自宅へ招かれ、巡る巡る勘違いと食い違い
蒼脊が海未の自宅へ行けばほとんど分かると言っていたが、そんな簡単に分かるのだろうかと内心また嘘をついてるんじゃないかと半信半疑に信じながら俺は今日蒼脊に教えてもらった海未の自宅へと招いたのだが…
「………前の家と変わってなかったんだ。俺が引っ越した場所とさほど距離は変わらないし……というか確かこの二軒先って山茶花の家じゃなかったか?間違いじゃなければ向こうにあるはずなんだが…後で確認しにいくのもありだな。今日部活あったかな?」
てか俺の玄関先にちょくちょく現れたのもアレはまさか家が近いと言う事のアピールか?もしくは復讐する為機会はいつでもあるからその忠告みたいなものだったりしてな。
ガチャ!
そんな事を考えている最中突如扉が開かれた音に反応し玄関から短パンとラフなTシャツ姿でお出迎えしてくる女の子が現れとても煌びやかな登場をし目の前が眩しく感じた。
「ようこそいらっしゃいイックン!待ってましたよ!」
「………あ、ああ。」
蒼脊のやつやっぱり騙しやがったな。双子の妹が出てきちゃったじゃないか。しかも女性というモチアジを出しながら王子として華やかに登場してくるし……俺はいったい何にお出迎えされてるんだ。
「さあ!上がって上がって!」
「お、お邪魔します。」
上がってと言われて俺はそのまま上がらせてもらう事にし双子の妹かもしれん子にそのまま家の中へと導かれる。
「イックンお昼ご飯はもう食べましたか?」
「いやまだ食べてない。何か海未がご馳走用意してくれると言ってまだ食べてきてないんだ。」
「ほっ…それは良かったです!期待してて下さいね!とびっきり美味しいのを作ったのでリビングで待っててください。」
「………」
やっぱり上手く引っかからないか。やばいなまだ彼女は海未という役を演じている。さっき海未が作ってくれると言ったのに全然動じずに生返事するから、もうボロが出ないというのも学習したのか?だとしたら今日もかなり厄介だぞ。時間的には全然余裕があるから、ここでボロを出させて本人を出させてやるのが1番いいんだが……焦りは禁物だな。
「それじゃあここで待ってて下さいね。直ぐに温め直しきますから。」
「お、おう。」
普通にウキウキにエプロンを付けて料理を温め直す自称双子の妹かもしれない海未……さてどうやって暴露させるか。ここは俺とこの偽物の海未との勝負というわけだな。
※勝負も何も既に本人が目の前にいると言う事をまだ何も自覚していない鈍感幼馴染であった。
「イックンは確か昔から唐揚げが好きでしたよね。今日たっぷり唐揚げを作りましたので、いっぱい食べても大丈夫ですよ。」
つまりそれは俺を丸々太らせるという海未の復讐という戦法か…昔無理に俺の遊びで嫌々つきあわせたという部分もあっての仕返しなのかもしれん……海未目その戦法は俺には通じないぞ。散々東小橋川さんに威張り倒されたからな。その辺はもう根強くなってる。後美森姉にもな。
「………そうだ。ここは上手く昔話をして、海未と俺の関係性を話せばあっちも何を言ってるか分からないって反応をするんじゃないか?……やるだけやってみるか。」
料理に夢中になりつつコチラへはあまり気に目しない所もありはしたが、何とか俺は海未との昔色々あった事を思いだしながら、彼女にその話を言う。
「そうだ海未お前覚えているか?昔河原でザリガニを拾った時お前やたらと怯えてた事あっただろう。あの時のお前やめてよ〜って言ってて嫌々で俺の事をドーンってつき飛ばした事あったよな。あれは今でも痛かった記憶があったな。いやまぁ川にドーンとさてたからずぶ濡れになって1番の思い出でもあったしな。」
スパーン!
ビク!
