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第119話「テオドールさんは義理堅く、筋を通す事を重んじる」

驚く俺の顔を見て、

ギルドマスターのテオドールさんは、またも「にやり」と笑った。


テオドールさん、あの手、この手で、俺を囲い込もうとする。


倒したドラゴンの死骸の販売先に関して、出した希望は基本的に受け入れる。

加えてランクアップも行い、限りなくランクSに近いランクAに。


地位と給与も提示して来た。

サブマスターの地位と、王国騎士並みの月給金貨300枚―300万円。

ゆくゆくはギルドマスターになれるかも……とか。


その上、ドラゴンスレイヤー、竜殺しの称号を、

俺につけ、冒険者ギルド公認で周知すると保証。


更に更に、可愛い18歳の業務担当者、トリッシュさんこと、

パトリシア・ラクルテルさんを専任の秘書にするとまで、言い切った。


……う~ん、これって、世代的に俺は体験していないが、

就職時における有望な学生の囲い込み、いわゆる青田刈りって奴と同じかな。


いや、少し違うか。


ああ、そうだ!

俺は新人ではない。


既に冒険者デビューし、短い間だが、実績を積んだ。


うん!

プロ野球でFA宣言した有望選手に複数の球団がアプローチして、

好条件を提示するのと同じかもしれない。

もしくはポスティングシステムとか。


でも……

こういう場合は、よほど意中の球団がない限り、

各球団の話をじっくり聞くというのが、賢明なやり方。


うん、そうだよ。

今の俺の立ち位置はフリーな個人事業主だが、他の雇用主との兼ね合いもある。

即答せず、持ち帰りにするべきだろう。


「ギルドマスター、いろいろありがとうございます」


「うむうむ、当、冒険者ギルドから出した、破格のオファーを受ける気になったかね、ロイク・アルシェ君」


「マスターのおっしゃる通り、頂いたのは破格のオファーで、本当にありがたいお話しだと思います。ですが……」


「むう、ですがとは? ロイク君、まさか、私のオファーを断るつもりじゃないだろうね?」


お!

逃げられないよう、退路をふさいで来たか。


俺を見るテオドールさんの視線が鋭くなった。


口元が笑っているが、目は笑っていないのだ。


さすが歴戦の勇士、ドラゴンスレイヤー。

ギルドマスターたる、凄みがある眼差し。


大会議室は、大きな緊張感に包まれた。


しかし、ここで俺が臆したり、変に妥協したら『負け』である。


「マスター、申し訳ありませんが、関係各所と相談の上、検討させて頂きます」


「何? 関係各所だと?」


「はい、俺ロイク・アルシェと、いくつか契約している雇用主がありますので、そちらに話を通し、確認した上で、ご返事させて頂きます」


そう!

冒険者ギルドは、承知しているはずだ。

俺とルナール商会の間柄を。

直の依頼を完遂した事も。


そして俺が『鬼宰相』グレゴワール・リヴァロル公爵閣下と直接、

愛娘ジョルジエット様の護衛契約を結んでいる事などを探り出しているかもしれない。


ルナール商会はともかく、この国の宰相グレゴワール様を、

無視は出来ないはずだ。


案の定、テオドールさんはトーンダウンする。


「むうう……分かった。相談して来るが良い」


しかし、俺も少し譲歩する。

押したら、引く、また押すとかの駆け引きだ。


ちゃんと落としどころを用意しないといけない。


「はい、解体作業場のドラゴン1体は、とりあえず先に冒険者ギルドへ納品し、売却という形で宜しいですか?」


「おお、それは助かる!」


ドラゴンの死骸1体を仕入れ、加工し、売買すれば、

冒険者ギルドは、莫大な利益を得る。


それはそれ、これはこれ。

機嫌を直したテオドールさんは割り切り、俺へ笑顔を向けたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


テオドールさんが、俺へ出した破格のオファー。


そのオファーを保留し、検討すると返事を戻した瞬間。


とんでもない緊張感が、大会議室に満ちた。


テオドールさん以外のサブマスター、エヴラールさんを含む男女5人は、

緊張し、顔をこわばらせた。


65歳とはいえ、ギルドマスター、テオドールさんの権威、権力は絶大なものがある。

若き頃、王都ネシュラを襲ったドラゴンとタイマンの戦いを3度も経験。


うち2体を倒し、1体を追い払ったという実績に対し、誰も文句は言わないというか、言えない。


そして一旦怒り出したら、手がつけられないという認識もサブマスター達にはある。


俺はアラン・モーリアであった頃、そんなテオドールさんの性分を身に染みるぐらい経験していた。


しかし……

一方でテオドールさんは義理堅く、筋を通す事を重んじる。


それゆえ、俺が世話になっている人達をないがしろにせず、

筋を通した事を、評価してくれたのだ。


そしてちゃんと『落としどころ』を設定し、冒険者ギルドを立てた事もしっかり見てくれた。


だからテオドールさんは、怒りを抑え、一旦矛を収めてくれたのである。


結局、ドラゴンの死骸は1体のみギルドへ売却。

俺の身の振り方と、残りの死骸の売却はペンディング。


ギルドからは、俺を、ランクのみAにしようという事が、

マスター、サブマスターの満場一致で決定した。


「うむ! ではとりあえず、散会とする! ロイク・アルシェ君とは日を改めて相談しよう!」


そう言って、テオドールさんは立ち上がり、長テーブルを回り込み、

俺の前へ来ると、手を差し出して来た。


握手をしたいという意思表示だ。


断る理由はない。


俺は立ち上がって、一礼し、がっつり握手。


すると、サブマスター達5名も同じように、俺の下へ来て、

握手を交わしたのである。

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