結果が全てじゃない
「蕾先輩もしかして蕾先輩が結果が残せたとしても残りの部員が結果を残せなければ意味がないってそう思ってませんか?」
「あら?どうしてそう思うのかしら?」
「自分も元水泳部だったんで競技に関しては荒療治ではありますが認識しているつもりです。」
荒療治ねぇ…
「元水泳部……へぇ〜一星君やっぱり身体のしまりがいいとは思っていたんだけど、部活やってたんだね。」
「いえ俺は部活なんてやってませんよ。親の英才教育で単にやってただけに他ありません。」
まぁそのおかけで、向こうでも俄に友達は作れたけど違う意味であまり良い関係性とまではいかなったかな。
「………それで元水泳をやっていた一星君は何でそういう風に思ったのかしら?」
「単純な話しじゃないですか。3年生であるあなたがこの夏で引退してこの学園を卒業し大方選手になろうが違う道を進もうがどちらにせよ残る2年と1年が何か結果を出さなければ廃部になる。俺達の通う学園はそれぞれ何かしらの結果を重視している。部活にそれをかけている生徒達にとっては今回最後の試合…つまり蕾先輩と同じ状況に陥っているという事です。」
「ふふ、まぁその通りあなたって意外に見る所はちゃんと見てるのね感心したわ。やっぱりあなたに恋人になってもらって大正解。」
ヒョコ!
うーん!うーん!
ヒュ!
「ん?何か今声がしたような…」
「そうかしら?私は聞こえ無かったわよ。」
…………
「だ、駄目よ火花ちゃん今ここで飛び出したらバレちゃうでしょう。」
「でもでも!今!今!」
「分かってる分かってるけど…話は最後まで聞かなきゃ…それが嘘かどうかを決めるのはそこからでも遅くないでしょう。」
「そ、そうだよね……ごめんなさい。」
けれど焦ったわ。蕾さんと神楽坂君が恋人同士っていったい何の因果があってそうなちゃったわけ?何故か陸上の話もしてるしもうわけがわからないわ。
2人は何とか一星達にバレずに小さな声で話し合い一星と琵心の妙な関係性を探ろうと密かにまた聞き耳をたてながら話を聞く。
「あの〜一応言っておきますけど、俺達は偽の恋人ですからね。変な誤解を生まないようにそこはちゃんとメリハリをつけましょうよ。」
「まぁそうなんだけど…でも誰かに聞かれる程私は困ってないのよね〜寧ろこの筋書き通りに進んでくれるなら大体の事は上手く行くって私は思ってるの。」
「いいやどうでしょうかね。というよりも先輩があの君津家先輩との関係性に他の部員との関係性って特に何か意味深なものってあるのですか?」
「いいえ特にないわよ。」
ないのかよ。
「なら何で俺と恋人同士なんてままごとを…」
「言ったでしょう。あの鬱陶しい人から遠ざけてほしかった。その為には厄除けでも何でもいいから私から離れるきっかけが欲しかっただけ、それがあなたでもね。」
じゃあ君津家先輩の件と結果を残すという部員達の関係性は特に俺との恋人同士という疑惑の嘘をつく必要性は無かったという事なのか?いや君津家先輩に関しては恋人という関係性が必要だからどうしてもこんな俺でも利用ができれば後は楽勝とでも思って安易に近づいてきたってわけか……というか何気に俺でも完全に馬鹿にされてるよな。
「分かりました。仮に俺が恋人同士になるとします。けれど部員の人達の件はどうするんですか?その人達にとっては何で蕾先輩この時期に恋人なんて思う部員もいたりするはずですよ。」
「ふふ、その件も私に考えがあるのよ。そうね〜明日の放課後また時間を空けて貰えるかしら。あなたにしかお願いできない事があるの…それも今度の大会に出る為にあなたの力が必要になると思うからできれば1週間放課後は私に付き合ってもらうとありがたいわ。」
「内容は教えてくれないんですか?」
「それは明日のお楽しみって事で…その為の謝礼と言ってはあれだけどここのお店にある物何でも奢ってあげるからそれで今回だけ許して頂戴。」
あざとらしい謝りのアピールの仕方をする蕾先輩。この時の俺は蕾先輩が放課後に頼んでくるという内容をこの時知らなかった事を後々後悔する。
「所でなんだけど、さっきの話し聞いてもいいかしら?」
「さっきの話し?」
「ええ、どうして水泳を辞めたのか聞かせてくれたらいいなって思ったんだけどあつかましすぎだったかしら。」
「何でそんな話が聞きたいんですか?別に俺達なぁなぁな関係だからそこまで根掘り葉掘り聞くのは何か筋違いな気がしますね。」
「そ、そうよねごめんなさい。別にあなたに不快な思いをさせたいとかそうじゃないの、単にもし私も辞める時が来たらどんな気持ちで辞める決意になるのかなってそう思って…」
「先輩陸上辞めるんすか?」
「まだ分からないのよね。辞めて新しい人生を歩むという選択肢も割りかしありかなって思ってたりもするし……その誰かと…本当に恋人になったりして…自分の人生を共にできるというパートナーも考えたりなかったり…」
「………え?何が言いたいんですか?」
