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第17話「大きな期待が俺の心にはある」

俺は受付の職員へ、


「失礼します。自分はロイク・アルシェと申します。クラン『猛禽(ラパス)』のリーダー、ジョアキム・ベイロンさんのご紹介で、冒険者登録をしたいので、宜しくお願い致します」


と、丁寧な物言いで頭を下げ、紹介状を渡した。


すると、クラン『猛禽(ラパス)』と、

リーダー、ジョアキムさんの名前が大きかったらしい。


通常のギルドの業務カウンターには、案内されなかった。

すぐに秘書さんという肩書きの女子が来たのである。


20代前半、紺色のスーツっぽい仕事着にかっちりと身をかため、

すらっとした金髪碧眼の美女である。


おお、綺麗な人だ。

この女子は、初めて会う人だぞ。


お辞儀をする仕草が洗練されていて、隙もない。

もしかしたら、武道のたしなみがあるかもしれないと、思ってしまう。


「ロイク・アルシェ様ですか? 初めまして。私、サブマスター、エヴラール・バシュレの秘書で、クロエ・オリオルと申します。本日はサブマスター、バシュレがお会いします」


クロエさんは、身のこなしも、顔も、声も綺麗だなあ。


……でも、サブマスターが会うとは……

さすがに総マスターは会ってはくれないか。


今回はノーアポだし、俺は16歳の元店員。


ジョアキムさんの紹介だからこそ、サブマスターが会ってくれるという事だよな。


でも、……エヴラール・バシュレさんかあ。

うんうん、実は俺『アラン・モーリア』だった時、よ~く、彼を知っている。


この秘書さんだけは、俺がプレイした時とは『違う設定』みたいだ。


エヴラールさんからは、良くいろいろな仕事を依頼されたし、共闘した事もある。


そう!

エヴラール・バシュレさんはランクAの魔法剣士で、

ふたつの属性魔法を使いこなす複数属性魔法使用者(マルチプル)


剣聖と(うた)われるくらい剣技も凄いのだ。


また、普段クールな割に義理と人情に厚い。


少し、おっちょこちょいなところもある。


そんなところが好きで、俺アランは、気が合った。

確かプレイしていた時、

エヴラールさんは29歳、俺アランが23歳という設定だった。


しかし……

言えないよ、そんな事は。


冒険者ギルドは勿論、王都にも来た事のない、

田舎の少年が、いきなり言うセリフではない。


俺は今、王都を庭にした魔法剣士アランではなく、

平凡な?少年ロイク16歳なんだから。


はきはきと、俺はあいさつする。


「初めまして! 自分はロイク・アルシェと申します。本日は、冒険者ギルドの冒険者登録に伺いました。王都に来る際、知り合いとなったクラン『猛禽(ラパス)』のリーダー、ジョアキム・ベイロンさんから、ご紹介状も預かりまして、持参致しました! いきなり、ノーアポインメントで伺いましたのに、サブマスターに、わざわざお時間を作って頂き、深く感謝致します!」


「え?」


あれ?

クロエさん、びっくりしてる?


俺、何か変?


と気にしたら、何という事はなかった。


「失礼致しました。ロイク様のお言葉がまるで大人のような感じでしたので、つい……」


ああ、そうか。

今の俺ロイク・アルシェは、『がわ』が16歳の少年だけど、

中身は25歳の大人の男。


その上、俺は元『営業マン』だったから、こういうやりとりは慣れている。

既存のクライアントだけでなく、

新規開拓とか、初取引き相手とか、散々場数を踏んだ。


「そうですか。何卒宜しくお願い致します」


ちなみに、ゲームだけでなく、

リアルでも俺はキレイな女子相手に対し、あがったり動揺しない。


念の為、もてるからとかじゃない。

「全く期待していない」からだ。


俺は彼女ナシ25年。

こういう年上で高嶺の花は無縁の存在だと、ハナから諦めている。


アバターのアラン・モーリアは、超イケメンでかっこよくもてたが、

今の俺ロイク・アルシェは16歳で、リアルの俺と同じさえない平凡な男子。

若いだけが取り柄、身のほどはわきまえている。


「は、はい。ではどうぞ、こちらへ……」


俺はクロエさんの案内で、魔導昇降機へ乗り込んだ。


『ステディ・リインカネーション』の世界では、魔力は魔法を行使するエネルギーであるのと同時に、現代の電気が担う役割以上も果たしている。


この魔導昇降機は、魔力を使った浮力で上下するエレベーターなのである。


俺とクロエさんを乗せた魔導昇降機は10階建ての本館、8階に止まった。


「このフロアが、5人のサブマスターを含む、幹部専用の個室等があるフロアです。どうぞ、私に続いてください」


……それも知ってる。

9階が会議室専用のフロアで、10階全てが総本部総マスター専用のフロアだと。


当然、俺は余計な事を言わないが。


クロエさんは、先に俺を降ろし、一礼。

続いて降りると背筋をピンと伸ばし、再び一礼。

先に立って、優雅な足取りで歩き始めたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


とんとんとんとん!


クロエさんは、サブマスター、エヴラール・バシュレの部屋の扉をノックした。


そして、


「サブマスター、バシュレ。ロイク・アルシェ様をお連れ致しました」


「ああ、クロエ、一緒に入ってください」


「かしこまりました!」


クロエさんは、相変わらず優雅な手付きで、扉を開けた。


そして、にっこり笑い、中へいざなう。


「私が先に入りますから、ついて来て頂けますか?」


「分かりました」


さすがに少し緊張する。


いろいろな意味で。


大きな期待が俺の心にはある。


今の俺はロイクに、ケンとアランがミックスした状態。

そう、『初期』という言葉に引っ掛かった俺の勘が報せている。


そして、俺の考えがもし当たっていれば……


キャラや環境は変われど、俺はかつてプレイしたゲームと同じく、

今度は、このロイク・アルシェという少年キャラを育て、

最強への道を歩ませる事となる。


そして、このサブマスター、エヴラール・バシュレさんが、

俺のスペックを知り、どのような反応を示すのか?


エヴラールさんは、

正面に置かれた重厚な机と同じデザインの椅子に深く、腰かけていた。


「さあ、こちらへどうぞ」


部屋へ入ると、向かって右側に応接セットが置かれていた。


「ふむ」


とエヴラールさんも座っていた椅子から立ち上がり、応接セットの長椅子の脇へ。


3人が歩き、クロエさんにいざなわれた俺と、

エヴラールさんが互いに立って、向かい合う形となった。


おお、既視感(デジャヴュ)


面と見合って、改めて実感する。


……やはり俺はこの人……サブマスターのエヴラールさんを良く知っている。

俺、ケン・アキヤマのアバター、魔法騎士アラン・モーリアとして。


エヴラール・バシュレ。


年齢29歳。

身長180cm。

体重68Kg。

長身痩躯。


革鎧を粋に着こなす伊達男。 


栗色のさらさら短髪。

とび色の美しい瞳。


性格は沈着冷静。

端正な顔立ちも、性格通り、クールな印象を(かも)し出す。


「サブマスター、ロイク・アルシェ様です」


クロエさんが俺を紹介すると、エヴラールさんは笑顔で、


「はじめまして、ロイク君。ようこそ! 冒険者ギルド総本部へ! 私が、サブマスターのエヴラール・バシュレです」


当然ながら、『初対面の挨拶』をしたのである。

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