第53話「気に入った!!!」
「ええええええええええええ~~~!!!!!?????」
と、グレゴワール様は、絶句してしまった。
無理もない。
俺が父親でも驚いてのけぞる。
「ロイク・アルシェ様と婚約、結婚を前提にした交際のOKですわ!」
「私もジョルジエット様と同じく! ロイク様との結婚を希望致します!」
という愛娘ジョルジエット様、そして寄り子の大事な預かり娘アメリー様ふたりの、
爆弾発言がさく裂したからである。
多分グレゴワール様は、絶体絶命の危機を俺に助けられ、
ふたりの女子が夢見がちに、少し浮かれているくらいに思っていたのだろう。
だからつい押し切られて、気軽に! 簡単に!
『致命的な約束』をしてしまったのだ。
それが何と何と!!
ジョルジエット様、アメリー様は『本気の本気』だったのである。
グレゴワール様は、まじまじとジョルジエット様、アメリー様を見た。
「お、お前達……」
「何でしょう? お父様」
「グレゴワール様、いかが致しましたか?」
受けたショックを和らげるように、す~は~と深呼吸し、
絞り出すように言葉を吐くグレゴワール様は、
「き、危難を助けて貰ったとはいえ……お前達がしがない平民の冒険者と結婚など! 私はそんな約束を交わすなど出来るはずがないっ! 許せるはずもないっ!」
確かに!
俺だって、そう思うけれど……
ジョルジエット様は、冷ややかな眼差しで父親を見る。
「あらあ? 何それ? 私達との約束を、分かった、OKする!って言ったわよね、お父様」
当然、アメリー様も追随する。
「グレゴワール様! 先ほどのお言葉は何だったのでしょう? あまりにも軽いです、一国の宰相としていかがなものかと思いますわ」
「むむむむ……」
唸るグレゴワール様。
ここでジョルジエット様が、セバスチャンをにらむ。
「セバスチャン!」
「はっ、はい!」
「お前にも証人になって貰いますよ!」
「…………………」
ああ、やっぱりセバスチャンは無言。
でも沈黙は肯定の証……なんだけどなあ。
ここでジョルジエット様、アメリー様は改めてグレゴワール様を見据える。
「お父様、ノブレスオブリージユ……ですよ!」
「ええ! ノブレスオブリージユですわっ!」
補足しよう。
ノブレスオブリージユとは、「高貴たるものの義務」という意味だ。
身分の高き者は、それに応じて果たさねばならぬ社会的責任と義務があるという、
ステディ・リインカネーションの世界にも浸透した西欧社会の道徳感である。
「私達貴族は、王族とともに、民に模範を示さねばなりません」
「はい。それがノブレスオブリージユですわね」
「むうう……」
「嘘をつかない」
「誠意をもって、真摯に事にあたれ……ですわ」
「……………………」
「お父様は最初から、道を誤っていました」
「確かにそうですわね」
「な、何!? 私が最初から道を誤っていた……だと?」
「はい! 私達を危難からお救いくださったロイク様に直接会ってお礼を言おうとせず、使用人のセバスチャンに代行させた。人の親として完全に失格です」
「ええ、いくら冒険者がお嫌いでも、ロイク様に直接お会いになって、丁寧にお礼を言うべきでしたわ。著しく誠実さに欠けた行為です」
「むうう……」
「そんなお父様だから、私達の深謀遠慮に気付かなかった」
「はい、約束を反故にするという今のお言葉で、台無しにしてしまわれました。自ら挽回のチャンスを放棄したのですわ」
「……………………」
凄いな!
ジョルジエット様、アメリー様。
一国の宰相をここまで追い込むディベート術。
しかし、そろそろ頃合いだろう。
俺は「はい」と挙手をし、発言を求めたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
俺が挙手をしたのを見て、ジョルジエット様、アメリー様は、
「何でしょう、ロイク様」
「何か、ご意見がおありとでも?」
と尋ねて来た。
対して俺も大きく頷く。
「はい! ありありです」
「ならば、おっしゃってくださいな」
「ぜひ、お聞きしたいですわ」
「分かりました。申し上げましょう。自分はグレゴワール様のお考えも理解出来ます。人間にはそれぞれ立場がありますから」
「立場?」
「どういう事でしょう?」
「お三方は社会のリーダーとなる貴族とそのご令嬢。特にグレゴワール様は王国宰相という重責を担っていらっしゃいます」
「まあ、そうね」
「その通りですわ」
「対して自分は数多居る平民の冒険者です。その日暮らしの食い詰め者です」
「そこまで卑下なさらずとも」
「そうですわ」
「いえいえ、それに平民の自分は冒険者を始めたばかりの半人前。いろいろ仕事をこなし一人前になるのが先決。婚約とか結婚は到底考えられませんし、貴族社会で上手くやっていけるとも思えません。そんな男だと、グレゴワール様が見抜いたからこそ! 頑なに反対なさるのが理解出来るのです」
「そんな! じゃあお父様が正しいとおっしゃるの?」
「ロイク様!」
「いえ、正しいとか正しくないとかではなく、先ほど申し上げたように、全員お立場があります。グレゴワール様は、父として、貴族として、おふたかたのお幸せだけを考え、おっしゃっていらっしゃるんです」
「……………………」
「……………………」
俺が言い切ると、ジョルジエット様、アメリー様は黙って聞いていた。
先ほどのやりとりを聞いている限り、ふたりは相当聡明だ。
チョロイン的な部分が前面に押し出されて、心配したが……
こうやって話せば分かってくれると見た。
グレゴワール様もダメージを受けずに済むし、女子達と『国交回復』もするだろう。
俺は2億円を神金貨で貰い、めでたし、めでたし。
ちらとグレゴワール様を見れば、
俺のリカバリーに対し、満足そうに何度も頷いていた。
よし!
と思った瞬間である。
グレゴワール様はひどく真剣な表情で俺をまっすぐ見据え、
「気に入った!!!」
と大声で叫んだのである。
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