玄関先でたまにきた女の子の正体について
いやまさか冗談だろ?この子が5人目の幼馴染、八月一日海未だと?
「………」
「あれれ?どうしたんですかその反応は、もしかして幼馴染の顔を忘れましたか?」
「いや忘れたというか……え?本当にあの海未なのか?」
いやどう考えても…
久しぶりにあってというより、色々と頭の中が困惑している。何故なら昔の海未の姿からは遥かに想像を絶する。そう言うなればコレは進化に近いと言っても過言じゃないという程の超絶美形美人の女の子であるからなんだ。
「いやいやそれなら今まで対応していたアレはなんだったんだ。もう昔の海未と今の海未でのギャップの差が激しくてどう反応したらいいのか分からん!」
「もう〜何言ってるんですか。というより本当に私だって気付いてくれなかったんですか?」
「当たり前だろ。お前と会ったのは昔っきりでそれ以降会ったのって進化していたお前の方なんだぞ。いったい誰が分かるって言うんだ。」
「山茶花ちゃん達とかですか?」
「あれは………てか昔からの付き合いでずっと一緒だった奴と比較しないでくれ。昔に会ったきりで何十年後経っての再会で誰か分かるという話をしているんだ。」
「ぶ〜じゃあどうして皆さんの方は分かったんですか?理屈的に一緒だと思うんですけど。」
「そりゃあそうだがってそんなわけないだろう。アイツらが幼馴染だって分かったのは向こうから仕掛けてくる復讐と謎かけみたいなのがあって、それで何となく分かったから幼馴染なんだなって分かったんだ。お前が思ってる様な甘い考え方じゃないぞ。」
しかしそれでも海未はやたらとブーイングしながらまるで子どもの様にただをこねて認めない。
「しかし……」
やっぱり何処からどう見ても海未には見えないな〜これも何かの仕掛けで、本当は海未瓜二つの姉妹がいるとか?こっちの方が妹でもう1人の太っていた方は姉の線もある。それを本人に聞くというのは野暮だろうか……いや一応聞いてみるか。
「あのさ物凄い失礼な言い方かもしれないんだが…」
「はい何ですか?」
「姉の方に身体がマルマル太った自分と瓜二つの人間っていたりするか?」
「………え?どう言う意味ですかそれ?」
「いやもしかして妹の方かなって思って…」
「誰がですか?」
「君が。」
「………」
「………」
「!?それってもしかして私がまだ昔のまま太いままだって言いたいんですか!」
一瞬の間、その一瞬の間に海未と言う女の子は何やら自分が太いままだと言い出しコチラ側とは違う反応を見せ俺はその事を訂正する。
「そうじゃなくてだな。君はほら海未の妹さんだろ?姉の海未は運動もからっきし嫌いでよく食べる子だったから、だから本当は恥ずかしくて出れないんじゃないかなって思って…」
「グスン!もういいです!イックンバーカ!バーカ!もう知らないんだから!学校で会っても絶対に声掛けてなんかあげないんだから!」
「あ…」
自称海未と名乗った妹がそのまま空飛ぶ靴を使って飛び立ち泣きながらコチラを後ろへ振り返ってあっかんべーをするが、前方不注意で見事に鉄柱にぶつかりまた大泣きしながら飛び立っていく。
「だ、大丈夫かあれ……姉である海未も大変だな。あんなまどろっこしい妹というか慌ただしい妹もいると苦労が絶えなさそうってヤバ!今のでだいぶ時間食っちまった。急がないと。」
衝撃的な朝の一日の始まりそれが玄関先で起こった出来事だったのだが、まぁ一朝一夕にそう簡単には海未には会えないのは重々承知していた。しかしそれがまさかの妹自称姉の名前を装いながら接近してきた事に今でも驚いている。まぁ一年生だし、もしかしたら双子の姉妹かもしれんな。あれ?でも海未に双子の姉妹の話しなんて聞かされていたっけ?
