paradise Sky
そしてアレから試合が始まるまで俺は海未にしこたま訓練という名の特訓をさせられあらたまったリフレクションシューズを履きこなしいよいよ本番当日を迎えた。
パンパン!
学園内に派手に鳴らす花火の音。しかし実際の花火の音でははなくモニター形式の音声映像を流し周りに注目されるぐらいでの反響を催し僅かに正式のあるイベントと思うくらいのレベルにまでは学生や教師そして一般の人達が集まっていた。
「す、すげぇ〜なんなんだこの盛況は…とんでもなくないか?ただのミニイベントだろう。」
「お前本当にアイツがどう言った形式でイベントをやる考えなんて言うのを想像してすらいないんだな。」
「……単にやりたいからやってるってだけじゃないのか?」
「はぁ〜アイツはそんな馬鹿なやつじゃないよ。まぁあの幼馴染形式バトルはただの私情でやりたかったからやってただけにすぎないがな。今回のは違う…理事長さんが正式に認めたわけではないが、それに関係してちゃんと学園の為にやってるんだ。」
「理事長が決められてない事を勝手にやっていいものなのか?」
「まぁどっちも今し方不在だからな。その辺に関してはアイツが追々何とかするんじゃないのか?」
「それってどう言う…」
「あ!いましたいました!おーいイックン!」
「お?どうやら今イベントの主催者のお出ましだな。」
気になる部分に蒼脊から話を聞こうとしたがタイミングよく海未が俺達を見つけ駆け寄る。まぁ今聞く事でもないか…
「もう!何処に行ってたんですか。試合の更衣室前集合って言ってたじゃないですか。」
「いやまだ30分も時間あるんだぞ。始まるのは10時からだろ?」
「それでもイックンには色々と話さない事があるんです。蒼脊君…イックンを借りて行ってもいいですか。あ勿論返品はできませんが…」
「構わんよ。寧ろ返品はお断りしてますんで…」
「ならよかったです。ほら行きましょう!行きましょう!」
「コラ!俺を物扱いするんじゃねぇ。お前ら俺に対していったい何の権利があって言ってってちょっと待て!引っ張るなおい!」
「………やれやれ一星はあちらこちらで引っ張りだこだな。まぁ昔からの人気があったといえばアイツの優しさの原因ではあるから仕方がないが、それでも1番懐いてたのは海未だったからな。その辺お互いどう思ってんだろうないったい…」
……男子更衣室前
バタン!
「ふぅ何とか間に合いました!さぁイックンお着替え手伝いますから、まずはそこに座ってって…どうしたんですか!既に息が上がってるじゃないですか!?」
「はぁはぁはぁ……お、お前の…はぁ、せいだろうが…」
「ほえ?私は別に疲れませんでしたよ。昔のイックンならコレぐらい余裕だったはずですよ。」
「こ、この…体力馬鹿が…」
「それ程でもあります。」
「ほ、褒めてるわけじゃない…」
勝手に褒められているのかと思った海未に俺は息を切らしながらそうじゃないと否定をする。
「じゃあどう言う意味なんですか?」
「も、もういい…」
最早ツッコムのも馬鹿らしくと思った俺はここでの会話を終わらせ海未が俺を更衣室まで連れてきた理由を聞く。
「それで、30分も前にここへ連れてきた理由は何なんだ?」
「採寸が合ってるかどうか聞きたかったんですよ。事前に調整はしましたけれど、やっぱり心配になるじゃないですか。」
「え〜本当にそれだけなのかよ。しかも男子更衣室前でって…羞恥心とかないのか。」
「???何の事を言ってるのですか?」
「いやあのな…ここ男子禁制の場所なんだ。お前達女子だって一緒だろう?女子禁制の更衣室に男子が入ったら奇声をあげるだろう。」
「はて?私常にコスチュームを着てるのでそういったのとは縁遠い存在なので理解できないんですが…」
………え〜とつまりラッキートラブルはないって断言したいのか?いやまぁそれならそれで別にいいんだが…
「はぁ〜もっと話が通じてほしいもんだな。」
「ん??ともかく採寸確認をちゃんとしたいので、早く更衣室に入りましょう!」
「待て待て!俺1人でやるからお前は外で待っててくれ!」
「ムム!でしたら早くして下さいよ。私ここで待ってますから。」
「え〜ここで待つのかよ。」
渋々俺はそのまま更衣室へと入っていき、予め自分用のロッカーに入れていたparadise Sky専用のコスチュームを確認し服を脱いで着始める。
「おお?久しぶりじゃないか元気だったかい?」
「え?ゲッ…」
ついゲッと言ってしまった俺はコスチュームを着た目の前にいる男性…やたらとナルシスト化している仙波と目が合ってしまう。
「何でここにって……そうかお前も参加するんだったよな。」
「ああ〜悪いがこのゲーム僕の勝ちはもらった。何せ蒼ちゃんが参加しなければ僕の勝利は確定だしね。」
「………」
そうか既に知れ渡ってるんだな。海未が今回このゲームに参加しない事を……でも当然といえば当然か、もう試合に出る生徒達の名前がモニター画面で閲覧できるんだから、誰が参加するのかは目に見えている。
「しかしまさかブロックに分かれての試合だとは…ふふ僕に当たらない事を後悔するんだな。」
「そうだな〜」
俺は何気ない感じの返事をし適当に相槌を打って、適当に遇らう。