「ふふ〜いい思い出でてしたよね〜あの時本当に嫌だって言ってるのにイックン無理矢理押し付けるんだもん。私虫系や変わった生き物は嫌いだっていったよね?何であんな事される理由が今でも分からないな〜」
「………」
え?覚えてる?いや知ってる?な、何でその事まで知ってるんだ。あれは俺と海未しか知らない思い出というか誰にも話さない思い出なのに……いやここで話すと言う事もまず迂闊な俺が悪かったではあるが……それを知られる覚悟での挑戦がまさかかなり怒っての演技そこまで海未という役を演じるのか…
「後次にもし嫌な思い出を言うつもりなら、イックンの嫌いな豆類いれちゃうからね。」
「………は、はい肝に銘じておきます。」
その事まで知ってるなんて……だ、駄目だあまりにも俺の事を知り尽くしている。昔の話す内容は色々とはあるが、それは美森姉や山茶花達がいた時の思い出…けどそれをした所で絶対に全て話されている。いや寧ろそれ自体ちゃんと記憶にしているのが不自然極まりないんだが…この子の場合それが事実という事らしい…
※何度も言うが、この鈍感幼馴染は目の前のいる本当の幼馴染に対して全く待って気付く素振りがないのと相手が偽物だと言う事を認識したままである。
「さて温め直したからお昼ご飯にしようか。妹ももうすぐ、部活が終わって帰ってくる頃と思うから、先に食べちゃってって言ってたから先に食べちゃいましょう。」
「へ〜妹がいたんだな。」
だからお前が妹なんだろう。何でそんな平然と嘘をつくんだ。帰ってくるのは姉の方なんじゃないのか?そこまで妙なハッタリをかますと言う事は帰ってくる本命の姉はそれ相応の何かしらの罠を仕掛けてくるという事なのか…
「それじゃあいただきます。」
「い、いただきます。」
この料理だってもしかしたら何か仕込んでる可能性だってある。睡眠薬もしくは東小橋川さん同様興奮剤の導入だってあり得るかもしれない。あの時は入ってないって嘘をつかれたが、今回はガチの可能性だってない事もないんだ。
「はぐ…」
「………」
モグモグ……うん?普通に美味い、それに何だか懐かしの味がする。……なんだろう何処かで食べた事のある味付けの唐揚げだ。
「どうですか?」
「え?」
「いえ、その料理の味どうかなって思いまして…」
「え?ああその、美味い。」
「!!本当ですか!」
「ああ本当に美味いよ。それに何だか懐かしい味もするし…何処かで食べた味かは思い出せないが、好きだった味ではある。けれど、こんな懐かしい味を何でここで食べられるのかが分からないんだが…」
「それイックンの好物の味付けの唐揚げなんですよ。ほら覚えていませんか?私の家の唐揚げの味付けってちょっとした隠し味が入ってるんですよ。それをよくイックンはここに遊びにきてお母さんが作った唐揚げをオヤツの様にしてよく食べに来てくれた事があったんです。もう昔の話ですから覚えていないかもしれませんが、私にとってはイックンがお兄ちゃんの様に思えて新しい家族が増えての食事とかもしたりして楽しかったという思い出があるんです。それをまさか今日家に遊びにきてくれるとは思いもしませんでしたけど。」
「………そういえばそんなのがあったな。確かに海未ん家のお母さんの唐揚げは美味しかった覚えがある。引っ越ししてもう食べられないと思って諦めていたこの唐揚げ……いつしか記憶の片隅から消えていっていたな。やたらと美味かった唐揚げが違う唐揚げに浸食されていって、もういいやって思ったりもしてたし何より色々と引っ越しした先では厄介事が多かったからな。」
「厄介事?向こうで何かあったのですか?」
「いや何でもない。というかお前本当にすげえよ。ここまでお母さんの唐揚げを再現できるって、もう本当にプロと言っても過言じゃないな。」
「え?そ、そうかな〜えへへでもイックンに喜んでもらえてよかった。私イックンに喜んでもらう為に色々と頑張ったんだよ。料理に部活に言葉遣いにダイエット…ここまでするのに本当に長い道のりだったな。」
「………ん?ダイエット?」
「そう!ダイエット!」
………え?ダイエットだと?じゃあ海未は昔からダイエット続けてちゃんと痩せていってしかも俺の為にやってきたというのか?いやまさかな。コレも何かしらの罠かもしれん…
「ああ〜そう言う事を言ってたって事か?アイツそれを君に言わせて本当はダイエットは嘘なんだよっていう話し何だろう。全くちゃんと証拠を何かを出してくれないと信用するにも信用できないんだよな。てかいい加減にさっさっと姿を現してほしい所だ。」
