特訓そのⅥ(模擬戦)
そして続きの第2回戦目。本来3試合行われる事となっているが、ここで海未が勝てば2回戦目で試合終了になる。そして形式は同じくバーチャルフラッグ争奪戦…それをお互い5分間の間1分の間奪われる事なく維持し続ければ1ポイント入手。しかしその間に3分間維持されてしまえばそこで試合終了。一分一秒この試合は白熱される様な試合であり誰もが手に汗握る形で試合を見る。
「くそ!こうなったら、是が非でも参ったって言わせてみせる。今のはパワー型のゴリ押しだった。僕の本気が通じなかったのはパワー型のリフレクションシューズだったから勝てなかったんだ。コレから最善の見直しをしていく上でまずは彼女を一回まかさないといけない。」
「よし!うん起動も整備もバッチリです。次も負ける気がしません。」
お互いまた上空へ上がり試合配置の位置に立ち先生からの開始の合図が出されるのを待つ。
ピピ!
[蒼ちゃん聞こえているかな?]
仙波は無線機を使って、海未に通話をして何やら話しかける。
[はい。何でしょうか?]
[いや〜さっきのは本当に驚いたよ。君本来のシューズで闘うんじゃなくて、まさかパワー型によるシューズで完膚なきまでにやられるとは……私は本当に愚かな人間だ。]
[はいそうですね。]
[………]
「………」
あまりの直球な言い方に仙波そして試合の開始の合図を出そうとしている先生までもが、普通そこは遠慮してそんな事ありませんよとか言うのが普通と思っていたのだが……予想外すぎて言葉に詰まった。
「こ、コホン!えーでは今から第2試合を始めます。両者準備はいいですね?」
「はい。」
「もちろん。」
「では!始め!」
ピーー!!
ホイッスルが鳴り先に動き始めたのは…
ビュン!
ビュン!
両者同じタイミングでシューズの起動を発動し真ん中のあるフラッグを目掛けて飛んで直進する。
ふ!今度はスピード型みたいだけど、スピード型はその名の通り早いという意味でのスピードじゃない。スピード型はバランス型の要領と大差変わらない素材でできている。つまりお互いの距離での詰め合わせは互角。私が先に取れば最早勝ったも同然!
ピピ!
[先輩私が履いてるこのスピード型実は先輩が思うスピード型じゃないんですよ。]
[な、何!?]
キュィーーーーン!
ザーーーー!!
海未はシューズの出力を急に落としそのまま空中で何かを擦り付けるかの様にしてスピードを出しながら一気にフラッグとの間合いを掴み先にキャッチをして有利をとる。それはまるでアイススケートの様な形でシューズを交互に動かしながら、仙波のバランス型のリフレクションシューズより先を越す。
ピコン!
「はい先輩今回は私が先にフラッグの回収をさせていただきましたよ。さぁ〜ここからどう動きますか?」
「くっ!何て子だ。」
………
「海未のやつ、最早何でもありだな。どんなシューズを履いても敵なしじゃないか。仙波まで開いた口開かないという顔をしているぞ。やっぱり圧倒的な差で行動がおぼつかないのか?」
「いえ多分そうじゃないと思うわよ。」
「どう言う事だ?」
「あの子飛んでる最中、相手側に無線機を使っていたみたいね。しかもフラッグ回収をしている最中に…」
「?それがどうかしたのか?」
「あの仙波君という子が驚いている理由。多分そこにあるんじゃないかと思うわよ。理由はなんとなく察すれるけど…多分あの子は常識ではない事を起こした。それで彼はその場で動揺している。という認識に見えるけどね…」
「…………いったいどう言う事なんだ?」
くっ!わざわざフラッグ回収で相手に無線機をかけての回収……驚くべき場所がそこでは無いと言うのは他の誰かに言ったとしてもそこじゃないと言うだろう。しかしここでのスピード型とバランス型ではそれが肝心なんだ。バランス型ならともかくスピード型がそんな安易に相手に無線機でわざわざ挑発する様な発言は普通できない。何故なら履いてるシューズとのコストパフォーマンスが悪くなるからなのだ。それをあの子は難なくと上手く長所に変えスピードを更に上限させフラッグを回収した。何てありえない荒技をどれだけの鍛錬をすればあそこで超越をすべる形にできあがる。私は本当にあの子を侮っていたのかもしれんな。
「全く予想も絶する様な動きだよ。しかし君は大きな誤解をしている。」
「大きな誤解といいますと?」
「僕があの時本気だったのはパワー型でのバランス型の相性が不利だったから本気を出したんだ。でも今回はスピード型となれば話は別…君には少しバランス型の応用を見せてやろうじゃないか。」
「バランス型の応用ですか?」
そう言って仙波はバランス型のリフレクションシューズのボタンを押し何やらメーターみたいなのを調整する。
「ではやろうじゃないか!僕と君とのワルツを!」
ビューーン!
バァン!
何と言う事か何か調整をした仙波は先程までとは比べ物にならないぐらいのスピードを出し海未との間合いを一気に詰め寄って体に触れるぐらいの差でタッチを促そうとする。
しかし…
ビュン!
