第46話「はい、ばいばい が通ると思っているの?」
ファルコ王国王都ネシュラには、
いくつもの愚連隊が存在し跋扈している。
俺は前世でステディ・リインカネーションをやり込んだ際、
魔法騎士アラン・モーリアとして、王国の命により、
愚連隊取り締まりの任に当たった事がある。
その時行った調査で、全ての愚連隊の全貌を知り、俺はその知識を有している。
今回、誘拐未遂事件をやらかしたのはそのうちのひとつ、
烏団という愚連隊であった。
ようやく駆け付けて来た衛兵の取り調べにより、その事実が発覚した。
そして俺が助けたのは……
堅苦しさを嫌い、護衛をつけずお忍びで街中へ遊びに出かけた、
王国上級貴族リヴァロル公爵のひとり娘ジョルジェットとその侍女、アメリー・サニエだった事も判明した。
え?
サニエって、聞いた事がある姓だなあ。
ちょっと思い出せないけれど。
ややこしくなるから、年齢を尋ねる事は出来ないが、
ジョルジエット様が俺と同じか少し年上。
侍女ちゃんこと、アメリーちゃんが俺と同じか、少し下という感じかな。
そんなこんなで……
ジョルジェット様とアメリーちゃんの証言で、事件の経緯が明らかになった。
まあ、ジョルジェット様は凶悪な愚連隊の横暴さに怒り心頭だったし、
途中から当て身を喰らい、気を失っていた。
主に証言したのは、アメリーちゃんである。
そしてアメリーちゃんから臨時の護衛役に雇用された、通りすがりの俺が、
ジョルジェット様を救出する為、犯行に及んだ烏団の構成員どもを、
ぶっとばし、屈服させたという事実も告げられた。
当然、護衛役として義務を果たした俺は無罪。
過剰防衛にならない。
身元確認を求められたので、冒険者ギルド総本部発行の所属登録証を示した。
俺の素性を知り、取り調べを担当した衛兵から、尋ねられる。
「成る程、ロイク・アルシェ君、ランクBのランカー冒険者か。たった16歳なのに大したものだ」
「いえ、そんな、やるべき事をやっただけです」
「おお、奥ゆかしいな。それにしても、ほぼ無傷で奴らを鎮圧したとは素晴らしい!……見事な技だ。威圧の一種かな?」
さすが衛兵さん、鋭い。
今後の事もあるし、ここはオープンにしておいた方が良いだろう。
敵対する者が、俺の威圧を事前に知っていれば、余計ないさかいも少なくなる。
「はい、そうです」
「やっぱりそうか! お疲れ様、後は任せてくれ」
という事で俺は解放OK。
愚連隊烏団の奴らは逮捕され、投獄決定。
しばらく留置されてから、更に詳しい取り調べを受けた上、厳罰が下されるという。
ここで!
侍女のアメリーちゃんがうるうるした目で迫って来る。
やはり小動物系、リスのように可愛い子だ。
「ロイク様ああ!! 本当に本当にありがとうございましたああ!!」
「いえいえ、俺はたまたま通りすがりで、当然の事をしたまでですよ。それよりも、奴らに殴られた場所は大丈夫?」
「大丈夫ですよっ! 即効で治っちゃいましたあ! 凄い回復魔法ですねっ! それに凄く、お強いんですねえ! にらんだだけで、あいつらが倒れてしまったって、見ていた人から聞きましたああ!!」
「ええ、威圧の技です」
「威圧の技?」
ここで、ジト目で俺をにらんでいたジョルジェット様が乱入。
「何よぉ! さっき衛兵に聞いたら! 貴方って、単なる平民の冒険者なのぉ!」
「はあ、単なる平民の冒険者ですが……」
と俺が答えると、何と! ジョルジエット様が、
「がっかりぃ!」
とぬかしやがったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ジョルジエット様!! 命の恩人であるロイク様に対して!! 何という失礼な事をおっしゃるのですかっ!!」
おお!
主に対して、侍女ちゃんの反抗。
うん!
激しく同意だ。
俺が平民の冒険者だからって、ひと言の礼も言わず、「がっかりぃ」はない!
いくらジョルジエット様がとびきりの美少女でもこんな女子はノーサンキユー。
関わり合いになりたくない。
アメリーちゃんに責められたジョルジエット様。
「だってえ! 私を助けてくれたのが、白馬の王子様じゃないんだも~ん! 単なる平民の冒険者じゃイヤよぉ!」
はあ?
私を助けてくれたのが、白馬の王子様じゃないんだも~ん?
単なる平民の冒険者じゃイヤよぉ!だと?
おいおい!
ジョルジエット様!
あんたの脳内は、どういう乙女ちっくなお花畑なんだ!?
そんなに都合よく、白馬の王子様が現れるわけがなかろうよ!
さっきの「がっかりぃ!」に引き続き、俺は、ますます、ドン引きしてしまった。
ジョルジエット様は、せっかくの超美少女なのに、
これじゃあ、こちらこそ言いたい。
『貴女は口を開けば、がっかり令嬢だ!』と。
衛兵さんによれば、リヴァロル公爵家へ使いの者をやり、
ジョルジエット様とアメリーちゃんを迎えに来て貰うという。
そろそろ頃合いだ。
フェードアウトするとしよう。
「じゃあ、衛兵さん、俺、用事があるのでそろそろ失礼します。おふたりの事お願いしますよ」
すると、アメリーちゃんが反応。
「ま、待ってください! ロイク様! お雇いした護衛のお金をお支払いしていません!」
「いいよ、いいよ、そんなの便宜上言っただけだから」
「便宜上?」
うん!
そういう名目で、愚連隊烏団の奴らをぶっ飛ばしても、
過剰防衛とか、ややこしくならないよう、
アメリーちゃん、君から言質を取っただけだもの。
しかし、なんということでしょう。
「口を開けば、がっかり令嬢」こと、
ジョルジエット様が腕組みをし、怖い声で、のたまったのだ。
「アメリーの言う通りよ! リヴァロル公爵家の令嬢を助けて、はい、ばいばい
が通ると思っているの?」
ファルコ王国は身分制度がはっきりしていて、王族、上級貴族は絶対の権力者。
公爵家なら、王族に準ずる力を持つ。
断る事も可能だが、角が立つとヤバイという事で、
俺はリヴァロル公爵家へむりやり「どなどな」される事になったのである。
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