「あはははもう冗談キツいな〜イックンは目の前に私がいるのにいつまでそんな事言ってるんですか。もう怒ってないですからそう言う冗談はいいですよ。そうだ!イックンに私の昔のず有志の姿を見せてあげますね。ちょっと待ってて下さい。」
そう言って海未という妹なのか従姉妹なのか、自分の部屋へと戻って行ったのか2階へとかけ上がっていく音が聞こえ、やたらと楽しそうにしていた。
「………なんだろう。何か会話が噛み合わないというか勘違いみたいのが起こってる気がする。いや俺じゃなくて向こうがなよなきっと……というよりいつまでこの茶番が続くんだ。本人が来るまではこういう茶番劇に付き合わないとなると、どうやら俺の耐久心が問題となるという事かもしれん…ならやれるとこまでやってボロが出るまで付き合ってやるよ。そっちがその気ならこっちだってとことんやるまでだ。
「イックン〜持ってきたよ〜お昼ご飯途中だけど、どうしてもイックンに見てもらいたくて持ってきちゃった。」
「………アルバム?」
「そうこのアルバム実はちっさい頃からの私の成長の姿が記録されてるんです。本当は恥ずかしいけれど…でもイックンならいいかなって思って…」
「お、おうそうか…」
なら何故持ってきた。自分の成長過程をわざわざ俺に見せてどうしたいんだ。とにかく理由は分からないが、コレはコレでラッキーかもしれん。海未とその妹か従姉妹についての関係がコレで明らかになるんだ。
ペラ…
「コレが昔の私…本当にこの頃はふっくら体型で色々と苦労したな〜運動がからっきし苦手なのをよく覚えていますよ。」
うんこの頃の海未はやっぱりふっくらしてて可愛いというのもある。まぁ女の子に対してそれを言うのはアレかもしれんがこの成長差でいくときっとどんどん体型が変わって…
ペラ…
「う、うん?」
何だ成長期なのか、海未がどんどん痩せっていってる気がする。まぁ身長も伸びれば体の体型だって変化するのは当然だな。まぁ多分こここら横に広がって…
ペラ…ペラ…ペラ…
「えへへ、何だか昔の私を見てもらうのってどうにも歯痒いものがありますね。」
「…………」
俺はアルバムをペラペラペラとめくって昔の海未の姿をこの目で焼き付け、ある事を知ってしまった。いや気付いてしまっと言えばいいのか俺は恐る恐る隣でにこやかに笑ってほくそ笑む海未の横顔を見て、コレはどう話したらいいのかと確信と覚悟を持ちながら本人に確かめなければいけない事があった。
「え〜と、その…う、海未さん?」
「ん?どうしたんですか?何でさんづけ?」
「もしかしてたけど、怒らないで聞いてほしいんだ。」
「やだな〜私がこれ以上までに怒った事なんて、あの時私を海未だって気付いてくれなかった時ぐらいですよ。」
それなんだよな問題は…というかその事で俺は海未にどう申し開きをすればいいか……
ガチャ!
「ただいま〜」
「あ、妹が帰ってきたみたいですね。」
「え?妹?」
ど、どう言う事だ今のアルバムに海未の妹っぽい姿はいなかった。まさかこのアルバムはダミーか何かであって、帰ってきた妹が海未本人なのか?
「そう言う事か…悪いな海未の偽者今回は俺の勝ちだな。アルバムで昔の海未の写真を見せて惑わせるつもりだったらしいが、外れたな。ここに写ってる写真は確かに紛うごとなき昔の海未だ。しかし、その写真を装って本当は妹の写真で繋げていっての俺の事を騙していた。つまり今帰ってきた妹は姉である海未本人。今話している本人はこの痩せたという写真で写っている嘘の妹。姉妹を使って俺を困惑させての復讐だったかもしれんが、残念だったな。この手の内は他の奴らと比べて生ぬ…」
「な〜にやたらとリビングでうるさいんだけど、誰かいるのお姉ちゃん?」
「………え?痩せている?」
まさかの本人が痩せて登場するとは思いもしなかった俺はアテが外れてしまったと言う頭の中がハテナ状態となりこの子が海未?と思い込んでしまったのが裏腹に出てしまったのか、何やら違和感を感じとる。
「き、君は海未本人でいいよな?」
「だ、誰ですか?というよりお姉ちゃんならそこにいるじゃないですか。お姉ちゃんのおしりあいなんですよね?」
バシャン!
背中に物凄い稲光みたいなのが走ったのと同時に俺はゆっくりと隣で座っている偽者を装った海未の方へ振り向くと顔を物凄い笑顔なのに怒りの圧みたいなのを感じ俺はまたもや幼馴染に対してやらかしたと懺悔をする。そして声をかけてみると…
「あ、その…」
「イックン……私のお部屋に先に上がっててもらえるかな。後でゆっくりとお話ししたい事があります。」
「あ………はい。」
圧に負けてしまった。




