絶対に起こらないわ。」
「何でだ?ダイヤルを最大限に上げる事で海未と同じ様なハイスペックな出力が出せたんだ。助ける事は確かに奇跡だったかもしれないが…それも運が良かっただけという話で…」
「そのダイヤル式…一星あなたの身体の一部が壊れてしまってた可能性があったのよ。」
「………は?」
どう言うことだ?paradise Skyでのリフレクションシューズは安全な靴じゃないのか?なのに体の一部が破損する可能性があった?いや待てだとするなら…
「海未は!海未はどうなんだ!アイツもダイヤル式を使って最終勝負をしてたんだよな。ならアイツも体に支障が!」
「あの子は大丈夫なのよ。あなたも十分知ってるでしょう。あの子が天才だと言う事を…」
「あ……」
そうかスポーツにはそれぞれの向き不向きがある。その中で俺は無理にparadise Skyでのリフレクションシューズで慣れないやり方を海未と同じ事をしてしまった。そんな事をすれば普通の奴は誰だって致命傷を喰らう……それが俺であったという話か…
「………」
「で・も・ね!」
グィーーン!
「いてて」
美森姉に無理矢理頬をつねられる。
「天才だとか天才じゃないとかの云々の話しじゃなくて、少しは自分の事を第一に考えなさい。どれだけ心配させたと思ってるの!」
「ご、ごめん…」
本当に物凄く心配してくれたんだなと実感させられてしまう程美森姉の顔は真っ赤になって涙目になりながらコチラを睨む。
「悪い…そんな心配させる様な事させるつもりはなかったんだが…余計に何か悪い事させてしまったな。」
「そうよ!あなたはもう少し周りの事に目を配るべきなのよ。私だけじゃなくて山茶花達だって心配してたのよ。いつ目を覚ますかってここを離れようとしなかったんだから…それを私がどう言う思いで山茶花達に声をかけたのかあなたには一生分からないんでしょうね。」
「め、面目ない…」
頭が本当に上がらないな。多分こう言う言い方だと本当に山茶花達は俺の事を気にかけていたんだな。それで年上である美森姉が周りを纏める様にして静かに対応してくれたんだと思う。
「まぁ反省してくれたならそれでいいわよ。あなたにはコレから私達に償ってもらうんだから。それに体の異変がなくて本当に良かった。」
「……ああありがとう。」
美森姉が俺の謝罪に対してホッとしてくれた様に吐露して胸を撫で下ろしながら少し落ち着きを取り戻す。
「あ、それと!何か気付く事はないかしら?」
「え?気付く事……気付く事……」
何だ?何か違和感みたいなのを感じるが、コレと言って指摘する部分は何も…
「あ!」
「何!何!」
「分かった髪型だな。そう言えば若干切った様にも見られるし、その微妙に分かりそうで分からない部分…やっぱり美森姉は人を騙すのが好きなんだな。」
「違うわよ!バカ!もう!本当に気付かないわけ!あなたが寝込んでからもう2週間経ったのよ!それで周りの変化ぐらいさすがに気付くでしょう。」
「周りの変化……」
そう言えばやたらと室内が涼しい…でも病院内ってそんなものかと思ったんだが……あ
俺は咄嗟に横に立てかけてあるカレンダーを目にする。
「そうかもう6月半ばか……え?ちょっと待てそれってもしかして…」
美森はうんうんと頷きながら一星が何に気付くのかを楽しみに待って期待する。しかし…
「もうすぐ試験じゃないか!ヤバ!俺そんなに寝てたのか!」
「………はぁ〜あなたってそう言う人だったわね。」




