paradise Skyでの再確認の同意
強引…そう半ば強引でも香澄ちゃんには参加してもらわないといけない。本人の強調性が大事だと昨日はそう思っていたが、そんな事言ってはられないということに改めて気付かされる。
「強引だと悪いか?そうでもしないと香澄ちゃんさっきから尻込みして一歩引く癖があるだろう?ならば無理矢理にでもって思ってこうやって強気でいかせてもらってはいるが……」
「………でも。」
まだ足りないか…香澄ちゃんにあれやからやと論点を述べても仕方がない。彼女に参加してもらわなければ試合として意味がない。いや勿論海未が参加すればそれでいいだけの話にはなるが…それはそれでちょっと違う方向性になる為今回は引いてもらう事でお願いした。だから海未の分も香澄ちゃんには出てもらう必要性があるんだが…
「いいんじゃないですか。あまり長引いてもあれですしそんなに尾を引く理由もありませんと思いますしね。」
「え!木葉ちゃんどうしてここに!」
鳴神木葉…この子出るタイミングを測っていたな。何気に食わぬ顔して随分と肝が据わってるな。いや買い被りすぎか…単にそう思っただけだし、彼女にはその気がないかもしれないしな。
「どうしてって昨日の今日でまた同じ事が起こらない様に見回ってるのよ。それでたまたまここを通ったら変態先輩と香澄がいたんですよ。」
「………変態先輩。」
何でそこだけ強調して呼んだんだ。絶対この子俺の事嫌いだろう。
「あ!木葉ちゃんその変態先輩って呼び名は私の唯一のあだ名なんですから勝手に取らないで下さい!」
「別にこんな歪な呼び名呼びたくないですよ。こっちまで穢れてしまうかと思うとゾッとしますよ。」
「ちょっと待てまず俺が変態という定義について一旦話し合おうか…そもそもその変態先輩という妙なあだ名がつけられたのはな…」
「ああいいです。別にどうでもいい事なんでさっきの話の続きをしましょうか。」
いや絶対どうでも良くないと思う。じゃないとこの2人は俺に対してずっと変態先輩という定着を……くっ最早挽回はできないかコレは…
変態先輩という名の宜しくないあだ名の定着を取り消す様に話しを考えたりしたが、どうやら今はそんな話しは後にしてくれと言わんばかりの目つきで鳴神は俺の事を睨む。なら最初っから普通にさん付けか普通の先輩呼びでしてほしかった。
「失礼ですよ!先輩が悲しい目をしてるじゃないですか謝って下さい。」
「してない。と言うよりその名所をつけたのは他ならぬお前なんだけどな。」
「………つまり私に謝って欲しいって言ってるんですか。」
「そんなあたかも私は間違ってませんよね?という驚きを隠せない反応はなんなんだ?普通に考えて原因はお前ありきなんだが?」
「どうでもいいので、本当にparadise Skyについて話してもいいですか?じゃれ合うのはその後で結構ですので…」
戯れる要素がいったい何処にあった?寧ろそっちの目が節穴気がするぞ。
「ん?今私の目が節穴とか何とか思ったりしませんでしたか?」
エスパーかよ。何でそんなピンポイントで当てれるんだ。
「いやそんな事はないな。」
「………ふ〜ん。」
「…………」
「!?………!?………」
何やらそわそわと俺と鳴神を交互に確認する香澄。何をそんなに慌てる様子で交互に見てるんだ。
「ず、ズルい!私もその妙な雰囲気味わいたいです!」
「味わってどうするんだ。寧ろ雰囲気悪い方の沈黙だぞこれ。」
「へ〜悪いんですねこの雰囲気は…つまり何か後ろめたい事があるとそう言う事ですか?」
「わけのわかんねぇ事言ってないで、とっとと話を再開するぞ。」
「本当ですよ。変に話をはぐらかされて困ってしまいます。」
「あ、あれ?コレって私の問題な話なのに何故か責められてないかな私?」
「責めるも何もあなたがそうやって誤魔化したりするからでしょう。香澄さん、昨日時点で決心はしたんでしょう?でしたら答えは1つだと思いますけど…」
「うっ……でも私……」
「………なぁ聞いてもいいか?」
「はい何ですか?」
「香澄ちゃんは本当に俺と海未に迷惑をかけたくないから参加するのを拒否しているのか?本当は別の理由で拒否していたりしてるんじゃないかと俺は思ってる。あくまでもただの憶測だけど、もしそれが違うなら一緒にparadise Skyに参加してほしいんだ。」
「………はぁ〜分かりました降参です。これ以上根掘り葉掘り聞かれるのは私としてもあまりいい気分ではありません。なので、素直に参加させていただきます。」
「急な手のひら返しですね。なら何で最初からそうしなかったのですか?」
「それをしたら私が本当はそこまで何も考えてない馬鹿女だとも思われるじゃないですか。本当なら潔く諦めてもらいたかったのですが……さしづめ私を利用する事で何か閃きが起こるとでも思ったんじゃないんですか?」
