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坂本直柔

 旧暦の十一月十五日は昨日でしたが、この日に暗殺されたのが坂本直柔(なおのり)、通称は龍馬です。

 暗殺事件は近江屋事件として名高いですね。

 近江屋事件の襲撃者は京都見廻組とする説が有力なようです。

 当初は新撰組の所行とされたものの、箱館戦争で降伏した幕臣らの証言により、京都見廻組の仕業が確定的になった模様です。

 但し、未だに実行者の論争は決着していません。


 さて坂本直柔が暗殺された理由ですが、幕府側の勘気による説が有力なようです。

 土佐藩の郷士であった坂本は脱藩して江戸に行き、福井藩主の松平慶永(よしなが)に拝謁します。

 慶永公から勝海舟を紹介され、以後は海軍設立に奔走しました。

 目まぐるしく流転する情勢の中、幕府の海軍設立は沙汰止みとなり、操船技術を学んでいた一同は薩摩藩の庇護を受けることとなります。

 薩摩藩から船を貸し与えられ、亀山社中と呼ばれる海運会社を設立し、武器商人として新たな一歩を踏み出します。

 京都滞在中に薩長同盟の締結と、自らの祝言を挙げますが、寺田屋にて伏見奉行の強襲を受けて両手を負傷しました。

 薩摩藩の斡旋で霧島温泉へ夫婦で湯治に向かい、これが我が国で初めての新婚旅行とされています。

 この時、高千穂の山頂にあった天逆鉾(あまのさかほこ)を引き抜いています。

 長州再征を経て乗船は長州藩に引き渡され、薩摩藩から別の船を与えられて武器商人を継続します。

 土佐藩からも脱藩の罪を赦されて、亀山社中は海援隊へと改組、資金繰りに苦しみつつも武器商人を続けました。

 この頃にかの有名な「船中八策」が示されたとされていますが、後世の創作とも言われています。

 その理由が、内容の大部分が他者が従前に発表している内容と類似しているからです。

 以下に類例を列挙しましょう。


・大政奉還:幕臣の大久保一翁が先立って松平慶永に伝え、将軍慶喜に建議しましたが断られています。


・上下両院の設置による議会政治:議会政治については福井藩士の橋本左内や、熊本藩士の横井小楠などが論じています。


・有能な人材の政治への登用:幕末の開明的な各藩では身分を超えた人事を実行していました。


・不平等条約の改定:紀州藩士の陸奥宗光らが論じています。


・憲法制定:横井小楠、橋本左内らが論じています。


・海軍力の増強:幕臣の勝海舟や佐久間象山が論じています。


・御親兵の設置:長州藩士の大村益次郎が維新後に実施しています。


・金銀の交換レートの変更


 福井藩士の橋本左内、由利公正らとは福井藩主を介して交流がありました。

 横井小楠とは喧嘩別れしています。

 勝海舟と出会ったことで操船技術や海防を学んでいます。

 船中八策が坂本の独創ではなく、それまでに知遇を得た人々の考えをまとめたに過ぎないとされるのは、交流範囲が広いからでしょう。

 さて、時局は将軍慶喜の大政奉還が実現し、坂本は松平慶永の上京を促すべく福井藩へ向かいます。

 福井藩士の由利公正と大いに語らった後に、京都へ戻った坂本を待っていたのが近江屋事件でした。

 長州征伐の失敗は坂本らによる長州藩への武器売却、船での参戦が原因と幕臣から見られても仕方ありません。

 また、薩長同盟がなければ幕府が追い詰められることもありませんし、将軍慶喜による大政奉還も実現しなかったでしょう。

 積年の恨みが一挙に出たとするのが妥当なところでしょうか。

 近江屋事件で坂本が暗殺された頃、福井藩士の由利公正は川辺を散策していました。

 不意の突風に、懐に入れていた坂本からの手紙が飛ばされ、凶事を案じたとも伝えられています。

 満三十一歳、まさに幕末を駆け抜けた一生でした。

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