姉のお願い事と妹のお願い事、どちらかの選択で2人の仲に亀裂が走る
………海未の家、帰宅時間
「ごめんねイックンあまりおもてなしができなくて…でも次来た時は一緒にイックンのしたい事しましょう!」
「あ、ああ…」
さっきまでのシリアスだったのが、ほんのちょっと時間が経っただけでこの切り替えの早さに自分でも驚くべき部分ではあり見習いたい部分ではある。しかし海未の場合単なるアホだからあまり気にせずにいられて能天気とかいう理由づけで、あまり参考にはならないのがある為やはりどうしても納得できないというのが現状である。
「じゃあまた明後日な。」
「はいまた明後日です!」
ブンブンと手を振る海未その仕草にあまり昔の印象が感じずにいた俺は、本当に変わってしまったんだなと思いつつ、自分の家へと帰る。
「………さて、色々とまた問題が出てきたぞ。勿論この事に関して、あっちは知っているはず…となればコレは既にあちらの思惑通りになるという訳にはなるが…果たして次に会った時それが事実となるのかそうじゃないのか……全く俺の幼馴染達は面倒さいな。」
…………2時間前
「海未は大きな勘違いをしている?」
「はい。お姉ちゃんは私がparadise skyで勇猛な選手か何かと思っているらしいですが、私はそんな事一切言っていませんしやってもしてません。なのに何故か勝手にそれが流通して…」
「妹のお前に風評被害があったと言う事だな。」
「え?何で風評被害だと思ったのですか?私はただやっていない言ってないと言っただけですよ。」
「お前の姉部屋で話していた事でちょっと違和感があったんだよ。香澄が全然相手にしてくれなくて勝負してくれない挙げ句の果てには周りがそう言っている。そんな話しの流れでの推測となれば主に海未が原因なのが、考えられる。恐らく海未のポテンシャル的なparadise skyでの才能で妹にも遺伝されているからとかどうか馬鹿な事を言ってるやつがいたんだろ。それを半信半疑で受け止めた奴らが勝手に周りへと流通させた。会話の流れ的にはそういうオチ的な場所までは予測できる。」
「す、凄い…さすがはお姉ちゃんの幼馴染さん。伊達にただの変態幼馴染さんじゃなかったんですね。」
さっきの自分の服装についてまだ突っかかるのかその定着した変態呼ばわりは……
「その変態は余計だが、一応似た境遇が一致して単に頭の片隅からポロッと出てきただけだ。普通の奴ならそう簡単に割り出さない。」
「ふ〜んやっぱり変態さんだからなのでしょうか…」
「引っ張るな〜それ…ともかくお前の今の悩みは大体その辺に関してどうにかしてほしいって事なんだろ?あの暴走機関車並の海未にやめさせてほしいとか俺に頼もうとしたんじゃないのか?」
「………」
え?何でそんな唖然とした様な顔をしてくるんだ?何か変な事いったか俺。
「あの、そこまで把握できるのになんで家の姉が幼馴染だって事に気付かなかったんですか?」
「…………何でだろうな。」
「それが分からないのにどうして他人の思考は読めるのかさっぱり分からない人ですね。」
「お前は褒めてるのかそれとも貶したいのかどっちなんだ。」
「はい?褒めてるわけないじゃないですか。」
「そこは素直に言わんでもいい…」
というか普通に考えて昔の幼馴染のギャップ差が違うから分かんないのも当然だろう。誰がアレが昔の海未だって分かるんだ。しばらく離れていて帰ってきたら王子様系の美少女になってんだぞ。というか俺の幼馴染女子全員がビックリする程の天才肌を持った美女達だぞ。んなの分かってたまるか。
そしてこんな事口が裂けても言えないな。
「まぁそこまで察しているのならあまり私が言う事もありませんね。上手くお姉ちゃんの事を言いくるめて私がparadise skyに参加させないようにして下さい。」
「お前が鍛えて参加するという方向性はないのか?」
「あるわけないじゃないですか。寧ろ私スポーツ系全般苦手な方なんですよ。あなたと一緒……一緒…」
「どうかしたか?」
「いえ、何かをやってなさそうに見えたんですが…体の肉質とか何か張りがいい様に見えるんですけど…何かやっていましたか?」
「???いや別に何もしていないな。強いて言うなら昔水泳をやっていたぐらいかな。」
「水泳?………は!?そうだ思い出しました!あなた天才水泳選手の神楽坂一星さんじゃないですか!お姉ちゃんから散々聞かされてた神楽坂一星とまた違う人なのかと思っていたんですが、やっぱりそうです!昔の雰囲気というか本人そのままじゃないですか!」
いやどう言った系で今の俺が天才水泳選手だって分かったんだ。肉付きだけで、そんな判断できるものなのか?というか俺そこまで身体鍛えてなかった筈なんだが…最近余計な脂肪とかも増えた様な気もするし……本当にこの子何だか怖いな。
「因み何でそんな1発で俺が天才水泳選手なんて分かるんだ?」
「え?ああ実は私相手の肉体的体質を見極める素質を持ってるんです。そうですね…例えるというならデザイナーでの服のサイズ…アレは本来測らないといけないものなんですけど、私それをしなくても身長や体重そしてウェストまでもを頭の中で直ぐに浮かび上がって構造できるんです。姉とはまた違う天才の一種ですね。」
