偽り
「ふふ、それは仕方のない事よ。だって彼まだここへ来て編入してきたばかりの子だもの。そりゃあいきなり名前呼びだなんてそんな非常識な事彼には無理な話しよ。」
あの〜それって俺がひよってるっていいたいんですかね。
「………編入してきた2年生……成る程君が噂の編入生だったのか道理でこんな場所にいるわけか…そしていきなり彼女と親密な関係になってしまう。君はあれか?女を喰らう毒蛇か何かなのかな?」
「いや俺からしたら何の話しなのか…それに噂の編入生というのも自分全然分からないんですけど?」
「あら?知らないの?あなたってもうあの学食から有名になってるわよ。学年美女5人の内3人をも支柱に収めた女垂らしってね。」
「いや!それただの悪口!てか別に垂らしこんでねぇし!」
「そういうやつはいくらでもいるんだ。悪いがここばっかりは譲らせないよ。君には大人しく彼女と別れてもらう。そうしないとコレからの彼女の反映に悪影響が出るぞ。」
「ちょっと〜その言い方だとまるで脅しているように聞こえるんですど、私の彼氏に変な事を吹聴しないで貰えるかしら。」
あなたも俺に対して変な吹聴とかしないで貰えるかな?明らかに原因の半分はあなたにもあったりしますよ。
「まぁいい今の君の選択肢に僕は従ってあげるさ。けれどその内分かる時が来るはずだ…僕の言い分が正しかったと。」
君津家先輩はそういいながらこの場を見逃し?てくれたのか諦めて帰っていき、それを蕾先輩は舌を出してあかんべーとする。いや本当に何してるのやめなさい全く。
「………で?何か申し開きはありますか?」
「うん?何の事かな?」
「この後に及んでしらをきるつもりですか。この状況どう考えても荒療治で済まされないと思いますよ。」
俺はまだ部活の片付けをしている生徒達の様子を指で刺し場がガヤガヤと騒いでるという事を教える。
「あちゃちゃ〜確かにコレはちょっと考えなしでやっちゃったわね。ごめんだけどこの店で先に待っててくれるかしら?」
蕾先輩が俺の手に待ち合わせ場所と連絡先を握らせそのまま自分の部活のいる所へと戻り後処理を済ませ恐らくその店で合流しようというウインクをしたんだと俺は思いそのままこの場を大人しく去る。
「本当に何がしたいんだあの人は…」
「おやおや?何か修羅場ってるってかんじだね。」
「え?」
しかし大人しく去ろうとした瞬間今度は別の女の子に声をかけられ後ろを振り返る。
「あ…確か。」
「ああ〜覚えててくれたんだ。嬉しいな〜そうだよ交差点振りだねって言えばいいのかな?いや〜君に会えてラッキーラッキー。」
「ラッキー?」
「そうラッキーというのは建前で、私が個人的に君に会いたかったのが本音かな。」
「何で俺に会いたかったんだ?」
「ふふ、何でだろうね。所でなんだけどさっき琵心先輩と何話してたの?」
「蕾先輩と?いやその何というか……てかまだ2回目ぐらいしか会ってなアンタにそんな事を話す関係でもないと思うんだが…」
「あはははそりゃあそうだよね。でもでも〜私的に君って色んな女の人に根に持たれそうな感じだよね〜」
!?何だこの子何気に的を射抜いてやがる。まさかこの学園でのエスパーか何かそれとも抜群の心理を持っている有名な医者学生か?
「まぁ冗談は程々にして…」
「いや冗談かよ!心臓に悪いわ!」
「ふーん、心臓に悪いって事はあながち間違いじゃなかったのかな?」
「うっ…」
まずい迂闊な声かけは地雷の元だ。あまり変な突っ込みはやめよう。
「ふふ、やっぱり面白いね君は、これからが楽しみだから宜しくね。」
何の宜しくなんだ?
「………と言っても何も面白い事は起こらないと思うけどな。」
「そんな事ないよ。だってもう面白い状況になってるし…」
「え?」
「ううん何でもないこっちの話し…それじゃあまた会った時面白い話し聞かせてね。」
そう言って彼女は鞄を背中に回しながら帰っていく。
「な、なんなんだあの子…やたらと変わった性格というか何というか……てか名前も言わずに帰って行きやがった。リボンが緑色だったしやっぱり2年なのは間違いないか……2度と関わりたくないなああいうタイプは!
そうして俺はそのまま蕾先輩から受け取った紙に書いてある場所の喫茶店へ行き蕾先輩がくるのを待つことになる。
琵心が指定した喫茶店……
「うーん!全く水泳がないのに酷い目にあっちゃた。おまけに神楽坂君を見失っちゃったし。」
「そうね〜私も生徒会の呼び出しでなんなのかなって思ったら今度の混同委員会についての紙を渡されただけだったわ。もしかして私がアイドルだって事忘れてるんじゃないかしら。」
「ああ確かにそうだったね。私もクラスの委員長だから気持ちは分からなくもないかな。後忘れてはないと思うよ。現に一部のファンには知られていると思うし…」
「うう、確かに…今から変装すれば間に合うかしら?」
「もう遅いような気がするな〜」
カランカラン…
!?
