第50話「『鬼宰相』グレゴワール様は愛娘ジョルジエット様の言いなりだ」
ジョルジエット様とアメリー様に、
俺は両方の腕を、がっつりホールドされてしまった。
がっつりホールドされたと同時に、ジョルジエット様の鋭い声が飛ぶ。
「さあ! セバスチャン! 四の五の言わず、お父様の居る書斎へ先導して頂戴!」
激しく同意とばかりに、こくこくと頷くアメリー様。
「か、かしこまりました、ジョルジエット様」
こうして……
俺は逮捕された犯人の如く、
ふたりの美少女にがっつりホールドされたまま、巨大な主屋へと入る。
先導するのはジョルジエット様に命じられ仕方がなく従う家令セバスチャン、
周囲を屈強な騎士十数名の軍団が固めるという異様な布陣で……
俺はそのまま、どなどなされているのだ。
行き先は、リヴァロル公爵家当主グレゴワール様が居るという書斎。
確か……
ステディ・リインカネーションの世界で、
ファルコ王国公爵グレゴワール・リヴァロル様は王国宰相。
あだ名は『鬼宰相』
文官でありながら武道もたしなみ、
見た目は剛直な騎士さながらという感じだからだ。
俺がプレイした冒険者兼業の下級貴族の騎士アラン・モーリアとは、
縁が薄く、顔見知り程度だった。
……というか、確かグレゴワール様は、
「冒険者を相当毛嫌いしていた」という話を聞いた気がする。
それゆえ、貴族でありながら冒険者稼業を楽しむ、
アラン・モーリアとは「馬が合わなかった」と認識しているのだ。
実際、この世界のグレゴワール・リヴァロル様も、「冒険者を相当毛嫌いしている」
冒険者の俺ロイク・アルシェが愛娘と寄り子の令嬢を危機から救ったのに……
自ら会おうとせず、家令経由で謝礼金を渡し、済まそうとした事実が証明している。
ああ、本当に悪い予感しかしない。
つらつら考えているうちに、書斎前に到着。
ここでジョルジエット様が声を張り上げる。
「セバスチャン! 書斎の扉をノックして頂戴! 思い切り強く! 緊急時の最大レベルで! 従わないと厳しくお仕置きよ!」
ええっと……ジョルジエット様。
厳しくお仕置きって何?
こんなおじいさんに貴女は、どんなお仕置きをするの?
ジョルジエット様がハードな女王様コスチュームで鞭をびしっと鳴らす……
と思うくらい、セバスチャンは顔色が真っ青になる。
「は、はいい~! ジョルジエット様!」
どがん! どがん! どがん! どがん! どがん! どがん! どがん!
うわお!
なんちゅう、ノックだ。
拳で扉をガンガン叩いてる!
案の定、書斎から怒声が戻る。
「ばっかも~ん!! うるさいわあ!!」
ああ、グレゴワール・リヴァロル様すっごく怒っちゃった。
しかし!
ジョルジエット様が負けないくらいの大声を張り上げる
「お父様!! すぐ扉を開けなさい!! 開けないと1か月は口を聞かないわ!!」
「…………………………………………………………………………」
しばしの沈黙。
やがて、仕方ないという感じで、書斎の扉が開けられたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
5分後……
書斎の豪奢な長椅子に俺は座っていたというか座らされていた。
相変わらず俺の両脇にはジョルジエット様とアメリー様が、がっつりホールドして座っている。
対面には、グレゴワール・リヴァロル様がひとりで座り、苦虫を嚙み潰したような顔でジョルジエット様とアメリー様を見つめていた。
そのグレゴワール様は、文官とは思えないくらいたくましい体躯で、
身長は2m近い金髪碧眼の大男。
俺とは目を合わそうともしない。
「…………………………………………………………………………」
きまずい沈黙が流れていて、
俺達の周囲をセバスチャンと騎士達が囲むという異様な光景なのだ。
すぐジョルジエット様とアメリー様が爆発する。
「何よ!! これ!! 落ち着いて話が出来ないわあ!!」
「そうです!! ジョルジエット様のおっしゃる通り!!」
ここで、セバスチャンが言う。
「ジョルジエット様! 警備上、致し方ありません!」
まあなあ……
どこの馬の骨とも知らない冒険者の俺を、
主人と対面させたまま出るなどとはいかないだろう。
そういう宮仕えする者の懸念は良く分かる。
しかし、ジョルジエット様は『しもじも』に反論を一切許さない。
セバスチャンを華麗にスルーし、言い放つ。
「お父様!! セバスチャンだけを残し、騎士達全員を部屋の外へ出して!! ……じゃないと!! さっき言ったように、1か月口を聞かないわ!!」
対して、ず~っと沈黙していたグレゴワール様。
「……………………………………………………………分かった」
とぽつり。
うわ!
聞き入れちゃうのそれ?
さっきから、『鬼宰相』グレゴワール様は愛娘ジョルジエット様の言いなりだ。
「セバスチャンを除き、全員退出しろ。……何かあれば呼ぶ」
これまた反論を許さぬ言い方で、居並ぶ部下達へ命じたのである。
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