ゼウス、暗晦の森で公爵家令嬢に出会う
評価を……、評価を下さればやる気メガ盛りMAXです(欲しがりお化け並感)
レーヴェンマルク子爵家領 暗晦の森
「これが全知全能の神の日課とはのう。シケたもんじゃな」
--ッグォ、グァアアアアアア!!!
「天界の常識でモノを語っちゃならんよ。この程度の魔物でも、人間にとっては大災害になるからな」
--ッギィッ、ギィアアアアアアアアア!!!
俺がレーヴェンマルク子爵家に生まれ落ちて、はや12年。
本来の力を両親にすらずっと隠したまま、今日も今日とてお忍びでレーヴェンマルク子爵家領内の危険区域、暗晦の森でケラウノスちゃんと共に魔物の討伐に励む。
最初の方は俺一人でやっていたんだが、魔物の数がまぁ多いのなんのって。
だから面倒臭そうにしていたケラウノスちゃんにも協力してもらっている最中、というわけだ。
しかしまぁ……こんな都市部から離れた、それも領内に帝都が指定する危険区域まで含んだ土地を賜っているところから察するに、流石没落子爵家だ。
扱いが酷いと再認識して悲しくなっちまうな。
「はぁ~っ……本当に人類とは脆い種族じゃな……地上で最も繁栄しておるのが不思議で堪らぬ」
ケラウノスちゃんの指先から、本日何度目かの雷魔術が一本の白雷となって繰り出される。
確実に魔物の急所だけを、それも最小限の魔力で狙い貫き通すことは最上級クラスの雷魔術師でも骨が折れる芸当だ。
しかもそれを片手で欠伸の口を抑えながらやってのけるというのだから、やられている魔物もたまったものではないだろう。
「む。次は三時の方向だ。……どうやらこのままだと子供二人と鉢合わせるようだ。おそらく迷い込んだんだろうが……飛ぶぞ、ケラウノスちゃん」
数百程の魔物を狩り殺したあたりでーー
一際大きな魔力反応と人の気配を感知した俺は、人型から雷霆フォルムにチェンジするようにケラウノスちゃんに頼む。
俺が走るより、ケラウノスちゃんを掴んで飛んで行った方が早いからだ。
「お前も今は子供じゃろうが。しかし全く……無償奉仕とは如何なるものか」
心底面倒臭そうな顔をしながらケラウノスちゃんが悪態をつく。
「帝国のギルドに所属してクエストなんて受けてみろ、すぐに噂になっちゃうだろうが。それに人知れず魔物退治をしなければ意味がないだろ。富と名声を捨てて人々の為に尽力する。だからこそ贖罪になるというものだろ?」
説得して頼み込むように、「すまないな」という顔をしながらケラウノスちゃんにお願いする。
「本当に……実に献身的なカミサマだこと」
俺の顔を見たケラウノスちゃんはふっと呆れ笑った後、小さな声で何かを呟いて雷霆の姿へと変化し始めた。
しょうがない奴だ、くらいには思われてんだろうなぁ。
でもさ……? 本当に……本当に感謝しているんだぞ?
こんな俺の我儘の為にさ? 天界での贅沢な暮らしを捨てて、今もまた傍にいてくれるんだからな。
俺は軽く笑みを零した後、雷霆フォルムに変化したケラウノスちゃんを右手で掴んだ。
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ーー同時刻、暗晦の森。
「さっきから足がすくんでいるように見えるが大丈夫か? ラドルフシュテット帝国の誇り高き三大公爵家、カッセルフェルト家御令嬢のエミリア様? 教養に乏しいことは知っていたが、どうやら家門の名折れという言葉もご存じでないようだ」
「ほー? さっきからアタシと腕を組んで、おっかなびっくり周りを見回している方の言うことは流石に違うねぇ? 同じく三大公爵家、ルーデル家御令嬢のキリカ様? 生まれたてのヒナのようにヨチヨチ歩きでいらっしゃるのも名門公爵家の嗜みってやつかい?」
鬱蒼とした森など決して似つかわしくない、いかにも御令嬢といった気品溢れる衣服に身を包む二人組。
一人は腰に愛刀『霧蔭』を携えた見目麗しい黒髪美少女の魔術剣士、ルーデル公爵家令嬢キリカ=シュナイツァード=ルーデル。
もう一人は最高級の黒のカシミアローブに身を包んだ金髪美少女の雷魔術師、カッセルフェルト公爵家エミリア=ジーゲンルーベック=カッセルフェルト。
何故高貴な身分の二人が、こんな帝都から遠く離れた危険区域などに足を運んでいるのか。
それは結論から言えば、二人の完全に低レベルな言い争いの末である。
このラドルフシュテット帝国では、皇帝が定期的に地方査察を行っており、その査察には要職に就く貴族も毎回付き添っていたのだ。
そこに将来を期待される若者として、両親からも慣れておいた方がいいとされ、三大公爵家の令嬢であるキリカとエミリアも同伴していたのだ。
そう、それだけならよかったのだがーー。
きっかけは受け売りの知識を嬉しそうにひけらかすエミリアの一言だった。
『おいヒンチチ! 今いるレーヴェンマルク子爵家領にはよ、暗晦の森っていう帝都指定の危険区域があるのを知ってたか? さっき父さんから聴いたんだけどさ!』
『お前と一緒にするな馬鹿女。帝都指定の危険区域なら全て把握している』
『ほぉ~? それってのはあれかい? ビビってるから危険な場所は覚えとかなきゃな~って考えからだろ? ぷっ、わかるわかる! 昔からビビりだもんな~、お前!』
『そんな訳ないだろうが! こんなものはラドルフシュテット帝国民として一般教養だからだ!! 寧ろ知らんお前のほうが恥ずかしいわ!!!』
『なんだと!? だったらビビってないってこと証明してみろよ! アタシと一緒に暗晦の森に行けるよな!?』
『い、行けるに決まっているだろう! 丁度いい、レーヴェンマルクの領民の為にも、私が魔物を霧蔭の錆にしてやるわ!』
『じゃあ決まりだな! 明日の昼下がりの自由時間、森の入口に現地集合な!』
--そして今に至る、というわけだ。
ふたを開けて見れば、仲良く二人でひしと腕を組み、寄り添いながら怯えきっているという悲しい現状だ。
しかしーー、ここは帝都指定の危険区域。
当然にしてそれだけで話は終わろうはずもなかったのだ。
--そして。
この暗晦の森での出会いこそが彼女達の初恋となり、更には後の人生を大きく変えることになるとは思いもしなかっただろう。
【追記】
次回は、3/9夕方頃になります! 毎日投稿が滞ってすみません!
ここまでお読みいただきありがとうございます!
作者の励み・モチベーションアップになりますので、少しでも面白い・続きが読みたいと感じていただけたならばブクマ・評価【特に評価は是非!】の程よろしくお願いいたします!




