昔と今の八月一日姉妹
あの日海未が模擬試合を行なって周りからの注目を集めた結果美森姉の言う通り、勢いよく次のイベントに向けての生徒達の募集が盛んになり抽選という形で試合に挑める人とそうでない人が後日決まる事となる。しかしそれではかえって最初に応募した人たちは反感する人が出てくる為というのもあり後半で応募した人の最初の半数で応募した人は抽選関係なく参加する事が決定された。
そして…それから1週間が経ち自分自身もリフレクションシューズという物がどう言ったものなのかを理解でき、今日の休日海未と一緒に俺専用のリフレクションシューズ選びの買い物に付き合ってもらう事となった。
「駅前で待ち合わせになったが、アイツまだ来ないのか…というか家自体近いのにわざわざ駅前で待ち合わせする意味あるか?」
あまり意味の分からない事に拘っていた海未に、そこまで疑問を抱かなかった俺が悪いっちゃ悪いんだが……普通に10分も経ってこないのはどうかと思うんだが…
「あ!いた!」
「あ…」
目の前で小さな男の子がリフレクションシューズを履いてこけるのを見てしまい、今すぐにでも中出しそうになるのを他の誰かが見て声をかける人とかいたりするのかと周りを見回してみたら……
「マジか……」
誰もというかその場の近くにいたのは俺であった為声をかけるのは必然的に自分であってしまう。
「はぁ〜こうやって誰かを慰めるのっていつ以来かな。」
俺は泣き出しそうになる子に声をかけ大丈夫かと目線を低くして声をかけるが…
「うわーーーんん!!」
……泣いてしまった。いやまぁそうだよな。普通は泣き出すよな。でもまぁここで諦めてしまったら、周りの人から痛い視線を送ってくる為やむをなしにこの子が泣き止む方法を探す。いや目の前にあるから探すというのは間違いかもしれない。子どもは興味を惹かれる事に対して反応して泣き止む傾向がある。それは子どもの個性にもよるが、ここでリフレクションシューズを履いて1人でいるって事は…
「君もしかして誰かに憧れて1人で空を飛ぶ練習をしてるのか?」
「ぐす、ぐす…う、うん。僕あの葉月蒼ちゃんみたいに上手くなりたいんだ。それで、1人で朝早くに出たんだけど、途中まで来て飛べなくなって、帰る途中で電池切れになったの……」
「なるほどな。葉月蒼ちゃんみたいにか……だとしたら、こんな所で泣いてちゃだめなんじゃないか?」
「ふえ?」
「葉月蒼ちゃんみたいになりたいというのなら、葉月蒼ちゃんは必死に頑張って空を飛んで優勝してたりしたんだろ?なら電池が切れて、ここでこけたとしても家まで頑張れば葉月蒼ちゃんみたいにもっと強くなれるんじゃないか?」
「………」
男の子ならこう言った物言いの方が心動かされると思って発言したんだが…やっぱりお前何言ってんだみたいになってしまったか。こりゃあマット泣かれて…
「………うんそうだよね。その通りだよ!僕頑張るよ。頑張っておうちまでかえってそして葉月蒼ちゃんみたいに負けても泣いて笑うような選手になりたい。」
「え?」
負けた?海未が負けた?そんな事があったのか?けど海未が実際に始めた時期っていつぐらいだったん?まぁ天才でもそこまで傍若無人とまではいかないよな。
「ありがとう!僕こけても泣かない!絶対に泣かない。」
「ああその方がカッコいいし。女の子にもモテたりするかもしれないからな。けどあまり1人でというのは感心しないな。コレからは友達か誰かと一緒に練習する事をお勧めするぞ。」
「う〜ん……分かった!ぜんしょう?する!」
「よ、よくそんな難しい言葉しってるな。……まぁ精進してくれたまへ…」
何か偉そうには言ってるけれど、俺も半ばこの子に言えたぎりじゃないんだよな。まぁ大人の貫禄みたいって事でこの子は良き大人のイメージを抱いてもらったという事でいいかな?
