未だに分かってくれない鈍感幼馴染
言葉の選択でミスをするな。そうコレはギャルゲーと一緒だ。彼女にどう言葉で伝えるのかが要になる。慎重になれ俺。
「海未。」
ビク!
反応した。よしどうやら名前で呼ぶ事事態嫌がってはいないみたいだ。このまま海未という名前でこの子に対して押し切るしかない。
「何ですか…」
「その悪かった。今朝の事あまりにも俺は無神経すぎた。わざわざ会いにきてくれたのもそうだけど、たまに玄関の前にいたのは俺の様子を見ていたという事なんだよな。その事に気付かないなんて本当に幼馴染に対して悪い事をしたと反省している。」
チラッと振り返った彼女にそのまま頭を下げ非礼の詫びをし今ある彼女の複雑な気持ちに対して謝ると…コチラに振り返って照れくさそうにしながら頬をかきこっちを見てくる。
「もうイックンは仕方がないな〜いいよ許してあげます。ちゃんと謝って反省してくれたなら私だってそんなグチグチ言ったりしませんよ。」
いやグチグチではないが、こっちの口を聞いてくれてなかった気がするんだが…
「でも何か久々だなその名前で呼ばれるの。あだ名で呼ばれるのは少し違和感があって照れ臭くもあるな。」
「そんな事ないよ!久々だからこうやって親近感があってお互い昔の思い出として語れるんだよ。それにやっとこうしてイックンと話せるんだから本当にようやくって感じですよ。」
「ようやく話せるって……海未もアイツらと一緒で俺に復讐とかしたいんじゃないのか?」
「え?そんな事思っていませんよ。他のみんなは確かに約束破ったとか言って、イックンに仕返しみたいな事を言ってましたけれど、私と林音ちゃんはイックンが帰ってきてくれればそれだけで良かったから約束はちゃんと守れていたと思いますよ。」
「だよな…普通そうだよな。なのにアイツら俺がもっと早くに帰ってくれればとか色んな事を抜かすから、それで復讐がどうのこうのと言われたらこっちとしてもたまったもんじゃないな。」
「ふふ、それはきっと愛情の裏返しですよ。本当は会って物凄く嬉しいと思っていてどうイックンと接したらいいか分からないからああいう態度をとってしまったと思うんです。だからそこは目をつぶってあげましょう。」
「そうだな。確かにお前の言う通りだ。海未じゃないのにそこまで皆んなの事を思ってるって、相当昔一緒に何か共有した仲でもあったんだろうな。」
「え?」
「あ、しまった。」
ついボロが出てしまった。今の流れでこの子が海未というのが定着しつつ会話していたのに思いっきり違うと否定してしまった。
「あ、コレはその違くて…」
「ムムムーーー!」
やば物凄い泣き顔をしながら頬を膨らませてる。完全にこっちに対して嘘をついたなって怒ってる顔だ。いやまだここから挽回を…
「違うんだ海未、今の言葉の誤りと言うかお前を本当の海未としてみていたけれど、でもそう思えなかったというか…でも幼馴染の事を分かっていたというか…一応お前の事を本当に海未だも思い込んでいたんだ。」
「そのフォローの仕方おかしいですよ!結局それ私の事を本当の海未だって思ってくれていないじゃないですか!」
「……いや〜そんな事ないようなあるような?」
「どっちなんですか!というよりまだ私が海未だって信じてもらえていなかったって事なんですね!」
「……そうとも言う?」
「もういいですよ!イックンなんて道端に落ちているバナナの皮を踏みつけてすってんころりんすればいいんだ!うわ〜ん!!」
なんて可愛い捨て台詞、すってんころりんなんて童話の昔話でしか聞いた事ないぞ。というかしまったな…俺とした事が選択ミスをしてしまってまた彼女を怒らせた。
「どうにも、リアルだとこう言ったイベント形式は苦手だな。………ギャルゲーだったらいけたのに…」
「何途方にくれながら明後日の方向をみてんだ?」
「蒼脊か…俺はもうコレからどうすればいいかわからんなくなった。だから今日遊びに行かないか?」
「め、珍しくお前からの誘いだな。まぁ空いてるから別にいいんだが……本当にどうしたん?」
「………俺にもよく分からん。」
「???」
海未と名乗る女の子に上手く海未の事について聞き出そうとしたのだが、返って怒らせてしまいこの後どう修正補正をすればいいか分からずにいた一星。その一星と目の前で走っていく青髪ポニーテールの女の子を発見した蒼脊はそういう事かと息を吐き今の一星に対して少し温情の気持ちで今日の帰りどう話したものかと考えながらジュースを奢ってそのまま教室へと戻る。勿論一星からしたら何なんだコイツという様な感じではあるが、もしかすると労ってくれてるとそう思いながら甘んじで奢ってもらう事にしそのまま何も言わずにいた。
…………放課後・ファミレスにて集まる幼馴染組(一星と蒼脊を除く)
「って事があったんですよ!酷いと思いませんか!」
「はは、それはそうだね。」
「全くイックンは何でああもデリカシーに欠けてるんですか。私腹が立って2回も怒ったんですよ。ようやく会えたと思ったのに全然私だって信じてもらえないってなんか酷くないですか!」
「いいな〜僕もそんな風に自分の正体が危うい状態で訝しまれるの期待していたんだけどな。」