「ふぅ〜危ねぇ危ねぇ何とか間に合った。」
ホームルームになる5分前何とか教室へと間に合った俺は一息ついて飲み物のペットボトルを取り出し喉を潤す。
「神楽坂君今日は珍しいね。遅刻ギリギリに来るなんて…」
「いやまぁ、たまにある玄関先での事故で今日は思いがけない出来事があってな。それでこんなギリギリになったというか…」
「たまにある事故?何それ?」
「まぁ側から聞けば意味の分からない事を聞かされるよな。でもコレを説明したらもっと余計な事になると言うか……あ、そうだ聞きたい事があったんだ。兎川さんあのさ…」
「兎川さん?」
「あ、え〜と兎川。」
「何?」
何だ?何で今さん付けしただけで怖い顔になったんだ?というより顔は笑顔なのに言い方に圧があった。いやまぁ前から偽名の名前は呼び捨てだったからあれだけど、宇佐木田さんって呼ぶようになってからはあまりさん付けで呼ばないというのはどうにも歯痒い感じがして……というか兎川さんって今更さん付けで言うのもおかしな話か…偽名での定着はちゃんとしとこう。
「海未ってさ双子の妹とかいたりするのか?」
「妹?さぁ私もそれについては何も聞かされてはいないけど…でも妹がいるのなら私達が知っててもおかしくないわね。」
「だよな……でも俺すらもそれに対して全く知らなかったんだ。1番長い付き合いで山茶花と海未がよく遊んでいた仲だったし、それによく懐いてた記憶もある。」
「あ〜確かに海未ちゃんよく神楽坂君の後ろをついていってたもんね昔は…」
「そうそれでもし妹がいたとすればすぐにでも紹介というか会ってるはずなんだよ。なのによくわかんない事が起きてさ…」
「よく分からない事?」
「ああ実は今朝方…」
「2人ともそろそろホームルームが始まるから席に戻った方がいいよ。」
「おちょうどよかった。野谷山あのさ海未に妹っていたりしたか?」
「え?海未ちゃんの妹?う〜んいなかったと思うよ。一緒に家で遊んだ事もあるし、それに料理だって一緒に作った事もあるから、もしいたなら直ぐにわかると思うな。」
「え…火花ちゃんと海未ちゃんが料理…へ〜そうなんだ。」
「何で若干引いてるんだ?別におかしい部分はなかったんじゃないのか?」
「………う、うん、そ、そうだね。」
「何で目線を逸らす。」
「???」
そして当人の山茶花は何故かハテナ顔だし何故この会話で話の会話が噛み合わないんだ。何処に疑問の余地があるのか俺には全くわからん。
「あは、はは…それよりも火花ちゃんが昔海未ちゃんの家に行ってるなら、神楽坂君だって昔に行ってるはずだよね?ならもうその時点でいないとしたらやっぱり妹さんはいないんじゃないかしら。」
「いやでもな〜」
あんな超絶美人系でしかも何か高嶺のある王子様?みたいな感じの子だったしな。いやあのルックスに今までそれに気付かなかった俺もどうかしてたというか…うんまぁ変な事故ばっかでそんな事思う暇もなかったというか…
「もしかして従姉妹?だったり…」
「従姉妹?」
「従姉妹?」
2人は怪訝な顔をしながら、やたらとコチラを心配してみてくるが、俺は至極真っ当に真剣に考えながらあの子がいったい海未の八月一日家のいったいどの立ち位置に入るのかを真剣に悩みついぽろっと口出てしまったのを2人に聞こえる。
「あれが昔の海未というのもどう考えたっておかしいんだよな。」
「え?」
「え?」
「ん?」
何だ?何か意味ありげな顔をして2人で顔を合わせながらこっちを見てくる。何か変な事でも言ったか?
「神楽坂君その子って因みにどんな特徴か覚えてる?」
「ああ、まぁ見た目的にも物凄く分かりやすい子でな。アホな子なのかそうじゃないのかはさておき、ルックスはだいぶ良くてプロポーション抜群の長い青髪の女の子…そう!なんかこう王子様系と言えば1番しっくりくるかもな。それも一年生だ。」
「………」
「………」
「あれ?」
またもや2人して顰めっ面な顔で交互に見合わせながら何か俺に言いたげの様な感じでコチラを見て先に山茶花の方から声をかけてくるが…
「あのね神楽坂君それってもしかしてたけど…」
「ああ…もしかしてたけど?」
「その子ほ…」
キーンコーンカーンコーン!
「やべもうそんな時間か、悪いそこまでいったなら余計に最後まで聞きたくなってしまうな。先生が来るまでその続きを…」
「ごめんねやっぱり後ででいいかな。周りも先に戻って静かになっていくし、ここではちょっと…」
「……それもそうだな。」
お互い同意して後程先の続きの話をする事になったのだが、俺はそれまで続きが気になってソワソワしながら早くホームルームと最初の授業が終わるのをただただ待ち焦がれていた。
……それから休み時間で山茶花と宇佐木田さんはやはり周りに対する愛嬌がいいのか中々コチラへ来られる事ができずにおりそのまま昼休みにまで引き延び続いてしまった。
「駄目だもう我慢できん…」
ここまで焦らされてしまうと尚更気になってしまうのが人間のサガというもの…
「こっちから声をかけるか。」
飯を誘うついでにという形でナチュラルに声をかければいいか…
しかしそれをまるで遮るかの様にして邪魔する奴が空気を読まずに俺の肩を組む男が背後からのしかかる。
「よっ!一星飯行こうぜ!今日は弁当とか無さそうだしいいよな!」
「それはいいが、山茶花と宇佐木田さんも誘っていいか?」
「え!お前にしては珍しくないか。あの2人を誘うなんて…やっぱり行くのやめていいか?」
「何でアイツらと絡むとなると、すぐそう弱気になるんだ。幼馴染なんだからそこまで気を負わなくてって!やべもういねぇ!」
どうやら出遅れてしまったらしく既に宇佐木田さんと山茶花の友達が2人を誘って何処かで弁当を食べに行ったらしい…
「ああ〜これじゃあ放課後までに耐えれるかどうか…」
「何と戦ってんだお前は…そんなにアイツらと飯が食いたかったのか?」
「ああ、というより聞きたい事があってな。」
「聞きたい事?」
「そう幼馴染の海未の事について……あ!そうだお前もいたじゃないか。」
「は?俺?」




