山茶花のお弁当
ギュルル〜
あ、そう言えばそろそろ昼休みが終わるな。チャチャっと飯を食べるか。
「はぁ〜もういいや。ひとまず飯にしよう。腹が空きすぎて死にそうだ。今食べ損なったら午後の授業がもたん。」
「あ〜そうだな。それじゃあその辺で食うとするか。」
「そうだね。あ、2人ともお茶が無かったら良かったら僕の水筒使っていいからね。」
たまたま廊下の端っこ側にあるベンチに座る俺達。しかしここで俺が飯を食べるといった事で、物凄い後悔をしてしまったんだと改めて思い、何故皆の反応があそこまで露骨にあったのに気付かなかったのかをそれを含めて自分の落ち度に腹が立つ。
「あれ?神楽坂君そのお弁当なんだか可愛いね。というよりお弁当作ってきたんだ。珍しいんだね。」
「ああコレは山茶花が俺に持たせてくれたものなんだ。わざわざ2人分作ってきたらしくてな。まさかこんなにも助かる事になるとは思ってもみなくてな。」
「………」
「え?………」
林音は訝しんだ表情をしながら、ゆっくりと蒼脊の方へ睨みつける。しかし蒼脊は俺は何も知らないという様な素知らぬ顔で林音をスルーする。
「しかしどんな弁当なんだろうな。今の所幼馴染達が作ってくれた料理って美味しいかったから、きっと山茶花も同じぐらいなんだろうな。」
パカ!
一星はゆっくりとお弁当箱の蓋を開け中身を覗くとそこには彩り取りのお弁当になっており見た目が物凄く美味しそうに思えるぐらい食欲が唆るぐらいの感じで一星はよりお腹を空かせる。
「おお〜これは凄いな。なんか今まで見てきた中でザ・お弁当って感じがしないが、より鮮明に作られてる感じが妙に伝わってくる。かなり念入りに作ってきた傾向があるとみたな。」
ガシ!
林音は蒼脊の肩を強く握りながら、一星の方へ声が届かない様にコソコソと話す。
「ちょっとなんて物を持って来させてるの!僕あのお弁当のフォローするの嫌なんでけど!」
「それはコチラとしても同じセリフだ。というより、あんな物寂しそうにしている山茶花を見て、そのお弁当は危険だ何て言えるか普通。」
「山茶花ちゃんを悲しませないその心意気は認めてあげるけれど、ちゃんと口直しができる物はあるんだよね?」
「んなもんあるわけねぇだろ。」
「神楽坂君を殺す気なの君!」
「大袈裟だな。確かにアイツが作る料理は少し妙な味付けではあるが、食べられない程ではなかったぞ。寧ろツーに分かる味付けだと俺は思ったがな。」
「山茶花ちゃんの見た目の料理を甘く見ない方がいいよ。誰かが側にいて一緒に作ってあげなかったら、アレは殺人兵器にもなり得るだから。」
「お前真顔でなんて事を…」
「お?この卵焼き美味しそうだな。見た目はツヤツヤしているし、なんなら金粉が入っていてより神々しさが増してる様にもみえる。はむ…………うっ!」
ビシ!
卵焼きを食べた一星。その反応は側でコソコソと話していた2人が、まさかと思ってるのもありつつやっぱりかと思うのもあり急いで一星の側へと駆け寄る。
「だ、大丈夫神楽坂君!しっかりして!まだ傷は浅いよ。」
「卵焼きを食べて地面に倒れるって……中身にいったい何が入って……は?」
一星が齧った卵焼きをよくよく観察する蒼脊。そこにはなんと卵の殻が散乱と入っていた。
「………こりゃあ酷いな。というかキラキラ光って見えたのって卵の殻なんじゃないか。ていうより何故卵の殻だけでこんなに輝いてって……うん?何だこの酸味のある強烈な匂いは………うっ!コレ、ミリンか!アイツどんだけの量をいれたんだ。は、鼻が曲がるわ!」
カポ!
