第127話「さすがの俺も大いに驚愕していた」
翌日、翌々日、グレゴワール様から連絡はなかった。
元々、超が付く多忙さなのに、俺の一件が加わり、奔走しているに違いない。
そう思うと本当に申し訳なく思う。
そして3日目の朝7時。
ホテルのフロント宛へ、「リヴァロル公爵家邸へすぐ来い!」との連絡が入った。
こんなに早い朝に『呼び出し』がかかるなんて……
「調整が完了した」に違いない。
少なくとも進展はあったはずだ。
こんな事もあろうかと、ホテルにてスタンバイしている間は、常に午前5時起き。
そら来た!とばかりに、一番良い革鎧に着替え、剣を提げ、支度をした俺。
速攻で、リヴァロル公爵家邸へ。
門番担当の騎士さんには話が通っていて、
すぐに家令のセバスチャンさんを呼んでくれた。
セバスチャンさんに連れられ、書斎へ行けば、
グレゴワール様は勿論、既に冒険者ギルド、ギルドマスターのテオドールさん、
ルナール商会会頭セドリックさんというメンツは揃っていた。
俺が一番最後である。
グレゴワール様がにこにこ。
「おお、ロイク君、良くぞ来た。喜べ、話はまとまったぞ」
テオドールさん、セドリック会頭も、
「冒険者ギルドは、グレゴワール閣下のご決定に従います」
「先にお話しした通り、当商会は、グレゴワール様のご方針に合わせます」
と言う。
いやいや、申し訳ないけれど、ぬか喜びは出来ない。
3者の方針が一致したのは、喜ばしいかもしれないが、
そもそも、どうするのかを俺は全然聞いていないし、知らない。
具体的な話は、全くナッシングだったもの。
さてさて!
一体どうなったのか?
『逆手』『先手必勝』とはどういう事か。
「皆様、お疲れ様でした。いろいろありがとうございます」
俺はまず全員へお礼を言い、グレゴワール様へ尋ねる。
「それでグレゴワール様。俺の処遇は、どうなったのか、教えて頂きますか?」
「うむ。個別に説明して行こう」
「個別ですか?」
「ああ、まず冒険者ギルドのオファーの件だが、サブマスター就任はなし。非常勤という形で顧問に就任して貰う。但し、報酬も権限もあり、条件の詳細は後ほど確認してくれ」
非常勤の顧問?
報酬も権限もありか。
悪くない。
「ありがとうございます。了解致しました」
「次にルナール商会だが、契約はそのまま、但し依頼受諾の優先順位は下げさせて貰う。スケジュールや状況等が折り合う時に受けるという事だ」
「ありがとうございます。それも了解致しました」
ここまでは『想定内』
問題は俺がどのような立ち位置になるかだ。
さあ!
教えてください!
「そしてロイク君の処遇だが……」
だららららららららら~~!!!
俺にしか聞こえないどらが鳴る。
じゃ~~んんん!!!
「私、グレゴワール・リヴァロル預りにて、国王陛下直属となる! 役職は王国執行官だ!」
えええええ!!??
グレゴワール様預りにて、国王陛下直属うう!!??
役職は王国執行官んんん!!!
まさかまさかの国王直属!!
さすがの俺も大いに驚愕していたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ここで補足しておこう。
前世において、執行官とは、民事訴訟法上、民事執行法等の法令または裁判に基づいて、送達事務、強制執行、担保権の実行としての競売等の事務を取り扱う、
裁判所の職員をいう。
しかしステディ・リインカネーションの世界における、王国執行官とは、
王国の依頼により、事件捜査を行い、法の執行の権利、現場人員への指揮権を持つ管理職なのだ。
でも大体、爵位は伯爵以上で、騎士団長以上の役職を持つ上級貴族が兼務する。
「王国執行官とは、王国の依頼により、事件捜査を行い、法の執行の権利、現場人員への指揮権を持つ管理職だ」
つらつらと記憶をたぐる俺へ、グレゴワール様は同じ事を言った。
そして更に言う。
「国王陛下直属の公務員ではあるが、冒険者ギルドとの兼務、ルナール商会の依頼を受諾する事は認められる。そして陛下から直接命令が下る事は滅多にない。宰相の私からが殆どであり、陛下とお話しする際も必ず私が入る」
おお!
成る程!
冒険者ギルド、ルナール商会とは縁が切れず、
陛下との間にグレゴワール様が入り、クッション役となってくれるのか!
だったら、まだマシだよなあ。
そしてまだグレゴワール様の話は続く。
「実質、勇者と近い仕事になるが、王国執行官だから、勇者法は制定、適用されず、住居、仕事、報酬、結婚相手など、ロイク君の意思は考慮される。まあ、何でもOKというわけではなく、王国で用意したいくつかの選択肢から選ぶという形となるがな」
成る程。
がちがちに縛られる勇者よりは、自由度があるって事か。
「宰相たる私グレゴワール、ワールドワイドな組織たる冒険者ギルド、王国最大手のルナール商会3者からの推薦で、ロイク君を王国執行官に推し、国王陛下が最終決定するという形だ。それゆえ王国からどうこう言われる心配もない」
そうか!
グレゴワール様がおっしゃっていた、『逆手』『先手必勝』ってこれだったんだ。
ドラゴン討伐が露見し、王国から呼び出され、勇者認定される前に、逆手先手を使い、俺を王国執行官にしてしまう。
まあ、実際に王国執行官になって、仕事をしてみないと分からない部分はある。
だけど、国外逃亡とか、名前を変えて隠遁生活とか、
最悪の結末は回避出来た。
「本当にありがとうございました。グレゴワール様と皆様に感謝致します」
俺はグレゴワール様始め、3人全員に深く感謝すると同時に、
大いに安堵したのである。
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