「………はぁ〜やっぱり何でもないわごめんなさい。あなたにこんな事を相談する事自体私の考えが浅はかだったわね。恋愛相談は今度別の誰かにするわ。」
「………え!?今の恋愛相談だったんですか!?」
「気付くの遅くないかしら?というよりその何点何秒の差の間の驚き方流行らないから今の内にやめときなさい。」
何故俺が変に罵倒されなきゃならんのだ。普通に驚いただけなのに…
「あわあわあわあわ…」
「ちょっと落ち着いて菟ちゃん…今度は菟ちゃんが動揺しちゃってるよ。」
「そりゃあ動揺しちゃうよ!いつのまにか2人がああいう関係になってだなんて誰が思うのかしら。そんなの学園で広まったら大変な事になるわよ。」
「う、うーん…私達がそれを言えるのかどうかもあると思うんだけどね…」
主に神楽坂君絡みで…
「でも明日から神楽坂君達を見張らないといけないわね。」
「でもでもそれって、ストーカーにならないかな?」
「大丈夫よ。私達だってうら若き女子高生なんだからそんな事を気にしてる余裕はないわ。」
「うら若き女子高生でアイドルやってる菟ちゃんが言うセリフじゃないと思うな私…」
「とりあえずまた明日放課後神楽坂君の後をつけて徹底的に調べつくすわよ。」
「菟ちゃん…もうアイドルの原型を忘れちゃってるね。」
「………お客様他のお客様の迷惑になりますのでその……席に戻っていただけるとありがたいのですが…」
「ご、ごめんなさい!」
「ご、ごめんなさい!」
「…………ズズ…何やってるのかしらあの子達?」
「うーんとどれにしようかな…因みに蕾先輩のオススメって何かあったりします?」
「こっちはこっちで全く興味がないのかそれとも気付いてないのか反応に困るわね。」
「何の事!?てか何かディスられてない俺?」
それぞれ思惑な部分がありながら明日に備えて今日一日という祝福を甘味しながら過ごす。そして次の日の放課後…
キーンコーンカーンコーン!
「よぉ!一星今日こそは付き合ってくれんだよな?」
「やめろ蒼脊はたから見たら変な誤解が生まれるだろうが。言い方をもっと別にしてくれよ…」
一部の女子から俺達が何かホモ疑惑みたいなレッテルを貼られて妙な視線を感じたりするんだよな。まぁ気のせいだといいんだが…
「いやそのすまん蒼脊今日も用事があるんだ。」
「え〜またかよ。まさか本当にこの短期間で彼女とか出来たりしたんじゃないよな?」
「いやそれは…」
「まさかあの蕾先輩だったりとかないよな?あんな腹黒女と付き合う事になったらお前この世の終わりだぞあはははは!」
「あ…後。」
「あははは、え?後…」
ガシ!
蒼脊は肩に何か物凄い圧みたいなのが握ってくる感じがし僅かに淀めく黒いオーラが滲み出てるのを感知する。
「誰が…何ですって?」
「な、なな、何で…蕾先輩がここに…」
「ふふ、質問を質問で返すなんて事を教育上で学んでかしら?質問してるのは私の方が先なんだけどな〜」
ワナワナワナ…
ざわざわざわざわ
な、何かまずい事になってるな。蒼脊の事もそうだけどこの場でのざわめき様…蕾先輩の存在ってどんだけ汎用性が高いんだよ。
「そ、その質問といいますと?」
「あら〜まさかこの状況でしらをきるつもりなのかしら?それならそれで別に構わないけど…」
ガシ!
グイ!
琵心は蒼脊の耳元でこう呟く。
「私の目がまだ黒いうちにこの場での騒動をあなたが収めなさい。」
「……というと?」
「ふふ、それは見てから分かる事よ。」
蕾先輩は蒼脊との話が終わったのかこちらに近づき満面の笑みで話しかける。
「さぁ迎えに来たから早速行きましょうかダーリン♡」
「ちょ!」
「な!?」
「え!?」
ガヤガヤガヤガヤガヤガヤ!
な、何を考えてるんだこの人は!いや確かに彼女になるという話は了承しているがこんな場所でしかもまだ帰り支度している奴等の前で言う言葉じゃない!
「うーん?どうかしたのダーリン…もしかして何か用事…」
ガシ!
「は、早く部室に行きますよ蕾先輩!今日はそのお手伝いでしょ誤解招く言い方はやめてください!」
「いやん!強引♪」
「喜ぶな!」
俺は蕾先輩の腕を無理矢理掴み先輩の部活である陸上部へ急いで教室から飛び出す。
……………
「おいどうなってんだ!」
「あの蕾先輩がいきなり編入生とお付き合い?」
「これは本人に聞く他ないのでは!」
「殺せ!神楽坂一星を殺せ!」
おいおいこの醜態どうやっておさめろというんだ…本当にあの先輩無鉄砲な所は相変わらずだな。まぁ最後に一星が言い放ったあの言葉で何となく察しはつくが…一応できる範囲でやっておくか…若干どうにもできないやつもいたりするが…
「やれやれじゃあ早速……うん?」
蒼脊は帰り支度をする2人が何やら結託している様子をしているのを見つけコレは黒だなと感じ跡をつける。
危なっかしい事はないと思うがまぁいきなりのハプンニングイベントだ。まずはこっちを確認してからでも遅くはないわな。