「うん……コレは山茶花ちゃんには申し訳ないけど、処分だね。神楽坂君ほらお茶飲める?」
「うっ………」
一星は林音にあやされるかの様にしてお茶を飲まさせてもらい意識を回復し、いったい何があったのか認識を再確認する。
「俺はいったい……というか何で口の周りに血が…」
「あ、はいはい今拭いてあげるから動かないでっと…」
「本当に殺戮兵器か何かなんだなこの弁当は…」
「とりあえずこのお弁当は僕が持って帰るね。神楽坂君は僕のお弁当を食べて…」
「わ、悪い今口の感覚が何か麻痺してる感じがしてとてもじゃ無いが食える感じじゃない。」
「まぁアレだけの酸味を効かした食べ物なんだ。ほんの間だけ味覚が麻痺してしまうのも仕方がない……いや仕方がないのか?」
「う〜んだとしたら放課後まで持ちそう?一応お茶は飲めてたみたいだけど…」
「まだ甘さとか苦さなら分かる。というかあんなうってなる様な弁当初めてたべたぞ。お前らもしかして知ってて黙ってたな。」
「黙ってたというより言い出せなかったというか…」
「うん。あまり山茶花ちゃんに対して風評被害は良くないと思ったからね。それに神楽坂君はこうして僕の膝枕を堪能できているんだからよしと思わなきゃ…」
「…………所で蒼脊。」
「おいこら僕を無視するな。しかも堂々と膝枕されながら全く持って相手されないのは何故かムカつく。」
「おうなんだ。」
ギュルル〜
「………すまんやっぱりお腹空きすぎて、何か甘い菓子パン貰えないか。」
「いやせめてそいつの膝枕から離れてお願いしないか。何かふんぞりかえってる感があって腹が立つ。」
「いやいや今の僕の状況の方が1番際どさがあるからね!というか足痺れてきたからいい加減退いてくれないかな。」
「…………」
「え!?何で退いてくれないの!しかも何で無視するの!」
「………」
「え〜お願いだから退いてよ〜」
「…………ふっ」
あ今笑ったな。多分さっきのあやふやな事での仕返しをしつつ弁当で本当のことを伝えなかった事を根に持ってやがるなコレ……まぁ俺の方向に来なくて良かったけど。
「………」
「ちょ、ちょっとお願い本当にお願い!このまま足が痺れたら、と、トイレにも行けなくなっちゃうからお願い…」
「………いやもう少しこのままでもいいかなって…」
「何で!?何でそんな酷いことするの!神楽坂君は僕がこの場所でお漏らししてもいいと言うの!」
「おい女子。うら若き乙女がそんな単語を口にするな。後邪魔なら無理矢理一星を退かせばいいだろう。」
「ぐぬぬ〜それをすれば僕が負ける気がして退くことができない。」
「いや何の勝負してんだよ。お前の膀胱の危機が迫ってんなら早いとこたてばいいだけだろう。」
「それはそうなんだけど………」
「ふっ!」
「何か勝ち誇った顔をしてムカつくんだよ!絶対に退かないんだから!」
「あ〜何とも馬鹿らしい光景だ。というかもうチャイムなるからいちゃつくのはその辺にしとけよ。後誰かに見られて、妙な噂になっても知らんからな。」
「………一理あるな。あまり弄ぶのも可哀想だ。ここは一旦俺の勝ちにして教室に戻るか。」
「おいこら今何て言った。僕を弄ぶと言った?弄ぶといったな!」
「なんだ?気にしてんのか?アレだけ計画的に勝ち星を掴んでいった東小橋川さんもやっぱりこう言ったお人よしな行動は予想外すぎて、計画外になってしまったのかな?」
「…………く〜〜〜覚えておきなよ!神楽坂君のバーカバーカ!」
「ふっ勝ったぜ。」
顔を真っ赤にしながら俺にととっつきそうになるが、やはり今の状態では流石にくってかかる様な事はできずそのまま急いでトイレへと急ぐ。
キーンコーンカーンコーン
「何やってんだか……あ昼休み終わっちまった。」
とりあえず話に関しては有耶無耶なまま蒼脊達から聞く事は不可能と思った俺はこのままどうやって海未と話せばいいのかを考えながら放課後を迎える。
……放課後
「はぁ〜結局何も聞き出せなかった。いや聞き出せない事はないが寧ろはぐらかされて無理矢理話しを終わらせた感がある。」
何で感じな事をアイツらは直ぐにはぐらかすんだ。そんな事をしてもコレからの事でメリットもデメリットもないと思うんだが。
