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 夕方から降り始めていた小糠雨が止んだ頃、夜を憚らない嬌声もまた止んで、しっとりと濡れた大地に静寂が戻ってきた。


「あのねぇ、陛下ぁ」


 濡れた寝台にはとびきり甘ったるい、間延びした声。


(ショク)ねぇ、怖いのぉ」

「俺がいるのに?」


 軽薄な返しに、明るい笑いが響く。


「陛下がいらっしゃる間はヘーキ! 怖いもの、なぁんにもないわ!」

「俺がいない間は、何が怖いんだ?」

「んとねぇ、あのねぇ……翠妃(スイヒ)泉妃(センヒ)がねぇ、怖いの」

「嗇をいじめるのか?」

「ううん。違うけどぉ、でもねぇ」


 と、女は縋りつくようにしながら語る。


「翠妃はぁ、泉妃のこと嫌いじゃなぁい? だからぁ、嗇と一緒にね、泉妃を追い出そうって言ってきたの」

「へぇ、物騒だな」

「でしょぉ」

「それで、嗇はどうしたんだ?」

「怖いからぁ、またね、ってだけ言ってる。でもねぇ、うちの女官()、翠妃のとこの女官()たちと仲良いから、もしもなんかやってたりしたらぁ、嗇、困っちゃうなぁ」

「ふぅん、確かに困っちまうな」

「でねぇ、泉妃はねぇ……ねぇ陛下、泉妃に子どもが出来た、って本当なのぉ? 泉妃が子ども産んだら、陛下、あたしのところに来てくれなくなっちゃう?」

「まさか。そんなことを怖がるなんて、嗇は可愛いな」


 軽く笑いながら、女の尻を抱え込むように抱き上げる。額に接吻をして、それから強く抱きしめる。


「もっと可愛がってあげたら、俺がいない間も怖くならないよな?」

「うん!」


 大地はやがて乾くだろうが、寝台が乾く間は与えられそうになかった。



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