第141話「彼女がシルヴェーヌだ」
ジョルジエット様とアメリー様は、ロジエ女子学園へ通学する為、
元気に出発して行った。
一方、グレゴワール様と俺も、王宮へ行く。
グレゴワール様曰はく、
現グレゴワール様の第三秘書、俺の秘書となるバジル・オーリクさんの妹、
元女子騎士、シルヴェーヌ・オーリクさんへ引き合わせる。
そして、シルヴェーヌさんを、その場で俺の秘書に正式任命するという。
俺は昨夜のうちに、渡されていたシルヴェーヌさんの経歴書に目を通しておいた。
バジルさんの妹だけあって、勇猛果敢な女子騎士であり、
武術大会でも、優勝経験のある、まさに女傑という感じ。
真面目で博学でもあり、非の打ち所がない才女とも言える。
話を戻すと、更に俺はそのまま、秘書のシルヴェーヌさんを連れ、
冒険者ギルド、ルナール商会へ赴き……
『リヴァロル公爵家邸における、秘書3人住み込み勤務』という、
打合せをして欲しいというのだ。
「私はアレクサンドル陛下と、ルクレツィア様の件を話したら、本来の政務へ戻る。事務処理は勿論、各大臣との打ち合わせが山積している」
「ふう」と息を吐く、グレゴワール様。
思わず、お疲れ様ですと俺は言いたくなる。
ただでさえ、お忙しいのに本当に申し訳ありませんとも。
「ふむ、冒険者ギルド、ルナール商会と、打合せをして、何か支障があれば、その場で決めず、持ち越しにしてくれ。屋敷で私と相談しよう」
「分かりました」
「それと、以前話していた貴族家養子入りの話は白紙となる」
俺が貴族家へ養子入り……ああ、そんな話もあったなあ。
「白紙ですか?」
「うむ、勇者レベルのロイク君をどこかへ養子に出すなど、その家がやっかまれる。だから君には直接、爵位を授けるという話を、アレクサンドル陛下ともしたのだ。……まあ、伯爵辺りが妥当だろうな」
「え? は、伯爵!? 俺がですか?」
うわ!
俺が?
貴族なんて、全然、イメージが合わない。
そんな俺をよそに、グレゴワール様は言う。
「うむ! ロイク君はいずれ、当リヴァロル公爵家を継ぐか、ルクレツィア様との仲が深まれば、王族という可能性も出て来る。つまり、どうなっても貴族社会の一員となる。心しておく事だ」
「そ、そうですか」
と、そんな会話を馬車でしながら……
王宮へ到着した。
昨日のようにバジルさんに先導して貰いながら、グレゴワール様と俺は、
宰相執務室のある区画へ……
昨日のアレクサンドル陛下の書斎と同じく、
宰相執務室も、豪奢な応接室付きの広い書斎という趣きの部屋である。
同じ並びに、外からも宰相執務室からもつながる宰相秘書専用の部屋……
宰相秘書室がある。
ここに、宰相秘書室長、第二秘書、第三秘書が詰めている。
バジルさんが、宰相秘書室の扉をノックした。
秘書室の扉が開き、ひとりの女性が現れる。
スーツのような「かちっ」とした、仕事着に身を包んでいた。
綺麗なプラチナブロンドを肩まで伸ばした、スタイルの良い女性。
資料によれば、年齢は25歳。
切れ長のダークブルーの瞳、鼻筋がすっと通り、唇が小さい。
ちょっと冷たい感じはするけど、相当の美人だ。
女性はグレゴワール様へあいさつする。
「おはようございます! 公爵閣下!」
対してグレゴワール様は、
「おはよう! シルヴェーヌ君!」
え? この人が?
主任警護騎士バジル・オーリクさんの妹で、俺の秘書になるシルヴェーヌさん!?
失礼とは思いながらも、
俺はシルヴェーヌさんの顔をまじまじと見つめていたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
まじまじと見つめる俺の視線を華麗にスルー。
全然、視線を合わさない。
シルヴェーヌさんは、グレゴワール様を見て、淡々と話す。
もろクールビューティという感じだ。
「閣下、秘書室長以下、秘書3名、お待ち致しておりました」
「うむ、応接で待つと、ふたりへ伝えてくれたまえ」
「はい! かしこまりました! 失礼致します!」
敬礼したシルヴェーヌさん。
元騎士らしく、綺麗に回れ右して、宰相秘書室へ引っ込んだ。
扉が閉まったのを視線で追ったグレゴワール様。
苦笑し、俺へ振り返る。
「彼女がシルヴェーヌだ。仕事が出来る子だよ」
「成る程、そんな感じです。クールな雰囲気の方ですね」
「ああ、冷たく見えるだろうが、面倒見は良い方だ。王宮のしきたりにも通じている」
「助かります」
「ふむ、ジョルジエットと、あれだけ上手くやっているんだ。ロイク君に心配はしていないよ」
ジョルジエット様と、あれだけ上手くやっている?
ええっと……それ、どういう意味。
まあ、聞かなかった事にし、無難に返しておこう。
「頑張ります」
「それと、ロイク君の執務室は、私の執務室の隣だ。ほら」
グレゴワール様は、警護の騎士が立つ、自分の執務室の隣の扉を指さした。
宰相執務室と同じ仕様の木製扉がある。
既に、『王国執行官執務室』と木札が掛かっていた。
「ありがとうございます」
「中は執務室、応接室、秘書の部屋という構造だ。私の執務室ともつながっている。机、いすなども用意し、配置してある。後でシルヴェーヌと一緒に、確認すれば良い」
「了解です。もろもろ、ありがとうございます」
「よし、では私の執務室へ入ろう」
グレゴワール様は、警護の騎士に声をかけると、
鍵を出し、解錠。
扉を開け、俺を宰相執務室へ、いざなったのである。
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