「茶かさないの、でもまぁ接点があまりにも乏しくなってしまったらあの男はテコでも勘が働かないからどうしても何かしら繋がりがなければあなただって分からないかもしれないわね。というよりも私達の場合誰かさんのせいでボロが出ちゃったというのが主な汚点ではあるのだけれどね。」
「あ〜何かいいメニューないかな〜僕このポテトと唐揚げのセットがいいかもー山茶花ちゃんはどれにする?」
「え、え、わ、私?私はこのパフェの盛り合わせがいいかな。」
「お〜まさかのサジを投げた僕が悪いのは確かだけど、あまりにも凄いものを指でさされて動揺しちゃったよ。」
「もうみんな海未ちゃんが真面目な話をしてるのに話の腰を折らないの、ごめんね海未ちゃんまだ話があるんだよね。それで他に何か許せ…」
「あ!私このパフェと次にこの抹茶パフェが食べたいです!」
「………海未ちゃん?」
「元々こう言う性格でしょうに、直ぐに切り替えの速さはこの子の1つの長所みたいなものだから今更その反応されてもやっぱりか〜にしかならないわね。というよりも私の話しを上手く晒そうとしたその子が1番切り替えるべき部分におかしな点をもつのだけどね。」
「や〜だ〜美森さんこわ〜い。そこはほら僕達のお姉様として広い心を持たなきゃ…ね?」
「何ぶりっ子みたいにウインクしてんのよ。そんな態度だから一星にあしらわれるんじゃないのかしら?」
「いやいや寧ろああいう態度だからこそ僕と彼の好感度がより上がるというものだよ。分かるかねチミってあたた!ほっぺ!ほっぺつねらないで!」
「お姉さんに向かってチミとは何?チミとは?」
「………あやっぱり私チョコパフェにしようかな。それも特盛で…」
「さ、山茶花ちゃん。」
「ちょっとみんな私の話しちゃんと聞いてください!」
「そう言えば完全に話が逸れたわね。それで海未はどうしたいのかしら?まさかまた私が海未ですって真正面に突っ込んでいくわけじゃないわよね?」
「え?そうするつもりでしたけど?」
「………あ、呆れたわ。もう何度言っても分からないのは把握しているのに何でそう猪突猛進なわけ?」
「私は豚さんじゃないよ!鳥の年だよ!」
「そう言う意味じゃないのよ海未ちゃん。ちょっと落ち着きましょう。」
「………」
おでこに手をあてながら、中々理解してくれない年下の女の子にどう説明したらいいのか頭がいたくなる皆んなより上のお姉さん美森は少しズレた会話をして今の状況を理解してもらうよう促す事に決めた。
「話がおかしくなってくるから、ちょっと話題を変えましょうか海未。あなた一星から姉妹か従姉妹もしくは双子の何かで勘違いされているみたいだけど、あなたそのものが勘違いされてたらもともこもないわよ。」
「???私が妹に間違われた?まぁ容姿がちょっと小さいからそれで間違われたというのはあるかもしれないね。でもいつ妹にあったのかな?」
「はいはいそういうボケはいいからちゃんと話しを聞きなさい。」
「………あ、あれ?もしかして私に妹がいる事信じられてない?」
「海未ちゃんに妹がいないのは昔から知ってるよ。一星君が王子様っぽいって言ってたから、きっと海未の事なんだなって察して一星君に言おうとしてたんだけど、何故か今日はその言える時間を阻まれたというか…」
「ああ〜確かにそうね。私も今日はあまり付き合いがいいってわけじゃないけれど、お友達とお弁当食べる事になったし…あ!でも私に友達がいないとかそんな事言ってるわけじゃないからね!」
誰もそんな事言ってないのに…
「ええ!どうして言ってくれなかったんですか!山茶花ちゃん。」
「だから言える合間の時間が取れなかったって言ってるでしょう。それにその話たまたま昼休み山茶花と会ってその事を聞いたら尚更話すのはやめなさいとは言ったわ。それだと多分同じ展開になると思うしね。」
「あ〜今の状況でも信じてくれないのに、山茶花ちゃんが海未ちゃんを本物と言っても信じてもらえる保証ないもんね。」
「だとしたら私はどうしたらいいの!コレじゃあ一生経っても私が私って分かって貰えないよう!みんなだけズルい!本当にズルいよ!私もイックンに復讐したらいいの!でも復讐なんて私にはどうしたらいいか分からないよ。」
「根本的にそう言う問題じゃないと思うわよ。まぁあなたに姉妹や双子どうのこうのという話は単なる一星の勘違いというのが分かったから、後は絡み方の問題ね。」
「いや美森様、それは嘘じゃないんですけど…」
「くくく……だ、駄目本当に駄目お腹が痛い…」
「だ、大丈夫林音ちゃん。さっきからどうしたの?」
「昼休みの時も意味の分からない発作みたいなのが出ていたからほっておいていいわよ。どうせいつものくだらない事でも思い出しているんでしょう。」
「ひ、酷くありませんかそれ!」
「普通にツッコむのね。」
「それで、話的には何で疑惑の名前も言ってるはずなのに海未ちゃんだって分からないのかしらね。ちゃんと私達が偽名を装って現れるのは本人だって知ってるはずなのに……寧ろそれで困惑するならまだしもこのケースで分からないというか気付かないのは本当に謎だわ。」
「え?私疑惑の名前なんて言ってないよ。そのまま本名言っただけだもん。」
………え?
「や、やばいよ僕本当に笑い死にそう。僕から話しても良さげみたいだね。これは…」
周りからはキョトンとされる反応に林音だけは何やら事情を把握しているかのようにして必死に笑いを堪えその笑い堪えた理由を話す。