「な!?」
海未は何もしていないかの様な動きをしたのか、仙波が触れようとした手を僅かなミリの差で交わす。
「か、交わされた。」
「………」
いや今のは単にまぐれなだけだ。僕はコレでスピード型の選手を何人もねじ伏せたんだ。普通に考えれば今の彼女では僕に手も足も出ないはず……今度はもっと手数を増やして…
ブン!ブン!
シュ!シュ!
くっ!まだだ!
ブン!ブン!ブン!ブン!ブン!
シュ!シュ!シュ!シュ!シュ!
「な、何故だ!何故交わされる!」
「そりゃあ当然ですよ仙波先輩。もしかして先輩が使う応用ってバランス型のメーターをスピード型に合わして調整しましたか?まぁ確かにそうすればスピード型の力を上手く構成できますね。それは私でも知っていますし対抗策もちゃんとしていますよ。でもまぁコレが同じスピード型なら話は変わっていたかもしれませんね。けどコレもアレですねかなり熟知してる方にしかできない事ですから別に同じ型とか関係ありませんでした。」
「いやいや何を言ってるんだ。知っている?いや君なら当然知っているのは分かってはいたが、コレに関してはどうやっても調整されたバランス型とそっちが構成したというスピード型はバランス型の方が上なのは十分に君も私も理解している。なのにどう言う事だ…構成されたスピード型の方が上というのは…」
「ですから言ってるじゃないですか、熟知された方には分かって、熟知されてない方は分かられていないと…このスピード型は単にスピード高質だけで高められたものではありません。それは先輩もご存知のはずです。そしてこのスピード型にはある事を発見して相手を誤魔化すやり方もできるんですよ。それがさっきの応用を突っぱねるやり方…反発とはまた違ってダンスをするかの様に相手がコチラへ手を出す読みを予測して回避する……いわば読み手の法則とでもいいましょうか。」
………
………
え?そういうのはちゃんと何かの法則という例えを使うのか?
え?そういうのはちゃんと何かの法則で例えちゃうの?
「は、はははそんな馬鹿な事が…それじゃあまるで預言者じゃないか。」
「スピード型は組み立てに関しての方が1番やりやすいシューズなんです。だから相手の手が出るタイミングを上手く見繕ってこのスピード型から発する周波を感じ取れば…あら不思議…まるで超能力者みたいに攻撃回避する事が可能なんです。でもそれが長時間続けられるわけじゃないんですけどね。」
こっちも応用を仕込んでパラメーターを最大限に上げていますから。持って3分間が限度であるんですけど、今回は私の力量含めたら持ち堪えられると思って最初からいきなりブーストさせました。
「さて先輩ここから挽回策があるのでしたら、今のうちに試したおいた方がいいですよ。もしかしたら対等に戦える可能性もあるかもしれませんからね。」
「………いいや完全に完敗だ。本当の本当に勝ち目が無くなった。今はまだという事で僕の負けで構わない。くっ残念ながら、僕は君にまだまだ追いつけ無かったというのか…」
「いえいえ、仙波先輩は十分に強いですよ。しかしそれは私が少しやる気になってちょっと本気を出した他にありません。リフレクションシューズは単に機械だけってだけで認識するのにはとても可哀想な品物です。だからちゃんと意思疎通という形で気持ちを伝えればリフレクションシューズは私達の想いに応えてくれます。」
「ふっまさに哲学的な問題だな。やれやれコレで次の試合が待ち遠しくなったというものだ。次の試合君をコレまで以上にコテンパンにして僕の物にすると決めた。覚悟しておくんだな。」
「いえ結構です。私そういうキザな人はお断りしていますので。」
「ふははは初やつめ。可愛いじゃないか、蒼ちゃんはやはりそうでなくては…」
パシン!
「あ、私決められた男の人以外触らせませんので、勝手に頭を撫でないで下さい不愉快です。」
「が、ガーン!」
「あ、あれ?何かもう決着ついた感じか?」
「みたいね。でも物凄いパフォーマンスを見れて皆んな奮起が高まったんじゃないかしら?」
「え?」
「コレから始まる林音が無理矢理イベント化したparadise Skyきっと凄い人数で応募してくるわよ。もしかしたら抽選の可能性だってあるかもしれないんだから。」
「だとしたらそれは困るな。抽選で外れたら今までやって来た事や話した事が無駄になる。」
「それは大丈夫じゃないかしら。何せあなたは強制参加間違いないんだし。そのための練習でしょう今日のは…」
「ああけど……」
「けど?」
「凄すぎて全然参考にならなかったけどな。」
「………確かにそうね。」
模擬試合的なものが終わり、海未にパワー型とスピード型のリフレクションシューズの事について見せてもらったのだが、普通?の感じのやつを見たかったのに、インパクトのある様なお手本しか見せてもらえなかった。コレで俺がどういったもののリフレクションシューズを履けばいいのか余計に試行錯誤しなくちゃいけなくなったとこの日はそう諦めてしまう自分がいた。




