第63話「夜遅くまで、女子だけ4人の部屋に俺が居るって、いかがなものよ?」
やがて……
家令セバスチャンが、騎士3人を連れ、書斎へ戻って来た。
リヴァロル公爵家警護騎士をまとめる主任騎士、バジル・オーリクさん、
彼の部下である女子騎士のアンヌさん、ジュリーさんの3人である。
俺の助手になるというアンヌさん、ジュリーさんは、発する波動から分かった。
参加はしなかったが、試合観戦ギャラリーの中には居たと。
であれば、俺の戦いは見ていたという事だ。
革鎧姿のアンヌさん、ジュリーさん。
ぱっと見。
ふたりとも20歳くらいだろうか、
両名とも背が高く、均整がとれた体型、やや筋肉質のがっちりタイプ。
顔立ちは騎士らしく、双方きりっとした感じ。
アンヌさんは黒髪、ジュリーさんは栗毛、
それぞれ、やや形の違う、こざっぱりとしたショートカットである。
騎士3人は、主たる公爵グレゴワール様の前で直立不動となり、
びしっ!と敬礼した。
大きく頷き、グレゴワール様は、言う。
「ふむ、この度、冒険者ロイク・アルシェ君を、ジョルジエット、アメリーの、イレギュラーな護衛役として契約を締結した。基本休日に勤務して貰う事となる。アンヌとジュリーは、ロイク君が勤務する際、彼をフォローする助手を命ずる。詳細は後で資料を見て欲しい」
軽く息を吐き、グレゴワール様は、話を続ける。
「早速、スケジュールを確認し、ロイク君の都合が付いたので、本日たった今から明日の午後5時まで勤務して貰う事とした。いきなりだが、アンヌとジュリーも助手を務めて貰う。ふたりともロイク君へ、自己紹介したまえ」
対してアンヌさんとジュリーさんは、改めて直立不動し、俺へ敬礼。
上司の主任騎士バジルさんから、いろいろ話をされ、指示もされているようだ。
大きく声を張り上げる。
「初めまして! ロイク・アルシェ様! リヴァロル公爵家警護騎士アンヌ・ベルトゥでありますっ! ジョルジエット様の護衛役を務めておりますっ! 何卒宜しくお願い致しますっ!」
「初めまして! ロイク・アルシェ様! リヴァロル公爵家警護騎士ジュリー・バイエでありますっ! アメリー様の護衛役を務めておりますっ! 何卒宜しくお願い致しますっ!」
ああ、ふたりとも、騎士というか、……軍人なんだなあと思う。
おおっと、そんな事を考えてなどいられない。
こちらも、ちゃんと挨拶しなければ!
ファーストインプレッションは、とても大事だ。
シンプルに!
だが丁寧にあいさつしよう。
俺も「すっく」と立った。
直立不動で、敬礼はせず、やはり声を張り上げる。
「初めまして! アンヌ・ベルトゥ様! ジュリー・バイエ様! 冒険者のロイク・アルシェと申します! 未熟者ですが、何卒宜しくお願い致しますっ!」
自己紹介が済み、グレゴワール様は、
「うむ! 結構! アンヌとジュリーは、ロイク君が勤務する間は、彼の指示に従うように。ロイク君は助手であるふたりを呼ぶ際に様は不要。私が呼ぶようにファーストネームで呼びたまえ」
すると、アンヌさんとジュリーさんは、
「はっ! かしこまりましたっ!」
「ご命令に従いますっ!」
と、言葉を戻したのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
グレゴワール様は、更にいろいろと指示をした。
俺は一言一句、聞き逃さないようにし、心に刻み込んだ。
よくよく考えたら……
俺は要人警護なんて、勝手が全く分からない。
シンプルに考えれば、身体能力は勿論、武技、魔法、スキルなど、
様々な手を尽くし、俺の身体を盾にしても、
ジョルジエット様、アメリー様をお守りする事だ。
警護で不明な点があれば、
バジルさん、助手となるアンヌさん、ジュリーさんに確認する。
また警護中は、リヴァロル公爵家でも長い時間を過ごす事になるから、
家令のセバスチャン……さんにも勝手を聞くべきだろう。
そんなこんなでグレゴワール様の説明が終わり、解散となった。
最後にグレゴワール様は、にやっと笑い、
「ロイク君」
「はい」
「現在、君が宿泊しているルナール商会のホテルには、私の方から使いを出し、連絡を入れておく。このまま、本日戻らなければ、何かあったのかと、ホテルが懸念するかもしれないからな」
「お、お気遣い頂きありがとうございます」
「うむ! ジョルジエット、アメリーを宜しく頼むぞ」
と言い、ジョルジエット様、アメリー様を始め、俺達は全員書斎から出された。
と同時に、もう我慢は終了! と言いたい雰囲気で、
がっし!
またも、ジョルジエット様、アメリー様は俺を両脇からホールド。
身体を寄せ、密着。
甘えまくって来た!
バジルさんは少し苦笑。
セバスチャンさんは、見て見ぬふり。
だが、アンヌさん、ジュリーさんは大いにびっくり。
「ジョルジエット様!」
「アメリー様!」
少し非難めいた、「はしたないです!」と言いたげな表情で言った。
しかしジョルジエット様、アメリー様は、ふたりの女子騎士を華麗にスルー。
「お父様がおっしゃった、当屋敷で勤務中、ロイク様が使うお部屋へ行きましょう!」
「ジョルジエット様のお部屋のすぐそば。普段は客室として使っておりますわ」
ええっと……この態勢で屋敷内を歩くのか?
仕方ない。
「分かりました。行きましょう」
と俺はOK。
連れていかれたのは、アメリー様がおっしゃった通り、
呼ばれたらすぐ行けるようにと、
ジョルジエット様の部屋の真向かいにある客室のひとつだった。
普段は、学校の友人等が屋敷へ遊びに来た時、泊めているそうだ。
中へ入ると、俺が使うという部屋の造りは、
現在宿泊しているホテルの部屋に良く似ていた。
内装、調度品はこちらの方が全然豪華だが、
大きな居間に、クローゼット、バストイレ付きのこれまたゆったりした寝室、
そして予備の部屋という感じ。
……とても、良い部屋だ。
至れり尽くせりって感じだが、厚遇に驕らず、一層謙虚に行くべきだろう。
ひと通り見たら、次は、ジョルジエット様の部屋に連れていかれた。
何と!
10間続きの部屋であり、アメリー様にあてがわれた部屋もあった。
内装、調度品は超が付く豪華なものばかりだ。
「今夜は、私達の護衛の段取り確認も兼ねて、就寝ぎりぎりまで語り合いましょう、ロイク様」
「はい! 調査書にあったロイク様の生い立ちやご経験のお話もぜひお聞きしたいですわ」
「ええっと、それは?」
と、俺が聞けば、屋敷内における警備は、
基本ジョルジエット様の部屋の中で行うという。
……どうやら護衛だけでなく、『話し相手』も兼ねた仕事らしい。
でもその際……護衛のアンヌさん、ジュリーさんが居るとはいえ、
部屋の中の男子は俺だけなのか。
というか、夜遅くまで、女子だけ4人の部屋に俺が居るって、いかがなものよ?
と思ったが、ジョルジエット様とアメリー様は、「楽しみです」と言い切り、
俺に有無を言わせなかったのである。
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