認められないサポーター君
「はぁはぁはぁ……」
「夏姫!そろそろそこまでにした方がいいよ。いきなりのそのメニューをこなすのは無理があるわよ!」
「ごめんあと少しやっておきたいんだ。先に休憩しておいて!」
「夏姫…分かった!でもちゃんと無理と思ったら直ぐに休むんだよ!」
しかし夏姫にはその声がもう届いておらずただただ無我夢中に走ってるだけだった。
「夏姫…」
「あ、ごめん東郷夏姫さんってここにいますか?グラウンドが3つに分かれてて恐らくここが2年で行ってる場所だと思うんですけど…」
「………あ!?あなたは蕾先輩をたぶらかした変態先輩!」
「おい!変態じゃなくて編入生だ!漢字2文字は合ってるが読み方と意味合いが全く違うぞ!」
「あ…たぶらかしたって言う部分は否定しないんだね。」
「否定も何もどうせ至らぬ場所で誤解を招いてるんだろ。それならもう便宜を測ってももう遅いから諦める他ないしな。」
「あなた…諦めがいいのかそれとも単に呆れているのか分からないわね。」
「いや弁解をしてもらえるなら別に諦める事はないんだが…」
「いやよ面倒臭い。弁解も何も蕾先輩がそう言ってしまってる以上私がどうのこうの言った所でどうしようもないんだから。」
「それはそうなんだが……いやいや今はそれよりも東郷さんは何処にいるんだ?」
「夏姫ならほらあそこで走り続けてるけど…まか蕾先輩という人がいながら夏姫にまで手を出す気なんじゃ…そりゃあ夏姫は可愛いし男子にも注目されてる的だから編入生であるあなたでもターゲットにしてまうのは仕方がないわよ。でもねそれは蕾先輩に対して浮気行為になるんじゃないかしら?」
「何でだよ…単に用があったから尋ねただけなんだが…」
東郷夏姫と同じ陸上女子が言っていた通り確かにグラウンドで走ってる東郷夏姫の姿が目に映る。しかしその姿に俺は嫌な予感が恐らく当たっていたのが頭によぎりため息を吐く。
「はぁ〜なぁアンタ東郷はあれからどれぐらい走ってるんだ。」
「え?そうねあれからぶっつけで1時間近くは走ってるけれど…でも体力にも気遣って歩いてたりもするからちゃんと体調の事は心配無いと思うわよ。てかアンタって言い方やめてもらえるかしら私にはちゃんと姫羅伎って名前があるのよ。まぁいきなり下の名前でも呼ばれてもあれたがらちゃんと苗字でってあ、あれ!?神楽坂君!?」
一星と話していた筈が突然横にいたと思われる一星の姿が見当たらない事に気付きだし何処にいるのか辺りを見渡すと夏姫の方へ向かって走りだす一星を目撃し自分も急いで後を追う。
「全く何なのよあの人勝手にも程があるわね!」
ザーー!!
やっぱりペースがどんどん落ちていってる。となると彼女自身も痛みが発生している事に自覚がないんだ。歩きながら休みで歩いているとは言っていたがそんな事をしても意味がないそれは単に身体への負担が発生する。
「てか2年間かそれよりまえにやっているならそれぐらい分かれクソッタレ。」
「はぁはぁはぁ…」
何だろう足がだんだん痛くなってきている気がする。でもこんなのはただの一時の痛みだけ今は歩いて痛みがひいた感じ出しまた走れる。
「よし!それじゃあもう一周…」
「はいそこまでそこまでだ。」
「え?」
突然男子に声をかけられ走ろうとするのを遮られてしまう夏姫。
「君は確か蕾先輩と付き合ってる……変態の人?」
「編入生だ!編入生!てか何でそんな間違った方向で覚えてんだ。まさかもうそんな変質者みたいな扱いで女子陸上部全員に定着しちまってんのか!」
「それより私に何か用?用が無ければそこをどいて欲しい練習の邪魔。」
「何てマイペースなやつなんだ。まぁそういうやつだからこそ俺は仮サポーターとして止めに来たんだけどな。」
「?どういう事?」
「それはこういう事だ。」
俺は東郷の膝に思いっきり手で握り彼女の反応を窺う。
「いっつ!!」
「だろうな。いきなりのメニュー変更は身体的な意味で一部分の場所を痛める。それが短距離走でやっているお前なら長距離で体力を高めての走り込み助走を伸ばすつもりかもしれんがそれは杞憂だ。単に無理をして足を痛めるだけ…今は普段通りのメニューをこなして…」
「何なのお前いきなり現れて説教じみた言い方をして…お前なんかに私達女子陸上部の何がわかるわけ!」
「はぁはぁはぁ…な、夏姫…」
「はぁ?そんなの分かるわけないだろ。そんなのお前らが勝手にやってるだけの事に今の俺がいきなり分かった口で話すわけないじゃないか。」
「なら私に関わらないでくれる。私は私自身でちゃんと管理できるし何も問題ないそこをどいて。」
「な、夏姫!」
「ふーんまぁ別にそれならそれでいいが…ならお前何で足を引きずってたりしてんだ?」
「え?」
「え?」
足を引きずってるって私が?
