第145話「うん! トリッシュさん! 君は本当にいい子だ」
「お待たせしましたあ! ロイク様あ!」
と、いつもの調子で、明るく元気なトリッシュさんが、
手を大きく打ち振り、ニコニコ顔で現れた。
ここで、俺は「負けじ」と元気よくあいさつ。
「おはようございます! トリッシュさん!」
続いて、シルヴェーヌさんも仕方なくという感じで、
「……おはようございます」
と、さっき話していたよりも、低い声であいさつした。
対して、トリッシュさん。
「おっはよ~ございま~す!」
と、やはり元気にあいさつし、ぺこりと一礼。
「ウチのマスターから状況は聞いていま~す。あいさつは改めて! まずお部屋へ! ロイク様の顧問室へ、ご案内致しまあす」
という事で、トリッシュさんが先導し、俺とシルヴェーヌさんは、
魔導通話機で、本館の8階へ。
10階がギルドマスター専用のフロア。
9階が会議専用のフロア。
そして8階が幹部専用のフロアなのだ。
「こっちらで~すっ」
明るく先導するトリッシュさん。
その背後を、俺とシルヴェーヌさんが歩く。
シルヴェーヌさんは、先ほどから無言。
しかし、トリッシュさんが言葉を発するごとに、
こめかみが、ぴくぴく反応している。
どうやら、シルヴェーヌさんは、
トリッシュさんの明るい物言いが性に合わないみたい。
いらいらしているのが、はっきりと伝わって来る。
これは、対策を講じなければならない。
しっかりと考えておこう。
個室の扉のあるフロアをしばし歩き、とある部屋の前に。
扉には、木のプレートが掲出されていた。
『ロイク・アルシェ顧問室』とある。
ここが俺の部屋なのであろう。
「こちらが、ロイク様のお部屋で~す」
トリッシュさんはそう言い、かちゃと、解錠した。
続いて、のぶを掴み回し、がちゃりと、扉を開いた。
部屋は、12畳くらいの広さ。
俺の事務机、椅子。
トリッシュさんの事務机に椅子。
書類入れを兼ねた書架。
ロッカーがひとつ。
テーブルをはさんだ、長椅子がふたつ。
これは応接セットだろう。
以上!
誠にシンプルな部屋である。
「では! ギルドマスターを呼ぶ前に、先にごあいさつを致しましょう。私と貴女の! ロイク様と私は今更の間柄ですから~!」
トリッシュさんが言うが、シルヴェーヌさんは、きゅ!と唇をかみしめている。
おお! あまりにも馴れ馴れしい! もう我慢出来ません!
って、波動がシルヴェーヌさんから、来た。
いかん!
やばい!
対立が決定的になる前に、俺が間に入らなければ。
そして今後、同じ仲間としてやっていけるよう、説得しなければならない!
俺はすすっと、ふたりの女子の間へ入った。
そして、トリッシュさんへ呼びかける。
さりげなくウインクをして。
このアイコンタクトで、トリッシュさんへは、俺の意図が伝わるはずだ。
「トリッシュさん」
「はい?」
「申し訳ない! 俺から紹介するよ。彼女は、王国執行官たる俺の片腕となる、シルヴェーヌ・オーリクさんだ。冒険者にたとえれば、今後は、君とクランを組んで貰う重要メンバーだ。宜しく頼むぞ」
「は~い! 成る程ですね~! シルヴェーヌ・オーリクさんは、ロイク様の片腕で、クランの重要メンバーですかあ! わっかりましたあ!」
俺の意図を理解したらしいトリッシュさん。
不満な顔をせず、自己主張せず、控えてくれた。
うん! トリッシュさん! 君は本当にいい子だ。
よし!
次はシルヴェーヌさんだ。
「そして、シルヴェーヌさん!」
「は、はい!」
俺が、片腕、重要メンバーだと持ち上げ、称えた事で、
シルヴェーヌさんはクールダウンしたようだ。
おっし!
ここが攻めどころだ。
「彼女は、パトリシア・ラクルテルさん、トリッシュさんは愛称だ。俺がトレゾール公地の任務で、数多の金、宝石を確保。そしてドラゴン10体を倒し、ドラゴンスレイヤーになれたのは、トリッシュさんのフォローがあっての事だ」
「な、成る程!」
「ああ! シルヴェーヌさん! 君と同じで、トリッシュさんは、クランの重要メンバーだ。もうひとり、ルナール商会の秘書さんとともに、3人で俺を支えてくれよ」
俺は一気に言い切った。
シルヴェーヌさんに余計な事を考える暇を与えず、
突っ込み不可能なロジックで押し切ったのだ。
最後は、お願いというか、3人で俺を支えてくれという業務命令。
「シルヴェーヌさん! 俺のお願い、了解してくれるな?」
「は、はい!」
「トリッシュさんはどうだ?」
「当然! 了解致しまあす!」
びし!っと俺へ、直立不動で敬礼したトリッシュさん。
そして、更に
「シルヴェーヌ・オーリク様! 未熟者ですが! 何卒宜しくお願い致しまあす!」
と言い、シルヴェーヌさんへ向かって、深々とお辞儀をしていたのである。
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