それはもう天才ではなく超人なのでは?いや寧ろ自分が測りみたいになってるといっても過言じゃない。恐るべき海未の妹だな。
「しかしそうだったんですね。最初に会った時はまさかねとは思っていたんですけど、そうか…しかしコレがとても偶然とは思えませんね。幼馴染同士のにしては…」
「ん?今のどう言う意味だ?」
「あ、いえ今のはちょっとした私の中にある考えがポロッと出ただけに他ありませんので気にしないでください。」
やけに今のは気になる言い方だったが……いや気のせいかもしれんな。そんな幼馴染で何かある展開が訪れるわけでもあるまいし。
「ともかくお願いしますね。何とか姉に私の事を諦める様に説得お願いしますよお兄さん。」
…………二時間後帰宅途中
「諦める様にか…あのスポーツバカに何を説得しても無意味な気はするが、まぁどうにかしてやらなきゃだな。」
と言ってもどう説得するべきか…海未は妹の方を妙な誤解でparadise skyで自分よりも強いと信じ込んでいる。でも逆に妹の方は勝手な噂によって1番強いと思われ今でもそれに縛られながら未だに誤解があり続け困っている。
「さてコレをどう対処したらいいか…と言うか俺がparadise skyに参加しなくていい方法を考えないとならないな。アレに参加した所で幸が訪れるなんて事はない筈だし…まぁひとまず保留だな。開催されない限りはこちらにお咎めがありそうとは思えないしそのまま流す感じで大丈夫だろう。」
やはりあれこれ考えても今直ぐにどうにかできると言うわけではなさそうだった為そのまま日を跨ぎ考えるのをやめ残り1日を無駄に過ごした俺は次の学園の日を迎える。……迎えたのはいいのだが…
「…………何故ここにいるんだ。」
「おはようございますイックン。一昨日振りですね。」
何故か玄関前で俺の事を待ち伏せている幼馴染一年生……いやこうやって面と向かってちゃんと幼馴染として会うの初めてかもしれんが…いきなり正体が分かってわざわざ2日目に会うか普通?
「おはようっていいたんだが、お前平日なのに朝練はいいのか?」
「今日は休みだから大丈夫ですよ。というよりもこうやって出てくるのを待っててあげたんですから、何かいう事はないのですか?」
「ああそうだな〜とりあえずさっさっと学校へ行くか。」
「ええ!それだけですか!」
朝からボケやツッコミというワードは俺にとってはめんどくさくしんどい為敢えてそこはスルーし学園へと向かう。
「待ってくださいよ〜イックン!せっかく2人での登校なんですから、手を繋いで歩きませんか?ほら私がてをさしのべてあげますよ。」
「要らんわ、というかその言い方はイケメン男子が女子に手向ける言葉だろう。女子にそれをされても嬉しくないんだよ。」
「ガーン!せっかく勇気を込めてお伝えしたと思ったのですが…やはり男の子にはあまり靡かないのですね。」
「靡くというセリフの時点で最早パリピィ的な男子のノリなんだよな。いや別にそこに関してどうでもいいんだ。今は隣で歩くお前の事について問題がある。」
「はい?隣で歩いちゃ駄目でしたか?」
「いや駄目じゃないが……周りの視線がこちらへ集中しているんだが…原因はお前にあたったりしてるんじゃないのか?」
「いやいやそれはないですよ。だって私いつも空を飛んで学園に行ってるんですよ。寧ろこんなに視線が集まるのは初めてです。」
「………じゃあ原因は俺なのか?」
「きっとそうですよ!イックンのかっこよさが周りに物凄い影響を与えてるんだと思います。コレは誇れる事ですよ。」
「………海未って何でもポジティブに考えたりするよな。まぁそこがいい所だとは思うが…コレは絶対にそんなポジティブな視線じゃない。明らかに何か良くない視線を浴びているそんな気がする。」
「え〜そうでしょうか?」
「お前が全く見覚えがなく俺にだけ違和感があるのならそうなんだろうよ。」
何かこの視線以前にもあった違和感みたいなのが感じるな。
「そ・れ・よ・り・も、イックン一昨日の件考えてくれましたか?」
こちらの顔を覗き込む様にして背を屈む海未は一昨日の件について催促する。
「あ〜一昨日の件なまぁまだ保留中という事で…」
「えー!!じゃあ香澄との勝負の事もまだ保留中という事ですか!」
「そ、そうだなひとまず保留だな。」
そんな直ぐに決められるか、どちらかを選んだら亀裂ができる選択なんてごめんだ。落胆と共に軽蔑の眼差しがされるというのは妹と海未が物凄く分かるというのは目に見えてはいるんだが…姉妹の関係上そうはならんとは思う気がする。とにかく何も起こらない方向で考えないといけないとなるとかなり億劫なのは間違いないという事だけは嫌でも分かってしまうのが最近分かりかけていてマジで困る。
「じゃあそれはまた今度でいいとして、私に綺麗になっては言ってくれるように考えてくれましたか?」
「本当にお前はめげないやつだな。嫌だって何度も言ってるだろう。」
「何でですか!イックンは私のことが嫌いなんですか!」
ざわざわざわざわ
やばい周りからまた誤解のある視線が…
「何やってるの2人とも?」