「おお!一星に仙波まさかお前らまで参加とはな。」
とここでまた顔見知りのというか同じクラスの地味板小文吾がコチラに話しかけてくる。
「地味板まさか君まで参加とは…ふふまさに僕の勝利は確実と言わんばかりの目星かきたみたいだな。」
「相変わらず自分に惚気たらったらの話し方だな。周りからは変な奴で注目されてるのが気にならないのか?俺みたいにもっと片隅でいきないと駄目なんじゃないのか?」
それはそれでどうなんだ?もっと周りの視線に注意しろならわかるが…片隅でいきるって…小動物じゃあるまいし…
「けどまぁ君らが僕に勝つ事が万一あるなら、焼肉でも奢ってやろうじゃないか。」
「お!いったな。今更撤回なんてなしだからな。俺のチームの子はそんじょそこらの奴に負けたりしないからな。」
「ふっ!僕なんかどうしても参加させてほしいという子がいたから今回はやむを無しに一緒に参加させるのを認めたんだ。本当なら僕1人でも勝てるんだけどね!」
うざ〜
うざいな。
「所でお前のパートナーは誰なんだ?それはもう可愛い子なんだろ?」
「………まぁ可愛いと言えば可愛いのかもな。」
海未の妹だし、2人とも負けず劣らずの可愛いさだから特に否定する部分はないな。
「それで誰なんだ?誰なんだ?」
「そんな風に聞かなくてもどうせ名前一覧で確認しているんなら知ってるんじゃないのか?」
「いや俺はそのブロックで当たる人達以外は確認しないって決めてるんだ。だから実際の所誰がどんなパートナーで来るのかは未だに不明なんだよ。」
「………そうなのか。」
どうするべきか…今ここで話しても問題はないんだが……いや咄嗟に出た方がインパクトはあるか…それに香澄ちゃんの名誉挽回にもなるしな。
「しかしまぁ〜本当にいい大会だよな。男女ペアで組んでできるゲーム形式最初はどう言う意味なのかと勘繰ってはいたんだけど…小橋さんってそういった催しが本当に得意んだな。」
「得意?何の事だ?」
「え?アレだろわざわざ男女ペアにさせた理由って、コレも恋愛関係に繋げる為のやり方なんだろ?学園側の噂ではやたらとこの話が持ち上がってるみたいだぞ。」
「……なんだと。」
そう言えば以前にこのミニイベントのparadise Skyは男女との共通点がどうのこうのと言っていた。まさか…
「いやでもそんなのたまたまじゃ…偶然って事も…」
ガチャガチャ
バタン!
「もう!イックンまだ終わらないんですか!早く出て…」
「ちょっ!お姉ちゃん駄目ですよ。」
……………
「うわーー!!!」
「きゃあ!!!!」
唐突に男子更衣室に入ってくる海未。それを妹の香澄が阻止しようとするが、思いっきりの行動に歯止めがきかず、こういった惨状が起こりコッチは裸の男子。向こうは何も気にせずに入ってくる女子……果たしてコレはどっちが悪いのか……まぁ言うまでもないのだが…
「何考えてるんですかイックンはスケベ!変態!」
「え〜俺が悪いのか…明らかに勢いよく中へ入ってくる海未が悪いと思うんだが…」
「屁理屈ですか!男らしくありませんよ!」
屁理屈も何も海未自身が悪いと言ってるんだけどな。
「まぁまぁそのもう少しで試合が始まりますし。その辺にしときませんか…」
「それはそうだけど……イックンよ〜く反省してくださいね。」
だから何で俺が悪い事になっている。明らかに不可抗力だろ。……いや不可抗力なのかコレは…向こうが善意で入ってきたと言うのも普通ならアウトなんだが…
「あの〜それでどうでしたかコスチュームの方は?」
「え?あ、ああ…うん動きやすくてだいぶいいな。でも背中にある謎の穴みたいなのは何なんだ?」
「ああそれは顔に向かってくる風を上手く阻害してくれる為のスポットなんです。ほら勢いよく飛ぶ時風が真向かいに来て上手く目が開かない時ありませんか?それを背中にあるスポットが見えない風除けとして私達を守ってくれるんです。」
「へ〜そう言えば飛んでる時に風が邪魔してきて前が見えにくいなって思う時があったけれど、ちゃんとそれ用の物もあったんだな。」
「因みに風除けは人それぞれで、風を受けた方が気持ちいいって言う人やそうじゃない人もいますので、その辺は個人の尊重に任せると言った感じですね。」
「成る程……」
けれど逆に言えばそれを上手く利用活躍できる可能性もあるかもしれないって事だよな。まぁ凡人な俺からしたら関係ない話だが…
パン!パン!パン!パン!
「お!どうやら始まりの合図みたいですね。イックン達は初手のブロックなのでいい所を見せちゃってくださいね。」
「プレッシャーだな。でもまぁ勝つと決めた以上は海未の為にもちゃんと応えないといけないな。」
「そ、それって!愛の告白ですか!」
「………はぁ〜試合本番でもそういった冗談が言えるのはまさに天才としての証拠だな。」
「そうですか?えへへ〜」
「……本当に何が何でもポジティブで受け止めてしまうんだなお前は…」
「ほら馬鹿な事してないでいきますよ変態先輩。」
「おいここでそれはやめろと言っただろう。」
「なら早くしてください。」
何で若干機嫌が悪いんだ?モタモタしていたからか?いやでも単にいつもと同じく海未と話してただけなんだけどな…まぁここから機嫌を悪くしないよう俺が最善を尽くすだけだ。