「しかしはぐらかされた分何か意図的な部分に少しばかり近づけられた気がする。あの葉月家での事情での…」
海未の今の状況は君津家によって、妹に関する騒動で対応できない。けれどそれを妹の香澄ちゃんも理解して、今の状態を我慢しつつ保健室登校をしている。考えれば考える程どちらもお互いの事を気を遣っている。そして迷惑をかけないように上手く取り繕っている。
「……クソ、血は繋がってなくても思考はお互いいい性格をしている。もっとマシなやり方はなかったのか……いやなかったから今までどうすることもできなかった。でも、今回の東小橋川さんのイベント…それで命令権を獲得するというのはもしかしたら試合前に何とかできるからあんな事を提案したのか……だとしたら本当にどこまでが予測の範囲内に入っている。アイツは俺よりも頭がいいんだろうな。じゃないとわざわざ人の為に動いたりしない……いやするか東小橋川さんなら…でも少しポンコツの部分もあったりするから内心困る。」
「あ!イックン!」
「海未。」
校門前で海未の姿が見え、コチラに向かって無邪気に走ってくる彼女。まるで犬みたいな懐き方をしているが、コイツはそんな馬鹿じゃない可能性がある。
「どうしたんですか校門前に立って……あ!もしかして、私に会いたかったとかですか。もしかしてとうとう綺麗になったね言ってくれるんですか。」
物凄いウキウキ感で話す海未。しかし俺はそんな海未に対して水を差すように、少し真面目なトーンで返事を返す。
「ふぅ〜まぁ言いたくなったらいずれ言うよ。」
「え〜何でですか。今でいいじゃないですか。」
「それよりもお前朝の出来事もう知ってるんじゃないか?」
「朝の出来事?何か会ったのですか?」
「まぁそうはぐらかすよな当然。だからここでのお前の本当の名前を言わせてもらうぞ葉月蒼。」
「あ〜とうとう分かっちゃいましたか。でもそれを言われたからって別に何がどうのと言うわけじゃないと思うんですよ。だって私隠し事とか苦手ですから。」
本当に動揺する素振りすら見せないんだな。こうなる事は既に分かっていたって事なのか。あるいはわざと誤魔化しているとか…
「まだ何も言ってないぞ。勝手に自分でペラペラ言うか普通。そう言う言い方をすると言うことは認めるんだな海未。
」
「………場所変えましょうか一目につきますよ。」
「主にお前の存在がな。」
「あ〜つまりそれって、私達恋人みたいに思われてるって事なんですかね。」
「何が恋人だ。強いて言うなら兄妹だろう。あまりの懐き方だから、ペット感覚にしかおもわねぇよ周りからは。」
「成る程ペットですか。つまりそれは私は犬か猫という解釈になるのですね。と言うことはイックンにいっぱい甘えられる。それって幸せなことですよね。」
「お前の思考回路は幼稚園児レベルか。都合解釈が良すぎるだろう。単に馬鹿げた冗談を言っただけだ。」
「…………は!?私今コケにされたと言う事ですか!?何でそんな事言うんですか!イックンのバカバカバカ!」
ポカポカポカポカポカポカ!
何だろう痛くない軽い殴りなのに、この微笑ましい感じの空気は……やっぱりただのバカなのではないか。いや単純に演技の可能性もある。いやないかな?
ともかく俺達は校門前で見せびらかす様な形ではないが、恋人うざ!死ねリア充といわんばかりの冷たい視線を食い直ぐ様にこの場を非難し何処か静かな場所へと移動する。……移動したのはいいのだが…
「………何故に回転寿司?」
「実は今日の部活でかなりお腹空いてしまったんですよ。なので、初めてのイックンとの回転寿司。是非堪能したいと思いました。それとイックンもお腹の音もなっていましたしね。」
普通に聞かれていたのか…まぁ昼休みに少し菓子パンを齧っただけだからな。聞かれても仕方がない仕方がないんだが…
「そわそわそわ…」
「う〜んどうしようかしら。やっぱり無難にサーモンかしらね。」
「何故お腹が空いたからと言ってこうなったんだ?」
俺と海未が回転寿司にくるそこまではいいけど何でこの2人まで呼んだのかがさっぱり分からないし状況が追いつけずそのまま中に入って席についてしまった。というか着く前に2とも理由ぐらい聞け