店の中に入ってくる人物に菟は急に顔を下へしゃがみ込み姿勢を低くする。
「な、何してるの?」
「神楽坂君よ!神楽坂君!何故か分からないけれどこのお店に入ってきたのよ!」
「え?」
「駄目振り返ったら気付かれるわ。」
「でも元々後を追っていた立場からしたらやっぱりこの目で焼き付けてちゃんと確認を…」
ガシ!
菟は火花の腕を掴み取りそれ以上は駄目と通告する。
「何でさっきから止めるの?これじゃあ神楽坂にあっちゃいけないみたいだよ。」
「あっちゃ駄目なのよ!私達はあくまで尾行。それにここにいるって事は誰かと約束があってここに来ているんじゃないかしら?だとしたらコレは絶好のチャンスよ。」
「そうか!それで誰か来ているのかをこの目で確かめられるって事なんだね。」
2人はそういいながら一星のいるテーブル席に視線を釘付けにしいったい誰が一星と待ち合わせしているのかを心の中でドキドキしながら待っていると…
カランカラン…
「あ!一星君!」
「蕾先輩…」
えー!!相手は琵心ちゃん!?
えー!!相手は琵心さん!?
「こ、コレはいったい…」
「ううんまだ決めつけるのは早いよ。」
菟はスマホを取り出し1つのアプリを起動しながら一星達のいる方向にスマホを向ける。
「コレは何をしているの?」
「ちょっとしたすごいアプリをみつけたの。その名もマイク周波数よ!」
え?それって所謂盗聴器か何かって事かな?というよりなんて物をスマホアプリに入れちゃってるの菟ちゃん…とてもじゃないけど突っ込めないよ。
「さぁ〜こうやって上手く調整すれば…」
菟は上手く相手の声が聴こえる様にスマホの位置のバランスを整えBluetoothを使う無線イヤホンを火花に渡す。
「い、いいのかな…」
「このままあっち側で勝手に話が進められても困るでしょう。一応保険よ保険。」
「菟ちゃん…」
「何?」
「捕まらないでね?」
「捕まらないわよ!何て事いうの火花ちゃん!」
ザー!ザザ!ザー!□□□□□
「あ、何か聴こえて来たみたいだよ。」
「さ〜てそれじゃあ尾行続行の開始といこうじゃないの。」
…………
「あ、わたしパンケーキセットでお願いします。」
「かしこまりました。ご注文は以上で宜しいでしょうか?」
「はい大丈夫です。」
「ではごゆっくりどうぞ。」
とりあえずウェイトレスさんに頼んだ後からやってきた蕾先輩の注文をしひとまず落ち着けるという安堵を俺は噛み締めた。
「それじゃあさっきの話の続きなんだけど…あの男子陸上部の君津家君の事なんだけどね。やたらとしつこいのよ…もう何度も嫌だって言ってるのにわざわざこちらの部活が終わるタイミングで来るもんだからちょっと腹が立っちゃって…」
「だから俺を使って偽物の恋人をしろって事なのか?」
ガタン!
ガタン!
「ん?」
今何か隣で物音が…
「でね一星君。」
「ああすみません話の続きでしたね。」
てか未だに慣れない下の名前…相手は名前でこっちは苗字って明らかに恋人関係というのには程遠いよな。それに僅かな日にちだけでいずれボロが出るのは確定。でも彼女の意思も尊重してあげたい。
「うーーん………困ったな。」
「困ったというだけで断りはしないのね。」
「当たり前じゃないですかあの流れで断るような場面だったら俺一生立ち直れずに家の中で引きこもってますよ!いや本当に…」
「そんな事で家に引きこまらないで頂戴よ。でも断ってくれなくて本当に良かったわ。私の見ていた通りあなたに頼んで正解。だから私がこれまでの経緯で何かしらこれまで3年で何が起こったのか話してあげる。でも一部分だけは端折るからそこはよろしく…」
「な、何て…………何て勝手な人なんだ!」
「ぶっちゃけた話なんだけど…この学園に入学して早々告白されて困っていたの!」
…………は?自慢話か?
「困っていて私正直この学園生活で3年過ごすというのを億劫に感じていたの。でもね昔から足には自信があったから女子陸上部に入ろうと思ったの…」
「それが蕾先輩の心の支えって事なんですか?」
「まぁそれもあるけれど、やっぱり友達がいるっていうのもあるかしらね。後昔の約束をちゃんと覚えてくれている人にいつかまた会うという事が私の心の支えとしてこれまでやってきた成果って事かしらね。」
「へ〜なんか漫画みたいな話ですね。」
友達との約束か…何かデジャヴを感じるな。アイツらも元気にしてるといいけど…あれ?でも蕾先輩が昔の約束をしてまた会うっていう話し何か心当たりを感じるような…
「まぁそうね。けど私次の大会で結果を残さないといけないのよ絶対。」
「それは何でですか?」
「そうしないと女子陸上部は廃部されるからなのよ。」
廃部?いやいや蕾先輩って名高い陸上選手なら何も問題がないんじゃないのか?別に蕾先輩が結果を残せば……いや違うもしかして…