「鋭いな…けどまぁあながち間違っちゃいない。そうここではお前が1番要になる。だからもう一度言わせてもらうぞ香澄ちゃん俺と一緒にでてくれ、さっきは強引で頑なに拒否しようとしていたが、今自分で認めて参加すると言った。そして利用されるというのも承知で…それを認識して改めて問いたいその覚悟は今の状況打破する為のものだと自分は理解して承諾したという事でいいんだな?」
「………はぁ〜もういいですよ。何だかさっきから変に追い詰められてる気がして、いつもの変態先輩じゃない気がして中々合わせづらいです。」
「真剣な話しをしてるんだ。そんなんでいちいちチャチャなんていられるか。」
「ふぅ〜ようやく決まって何よりって所ですかね。けれどそう簡単に甘くはありませんよ。paradise Skyは普通のスポーツと違って危険性も伴います。要注意して下さい。」
「……まぁあまりそこまで知らないスポーツだ。まずは練習だな。」
「あ、もしかして朝早くに来たのって…」
「ああ実はもう約束をしていてな、海未にコホン!蒼にparadise Skyを教えてもらう約束をしているんだ。」
………あ〜幼馴染の定義でしたね。確かにここでお姉ちゃんの本当の名前を言っても誰ってなりますもんね。本当めんどくさい人達です。
「でしたら私が教えましたのに…」
「いやお前がここで練習してる所を見られたら恐らくややこしい事になる。」
「確かにそうですね。香澄さんが急にparadise Skyに参加したら周りは何であの子がという反応になりますね。」
「かえって、蒼の場合は違う。アイツはもう世に渡るぐらいの名手だ。つまりそいつと一緒にいれば俺が情けをくらって教えをこう見方ができる。」
「待ってくださいそれだと変態先輩にも風評被害が…」
「何言ってるんですか、元々初心者でも参加できる試合形式なんですよ。そんな風にみる輩がいたら、もうその人達はリタイアが確実に約束されてますね。」
「お、お〜木葉ちゃんがそんな事言うなんて、何か珍しいね。もしかして変態先輩に情でもうつりましたか?」
「あなた人を煽る癖直した方がいいですよ。私でも堪えきれない感情は爆発してしまいますからね。」
「うっごめんなさい。」
「さて、いつまでもここにいればまた誰かの注目の的になってしまいます。私はいいですが、あなたは宜しくないんじゃないんですか変態先輩?」
「ああそうだな。時間も時間だし俺はいく。あ、用紙の手続きは…」
「私ってやっておきます。代わりの代役が出しても何も問題はないでしょうし大丈夫です。」
「そうか助かる。それじゃあ頼むな……後お前ら俺の事を変態先輩呼ばわりで定着させているが…俺は変態じゃないからな。それだけは必ず認知しとけよ。」
ガラガラ…
そう言って一言文句を言い残し保健室を出ていく一星。
「ふぅ〜本当に世話焼きな人ですね。普通こんな傍迷惑な面倒は関わりたくないんですけどね。」
「けれど、いい人そうなのは話していて分かります。あなたの事をここまで思ってくれる人は中々いないと思いますよ。特に異性だったらの話しにはなりますが…」
「うん……そうですね。………え?」
少し顔を赤らめながら木葉の言い方に意図する香澄。余計に顔が真っ赤になり慌てふためく。
「そ、そそそ、そんなじゃありませんよ!誰があの変態先輩の事なんて…」
「そうですよね。でももうすぐこのしがらみから解かれるんです。あなたも覚悟だけはしといて挑んだ方がいいですよ。」
そう言って木葉ちゃんも言ってこの場から去っていき私だけが取り残される。と言っても保健室登校だからここから出るという選択肢は無いわけなんですが…
「ふぅ〜コレじゃあ夢葉ちゃんと一緒で、好きのベクトルが上がっていきますよ。本当にあんな人がいるなんて、普通に漫画みたいな話しですねコレって…」
………運動場
「あ!おーい!イックン!」
「すまん待たせたな。」
「妹ちゃんは何て言ってましたか?」
「ああ了承だってさ。」
「そうですか……香澄がまさかの…」
「香澄ちゃんがどうかしたのか?」
「その、少しばかり寂しくなったなと思いまして…」
「おいおいこんな所で感傷に浸っていたらさきがもたないぞ。まだ何も始まってないからな。」
「そうですね。でも何もかもイックンのおかげで色々と解決できそうで良かったです。本当ならイックンと試合に出たかったのですが……やはり考え直す事はできませんか?」
「悪いなコレばっかりは海未に応える事はできない。でもお前にはとびっきりの引き立てをやってもらう。それもお前が望む様な引き立て役をな。」
「???どう言う事でしょうか?私にピッタリの引き立て役とは?」
「その話をするのならイベント近くになったら話す。ともかくparadise Skyの基本を教えてくれ。2週間ちょっとで上達するとは到底思えないが、やれるだけの事はやる。」
「分かりました!私もイックンに極力教える事は教えます!なので覚悟して下さいね。」
最高の笑顔で俺に指南をしてくれる海未。しかし俺はこのスポーツには致命的な弱点があるのを早々に知り難攻不落の地へと佇む事になる。