「は?何言ってんの何処をどう見たら私が足を引きずってる様にみえるわけ?もしかしてその年で老眼になったんじゃないの?」
「自覚無しか…やれやれとんだじゃじゃ馬だな。それじゃあ蕾先輩も苦労するわけだな…」
「!?」
「夏姫!…!?」
夏姫は蕾の事を馬鹿にされた言い方をされたのが気に食わなかったのか一星に向かって胸ぐらを掴もうとする。だが…
ダン…
パシ!
夏姫はつま先をつまずいてしまいそのまま前へ倒れるが一星がその夏姫を抱き抱え受け止める。
「夏姫あなた…足引き摺ってたわよ。」
「!?そ、そんな馬鹿な!だって私今なんとも…」
「自覚がないのは感覚が麻痺してる証拠だ。実際これぐらいなら平気と昨日や一昨日ぐらいにそのままほったらかしてたんじゃないのか?」
「な、なんでそんな事を…」
「だいたい予測できる結果だな。期待された奴はだいたい無茶をして何処か痛める傾向がある。その人の為や誰かの為の期待に添えたい奴は必ず何処か落ち度がある。そんな奴らを俺は今ままで何人も見た。……ああいやただ単に見ていただけに過ぎなかったかもな。」
一星は自分が昔水泳で同じ競技の仲間の事を思い返し何かしらの罪悪感を吐露する。
「だとしてもお前にあれやこれや言われる筋合い何かない。いいからどっか行っ…」
夏姫が走るのを続行をしようとすると一星はそのまま足を前に出し彼女を転ばせる。
ズサ!!
「ちょっと!何してんの神楽坂君。彼女に怪我でもしたらあなた大問題を起こすわよ!」
「……どいて姫羅伎。私まだ走れるから…」
「夏姫!」
へ〜根性だけはあるんだな。何かしら自分に追い込まれようとしても冷静に目の前の事だけに集中する。ある意味選手の鏡かもしれないが…それはただたんに自滅を意味する。それに俺が彼女を転ばせた理由は他にあるしな…
「悪いが東郷ここからお前は走る事ができない。それは根性だろうがなんだろうが無理なことなんだ。」
「何言ってるのか意味分からないけど…私はもうすぐ始まる大会までに出来るだけ脚力を鍛えたいの…それを阻むならお前をぶん殴ってでもまかり通ってやる。」
「………はぁ〜ここの陸上部女子は体に関して誰も管理していないのか?………いやしてはいるが主に3年の圧にやられて現在に至るってわけだな。」
「妙な事をごちゃごちゃ言うならそこをどいてちょうだい走る邪魔になる。」
そう言って夏姫は再び走る事をし始めるが膝に何かしら重い何かが走り寄せ走らせないようにさせているのか身体のいう事が効かなくなる。
「うっ……あ、足が…」
「な、夏姫!やっぱり神楽坂君の足で引っ掛けたせいでもう走れなくなったんじゃないの!」
「いいやそういう事で走れなくなるなら既に選手としては使い物にはならなくなる。けど俺がした行為はあくまでも事後処理だ。」
「どういう事?」
「東郷には今日一日だけ走らせない様にしてもらう為わざと足を引っ掛けた。そもそもそんなのに引っ掛かる前に東郷は飛び越えたり何かできたはず。それができなかったのは膝中心部にある痙攣が発症して飛ぶと膝に大きな激痛が走ってしまう。でもそれは個人差によるがどうやらここ数日での蓄積によってそれが今になって発症したんだろう。」
「半ばお前にさせられたと言っても過言じゃないけれどね。」
夏姫は自分の膝を抑えながら何とか痛みを起こさせないようさする。
シュッパ
一星は背負っていた鞄の中身から痛み止めスプレーで膝を冷却させそのまま氷水を当てながら暫くそのまま動かさない様にしっかりと足を固定せる為タオルで巻きながら固定する。
「よいしょ!」
「ちょ!何するわけ!?」
「何ってお前動けないんだろ?ならこのままベンチか座る場所…いやこのまま早退して接骨院に診てもらった方がいいお前の身体だ。お前自身が管理しなければ蕾先輩は最悪お前の事を見限られてしまうぞ。」
「ふん!だとしても休む様に言われても私は走るけどね。蕾先輩に見限られのは重々承知よ。だから何があっても私は…」
「ああ走れるさ…別に走ってはいけないなんて言ってない。ただ走るにはそれなりの補助や練習メニューを変える必要がある。無理のない程度の走りでサポーターを使えばそれなりに痛みは削減される筈だ。後はぬるま湯に浸かって膝の痙攣を緩和させたりすれればより早く治る可能性もある。まぁ俺が言った事を医者がもしかしたらそのまま言うかもしれないけどな。」
「………本当にお前何者なんだ?ただの蕾先輩のヒモなんでしょう?」
「違うよ夏姫あの人蕾先輩の変態さんだよ。だから優しい人だけって言うのは間違いないと思うよ。」
「……かもしれない。でも私はそのまま鵜呑みに何かしたりしないもし医者の発言と違う事を言われたらその分減った練習量分アイツにはこき使ってもらうんだから。」
「あはははそうだね。その時は私も協力する。」
2人はそんなとんでもない事をいいながら姫羅伎は夏姫を抱えながら女子更衣室へと向かいそのまま今日は家に帰ると一星はそう思った。
「つうか何でお前ら女子陸上部は俺の事何かしら違う定義で客観視してるんだ?てか誰だそんな迷惑な噂を流したの…」
勿論その噂を流した諜報人は陰ながらクスクスと笑いながら一星を見ている蕾琵心本人であった。




