第98話「俺だって条件を出そう」
気合が入りまくりのケルベロスを引き連れ……
俺は周囲のパトロール&探索へ出かけた。
牧場……ルナール・ラァンチュ周辺の地形は、
先ほど探索したルナール・ファームと、あまり位置が変わらないせいかほぼ同じ。
森林、雑木林、草原、渓谷、原野など多種多様。
やはりゴブリン、オークなどの魔物、狼、熊などの肉食獣が多く、
武装なしの丸腰でのこのこ入る者は、皆無に等しいのも同じだ。
前世でもそうだが、野生として生きる魔物、肉食獣にとって、
野に居る草食動物も、牧場で飼育される家畜も同じ獲物。
区別は、人間が家畜の傍に居るかどうか。
先ほど生け捕りにしたオーガは勿論、ゴブリン、オークにとっては、
人間も家畜同様に獲物だから、容赦なく襲って来る。
それゆえ、人間が生活する場での共生は困難である。
情を交えず、容赦なく『駆除』するしかないのだ。
さてさて!
まずはお約束の情報収集。
索敵……魔力感知、そして肉眼の視認でも周囲の状況を確認する。
依頼書に添付された地図も合わせて。
……だが、1km以内に『敵』は居ない。
場長のブリス・ベネトーさん達社員さんスタッフさんは、
襲来した魔物どもが、まだ近くに居るのではと、
ひどく警戒していた。
ターゲットは、ゴブリン2,000体にオーク1,000体。
もっと離れた場所に『巣穴』があるに違いない。
そして索敵に関しては、ケルベロスの方が能力は遥かに上だと思う。
有効範囲も精度もである。
問い質し、確認した事はないけど。
例の『使い魔』の呼び方等々、ここまでの経緯もあるし、少し頼ろうか。
『ケルベロス、申し訳ないけど、状況確認と敵の捕捉をして貰えないか』
『うむ、分かった』
『敵を捕捉したら、随時撃破で行こう。俺を導いてくれるかな』
『よし! 任せておけ!』
おお!
力強いお言葉。
人間と魔獣だから『人間関係』とは言わないが、やはりというか、
やる気にさせる気配りは必須なのだ。
案の定、ケルベロスの気力が満ちて来るのを感じるぞ。
『うむ、こちらにゴブリンの群れが居るぞ! ついて来い! 主よ!』
『了解!』
という事で、張り切ったケルベロスの先導に、
俺はついていったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
索敵同様、ケルベロスの最高走行速度を俺は知らない。
俺は最高速度時速100kmほどだが、遥かに速いだろう。
必要があったら、確認はするが、いちいち問い質す必要はないと思っている。
まあ、「俺に合わせてくれている」と言って間違いないだろう。
その証拠に先導するケルベロスの速度は、時速70km。
バランスよく走る事が出来る俺の巡航速度である。
約5kmほど走ったら、俺の索敵にも『反応』があった。
この場から、約800m先、……確かにゴブリンの大群を示す反応だ。
ケルベロスと俺は、あっという間に、反応があった場所に到着する。
現場の地形は岩山が混在する原野であり、大きな口を開けた洞窟があった。
……この洞窟がゴブリンどもの巣穴だろう。
さて、どう攻めようか。
と思ったら、ケルベロスからいきなり『提案』が示された。
『主よ、我が勢子をしてやろう』
『おお、そうか!』
補足しよう。
勢子とは、狩猟を行う時に、山野の野生動物を追い出したり、
射手のいる方向に追い込んだりする役割の人を指す言葉だ。
うん!
中のゴブリンを追い出し、俺がやっつければいいんだな!
頷いた俺へ、ケルベロスから『待った!』がかかる。
『但し!』
『但し? 何だ?』
『うむ! 我の勢子は追い出したり、追い込んだりするだけではない! 洞窟の中で、思う存分暴れてやる! ゴブリンどもをぶっ倒してやる!』
成る程。
そうやって、使い魔呼ばわりされた憂さ晴らしをするわけね。
まあ、良いんじゃない。
ここでストレス発散をし、大いにガス抜きをして貰おう。
少し考えた結果、俺はOKする事にした。
でも、俺だって条件を出そう。
『但し!』
『む? 但し? 何だ主』
『ああ、ゴブリンを全て倒さず、ある程度、外へ出してくれないか』
『ある程度? 主よ、具体的に数を言ってくれ』
『具体的な数か。……そうだな、最低でも500体以上は頼む。それだけ表で死骸を見せたら、依頼主の現場担当者も、巣穴……洞窟の中へ入り、確かめるとは言わないだろうから』
……というのは俺の計算。
もしも、ブリスさん達が、洞窟内を見て、全滅したのか確認したいと言えば、
中へ入るまで。
その場合、当然まずケルベロスと俺が先へ入り確認する事となるが。
対してケルベロスは、
『うむ! 心得た! お安い御用だ!』
と快諾。
うおおおおおおおおんんんんん!!!!!
と咆哮し、ゴブリンどもがうごめく、洞窟へ突っ込んだのである。
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