第131話「さすがにまだ、具体的にどうしようか、 アイディアは全く浮かばない」
「ああ、楽しいデートをしたというジョルジエットが凄く羨ましくなって、ルクレツィアは、自分も混ざりたいと聞かないのだ」
アレクサンドル陛下は、そう言い、苦笑した。
自分も混ざりたいと聞かないって……
ルクレツィア王女様も、ジョルジエット様、アメリー様と一緒に、
デートをプランニングして楽しませた上、完璧に安全に護衛しろって事か?
うお!
そんなの大変だ。
マジですか、それ?
と思い、グレゴワール様をちら見したら、渋い表情。
あからさまには出来ないから、表情の変化はわずか。
極端に嫌な顔はしていないけど。
でも俺には分かった。
はあああ……マジなんですか。
そもそも!
王国執行官って、王国の依頼により、事件捜査を行い、法の執行の権利、
現場人員への指揮権を持つ管理職のはずだよなあ。
と記憶をたぐった俺は、改めて気付いてしまった。
ああ、そうか。
ファルコ王国は、俺を国外流出させたくない。
でも、ドラゴンスレイヤーの俺に上手く当て込める役職がない。
だから、勇者認定が不可ならば、とりあえず王国執行官にしておく。
実際には、魔物討伐など勇者的な仕事に加え、
誰にも頼めないような王家のプライベートな仕事もするのだと。
もしかしたら、汚れ仕事も頼まれるかもしれない。
う~ん。
よくよく考えたら、勇者って、小説やゲームで、いろいろ雑用もやらされるよなあ。
でも、犯罪は嫌だというか、断りたい。
ここでグレゴワール様が、
「陛下」
「うむ」
「ルクレツィア様の件に関しましては、改めて私とご相談致しましょう」
「ああ、そうだな。いろいろ相談しよう」
「その上で、ルクレツィア様ご本人様と、ご相談した上で、段取りを組ませて頂くべきと存じます。我が娘ジョルジエット、ロイクを交える形で」
「ああ、そうだな、グレゴワール、お前の言う通りだし、任せよう。私はルクレツィアが喜んでくれれば、それでよい」
アレクサンドル陛下は、そう言うと、慈愛を込めた眼差しになった。
誰を見るというわけでなく、視線がどこか遠くに向けられている。
そうか……
アレクサンドル陛下は、妹君のルクレツィア様を深く愛しているのだな。
でも……
ジョルジエット様、アメリー様が居るとはいえ、護衛という名のデート。
赤の他人で男の俺に、可愛い妹さんを預けるのだから、ゆがんだ愛とかではない。
純粋な兄妹愛なんだ。
そう思ったら、少しやる気が出て来た。
とりあえず、ここでルクレツィア様の話は終わった。
頃合いと考えたのか、グレゴワール様が1枚の書類を差し出した。
「陛下」
「うむ」
「この書類に、陛下のご署名をお願い致します。ロイク・アルシェの王国執行官任命書です。昨日、中身はご覧になって頂いていると思います」
「うむ、問題ない。サインをしよう」
俺達の目の前で、アレクサンドル陛下は、任命書にサインをした。
これで正式に、俺は王国執行官に任命された。
「ロイクが請け負い遂行する任務に関しては、基本的にはグレゴワールに一任する。先ほど申したルクレツィアの件みたいなイレギュラーはあるがな」
アレクサンドル陛下は、そう言い、にっこりと笑ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
それから会話が弾んだ。
俺だけではなく、冒険者ギルド、ルナール商会にも話題は及んだ。
まあ、とりとめもない雑談がメインだけど。
そんなこんなで、俺達一行が、アレクサンドル陛下の書斎へ入り、3時間。
打合せは終了した。
はっきり言って、多忙なアレクサンドル陛下から、こんなにお時間が頂けたのは、
グレゴワール様のお力だ。
アレクサンドル陛下は、終始ご機嫌であったが……
とんでもない宿題を頂いてしまった。
そう、ルクレツィア様の件である。
さすがにまだ、具体的にどうしようか、
アイディアは全く浮かばない。
まあ、一行のうち当事者は俺とグレゴワール様なのだが、
先日のルナール商会のように、機会があれば冒険者ギルドにも大いに協力して貰おう。
ジョルジエット様、アメリー様ともご相談しなくてはならないだろう。
と、いう事で、アレクサンドル陛下は、わざわざ扉の近くまで来て、見送ってくれた。
後からグレゴワール様へ聞けば、これは異例の事だという。
逆に見送られた事で、重いプレッシャーもかかった。
「では! 陛下! 失礼させて頂きます!」
「「「失礼させて頂きます!」」
直立不動で敬礼。
あいさつをした俺達4人。
対して、アレクサンドル陛下は笑顔で、
「うむ、皆の者。今後とも、ファルコ王国の為に尽くしてくれよ」
とおっしゃり、右手を高く挙げたのである。
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