「じゃあありがとうまたねおじちゃん!」
「………お、おじちゃん。そんな老けて見えるのか俺は…」
おじちゃんなんて初めて言われた。まさかあんな小さな子にお、おじちゃん…おじちゃんか…
しかしそこで向こうのお母さんが迎えに来たのか小さな子に心配して怒っている様が見え、まぁ言い事をしたという事で別に言いかとそう思ったのだが…
「お母さんあのおじちゃんに泣くなって頑張っていけば蒼ちゃんになれるって言われた。」
「え?おじちゃん?……ば、ばか!どうみてもお兄さんでしょう!まさかアンタあの人におじちゃんって言ったんじゃないんでしょうね!」
「うん言ったよ。」
「!!!」
お母さんは物凄いお辞儀をしてこちらへ向かってペコペコ謝ってる仕草が見えこっちは大丈夫ですと手を振る。まぁ普通に聞こえる距離だったので、問題ないですと気にしないで下さいとそう言い続け2人はそのまま自宅へと帰っていく。
「やれやれ、子育てというのは大変なんだな。」
「み〜ちゃった。えい!」
「うわ!」
突然目の前の視界を塞ぐ誰かの手が俺の目を強く握りながら自分が誰かと質問をする。
「ふふ〜私が誰だか分かりますか?」
「そ、それは…」
「それは?」
「……め」
「め?」
「目が痛い!!強く押さえすぎだ!離せ!」
「あ…」
無自覚なのかやたらと俺の目を強く押し付ける手に先程の自分が誰かという質問に答えられず、視界が戻るまで俺は目を休めながら謎の声の人物の顔を見る。
「ふ〜で?何故遅れたのか理由を聞こうか?」
「え〜と………言わないとダメですか?」
「駄目。」
「そ、その〜………寝坊してしまいました。」
「………ふぅ〜」
「あ、あの怒ってます?」
「いや怒ってはいない。」
「よ、良かった。実は昨日楽しみすぎて眠れずに寝坊してしまったんですよ。」
「うんそうかそれは仕方ないなって形で済まされると思ったら大間違いだぞ海未。俺は怒ってるしんじゃなくて呆れてるんだ。お前のその能天気な頭にな。」
「ひ、酷い!せっかくおしゃれしてイックンの事を驚かせようとしたのに!このひとでなし!おたんこなす!イックンのトウヘンボク!ってあたたた!耳!耳引っ張らないでください!」
「遅れてきたくせにその態度はおかしいだろうが!楽しみで眠れなかった?単に妹と長い話しをして寝なかっただけだろうが!」
「な、何故それを!」
「後ろにいる妹ちゃんに聞けばいいんじゃないのか?というか何故香澄ちゃんまでここに…」
「私はその付き添いです。単に姉と変態先輩が一緒で心配してついてきたわけじゃないですから。」
「またまたそんな事言って〜本当は一緒について来たかったんじゃないんですか?シューズを買う理由にして…」
「ちょっとお姉ちゃん!余計な事を言わないで下さい!」
本当仲いいんだなこの姉妹…
「けどシューズを買うって前のやつとか持っていないのか?」
「いえあるにはあるんですけど、その〜電池がもう完全に逝かれてしまいまして、ほとんど直ぐに起動できなるぐらいにまで古くなってしまったんですよ。ですからこの機会に新しい買おうと思いまして…」
「そう!それで香澄も今日来たらいいよって私が誘ったんです。そうする事でイックンは両手の花になったという事ですね。」
「じゃあ行くか。早めに買って試運転もしてみたいし本当に俺に合うのかどうかもお店で確かめる事も大事だから遅れた分さっさっと行くか。」
「両手の花ですね!」
「お姉ちゃんもうやめようよ。大声すぎてこっちが恥ずかしいんですから。」
「両手に花だよね香澄!」
「お願いです今直ぐその口を閉じてください。」
俺がわざわざ突っ込むのもバカらしく思い軽く流したのも束の間妹の香澄ちゃんが代わりに突っ込んでくれた。うんやっぱり姉の始末は妹がやるべきだな。
「えへへ……」
「どうしたのですかお姉ちゃんそんなにヘラヘラ笑って、まさかこの状況が楽しいとかそう思って笑ってるんじゃ…」
「ううん違う違う。ちょっと昔の事を思い出したんだ。やっぱりイックンは昔のままのイックンだなって…」
「変態先輩はああやって、子どもを助けるのが多かったのですか?」
「うん!ああでも…助けるのは主に幼馴染の皆んなだけどね。困った事があったら直ぐさに駆け寄って守ってくれる。それがイックンの優しさ。皆んなは変わってねとか言うけれど、私はその辺は変わらないなって思う。」
「確かに普通ならあそこで子どもを見捨ててしまうというのが世の中の人なのに、あの人はそうはしなかった。あの変態先輩はどこか違う何かを感じますね。」
「そうだよイックンは他の人とは違うんです。だから香澄もイックンの事を好きだと思うならいっぱいアプローチしたほうがいいよ。」
「そうですね。………って何でそんな事がわかるんですか!私そんな事一言も言ってませんよね。」
「分かるよ〜だって私色々な女の子から相談されてるんだよ。香澄がそこまでしてイックンに対して執着してるのが分かったから、ああ多分イックンの事好きなんだなって思ったな。」
「ど、どこにそんな要素が!」
「変態先輩。」
「!?」
「こんな事普通は呼ばないし、何より懐いてる人には言わなかったよね?昔私の事を名前付けでお姉ちゃん呼ばわりしていた事忘れてないんだから。ああ〜もう一度海未お姉ちゃんって呼んで欲しかったな。」
「!!!!!?」
香澄は顔を真っ赤にしながらやたらと海未に憤慨しながら否定の言葉を言い続ける。
「…………アイツら全然来ないと思ったら何を話しているんだ。おーい!さっさっと行くぞ。」
「あ、はーい!ほらほらイックンが呼んでるよ。恥ずかしがってないで行くよ香澄。」
「もう!お姉ちゃんなんて大嫌い!」
何か海未の事を大嫌いと言っているが…何か揉めてるのか?でも何か喧嘩してるわけではないしな。あまり触れないでおく事にしよう。




